Q. 手数料を取らない住宅相談サービスは、なぜ運営できる?
A. 住宅会社から成約手数料を取らなくても、建材販売、会員費、広告、関連サービス、公的支援、グループ事業など、別の収益源や事業目的があれば運営できます。重要なのは「手数料ゼロ」という言葉だけでなく、誰から、何によって収益や利益を得ているのかを確認することです。
無料住宅相談サービスには、大きく分けて二つの意味があります。
一つは、相談者が相談料を支払わないサービスです。
もう一つは、紹介された住宅会社も成約手数料を支払わないサービスです。
この二つは同じではありません。
相談者が無料でも、住宅会社から紹介料や広告費を受け取っている場合があります。
一方、相談者も住宅会社も成約手数料を支払わずに運営されるサービスも考えられます。
では、どこから運営費が出ているのでしょうか。
住宅相談には必ず運営費がかかる
住宅相談窓口を運営するには、少なくとも次の費用がかかります。
- 店舗や事務所の家賃
- アドバイザーの人件費
- ホームページ制作・管理費
- インターネット広告費
- チラシ・印刷費
- 電話・通信費
- 予約・顧客管理システム
- セミナー・イベント費
- 専門家への報酬
- 個人情報管理
- 保険・税金
- 苦情・トラブル対応
相談者も住宅会社も費用を支払わないなら、別の事業や資金から運営費を出す必要があります。
「手数料を取らない」という説明と、「誰からも収益を得ていない」は別です。
建材販売の利益で運営する仕組み
建材会社や住宅設備会社が、取引先工務店の支援として住宅相談窓口を運営する場合があります。
相談窓口から工務店へ顧客がつながり、住宅が建てば、工務店は建材や住宅設備を購入します。
運営会社が住宅会社から成約手数料を取らなくても、
- 木材
- 断熱材
- 窓
- 外壁材
- キッチン
- ユニットバス
- トイレ
- 給湯器
- 太陽光発電
- その他の建築資材
の取引が増えれば、グループ全体として利益が生まれる可能性があります。
これは、住宅会社へ高額な紹介料を請求する方法とは異なります。
取引先の住宅会社が受注を増やし、建材購入が増えることで、長期的に運営会社も発展する仕組みです。
ただし、特定の建材を多く使う住宅会社が優先されないかなど、別の利害関係が生まれる可能性はあります。
その関係も相談者へ説明する必要があります。
住宅会社の会員費で運営する
成約ごとに費用を取らず、提携住宅会社から毎月または毎年の会員費を受け取る方法もあります。
例えば、
- 月額3万円
- 年額30万円
- システム利用料
- 研修参加費
- 会員登録料
などです。
この方式なら、建築金額が高くなっても紹介会社の収益が直接増えない可能性があります。
しかし、住宅会社から固定費を受け取っている以上、完全に金銭関係がないわけではありません。
確認すべきなのは、
- 会員費の有無
- 金額は各社同じか
- 高額な会員区分があるか
- 会員区分で掲載順位が変わるか
- 非会員の住宅会社も案内するか
です。
成約手数料ゼロでも、掲載料や会員費があれば、その仕組みを明らかにする必要があります。
広告掲載料で運営する
住宅会社の広告を掲載し、その広告費で相談サービスを運営する方法もあります。
- ホームページへの掲載
- 雑誌や冊子への掲載
- バナー広告
- 特集記事
- イベント出展
- セミナー協賛
- メール配信
- SNS広告
などです。
この場合も、成約一件ごとの手数料は発生しないかもしれません。
しかし、広告費を多く支払う会社が目立つ位置に掲載される可能性があります。
広告枠と第三者評価を明確に分ける必要があります。
「おすすめ住宅会社」と表示されていても、実際には広告商品として上位表示されている可能性がないか確認してください。
関連サービスの収益で運営する
住宅相談そのものを無料にし、別のサービスで収益を得る方法もあります。
- 土地仲介
- 住宅ローン取次ぎ
- 保険
- 引越し
- 家具・家電
- 太陽光発電
- 通信回線
- リフォーム
- 不動産売却
- 相続・税務相談の紹介
- 家計相談
- 建築検査
住宅会社の紹介では手数料を取らなくても、相談後に別のサービスを契約すれば収益が生まれます。
この仕組み自体が悪いわけではありません。
相談者にとって便利な場合もあります。
ただし、
- どのサービスから収益を得るのか
- 特定の商品を勧める理由
- 紹介先との金銭関係
- 利用しなくても住宅相談を受けられるか
を確認する必要があります。
本業への集客として運営する
住宅相談を、別事業への入口として運営する場合もあります。
例えば、
- 不動産会社が土地仲介へつなげる
- 建材会社が取引量を増やす
- 金融機関が住宅ローンへつなげる
- 保険代理店が保険見直しへつなげる
- 住宅会社自身が自社受注へつなげる
- メディア会社が広告読者を増やす
という仕組みです。
住宅相談だけを見れば赤字でも、本業へ顧客が流れることで全体として成立します。
相談者は、
「この相談サービスの本業は何か」
を確認してください。
本業が分かれば、どの方向へ提案されやすいかも見えてきます。
公的・非営利的な目的で運営する
自治体、業界団体、非営利団体などが、住宅取得者の支援や地域活性化を目的として相談窓口を運営する場合もあります。
運営費には、
- 公費
- 会費
- 補助金
- 寄付
- 他事業の収益
- 業界団体の予算
などが使われる可能性があります。
このような窓口でも、対応範囲や紹介基準を確認する必要があります。
特定の住宅会社を個別に推薦するのではなく、一般的な情報提供や相談先案内に限定される場合もあります。
無料である代わりに、設計や住宅会社選びを最後まで代行するサービスではないかもしれません。
住宅会社側の共同運営
複数の住宅会社が共同で費用を負担し、地域の住宅相談窓口やイベントを運営する方法もあります。
例えば、10社が年間30万円ずつ負担すれば、
10社×30万円=年間300万円
になります。
20社なら年間600万円です。
成約ごとに4~5%の費用を支払う仕組みと比べれば、一社当たりの負担を予測しやすくなります。
ただし、共同運営する住宅会社だけが紹介候補になるなら、地域全体から中立に選んでいるとは限りません。
費用方式が定額でも、候補範囲の偏りは残る可能性があります。
成約手数料ゼロでも間接的な利益はある
例えば、建材会社が運営する相談サービスから工務店へ年間10棟の成約が生まれ、その10棟で建材取引が増えたとします。
一棟当たりの建材取引額が500万円なら、
500万円×10棟=5,000万円
の取引が生まれます。
これは売上であり、すべてが利益ではありません。
それでも、紹介手数料を別に取らなくても、建材取引の拡大によって運営を続けられる可能性があります。
この仕組みは、住宅会社から成約額の4~5%を受け取る方式とは異なります。
住宅会社側の直接的な成約費用が抑えられ、その分を建物や顧客対応へ使える可能性があります。
手数料ゼロでも中立とは限らない
成約手数料を取らないことは、住宅会社の費用負担を抑える点でメリットがあります。
しかし、手数料ゼロだけで完全中立とは判断できません。
例えば、
- 自社建材を多く使う会社を優先する
- 会費を払う住宅会社だけを紹介する
- 広告出稿の多い会社を目立たせる
- グループ企業を優先する
- 関連する保険やローンを勧める
- 自社の不動産仲介へ誘導する
可能性も考えられます。
重要なのは、成約手数料があるかどうかだけではありません。
どの会社を紹介すると、運営会社にどのような利益が生まれるのかを確認することです。
4~5%方式との違い
仮に建築金額3,000万円に対して5%の成約費用が発生するなら、住宅会社の負担は150万円です。
| 運営方式 | 住宅会社の費用例 |
|---|---|
| 建築金額3,000万円の5% | 150万円 |
| 年間固定会費30万円 | 30万円 |
| 月額3万円 | 年間36万円 |
| 成約手数料なし | 0円 |
| 建材取引による間接収益 | 契約内容による |
固定会費や建材取引方式なら、一件の顧客へ百万円単位の紹介費用が発生しない可能性があります。
ただし、住宅会社の費用がゼロでも、運営会社の利益が別の取引へ含まれている場合があります。
比較すべきなのは、表面上の手数料だけではなく、仕組み全体です。
手数料を取らないことを証明できるか
相談会社が、
「住宅会社から紹介手数料はいただきません」
と説明するなら、次の点を確認してください。
- 成約時の費用は本当にないか
- 建築金額に連動する費用はないか
- 月額会費や掲載料はあるか
- 面談や来場ごとの費用はあるか
- 広告出稿による優先表示はあるか
- 建材・設備の購入条件はあるか
- 関連サービスから収益を得るか
- 住宅会社ごとに条件が違うか
「紹介手数料」という名称がなくても、「広告費」「販売促進費」「システム料」など別の名目で成約連動費が発生する可能性があります。
名称ではなく、いつ、何を条件に費用が発生するのかを確認してください。
利用者にとってのメリット
成約手数料を取らない相談サービスには、次のメリットが考えられます。
- 住宅会社の顧客獲得費を抑えられる
- 建築金額が高い会社を優先する動機が小さくなる
- 紹介料を払えない小規模工務店も参加しやすい
- 住宅会社が建物や検査へ予算を使いやすい
- 相談者の予算を上げる必要性が小さくなる
- 地域の取引先を長期的に支援できる
ただし、これらは運営方式が透明であり、紹介基準が公平である場合のメリットです。
「手数料ゼロ」だけで判断せず、選定基準も確認してください。
相談会社へ確認すべき12の質問
- 相談者から料金を受け取りますか
- 住宅会社から成約手数料を受け取りますか
- 建築金額に連動する費用はありますか
- 月額・年額の会費や掲載料はありますか
- 面談や来場時に費用が発生しますか
- 主な運営費は何から出ていますか
- 本業は何ですか
- 建材や設備の取引によって利益を得ますか
- 関連サービスから収益を得ますか
- 住宅会社によって条件は違いますか
- 収益関係が紹介順位へ影響しない仕組みはありますか
- 提携していない住宅会社も案内できますか
「手数料はありません」という一言だけでなく、運営全体を説明してもらってください。
結論
手数料を取らない住宅相談サービスでも、運営することは可能です。
例えば、
- 建材販売の利益
- 住宅会社の固定会費
- 広告掲載料
- 関連サービス
- 本業への集客
- グループ事業
- 公的支援
- 地域や取引先を支援する事業目的
によって運営できます。
手数料を取らないことは、収益も利益もないという意味ではありません。
しかし、住宅会社から建築金額の4~5%に相当する成約連動費を受け取る仕組みと、建材取引や固定会費で運営する仕組みでは、紹介会社に生まれる動機が違います。
大切なのは「無料か、有料か」ではありません。誰が費用を負担し、どの会社を紹介すると運営者が利益を得るのかです。
成約手数料ゼロなら安心と決めつけず、
- 収益源
- 本業
- 提携条件
- 紹介基準
- 利益相反
を確認してください。
収益構造を隠さず説明できる相談サービスこそ、相談者と住宅会社の双方から信頼される仕組みです。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁










