引き渡し後に住宅会社が倒産したら、点検や修理は誰に頼む?
A. 定期点検は別の住宅会社や建築士、設備故障はメーカー、構造や雨漏りに関する瑕疵は住宅瑕疵保険法人へ相談します。倒産した住宅会社の無料点検や独自保証は、原則として継続されません。
家は完成して引き渡しを受けたから、住宅会社が倒産しても問題ないと思われがちです。
しかし、引き渡し後には次の対応が必要です。
- 1年・2年・5年・10年点検
- 外壁や屋根の点検
- 防水・シーリングの補修
- 床下・小屋裏の点検
- 給排水設備の修理
- 換気設備の清掃・交換
- エコキュートなどの設備修理
- シロアリ点検
- 不具合発生時の原因調査
- 長期優良住宅の維持保全
住宅会社が倒産すると、その会社が約束していた定期点検や無償修理を受けられなくなる可能性があります。
住まいるダイヤルも、住宅会社が倒産した場合、アフターサービスを引き継ぐ会社がなければ補修の請求先がなくなり、施主が自分で補修会社を探すことになると説明しています。住まいるダイヤル「新築工事の事業者が倒産した場合」
不具合の種類によって依頼先が違う
倒産後の点検・修理は、すべて同じ会社へ依頼する必要はありません。
| 点検・不具合 | 主な相談先 |
|---|---|
| 定期点検・住宅全体の点検 | 建築士、住宅診断会社、別の住宅会社 |
| 雨漏り・構造上の不具合 | 瑕疵保険法人、建築士 |
| 基礎のひび割れ・床の傾き | 建築士、構造に詳しい調査会社 |
| キッチン・浴室・トイレ | 設備メーカー、設備業者 |
| エコキュート・給湯器 | メーカー、指定修理店 |
| 換気設備・エアコン | メーカー、空調設備業者 |
| 給排水管の漏水 | 水道設備業者 |
| コンセント・分電盤 | 電気工事業者 |
| 太陽光・蓄電池 | メーカー、登録施工店 |
| シロアリ | 保証会社、防蟻業者 |
| 外壁・屋根・シーリング | 防水業者、外装業者、建築士 |
重要なのは、最初から修理業者を呼ぶのではなく、保険対象になる可能性がある不具合は、先に保険法人へ連絡することです。
構造・雨漏りは瑕疵保険法人へ直接相談できる
新築住宅に住宅瑕疵担保責任保険が付いている場合、住宅会社が倒産して補修できなくても、施主が保険法人へ保険金を直接請求できる可能性があります。
主な対象は、
- 基礎
- 柱
- 梁
- 耐力壁
- 屋根
- 外壁
- 開口部
などのうち、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分です。
国土交通省も、事業者が倒産して補修できない場合、保険付き住宅の取得者は、保険法人へ瑕疵補修費用などの保険金を直接請求できると案内しています。国土交通省「住宅瑕疵担保責任保険について」
引き渡し時にもらった書類から、次の情報を確認してください。
- 保険法人名
- 保険付保証明書
- 証券番号
- 保険期間
- 保険金額
- 免責金額
- 連絡先
保険付保証明書が見つからない場合は、工事請負契約書、引き渡し書類、住宅会社からのメールを確認し、住まいるダイヤルや心当たりのある保険法人へ相談します。
クロスや建具の不具合は瑕疵保険の対象外になりやすい
住宅瑕疵保険は、家のあらゆる不具合を保証する制度ではありません。
次のような不具合は、通常、住宅会社独自の保証やアフターサービスで対応する範囲です。
- クロスの剥がれ
- 建具の調整
- 床鳴り
- フローリングの傷
- 収納扉の不具合
- コーキングの軽微な切れ
- 設備機器の故障
- 外観上の汚れ
- 消耗品の交換
住宅会社が倒産すれば、有料修理になる可能性があります。
ただし、床鳴りや建具の作動不良でも、原因が構造の変形や不同沈下にある場合は、瑕疵保険の対象となる可能性があります。
