Q. 私なら住宅予算をどう決める?
A. 私なら「銀行が貸してくれる金額」では決めません。教育費、車、修繕費、老後資金を先に確保し、残った金額から住宅予算を逆算します。
住宅会社へ行く前に、土地・建物・付帯工事・諸費用を含めた「住宅取得総額の上限」を決めます。
最も危険なのは、建物を見て気持ちが高まった後に予算を考えることです。
先に欲しい家を決めると、予算を超えても「月々あと1万円なら」「返済期間を延ばせば」と、自分に都合のよい理由を探し始めます。
私なら、次の順番で決めます。
- 70歳前後の完済年齢を決める
- 住宅購入後に残す現金を決める
- 教育費・車・修繕費を先に確保する
- 毎月払える住居費を計算する
- 金利上昇後の返済額を確認する
- 借入可能額を算出する
- 自己資金を加えて住宅取得総額を決める
年収の何倍という決め方は使わない
「住宅予算は年収の5倍まで」という考え方は簡単ですが、私は住宅予算の最終判断には使いません。
同じ年収600万円でも、家計は全く違うからです。
| 家庭の条件 | 世帯A | 世帯B |
|---|---|---|
| 世帯年収 | 600万円 | 600万円 |
| 子ども | なし | 2人 |
| 車 | 1台・ローンなし | 2台・ローンあり |
| 現在の貯金 | 1,000万円 | 200万円 |
| 毎月の生活費 | 25万円 | 35万円 |
| 安全な住宅予算 | 高めに設定可能 | 抑える必要あり |
年収が同じだから、同じ金額を借りてよいとは限りません。
住宅金融支援機構の2025年度フラット35利用者調査では、平均総返済負担率は22.8%、土地付注文住宅では26.4%でした。しかし、これはあくまで利用者の平均であり、安全を保証する基準ではありません。2025年度フラット35利用者調査
しかも返済負担率は一般的に額面収入を基準にします。実際の生活で使えるのは、税金や社会保険料を引いた手取りです。
私なら住宅ローン返済を手取りの20%前後に抑える
私なら、住宅ローン返済だけで手取り月収の20%前後を目指します。
さらに、固定資産税、火災・地震保険、修繕積立まで含めた住居費総額を、手取り月収の25%程度に収めます。
| 手取り月収 | ローン返済の目安 | 住居費総額の目安 |
|---|---|---|
| 30万円 | 約6万円 | 約7万5,000円 |
| 35万円 | 約7万円 | 約8万7,500円 |
| 40万円 | 約8万円 | 約10万円 |
| 45万円 | 約9万円 | 約11万2,500円 |
| 50万円 | 約10万円 | 約12万5,000円 |
住居費総額には、次の費用を含めます。
- 住宅ローン返済
- 固定資産税
- 火災保険・地震保険
- 将来の修繕積立
- 太陽光・設備の交換積立
住宅ローンが月8万円でも、税金、保険、修繕積立が月3万円なら、実質的な住居費は月11万円です。
住宅会社が見せる「月々返済額」だけで判断してはいけません。
住宅予算を決める計算式
私なら次の計算で考えます。
安全な住宅取得総額=安全に返せる借入額+使用可能な自己資金
ただし、貯金全額を自己資金にはしません。
使用可能な自己資金=現在の預貯金-購入後に残す現金-近い将来に必要なお金
購入後に残す現金には、少なくとも次の費用を含めます。
- 生活維持費の6か月分
- 引越し費用
- 家具家電費
- 車の買い替え資金
- 1年以内に必要な教育費
- 予備費
自営業、歩合給、片働きの世帯なら、生活維持費の12か月分を残したいところです。
具体例で住宅予算を計算する
夫35歳、妻32歳、子ども2人の家庭で考えます。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 世帯手取り月収 | 40万円 |
| 現在の預貯金 | 700万円 |
| 生活維持費 | 月30万円 |
| 住宅ローン返済上限 | 月8万円 |
| 完済目標 | 70歳 |
| 返済期間 | 35年 |
| 想定金利 | 年1.5% |
| ボーナス返済 | なし |
月8万円を35年間、年1.5%で返済する場合、借入額は概算で約2,600万円です。
次に、自己資金を計算します。
| 購入後に確保するお金 | 金額 |
|---|---|
| 生活維持費6か月分 | 180万円 |
| 家具家電 | 150万円 |
| 引越し・予備費 | 50万円 |
| 車の買い替え準備 | 100万円 |
| 合計 | 480万円 |
預貯金700万円から480万円を差し引くと、住宅へ使用できる自己資金は220万円です。
したがって、この家庭の住宅取得総額は次のようになります。
借入額2,600万円+自己資金220万円=総額2,820万円
この2,820万円には、建物だけでなく、土地、付帯工事、外構、登記、融資費用、火災保険などを含めます。
建物価格2,820万円ではありません。
総額から各予算へ振り分ける
住宅取得総額が2,820万円なら、その中で土地と建物の配分を考えます。
| 項目 | 予算例 |
|---|---|
| 土地 | 500万円 |
| 建物・付帯工事 | 2,000万円 |
| 外構 | 100万円 |
| 登記・融資・保険など | 120万円 |
| 地盤・追加工事予備費 | 100万円 |
| 合計 | 2,820万円 |
土地に800万円使うなら、建物や他の費用を300万円下げなければなりません。
