シニアの建て替え資金は「固定金利」と「変動金利」のどちらがよい?
結論
年金生活中、または退職まで数年しかないシニア世代は、基本的には全期間固定金利を優先した方が安全です。
理由は、固定金利の方が得だからではありません。完済までの返済額を確定できるからです。
ただし、次の条件を満たす場合は、変動金利も選択肢になります。
- 借入額が少ない
- 返済期間が10年以内
- 建築後も十分な預貯金が残る
- 金利が2%程度上がっても返済できる
- 必要なら一括返済できる
シニアの住宅ローンで重要なのは、金利を当てることではありません。
金利が上がっても、医療・介護・生活費を削らず返済できるかで判断します。
固定金利と変動金利の違い
全期間固定金利
借入時に、完済までの金利と毎月返済額が決まります。
メリットは、
- 毎月返済額が変わらない
- 完済までの総返済額を把握できる
- 年金生活の予算を立てやすい
- 金利上昇を心配しなくてよい
ことです。
一方、借入時の金利は、一般的に変動金利より高くなります。その後に市場金利が下がっても、自動的には返済額が下がりません。
固定金利は、将来の金利上昇リスクを避けるための「保険料を含んだ金利」と考えると分かりやすくなります。
【フラット35】も、資金受取時に返済終了までの金利と返済額が確定する全期間固定金利です。住宅金融支援機構「フラット35」で最新条件を確認できます。
変動金利
変動金利は、借入当初の金利が固定金利より低い傾向があります。
メリットは、
- 当初の毎月返済額を抑えやすい
- 金利が上がらなければ利息を抑えられる
- 短期間で完済する場合は金利上昇の影響を受けにくい
ことです。
一方、返済期間中に金利が上がれば、毎月返済額や総返済額が増える可能性があります。
国土交通省も、政策金利の引上げを背景に住宅ローン金利が上昇傾向にあり、利用者が金利リスクを理解する重要性が高まっていると説明しています。国土交通省「住宅ローンの金利リスク」
シニアはなぜ固定金利が向いているのか
現役世代は、今後の昇給や共働きによる収入増加を期待できる場合があります。
しかし、シニア世代は退職後に年金収入が中心となり、収入が大きく増える可能性は高くありません。
その一方で、支出には次の不確定要素があります。
- 医療費
- 介護費
- 車の買い替え
- 家電・住宅設備の故障
- 配偶者が亡くなった後の年金減少
- 物価上昇
- 固定資産税・保険料
収入はほぼ固定なのに、住宅ローン返済額まで上がると、生活費を圧迫します。
固定金利であれば、少なくとも住宅ローン返済額だけは確定できます。
1,000万円を10年で借りた場合の比較
借入額1,000万円、元利均等返済、ボーナス返済なしとして、金利ごとの概算を比較します。
| 金利 | 毎月返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|
| 1.0% | 約8万7,600円 | 約1,051万円 |
| 2.0% | 約9万2,000円 | 約1,104万円 |
| 3.0% | 約9万6,600円 | 約1,159万円 |
金利が1%から3%になると、毎月返済額は約9,000円、総返済額は約108万円増えます。
現役世代には月9,000円の増額でも、年金生活では年間約10万8,000円の負担増です。10年間続けば、医療費や住宅設備交換へ使える資金が減ります。
返済期間15年では影響が大きくなる
同じ1,000万円でも、15年返済の場合は次のようになります。
| 金利 | 毎月返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|
| 1.0% | 約6万円 | 約1,077万円 |
| 2.0% | 約6万4,400円 | 約1,158万円 |
| 3.0% | 約6万9,100円 | 約1,243万円 |
毎月返済額を下げるために期間を延ばすと、完済年齢が上がり、利息を支払う期間も長くなります。
70歳で15年ローンを組めば、完済は85歳です。
現在は働いて返済できても、75歳、80歳になったときに、年金だけで同じ返済を続けられるかを確認する必要があります。
金利差より借入額を減らす方が効果は大きい
金利タイプを悩む前に、借入額を見直すことが重要です。
例えば、金利2%・10年返済の場合、
- 1,000万円借入れ:月約9万2,000円
- 700万円借入れ:月約6万4,400円
となり、毎月約2万7,600円の差です。
一方、1,000万円を10年で借りる場合、金利1%と2%の毎月返済額の差は約4,400円です。
つまり、金利を1%下げるより、借入額を300万円減らす方が、毎月返済額への効果は大きくなります。
削る順番は、
- 使わない部屋
- 過剰な収納
- 高額な造作
- 設備のグレード
- 必要以上の外構
です。
耐震、断熱、気密、換気など、将来の安全と光熱費に関わる性能は、金額調整のために安易に削るべきではありません。
変動金利が向いているシニア
次の条件をすべて満たす場合は、変動金利を検討できます。
借入額が小さい
例えば500万~700万円程度など、金利が上がっても返済額への影響が限定的な場合です。
返済期間が短い
5年から10年程度で完済する計画なら、20年、30年ローンより金利変動の影響を受ける期間が短くなります。
手元資金に余裕がある
建築後に老後資金を十分残し、必要になれば一部または全部を繰上返済できる場合です。
ただし、繰上返済によって医療・介護資金まで失わないようにします。
金利3%でも返済できる
契約時の金利だけではなく、
- 現在の適用金利
- 現在より1%上昇
- 現在より2%上昇
の3通りを試算します。
最も高いケースでも年金収入の範囲内で返済できるなら、変動金利を選ぶ余地があります。
変動金利を避けた方がよいシニア
次のような場合は、変動金利を慎重に判断してください。
- 毎月返済額を少しでも下げないと契約できない
- 建築後の預貯金が500万円以下になる
- 年金収入だけでは生活費が不足する
- 退職金で将来一括返済する予定
- 完済年齢が80歳を超える
- 金利や残高を定期的に確認するのが苦手
- 配偶者の収入がなくなると返済できない
「当初金利が低いから借りられる」という計画は危険です。
変動金利でなければ返せない借入額は、最初から借り過ぎです。
「5年ルール」「125%ルール」があれば安心とは限らない
一部の変動金利型住宅ローンでは、金利が上がっても毎月返済額を5年間変えない「5年ルール」や、返済額の上昇を前回の125%以内に抑えるルールがあります。
しかし、すべての金融機関や商品に適用されるわけではありません。
また、毎月返済額の上昇が抑えられても、金利そのものが上がらないわけではありません。元金の減りが遅くなり、利息負担が増える可能性があります。
確認するのは、
- 金利の見直し時期
- 返済額の見直し時期
- 5年ルールの有無
- 125%ルールの有無
- 未払利息の扱い
- 繰上返済手数料
です。
「変動金利には上限がある」と誤解しないようにしてください。
固定期間選択型にも注意
10年固定などの固定期間選択型は、一定期間の返済額を固定できます。
しかし、固定期間終了後は、その時点の金利で変動金利または新しい固定金利を選ぶことになります。
例えば65歳で10年固定を選ぶと、75歳で金利を選び直す可能性があります。
75歳時点で金利が上昇していた場合、年金生活中に返済額が増えることになります。
固定期間選択型を選ぶなら、
- 固定期間内に完済できるか
- 固定終了後の優遇金利はどうなるか
- 金利3%になった場合の返済額
- 固定終了時のローン残高
を確認します。
固定金利と変動金利の判断表
| 状況 | 向いている金利 |
|---|---|
| 年金収入だけで返済する | 全期間固定を優先 |
| 返済期間が10年を超える | 全期間固定を優先 |
| 毎月の家計に余裕が少ない | 固定。ただし借入額も見直す |
| 借入額が少なく5~10年で完済 | 変動も選択肢 |
| 十分な預貯金が残る | 変動も選択肢 |
| 金利上昇時に繰上返済できる | 変動も選択肢 |
| 金利を気にせず暮らしたい | 全期間固定 |
| 固定期間内に完済する | 固定期間選択型も検討 |
固定と変動のどちらが得になるかは、完済するまで分かりません。
分かるのは、固定なら返済額が確定し、変動なら将来の返済額が変わる可能性があるということです。
退職金での一括返済を前提にしない
「今は変動金利で借り、金利が上がったら退職金で完済する」という計画にも注意が必要です。
退職時には、
- 物価上昇
- 医療費
- 車の買い替え
- 親や配偶者の介護
- 住宅設備の交換
などで、予定どおり退職金を住宅ローンへ使えない可能性があります。
退職金は返済予約金ではなく、老後の生活資金です。
一括返済しなくても、年金から無理なく返済できる借入額に抑えます。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、シニア世代に「変動と固定のどちらが安いか」だけで住宅ローンをすすめません。
次の3通りを比較します。
- 全期間固定金利
- 変動金利が現在より1%上昇
- 変動金利が現在より2%上昇
さらに、
- 建て替え総額
- 毎月返済額
- 完済年齢
- 建築後に残る金融資産
- 90歳、95歳時点の資産残高
を確認します。
変動金利の低い返済額でなければ予算内にならない場合は、変動金利を選ぶのではなく、建築面積や設備を見直すべきです。
固定金利は「金利が高い商品」ではなく、返済額を確定する商品です。変動金利は「金利が安い商品」ではなく、金利上昇リスクを自分で引き受ける商品です。
シニアの建て替えでは、最も安くなる可能性より、最も悪い状況でも老後資金を守れる方を選ぶことが重要です。