見た目だけで判断せず、建築士などに原因調査を依頼してください。
住まいるダイヤルも、床のきしみなどが基本構造部分に関係する可能性がある場合、第三者による調査を検討し、構造部分の瑕疵なら保険法人へ対応を求められる可能性があると説明しています。住まいるダイヤル「施工会社と連絡が取れなくなった事例」
勝手に修理する前に保険法人へ連絡する
雨漏りを見つけたとき、すぐ別会社に壁や天井を壊して修理してもらいたくなります。
しかし、修理前の状態がなくなると、
- 瑕疵の原因
- 雨水の浸入箇所
- 補修が必要な範囲
- 保険対象となる損害額
を保険法人が確認できなくなる可能性があります。
保険対象になりそうな不具合は、次の順番で対応します。
- 写真と動画を撮る
- 発見日時と天候を記録する
- 保険付保証明書を確認する
- 保険法人へ連絡する
- 調査方法と修理手順の指示を受ける
- 見積書を取得する
- 保険法人の確認後に修理する
ただし、水が流れ続けている、漏電の危険がある、建物の安全性に問題がある場合は、被害拡大を防ぐ緊急措置が必要です。
その場合も、修理前後の写真、作業内容、領収書を残し、できる限り早く保険法人へ連絡してください。
瑕疵保険ではなく「供託」の場合もある
新築住宅の資力確保措置には、住宅瑕疵保険への加入だけでなく、住宅会社が保証金を供託する方法もあります。
供託を選択している住宅会社が倒産した場合、保険法人ではなく、供託所へ還付請求を行うことがあります。
国土交通省は、住宅会社が倒産した場合、保険方式なら保険法人への直接請求、供託方式なら供託所への還付請求になると説明しています。国土交通省「住宅瑕疵担保履行法に関するQ&A」
契約時に受けた資力確保措置の説明書を確認してください。
設備故障はメーカーへ直接依頼する
キッチン、トイレ、浴室、エコキュート、換気設備などの製品本体に不具合がある場合は、設備メーカーへ直接連絡します。
準備するものは次のとおりです。
- メーカー保証書
- 製品型番
- 製造番号
- 取付日
- 引き渡し日
- 不具合の写真・動画
- エラーコード
- 延長保証書
住宅会社が倒産しても、メーカー保証が正式に登録されていれば、保証期間内の製品故障はメーカーが対応する可能性があります。
一方、配管、配線、下地、取付方法などの施工不良は、メーカー保証の対象外になることがあります。
その場合は、水道業者、電気工事業者、空調設備業者などへ有料で依頼します。
定期点検は別の会社へ依頼する
住宅会社が行う「1年・2年・5年・10年無料点検」は、その住宅会社独自のサービスであることが一般的です。
住宅会社が倒産すれば、無料点検は継続されない可能性があります。
次のいずれかへ有料点検を依頼します。
- 独立した建築士
- ホームインスペクション会社
- 同じ工法を扱う住宅会社
- 地域の修繕対応可能な工務店
- 住宅履歴管理サービス
- 保険法人の登録事業者
倒産後、最初に行うのは「引き継ぎ点検」です。
目安として、倒産を知ってから1か月以内に、次の部分を確認すると安心です。
- 屋根・外壁・シーリング
- 基礎のひび割れ
- 床下の漏水・湿気
- 小屋裏の雨漏り
- サッシ周辺
- 給排水管
- 換気設備
- 分電盤
- 太陽光・蓄電池
- バルコニー防水
- 床・壁の傾き
この点検で現在の状態を記録しておけば、後から発生した不具合との区別もしやすくなります。
新しい点検会社の選び方
住宅会社の倒産を知った業者から、
今のうちに屋根を全部交換したほうがよい
この家は危険だから、すぐ大規模修繕が必要
今日契約すれば安くできる
と営業される可能性があります。
不安なときほど、その場で契約してはいけません。
新しい点検・修理会社は、次の基準で選びます。
- 建築士や必要な専門資格がある
- 元の工法・構造を理解している
- 点検結果を写真付き書面で出す
- 原因と補修方法を分けて説明する
- 緊急工事と将来工事を分ける
- 修理前に見積書を出す
- 瑕疵保険の手続きを理解している
- 修理後の保証を書面で出す
- 他社の相見積もりを拒まない
- 即日契約を迫らない
「無料点検」は、修繕工事を売るための入口になっていることがあります。
倒産後の不安につけ込む業者ではなく、調査と工事を分けて説明できる会社を選んでください。
修理を先延ばしにすると被害が拡大する
例えば、小さな雨漏りが発生したとします。
早期に原因を特定できれば、
- 調査費:5万円
- 防水補修:12万円
合計17万円で済む可能性があります。
しかし、半年間放置して、
- 断熱材の交換
- 石膏ボードの交換
- クロスの張り替え
- 木部の腐朽補修
- カビ除去
まで必要になれば、補修費用が100万円を超えることも考えられます。
これは一例ですが、住宅会社が倒産したからといって点検を止めると、最終的な負担が大きくなります。
無料点検を受けられなくなっても、維持管理は継続しなければなりません。
長期優良住宅は、会社が倒産しても維持管理が必要
長期優良住宅では、認定を受けた維持保全計画に基づき、建築後も点検・修繕を行い、その記録を保存する必要があります。
住宅会社が倒産しても、この維持保全が不要になるわけではありません。
国土交通省も、認定長期優良住宅では、認定計画実施者が建築・維持保全の状況に関する記録を作成・保存する必要があると案内しています。国土交通省「長期優良住宅」
別の建築士や住宅会社へ点検を依頼し、
- 点検日
- 点検者
- 点検箇所
- 不具合内容
- 修繕内容
- 使用した材料
- 写真
- 費用
を記録してください。
倒産前に受け取るべき書類
住宅会社が存続しているうちに、次の書類を受け取ってください。
- 竣工図
- 構造計算書
- 確認済証・検査済証
- 工事中の施工写真
- 工事監理報告書
- 瑕疵保険付保証明書
- 設備保証書
- 地盤保証書
- 防蟻保証書
- 防水保証書
- 長期優良住宅関係書類
- 維持保全計画書
- 点検記録
- 補修履歴
国土交通省も、新築時の図面、建築確認書類、点検結果、修繕記録などを住宅履歴情報として保存し、将来の維持管理や売買に活用することを推奨しています。国土交通省「住宅履歴情報とは」
会社だけがデータを保管する状態にせず、施主自身が紙とPDFで保管してください。
倒産後の相談先を家族で共有する
最低限、次の連絡先を一覧にします。
- 住宅瑕疵保険法人
- 設備メーカー
- 地盤保証会社
- 防蟻保証会社
- 太陽光・蓄電池メーカー
- 住宅ローンの金融機関
- 建築士
- 水道・電気・空調業者
- 破産管財人
- 住まいるダイヤル
保証書があっても、家族が保管場所を知らなければ使えません。
紙のファイルに加え、クラウドなどにも保存し、夫婦や家族で共有しておくと安心です。
デザインハウス甲府の考え方
住宅会社の本当の責任は、自社でしか直せない家をつくることではありません。
万一会社がなくなっても、
- 他の建築士が構造を確認できる
- 別の住宅会社が図面を読める
- 設備メーカーへ直接修理を頼める
- 保険法人へ直接連絡できる
- 点検・修繕履歴を引き継げる
状態にしておくことが重要です。
そのためには、性能、構造、設備、保証を契約前から書面化し、引き渡し時に図面や保証書を施主へ渡さなければなりません。
デザインハウス甲府では、許容応力度計算、断熱性能、気密測定、設備仕様、保証内容を記録として残すことを重視しています。
住宅会社がなくなったら維持できない家では、長期優良とは言えません。
建てた会社に囲い込まれる家ではなく、図面と記録があれば他社でも点検・修理できる家を選んでください。










