住宅会社が倒産した場合、工事請負契約は自動的に解除される?
A. 原則として、住宅会社が倒産しただけで工事請負契約が必ず自動解除されるわけではありません。破産手続が始まった場合は、破産管財人が工事を続けるか、契約を解除するかを判断することがあります。
住宅会社が倒産し、建築現場が止まったら、
「契約もなくなったから、すぐ別の住宅会社へ頼める」
と考える人がいます。
しかし、会社が倒産したことと、工事請負契約が法的に終了したことは別です。
契約関係を整理しないまま別の住宅会社と契約すると、
- 二つの請負契約が並行する
- 破産管財人から残代金を請求される
- 現場の材料を使用できない
- 完成保証の対象外になる
- 既施工部分の責任が不明になる
などの問題が起こる可能性があります。
「倒産」という言葉だけでは状況が分からない
一般に「倒産」と呼ばれる状態には、複数の種類があります。
- 破産手続開始の申立て
- 破産手続開始決定
- 民事再生の申立て
- 会社更生手続
- 特別清算
- 銀行取引停止
- 支払い停止
- 事業所閉鎖
- 代表者との連絡不能
- 自主廃業
どの状態にあるかによって、契約を判断する人や手続きが変わります。
事務所が閉まり、電話がつながらないだけでは、破産管財人が選任されているとは限りません。
まず、
- 裁判所へ申立てが行われたのか
- 破産手続開始決定が出たのか
- 破産管財人は誰か
- 会社が事業継続を予定しているのか
を確認する必要があります。
破産管財人が「継続か解除か」を選ぶ場合がある
工事請負契約では、住宅会社には家を完成させる義務があり、施主には工事代金を支払う義務があります。
破産手続開始時点で双方の義務が残っている契約について、破産法第53条は、破産管財人が、
- 契約を解除する
- 住宅会社側の義務を履行し、施主へ代金支払いを求める
のいずれかを選択できると定めています。e-Gov法令検索「破産法」
つまり、住宅会社が破産しても、破産管財人がスポンサー会社などを使って工事を継続すると判断する可能性があります。
住まいるダイヤルの相談事例にも、破産管財人が請負契約を解除せず、工事を続行すると通知したケースがあります。住まいるダイヤル「住宅会社が破産。工事代金をほぼ全額支払った」
破産=契約終了とは限りません。
破産管財人へ回答を求めることができる
破産管財人が工事を続けるのか、解除するのかを決めず、施主が不安定な状態に置かれることがあります。
破産法第53条では、契約の相手方が破産管財人に対して相当な期間を定め、
「契約を解除するのか、それとも履行するのか回答してください」
と催告できる仕組みがあります。
破産管財人がその期間内に回答しない場合は、契約を解除したものとみなされます。
ただし、
- どれくらいの期間を設定するか
- 誰に、どの住所へ送るか
- どのような文面にするか
- 完成保証との関係をどう整理するか
は法的判断が必要です。
施主が自分で簡単なメールを送るだけでなく、弁護士へ相談したうえで内容証明郵便など記録が残る方法を検討してください。
契約書に「倒産時解除」と書かれている場合
工事請負契約書や約款に、
- 住宅会社が破産した場合
- 支払い停止になった場合
- 建設業許可を失った場合
- 工事継続が困難になった場合
に、施主が契約を解除できるという条項が設けられていることがあります。
ただし、
- 倒産と同時に自動解除されるのか
- 施主から解除通知が必要なのか
- 一定期間の催告が必要なのか
- 破産手続上、その条項がどう扱われるのか
は、契約条項と倒産手続の状況によって異なります。
契約書に「倒産」と書いてあるだけで、自動的に全ての契約関係が消えるとは判断しないでください。
施主から解除することはできる?
民法上、注文者は仕事が完成する前であれば、請負人の損害を賠償して契約を解除できる場合があります。
しかし、施主都合の解除として扱われると、
- 発注済み資材
- 施工済み工事
- 転用できない設備
- 現場管理費
- 本来住宅会社が得る予定だった利益
などを請求される可能性があります。
住まいるダイヤルも、施主が自由に契約を解除する場合、材料費だけでなく住宅会社が得られたはずの利益まで損害に含まれる可能性があると説明しています。
住宅会社が事実上工事をできない状態でも、手続きを誤ると「施主都合の解除」と主張される危険があります。
倒産したから解除しても一切負担がない、と自己判断してはいけません。
破産管財人が契約解除を選んだらどうなる?
