自宅を担保に生活費を確保しながら住み続ける「リースバック」と建替えの相性
こんなご相談をいただきました
70歳です。自宅を売却した後も家賃を払って住み続けられる「リースバック」を利用し、売却代金を生活費や建替え資金に使えないかと考えています。シニアの建て替えと相性はよいのでしょうか?
A. 同じ土地で建て替える予定なら、リースバックとは原則として相性がよくありません。リースバックを契約すると、自宅だけでなく土地の所有権も売却先へ移り、自分の判断では解体・建て替えができなくなるからです。
リースバックは「担保融資」ではない
リースバックは、自宅を担保にお金を借りる制度ではありません。
仕組みは次のとおりです。
- 自宅と土地を事業者へ売却する
- 売却代金を受け取る
- 事業者と賃貸借契約を結ぶ
- 毎月家賃を払いながら住み続ける
国土交通省も、リースバックを「住宅を売却して現金を得て、その後は毎月賃料を支払って同じ住宅に住み続けるサービス」と説明しています。国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」
自宅を担保に借入れを行うリバースモーゲージとは、まったく異なる契約です。
売却後は自分の家ではなくなる
リースバック契約後は、元の所有者であっても法律上は借主です。
そのため、次のことを自由には決められません。
- 建物の解体
- 増築や大規模リフォーム
- 平屋への建て替え
- 子どもへの相続
- 自宅の売却
- 太陽光発電などの設置
同じ土地で建て替えるには、所有者である事業者の承諾や新たな契約が必要です。建て替えた住宅も、通常は土地所有者との権利関係が複雑になります。
「リースバックで資金を作り、その土地に自分の家を建て替える」という計画は、一般的な建て替え方法ではありません。
売却代金は通常売却より低くなりやすい
リースバックでは、事業者が購入後すぐに自由利用できず、元所有者へ貸し続けます。そのため、一般的な仲介売却より売却価格が低くなる傾向があります。
例えば、通常売却なら土地・建物で1,500万円と査定されても、リースバックの買取額はそれより大幅に低くなる可能性があります。
山梨県では、地域によって住宅の再販性が低く、事業者から買取自体を断られたり、想定より低い価格を提示されたりするケースも考えられます。
1社の提示額だけで決めず、次の3つを比較してください。
- 一般の仲介売却価格
- 不動産会社による通常買取価格
- リースバックの買取価格
家賃を払い続けると売却代金が減っていく
売却後は、それまで必要なかった家賃が毎月発生します。
仮に家賃が月8万円なら、単純計算で次の負担です。
| 居住期間 | 家賃総額 |
|---|---|
| 5年間 | 480万円 |
| 10年間 | 960万円 |
| 15年間 | 1,440万円 |
更新料や保証料、火災保険、家賃改定などが加わる場合もあります。
売却代金として1,200万円を受け取っても、15年間で家賃が1,440万円になれば、家を売った資金以上を支払う計算になります。
長生きするほど家賃負担が増えるため、80歳、90歳まで住み続けた場合の収支を確認しなければなりません。
「一生住める」とは限らない
賃貸借契約には、主に普通借家契約と定期借家契約があります。
特に定期借家契約では、契約期間が終了すると、貸主が再契約に同意しない限り退去しなければなりません。
確認すべき項目は次のとおりです。
- 普通借家か定期借家か
- 契約期間は何年か
- 再契約を保証しているか
- 家賃を値上げできる条件
- 家賃滞納時の扱い
- 修繕費を誰が負担するか
- 買戻しできる条件と価格
- 契約者が死亡した後の配偶者の扱い
- 事業者が物件を第三者へ売却できるか
国民生活センターには、「ずっと住めると聞いていたのに再契約できない」「家賃が上がって支払えない」といった相談が寄せられています。国民生活センター「住宅のリースバック契約に注意」
買戻し価格は売却価格と同じとは限らない
将来お金ができたら買い戻せるという契約もありますが、売った金額と同じ価格で戻せるとは限りません。
売却価格が1,000万円でも、買戻し価格が1,300万円以上になる可能性があります。さらに、登記費用や不動産取得税なども発生します。
「いつでも買い戻せます」という説明だけで判断せず、買戻し価格の計算方法と期限を書面で確認してください。
契約後に簡単には取り消せない
個人が不動産会社へ自宅を売却する契約には、原則としてクーリング・オフが適用されません。
契約後にやめようとすると、手付金の倍返しや違約金が必要になる場合があります。国民生活センター「自宅のリースバックトラブルに注意」
その場で署名せず、必ず家族、司法書士、弁護士など第三者に契約書を確認してもらいましょう。
建て替えで使える可能性があるケース
リースバックが建て替えに利用できる可能性があるのは、現在の土地とは別の場所に新居を建てる場合です。
現在の家をリースバックで売却し、新居が完成するまで一時的に賃貸で住み続ければ、仮住まいへの引越しを1回減らせる可能性があります。
ただし、この場合も次の方法と比較が必要です。
- 通常売却で引渡し時期を調整する
- 短期賃貸へ仮住まいする
- 買取保証付き仲介を利用する
- 新居完成後に旧宅を売却する
- つなぎ融資を利用する
売却価格が低くなる差額まで考えると、仮住まいを利用した方が安い場合もあります。
デザインハウス甲府からのアドバイス
自宅へ長く住み続けたい人が、生活費を得るためだけに所有権を手放すのは慎重に判断すべきです。消費者庁も、住み替える意向がないなら安易に所有権を手放さないよう注意を呼びかけています。消費者庁「資産の運用・処分に関する注意」
デザインハウス甲府では、リースバックの買取額をそのまま建替え予算へ入れません。一般売却との差額、将来の家賃総額、契約期間、完成後の資産残高まで比較します。
同じ土地で建て替えたいなら、先に土地を売ってはいけません。目先の現金と引き換えに、自宅を建て替える権利まで失う可能性があります。










