玄関のベンチ(腰掛けスペース)と土間収納の最適なサイズ感
A. シニア夫婦の玄関ベンチは、幅90~120cm、高さ40~45cm、奥行35~45cmが使いやすい目安です。土間収納は1~1.5畳で足りる家庭も多く、収納量が多い場合でも1.5~2畳程度を基準にします。
「玄関収納は広いほど便利」という考え方には注意が必要です。大きな土間収納をつくった結果、玄関の通路が狭くなり、車椅子や介助者が通れなくなっては本末転倒です。
玄関ベンチの使いやすい寸法
| 部位 | 目安寸法 |
|---|---|
| 幅 | 90~120cm |
| 高さ | 40~45cm |
| 奥行 | 35~45cm |
| ベンチ前の空間 | 80cm以上 |
| 玄関全体の有効幅 | 120cm以上、できれば150cm程度 |
高さが低すぎると立ち上がる際に膝へ負担がかかり、高すぎると足が床へ届かず不安定になります。ダイニングチェアと同程度の40~45cmを基準に、本人の身長に合わせます。
幅60cm程度でも座れますが、荷物を置いたり介助者が横に立ったりする余裕がありません。シニア夫婦の建て替えなら、90cm以上を確保した方が使いやすくなります。
ベンチだけでなく縦手すりを設置する
靴を履くときは座れますが、問題は座る瞬間と立ち上がる瞬間です。ベンチの横に握りやすい縦手すりを設けます。
- ベンチへ腰を下ろす
- 靴を脱ぎ履きする
- 立ち上がる
- 上がりかまちを昇降する
この一連の動作で握れる位置を確認します。壁の一部だけでなく、将来位置を変更できるよう、広い範囲へ手すり下地を入れておくと安心です。
国土交通省の高齢者住宅に関する指針も、加齢による身体機能の低下を想定し、移動や姿勢保持、転倒防止へ配慮した設計を求めています。国土交通省「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」
固定式と折り畳み式の違い
固定ベンチは安定していますが、使わないときも通路を占有します。玄関がコンパクトな場合は、壁付けの折り畳み式も選択肢です。
ただし、折り畳み式は耐荷重、ロック機能、壁下地を確認します。置き型の椅子は簡単に移動できますが、立ち座りの際に動いて転倒する可能性があります。
シニア住宅では、デザインより「体重をかけても動かないこと」を優先します。
土間収納の広さは収納物から逆算する
土間収納の目安は、何を入れるかで変わります。
| 収納する物 | 広さの目安 |
|---|---|
| 靴・傘・掃除用品 | 1畳前後 |
| 靴・防災用品・園芸用品 | 1~1.5畳 |
| 車椅子・シルバーカー・アウトドア用品 | 1.5~2畳 |
| 自転車・タイヤまで収納 | 2畳以上を個別検討 |
シニア夫婦だけなら、子育て世帯と同じ大容量のシューズクロークが必要とは限りません。先に不要な靴や道具を整理すれば、1畳程度でも十分な場合があります。
広さを決める前に、収納する物を「現在使う物」「将来必要になる物」「処分する物」に分けて一覧にしてください。
棚の奥行にも注意
棚を深くしすぎると、奥の物が見えず、使わない物がたまります。
- 靴棚:奥行30~35cm程度
- 防災用品・箱類:40~45cm程度
- タイヤや大型用品:45~60cm程度
- 杖・傘:縦長の専用スペース
- 車椅子:折り畳み時の寸法と充電場所を確認
可動棚にしておけば、将来、靴の収納を減らして介護用品や宅配品の一時置き場へ変更できます。
電動車椅子やシニアカーを想定する場合は、収納寸法だけでなく、コンセント、換気、玄関までの段差も確認します。
土間収納でよくある失敗
- 入口が狭く、大型用品を入れられない
- 棚を付けたら通路が狭くなった
- 窓がなく、湿気や臭いがこもる
- 玄関から遠く、結局使わない
- 家族用動線をつくり、面積だけ増えた
- 収納を通り抜ける設計で毎日の移動距離が長い
- ベンチを置いたら車椅子が通れなくなった
人気の「来客用玄関と家族用玄関を分ける2WAY動線」も、シニア夫婦のコンパクト住宅では必ずしも必要ありません。通路を二つつくるより、玄関を一つにして短い動線と十分な幅を確保した方が使いやすい場合があります。
玄関全体で確認すること
- 玄関ドアの有効開口幅
- ベンチ使用中に人が通れるか
- 上がりかまちの高さ
- 手すりの位置
- 車椅子が方向転換できるか
- 駐車場から雨に濡れず移動できるか
- 土間収納へ段差なく入れるか
- 夜間の照明が十分か
デザインハウス甲府では、流行の大型シューズクロークをそのまま採用せず、収納物を確認したうえで、ベンチと移動スペースを優先して玄関を設計します。
老後の玄関で価値があるのは、物を大量に隠せる収納ではありません。座って靴を履き、手すりにつかまって立ち、自分の力で安全に外出できる空間です。










