浴室のまたぎが低い浴槽(ローイン浴槽)の基準と安全な入浴動線
A. 浴槽のまたぎ高さは、洗い場の床から30~50cmが公的な目安です。シニア住宅では35~45cm前後を基準に、本人の身長・脚力・入浴動作に合わせて選びます。
「低ければ低いほど安全」とは限りません。浴槽の縁だけを低くすると、浴槽内外の高低差が大きくなり、出るときに足が上がらない、立ち上がれないという問題が起こります。
国土交通省の長寿社会対応住宅設計指針では、浴槽の縁を30~50cmとし、腰掛けて出入りできる形状を推奨しています。国土交通省「長寿社会対応住宅設計指針の補足基準」
またぎ高さだけでは判断できない
浴槽を選ぶときは、次の寸法をセットで確認します。
- 洗い場側から見た浴槽縁の高さ
- 浴槽内の底から縁までの高さ
- 浴槽の深さと長さ
- 浴槽底の滑りにくさ
- 浴槽縁へ腰掛けられる幅
- 手すりを握った状態での足の動き
またぎが低くても、浴槽が深すぎると立ち上がりが難しくなります。反対に、浴槽が長すぎると体が沈み込み、足を突っ張って姿勢を保てない場合があります。
シニア夫婦だけで使うなら、大きく深い浴槽より、体が安定しやすいコンパクトな浴槽の方が安全なこともあります。
安全性は「手すりの位置」で大きく変わる
浴室には、単に手すりを付ければよいわけではありません。動作ごとに握る位置が異なります。
| 場所 | 主な役割 |
|---|---|
| 浴槽横の縦手すり | またぐときの姿勢保持 |
| 浴槽側面のL型手すり | 浴槽内での立ち座り |
| 洗い場の縦手すり | シャワーチェアからの立ち上がり |
| 出入口付近 | 浴室への出入りと姿勢保持 |
住宅金融支援機構も、浴槽の出入り、浴槽内での立ち座り、洗い場での動作に応じた手すり位置を示しています。住宅金融支援機構「部分的バリアフリー工事 技術基準」
将来の身体状況は予測できないため、手すりを付ける場所以外にも広めに下地を入れておくと、後から位置を変更できます。
入浴動線全体で確認する
安全な浴室には、浴槽以外にも次の配慮が必要です。
- 脱衣室と浴室の段差をなくす
- 滑りにくく、冷たさを感じにくい床にする
- 出入口を引き戸にする
- 浴室内で人が倒れても救助しやすい扉にする
- シャワーチェアを置ける洗い場を確保する
- 脱衣室に腰掛けを置く
- 浴室と脱衣室を暖房できるようにする
- 寝室からトイレ・洗面・浴室までの動線を短くする
浴室だけを暖めても、寒い廊下や脱衣室を通れば温度差は残ります。ヒートショック対策では、浴室暖房の有無より、住宅全体の断熱・気密性能と脱衣室を含めた温度計画が重要です。
ショールームでは実際に動作する
カタログの寸法だけで決めず、ショールームで次の動作を試してください。
- 浴槽縁に片足を上げる
- 手すりを持ってまたぐ
- 浴槽内に腰を下ろす
- 浴槽底から立ち上がる
- 縁へ腰掛けて向きを変える
厚い靴を履いたままではなく、浴室での裸足に近い条件で確認します。現在は問題なくても、5年後、10年後に脚力が落ちた状態を想定することが大切です。
デザインハウス甲府では、ローイン浴槽だけを「シニア仕様」として勧めるのではなく、手すり下地、滑りにくい床、出入口、暖房、寝室からの動線まで一体で計画します。
安全な浴室は、またぎ高さ一つで決まりません。「またぐ・座る・立つ・出る」の4動作を無理なく行えることが、本当のバリアフリーです。










