Q. 生活防衛資金はいくら必要?
A. 住宅ローンを含む最低生活費の6か月分が基本です。自営業者や収入変動の大きい家庭は12か月分を確保します。
毎月の最低生活費が30万円なら、会社員で180万円、自営業者なら360万円が一つの目安です。
ただし、教育費、車の買い替え、固定資産税など、使うことが決まっているお金は生活防衛資金に含めません。
住宅購入後には、生活防衛資金とは別に予定支出を確保する必要があります。
生活防衛資金とは?
生活防衛資金は、予期しない収入減少が起きたときに、生活を維持するための現金です。
主に次のような事態へ備えます。
- 失業
- 休職
- 病気・けが
- 会社の業績悪化
- ボーナス減少
- 自営業の売上減少
- 育児・介護による勤務時間短縮
- 災害
- 夫婦どちらかの収入減少
目的は、収入が減っても住宅ローンを延滞せず、家族の生活を維持することです。
必要額の計算式
生活防衛資金は、次の式で計算します。
毎月の最低生活費×必要月数
最低生活費には次の支出を含めます。
- 住宅ローン
- 食費
- 光熱費
- 通信費
- 保険料
- 車の維持費
- 教育の最低支出
- 奨学金・カーローン
- 税金の月割額
- 医療費
- その他の固定費
旅行、外食、娯楽、積立投資など、一時的に停止できる支出は除いて計算します。
毎月の生活費別の必要額
| 毎月の最低生活費 | 6か月分 | 12か月分 |
|---|---|---|
| 20万円 | 120万円 | 240万円 |
| 25万円 | 150万円 | 300万円 |
| 30万円 | 180万円 | 360万円 |
| 35万円 | 210万円 | 420万円 |
| 40万円 | 240万円 | 480万円 |
| 45万円 | 270万円 | 540万円 |
| 50万円 | 300万円 | 600万円 |
住宅ローン返済が始まると、最低生活費は賃貸時代と変わる可能性があります。
固定資産税、火災・地震保険、住宅修繕費なども含め、住宅購入後の生活費から計算してください。
働き方別の目安
| 家庭の状況 | 生活防衛資金の目安 |
|---|---|
| 収入が安定した会社員・公務員 | 6か月分 |
| 夫婦とも安定した会社員 | 6か月分 |
| 歩合給・ボーナス割合が高い | 6〜12か月分 |
| 転職予定がある | 12か月分を検討 |
| 自営業・フリーランス | 12か月分以上 |
| 会社経営者 | 12か月分以上 |
| 夫婦が同じ勤務先・業界 | 12か月分を検討 |
| 一馬力の子育て世帯 | 9〜12か月分を検討 |
「共働きだから6か月分で十分」とは限りません。
夫婦が同じ会社や同じ業界で働いている場合、同時に収入が減る可能性があります。
会社員は6か月分が基本
会社員には、雇用保険、健康保険の傷病手当金、会社の休職制度などを利用できる可能性があります。
そのため、自営業者より必要な生活防衛資金を抑えられる場合があります。
ただし、制度を利用しても、現在と同じ手取り収入が保証されるとは限りません。
- 給付開始までの期間
- 支給条件
- 支給される金額
- 支給期間
- 会社独自の制度
- ボーナスの有無
これらを確認し、不足分を現金で補えるようにします。
自営業者・経営者は12か月分以上
自営業者や経営者は、売上減少が家庭収入へ直接影響します。
また、自身が働けなくなると、売上そのものが止まる可能性があります。
毎月の最低生活費が35万円なら、12か月分で420万円です。
家庭の生活防衛資金とは別に、事業継続に必要な資金も確保します。
- 事業所家賃
- 人件費
- 借入返済
- 仕入れ
- 税金・社会保険料
- その他の固定経費
会社の運転資金を家庭の頭金へ使うことは避けるべきです。
子育て世帯は多めに残す
子育て世帯では、収入が減っても簡単に止められない支出があります。
- 学費
- 保育料
- 給食費
- 通学費
- 塾・習い事
- 子どもの医療・生活費
- スマートフォン
- 受験費用
特に、高校・大学進学が近い家庭は、生活防衛資金と教育資金を分けます。
例えば、次の資金が必要です。
| 資金の目的 | 金額例 |
|---|---|
| 生活防衛資金 | 240万円 |
| 3年以内の大学資金 | 300万円 |
| 車検・税金 | 30万円 |
| 合計必要現金 | 570万円 |
預金が570万円あっても、自由に住宅の頭金へ使えるお金ではありません。
生活防衛資金に含めてはいけないお金
次のお金は、生活防衛資金と別に管理します。
- 子どもの教育資金
- 車の買い替え資金
- 固定資産税
- 火災・地震保険
- 車検
- 住宅修繕費
- 家具・家電購入費
- 引っ越し費用
- 近い将来の医療・介護費
- 住宅の追加工事費
使うことが分かっているお金を生活防衛資金として数えると、緊急時に現金が不足します。
住宅購入時に使い切らない
預金700万円ある家庭を考えます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 預金 | 700万円 |
| 頭金 | 350万円 |
| 諸費用 | 150万円 |
| 引っ越し・家具家電 | 100万円 |
| 入居後の現金 | 100万円 |
最低生活費が月35万円なら、100万円では約3か月しか暮らせません。
頭金を200万円減らして現金300万円を残せば、約8.5か月分になります。
住宅ローン残高が少ないことより、収入が止まったときに何か月生活できるかを確認してください。
頭金と生活防衛資金の優先順位
基本的な優先順位は次のとおりです。
- 入居までに必要な諸費用
- 生活防衛資金
- 近い将来の教育費
- 車・税金・修繕などの予定支出
- 余った現金から頭金を決める
住宅ローンを減らすために生活防衛資金まで頭金へ入れるのは危険です。
低金利の住宅ローンを減らした後、収入減少によってカードローンや教育ローンを借りれば、家計全体では不利になる可能性があります。
団信があっても必要
住宅ローンの団体信用生命保険は、契約者の死亡や所定の高度障害などに備える保障です。
一般的な団信では、次のような収入減少まで必ず保障されるとは限りません。
- 失業
- 転職による減収
- ボーナス減少
- 短時間勤務
- 自営業の売上減少
- 団信の支払条件に該当しない病気
団信へ加入していても、生活防衛資金は必要です。
就業不能保険があれば現金を減らせる?
就業不能保険や所得補償保険に加入していれば、必要な生活防衛資金を調整できる場合があります。
ただし、次の条件を確認してください。
- 支払対象となる状態
- 免責期間
- 毎月の給付額
- 給付期間
- 精神疾患の扱い
- 自宅療養の扱い
- 会社の傷病手当金との関係
保険は支払条件を満たさなければ受け取れません。
保険へ加入しているから現金ゼロでもよい、とは考えないでください。
生活防衛資金はどこに置く?
生活防衛資金は、すぐに使え、元本割れしにくい場所へ置きます。
- 普通預金
- 必要時に引き出しやすい預金
- 複数銀行への分散
NISAなどの投資資産だけで準備するのは避けます。
収入が減った時期と株式市場の下落が重なれば、損失を抱えた状態で売却する可能性があります。
生活防衛資金は増やすためのお金ではなく、家族を守るためのお金です。
住宅ローンの繰上返済より先に確保する
次の状態では、繰上返済を急ぐべきではありません。
- 生活防衛資金が6か月分未満
- 教育費が不足している
- 車の買い替えが近い
- 収入変動が大きい
- 住宅修繕資金がない
- 金利上昇に対応できない
繰上返済したお金は、原則として簡単には戻せません。
住宅ローン残高を100万円減らしても、現金がなくなり、その後100万円のカーローンを借りるなら、家計の安全性が上がったとは限りません。
現金を残しすぎる必要はある?
生活防衛資金を必要以上に普通預金へ置くと、長期的には物価上昇によって実質価値が下がる可能性があります。
そのため、目的と使用時期で分けます。
| 資金 | 主な置き場所 |
|---|---|
| 生活防衛資金 | 普通預金 |
| 1〜3年以内の予定支出 | 預貯金 |
| 10年以上使わない余裕資金 | NISAなどを検討 |
| 老後まで使わない資金 | NISA・iDeCoなどを検討 |
まず必要な生活防衛資金を現金で確保し、それを超える余裕資金について運用や繰上返済を考えます。
生活防衛資金の計算例
夫35歳、妻32歳、子ども8歳と6歳の家庭を想定します。
| 最低支出 | 月額 |
|---|---|
| 住宅ローン | 8万円 |
| 食費・日用品 | 9万円 |
| 光熱・通信 | 4万円 |
| 保険・医療 | 2万円 |
| 車の維持費 | 3万円 |
| 教育の最低費用 | 3万円 |
| 税金・住宅維持費積立 | 2万円 |
| その他 | 2万円 |
| 合計 | 33万円 |
6か月分なら198万円、12か月分なら396万円です。
夫婦とも会社員で収入が安定しているなら、200万〜250万円程度が生活防衛資金の一つの目安です。
自営業者や一馬力家庭なら、400万円前後を検討します。
教育資金、車の買い替え、家具・家電などは別に準備します。
使った後は補充する
生活防衛資金は、一度確保したら終わりではありません。
収入減少や緊急支出で使った場合は、家計が安定した後に補充します。
優先順位は次のとおりです。
- 住宅ローンなどの通常返済
- 毎月の生活費
- 生活防衛資金の補充
- 教育費
- 予定支出の積立
- 投資・繰上返済
生活防衛資金が不足した状態で、積立投資や繰上返済を続けるべきか見直します。
年に一度は必要額を更新する
生活防衛資金の必要額は変化します。
- 住宅ローン返済開始
- 子どもの進学
- 車の購入
- 転職
- 独立・起業
- 配偶者の退職
- 親の介護
- 子どもの独立
- 住宅ローン完済
年に一度、現在の最低生活費と働き方から必要額を再計算してください。
子どもが独立し、住宅ローンを完済すれば、必要額を減らせる場合があります。
住宅購入前のチェックリスト
- 住宅購入後の最低生活費はいくらか
- 住宅ローンを含めているか
- 6か月分の現金が残るか
- 自営業なら12か月分あるか
- 教育資金を別に確保したか
- 車・税金・修繕費を分けたか
- 家具・家電を支払った後の残高か
- 投資資産だけで計算していないか
- 収入が半分になった場合を試算したか
- 生活防衛資金用の口座を分けたか
すべての支払いを終えた後の現金残高で判断します。
俺流結論
生活防衛資金は、住宅ローンを含む最低生活費の6か月分が基本です。
自営業者、経営者、一馬力家庭、収入変動の大きい家庭は、12か月分を検討します。
毎月の最低生活費が30万円なら、会社員で180万円、自営業者なら360万円です。
ただし、教育費、車、税金、家具・家電、住宅修繕などの予定支出は別に必要です。
最も危険なのは、住宅ローンを減らすために、生活防衛資金まで頭金へ入れることです。
住宅ローン残高が少なくても、収入が止まったときに3か月しか暮らせなければ、安全な資金計画とはいえません。
「預金がいくら残るか」ではなく、
「収入が止まっても何か月、住宅ローンと生活を守れるか」
これが生活防衛資金の本当の基準です。