「気に入った土地だから」と土地だけを先に契約すると、残った予算で希望する家が建たない危険があります。
土地と建物は、必ず総額で同時に判断します。
金利3%でも確認する
年1.5%の返済額だけで予算を決めるのは危険です。
借入額2,600万円、35年返済の場合を比較します。
| 金利 | 毎月返済額の概算 |
|---|---|
| 年1.0% | 約7万3,000円 |
| 年1.5% | 約8万円 |
| 年2.0% | 約8万6,000円 |
| 年3.0% | 約10万円 |
金利が年1.5%から3.0%になると、毎月返済は約2万円増えます。
年間では約24万円、10年間なら約240万円です。
変動金利を選ぶなら、金利3%でも教育費や生活費を維持できるか確認します。住宅金融支援機構の住宅ローンシミュレーションでは、返済額や将来の家計収支を試算できます。
共働き収入を満額で計算しない
夫婦共働きでも、私なら2人分の収入をそのまま住宅予算に使いません。
出産、育児、病気、介護、転職、離婚などで、どちらかの収入が減る可能性があるからです。
たとえば夫の手取り30万円、妻の手取り15万円なら、合計45万円を前提に限界まで借りるのではなく、次の2段階で確認します。
- 通常時:手取り45万円で問題なく返せる
- 収入減少時:手取り30万円でも一定期間耐えられる
片方の収入だけで生活と返済をすべて維持できなくても、生活防衛資金を使いながら1年程度耐えられる設計を目指します。
教育費を住宅予算の後に考えない
子どもがいる家庭では、教育費を住宅予算から先に確保します。
大学進学資金として、最低でも子ども1人当たり500万円を目標に準備するなら、2人で1,000万円です。
住宅ローンを優先して教育資金が準備できず、大学進学時に奨学金へ頼るなら、住宅予算が高すぎた可能性があります。
家を大きくした代わりに、子どもが社会人初日から数百万円の借金を背負う。この資金計画を私は安全とは考えません。
車の費用を忘れない
山梨県では、車を2台所有する家庭も珍しくありません。
車は購入費だけでなく、保険、税金、車検、燃料、タイヤ、修理費も必要です。
300万円の車を10年ごとに2台買い替えるなら、購入資金だけでも平均して月5万円の積立が必要です。
住宅ローンの月額が払えても、車の買い替えをローンに頼り続ければ、家計全体の借金は減りません。
住宅購入後に貯金できるか確認する
安全な住宅予算は「返済できる金額」ではありません。
住宅購入後も、毎月貯金できる金額です。
私なら住宅購入後も、次の積立を継続できるか確認します。
| 積立項目 | 月額例 |
|---|---|
| 教育資金 | 4万円 |
| 車の買い替え | 3万円 |
| 住宅修繕 | 2万円 |
| 老後資金 | 3万円 |
| 緊急予備費 | 1万円 |
| 合計 | 13万円 |
この積立を止めなければ返済できない住宅ローンなら、予算を下げます。
返済が始まってから節約を考えるのではなく、必要な積立を差し引いた残額から住宅予算を決めるのです。
50年ローンで予算を増やさない
返済期間を35年から50年へ延ばせば、毎月返済額は下がります。
しかし、家の価格が安くなったわけではありません。
- 完済年齢が高くなる
- 総利息が増える
- 老後も返済が続く
- 修繕費とローン返済が重なる
- 売却時に残債が残りやすい
月々の返済額を安く見せるために返済期間を延ばし、住宅予算を引き上げる方法は使いません。
私なら70歳前後までの完済を基準にし、それを超える場合は建物、土地、借入額を見直します。
契約前に行う5つの耐久テスト
住宅予算を決めたら、次の条件で再計算します。
| 想定する変化 | 確認内容 |
|---|---|
| 金利が3%になる | 毎月返済を継続できるか |
| 世帯収入が30%減る | 1年間耐えられるか |
| 車2台を買い替える | 新たな借金が必要にならないか |
| 子どもが私立大学へ進学する | 教育費を確保できるか |
| 60歳以降に収入が下がる | 70歳前後で完済できるか |
1つでも家計が赤字になるなら、借入額を100万円単位で下げて再計算します。
予算を下げるのは夢を諦めることではありません。建てた後の生活を守るための判断です。
私なら削らないもの
予算を下げる場合でも、次の部分は安易に削りません。
- 耐震性能
- 断熱性能
- 気密性能
- 換気性能
- 雨漏りや結露を防ぐ基本施工
- 完成保証
- 必要なメンテナンス性能
削るなら、家の大きさ、複雑な形状、過剰な設備、高額な内装、必要性の低いオプションです。
初期費用を安くするために断熱・気密性能を下げれば、光熱費や快適性に影響します。耐震性能を削れば、後から簡単には取り戻せません。
「見た目は残して、見えない性能を削る」のではなく、「家を少しコンパクトにして、基本性能を守る」。私ならこの順番です。
俺流結論
私なら、住宅予算を銀行にも住宅営業にも決めさせません。
最初に教育費、車、修繕費、老後資金、生活防衛資金を守ります。そのうえで、住宅ローン返済を手取りの20%前後、住居費総額を25%程度に抑え、70歳前後までの完済を目指します。
家を建てる目的は、住宅ローンを返すことではありません。
家族が旅行へ行き、子どもの進学を応援し、車を買い替え、老後も安心して暮らすことです。
「借りられる上限」から考えると、住宅会社に都合のよい予算になります。
「建てた後も残したい生活」から逆算する。それが、私なら選ぶ住宅予算の決め方です。










