Q. 住宅ローンが通るか確認せず、住宅会社を紹介してもよい?
A. 情報収集の段階なら、住宅ローンを確認せず住宅会社を紹介しても問題とは限りません。しかし、具体的な土地探し、設計、見積り、契約へ進めるなら、融資の見通しを確認せずに紹介するのは無責任になり得ます。紹介件数を増やすことより、相談者が本当に家を取得できる状態かを確認することが先です。
無料住宅相談サービスへ行けば、希望地域、家族構成、好きなデザインなどを聞かれ、住宅会社を数社紹介されます。
相談者は、
「専門の相談窓口が紹介してくれたのだから、自分たちは家を建てられる」
と期待するでしょう。
しかし、年収や希望予算を簡単に聞いただけで、既存借入れ、過去の支払い、勤続年数などを確認していなければ、住宅ローンの見通しは分かりません。
住宅会社を紹介することは簡単です。
難しいのは、その相談者が無理なく住宅を取得できる条件を整理することです。
情報提供だけなら事前審査は必須ではない
すべての相談者へ、最初から住宅ローンの事前審査を求める必要はありません。
例えば、次のような段階です。
- 家づくりを始めたばかり
- 建築時期が数年先
- 新築か中古住宅か決まっていない
- 住宅会社の種類を知りたい
- おおよその価格帯を調べたい
- 現金購入も検討している
- 住宅展示場を見てみたい
この段階なら、住宅会社の特徴や家づくりの流れを知るために紹介を受けてもよいでしょう。
ただし、相談者には、
「現時点では融資の確認をしていないため、実際に建築できる予算は確定していません」
と説明する必要があります。
住宅ローン未確認の状態であることを明確にするなら、情報提供としての紹介には意味があります。
問題は、建てられる前提で話を進めること
住宅ローンの見通しを確認していないのに、
「この予算なら問題ありません」
「この会社なら希望の家が建ちます」
「次は土地を申し込みましょう」
と具体的な行動へ進めるのは危険です。
相談者は住宅会社との打合せを重ねるほど、家を建てられる確信を強めます。
- モデルハウスを見学する
- 土地を探す
- 間取りを作成してもらう
- キッチンや外壁を選ぶ
- 子ども部屋を考える
- 完成時期を家族で話し合う
ここまで進んだ後に住宅ローンが否認されれば、失うものは時間だけではありません。
「自分たちは家を持てないのか」という精神的なショックも大きくなります。
年収だけでは住宅ローンの結果は分からない
同じ年収でも、審査結果が同じになるとは限りません。
住宅ローンには、次のような項目が関係します。
- 年齢
- 勤務先
- 勤続年数
- 雇用形態
- 所得の安定性
- 自動車ローン
- カードローン
- リボ払い
- スマートフォンなどの分割払い
- 過去の支払い状況
- 健康状態
- 自己資金
- 建築地の担保評価
- 希望借入額
- 返済期間
年収600万円だから3,500万円借りられると、アドバイザーが決めることはできません。
最終的な審査は金融機関が行います。
相談会社ができるのは、融資の可能性を断定することではなく、必要な情報を整理し、適切な金融機関へ確認することです。
簡単な予算診断と事前審査は違う
相談会社が行う「住宅予算診断」が、金融機関の事前審査と同じとは限りません。
| 確認方法 | 主な内容 | 分かること |
|---|---|---|
| 年収倍率 | 年収に一定倍率を掛ける | 借入額の大まかな目安 |
| 返済シミュレーション | 金利・期間から返済額を計算 | 毎月返済額の概算 |
| 家計診断 | 収入・支出・将来費用を確認 | 無理なく返せる予算の目安 |
| 事前審査 | 金融機関が申込情報を審査 | 融資可能性と条件 |
| 本審査 | 人・物件・契約内容を正式審査 | 最終的な融資判断 |
年収倍率やシミュレーションで「借りられそう」と判断できても、事前審査の承認ではありません。
相談者へは、どの段階の確認なのかを正確に説明する必要があります。
最低限、紹介前に聞くべきこと
住宅会社へ本格的な相談者として紹介するなら、本人の同意を得たうえで、最低限次の項目を整理すべきです。
- 年齢
- 世帯収入
- 雇用形態
- 勤続年数
- 自己資金
- 現在の家賃
- 自動車ローン
- カードローン
- 分割払い
- 過去の支払いへの不安
- 希望する住宅総額
- 建築予定地
- 毎月返せる金額
- 完済希望年齢
これは、相談者を審査して排除するためではありません。
無理な計画を早い段階で修正し、適切な住宅会社や金融機関へつなぐためです。
住宅ローン未確認の顧客を送られた住宅会社はどうなるか
紹介された住宅会社は、相談者の家づくりを実現するために動きます。
- 担当者を決める
- 面談を行う
- 土地を探す
- 現地を調査する
- 間取りを作る
- 見積りを作成する
- 資金計画を作る
- 住宅ローンを案内する
仮に、住宅会社3社がそれぞれ10時間対応すれば、合計30時間です。
設計、営業、現場調査など複数の担当者が関われば、さらに多くの時間と費用がかかります。
住宅ローンの基本条件を確認していない紹介が増えれば、住宅会社は紹介案件を警戒するようになります。
結果として、本気で検討している相談者への対応まで遅くなる可能性があります。
紹介会社は「送客」で終わってはいけない