破産管財人が工事請負契約を解除した場合は、次の項目を整理します。
- 倒産時点の工事出来高
- 支払済み金額
- 前払い金の損失
- 現場にある資材・設備の所有権
- 図面・構造計算書・検査記録
- 建築確認や申請者の変更
- 現場の鍵・仮設設備
- 下請業者や仕入先との関係
- 完成保証の保証額
- 引き継ぎ会社との新しい契約
契約が解除されても、支払ったお金が自動的に全額返金されるわけではありません。
破産法第54条では、第53条によって契約が解除された場合、相手方は損害賠償について破産債権者として権利を行使できるとされています。
破産債権として届け出ても、会社に残っている財産が少なければ、全額回収できない可能性があります。
契約解除と返金は別問題
例えば、
- 建築請負金額:2,500万円
- 支払済み金額:1,500万円
- 実際の工事出来高:1,100万円
なら、
1,500万円-1,100万円=400万円
400万円を工事進捗より先に支払っています。
契約が解除されても、この400万円がそのまま戻ってくるとは限りません。
さらに、残工事の本来の価値が1,400万円で、引き継ぎ会社の見積もりが1,500万円なら、100万円の増嵩工事費用が発生します。
倒産による損失は、
前払い金400万円+増嵩工事費用100万円=500万円
です。
完成保証がなければ、前払い金の回収と引き継ぎ費用の多くを施主が負担する可能性があります。
契約が解除されたことと、金銭問題が解決したことは同じではありません。
現場の材料を勝手に使ってはいけない
工事請負契約が終わったと思い、現場にある木材、サッシ、キッチン、設備を別の住宅会社に使用させるのは危険です。
現場に置かれていても、
- 倒産した住宅会社の所有物
- 建材店の所有物
- メーカーから貸与されている物
- リース会社の所有物
- 代金未払いで所有権が留保されている物
- すでに施主へ所有権が移っている物
が混在している可能性があります。
破産管財人や仕入先の確認を受けずに使用・移動すると、返還を求められる可能性があります。
現場の資材は、写真と数量を記録し、勝手に持ち出したり使用したりしないでください。
完成保証機関へ先に連絡する
完成保証が付いている場合は、施主判断で契約解除や他社への発注を行う前に、完成保証機関へ連絡してください。
保証機関は、
- 保証事故に該当するか
- 契約はどの段階にあるか
- 破産管財人との連絡方法
- 出来高の調査
- 前払い金の計算
- 引き継ぎ会社の選定
- 増嵩工事費用の査定
などを確認します。
保証機関の承認前に契約を解除したり、別会社へ工事を発注したりすると、完成保証の対象外になる可能性があります。
倒産を知った直後の対応
- 住宅会社へ追加の支払いをしない
- 契約書・見積書・領収書を保存する
- 完成保証証書と約款を確認する
- 完成保証機関へ直接連絡する
- 裁判所・破産管財人の情報を確認する
- 現場を安全な場所から写真・動画で記録する
- 現場の資材や設備を移動しない
- 支払済み金額と工事進捗を比較する
- 金融機関へ次回融資実行を相談する
- 弁護士・建築士へ相談する
「追加の支払いをしない」とは、倒産情報を確認せず旧担当者や従来口座へ送金しないという意味です。
破産管財人が契約履行を選択し、正式に支払いを求める場合もあります。支払義務の有無と振込先は、破産管財人、保証機関、弁護士へ確認してください。
契約前に確認する8項目
- 住宅会社倒産時の解除条項
- 自動解除か、通知が必要か
- 催告期間は何日か
- 出来高の精算方法
- 現場資材の所有権
- 完成保証機関への連絡手順
- 引き継ぎ会社と契約できる時期
- 契約解除時の違約金・損害賠償
住宅会社には、次のように質問してください。
「御社が破産した場合、この請負契約は自動的に解除されますか。解除通知、出来高精算、現場資材、完成保証の手続きを契約条項に沿って説明してください」
デザインハウス甲府の考え方
住宅会社の倒産で最も危険なのは、家が止まることだけではありません。
契約が残っているのか、誰へ支払うのか、現場の材料は誰のものか分からない状態で、施主が判断を迫られることです。
デザインハウス甲府では、全棟に完成保証を付けると同時に、契約前に総額、支払い時期、工事範囲を明確にし、図面・許容応力度計算書・検査記録を整理しながら工事を進めます。
確認すべきなのは、
倒産したら家を引き継げるかだけでなく、契約をどう終了させてから引き継ぐのか。
住宅会社が倒産しても、工事請負契約が必ず自動解除されるわけではありません。
契約解除、出来高精算、完成保証の事故認定が終わる前に他社へ発注すると、家を守るための行動が新たな契約トラブルを生む可能性があります。