紹介会社の役割が、
「相談者の連絡先を住宅会社へ渡すこと」
だけなら、住宅会社を探す検索サイトと大きく変わりません。
相談者が期待するのは、
- 予算の整理
- 希望条件の優先順位
- 住宅会社との相性確認
- 住宅ローンの見通し
- 紹介理由の説明
- 紹介後の支援
です。
住宅ローンに不安がある相談者を住宅会社へ送り、
「融資については住宅会社で相談してください」
と任せるだけなら、相談サービスの専門性に疑問が残ります。
もちろん、金融機関の審査結果を紹介会社が保証することはできません。
しかし、融資に不安がある可能性を見つけ、適切な順序へ導くことはできます。
否認されそうな人を紹介してはいけないのか
住宅ローンに不安があるからといって、住宅会社を紹介してはいけないわけではありません。
大切なのは、状況を共有し、目的に合う会社へつなぐことです。
例えば、
- 既存借入れを整理できる住宅会社
- 住宅ローンに詳しい担当者がいる会社
- 総額を抑えた提案ができる会社
- 面積を小さくして性能を守れる会社
- 土地と建物の配分を調整できる会社
- 建築時期を含めて相談できる会社
を紹介する意味はあります。
ただし、
「融資に不安があることを隠して通常案件として送る」
ことと、
「課題を整理し、解決できる専門家へつなぐ」
ことは違います。
後者でなければ、相談者のための紹介とは言えません。
相談者を傷つけない伝え方が必要
住宅ローンに不安がある人へ、
「あなたは家を建てられません」
と決めつけるべきではありません。
審査結果は金融機関や商品によって異なる場合があります。
また、今すぐ難しくても、
- 自動車ローンを完済する
- カード残高を整理する
- 自己資金を増やす
- 希望総額を下げる
- 勤続期間を延ばす
- 建築時期を見直す
- 土地予算を変更する
ことで可能性が変わることがあります。
相談者へ伝えるべきなのは否定ではなく、現状と改善手順です。
期待だけを持たせることも、最初から可能性を閉ざすことも、正しい相談とは言えません。
紹介会社にとって紹介件数が目的になっていないか
紹介会社が住宅会社から、
- 一件紹介するごとの費用
- 来場ごとの費用
- 商談化した場合の費用
- 成約時の広告費
を得る仕組みなら、相談者を早く紹介する動機が生まれる可能性があります。
紹介件数が担当者の評価になる場合も同様です。
この仕組みだけで、不適切な紹介が行われているとは断定できません。
しかし、相談者は次の点を確認すべきです。
- 紹介した時点で売上が発生するか
- 住宅ローンの確認前でも紹介件数として数えるか
- 担当者に紹介件数の目標があるか
- 否認後も支援するか
- 住宅会社から苦情があった場合に改善するか
住宅会社へ送った人数ではなく、相談者が安全に住宅を取得できたかで評価される仕組みが必要です。
紹介前に分けるべき3段階
相談者の状況を次の3段階に分けると、無責任な紹介を防ぎやすくなります。
1.情報収集段階
住宅会社の種類や価格帯を知る段階です。
この段階では、事前審査を必須にする必要はありません。
ただし、予算未確定であることを本人と住宅会社へ伝えます。
2.計画具体化段階
土地、間取り、総額を具体的に検討する段階です。
家計、既存借入れ、返済可能額を確認し、必要に応じて事前審査を行います。
3.契約検討段階
土地の申込みや建築契約へ進む段階です。
事前審査結果、自己資金、総額、契約条件、ローン条項を確認します。
この区分をせず、すべての相談者を同じ「紹介客」として送ることが問題です。
相談会社へ確認すべき10の質問
- 住宅会社を紹介する前に、何を確認しますか
- 年収以外の借入状況も確認しますか
- 事前審査を行うタイミングはいつですか
- 事前審査前であることを住宅会社へ伝えますか
- 借入可能額と返済可能額を分けていますか
- 融資に不安がある場合は誰が対応しますか
- 否認や減額承認の後も支援しますか
- 紹介した時点で住宅会社から費用を受け取りますか
- 担当者に紹介件数の目標がありますか
- 住宅ローンを確認せず紹介する理由は何ですか
これらへ具体的に答えられない場合、相談者の状況より紹介件数を優先している可能性を考える必要があります。
結論
住宅ローンが通るか確認せず、住宅会社を紹介すること自体が、直ちに問題とは限りません。
情報収集として住宅会社を知るだけなら、紹介には意味があります。
しかし、住宅ローンを利用する相談者を、融資の見通しを確認しないまま具体的な商談へ進ませるのは危険です。
家を建てられるか分からない人へ、理想の家だけを見せることは相談ではありません。期待を利用した送客です。
本当に必要なのは、
- 家計を整理する
- 既存借入れを確認する
- 無理なく返せる金額を決める
- 適切な事前審査を行う
- 結果に合う住宅会社を紹介する
という順序です。
住宅会社を何社紹介したかではなく、相談者が無理なく家を取得し、その後も生活を守れるかを重視する相談先を選んでください。
紹介するだけなら誰でもできます。
紹介する前に、建てられる条件と建てた後の生活まで確認することが、本当の住宅相談です。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁










