Q. 年金だけで暮らせる?
A. 住宅ローンを完済し、生活費を抑えられる家庭なら可能です。ただし、平均的には年金だけでは不足します。
総務省の2025年家計調査では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯は、毎月平均約4万2,000円の不足でした。
単身の高齢無職世帯でも、毎月平均約3万円不足しています。
さらに住宅修繕、車の買い替え、介護、入院などの臨時支出が発生します。
年金だけで暮らせるかは、年金額だけでなく、退職時の住宅ローン残高と、持ち家を維持するための現金で決まります。
2026年度のモデル年金はいくら?
厚生労働省が示す2026年度のモデル年金は、夫婦合計で月額23万7,279円です。
内訳は次のとおりです。
| 内容 | 月額 |
|---|---|
| 老齢基礎年金2人分 | 14万1,216円 |
| 夫の老齢厚生年金 | 9万6,063円 |
| 夫婦合計 | 23万7,279円 |
これは、夫が平均的な賃金で40年間厚生年金に加入し、妻が40年間専業主婦だった場合のモデルです。厚生労働省「所得代替率と年金の実質価値」
すべての夫婦が月23万7,000円を受け取れるわけではありません。
実際の年金額は、勤務期間、収入、働き方、保険料納付期間によって異なります。
厚生年金の平均額
厚生労働省の令和6年度統計では、厚生年金保険第1号の老齢年金受給者の平均月額は、老齢基礎年金を含めて約15万1,000円です。厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」
夫婦ともに会社員だった家庭と、片方が専業主婦だった家庭では、受給額が異なります。
自営業期間が長い家庭や、国民年金保険料の未納期間がある場合は、さらに少なくなる可能性があります。
平均額やモデル年金ではなく、自分たちの見込み額を確認する必要があります。
高齢夫婦世帯は毎月約4万2,000円不足
総務省の2025年家計調査による、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均です。
| 項目 | 月平均 |
|---|---|
| 実収入 | 25万4,395円 |
| 税金・社会保険料 | 3万2,850円 |
| 可処分所得 | 22万1,544円 |
| 消費支出 | 26万3,979円 |
| 毎月の不足額 | 4万2,434円 |
可処分所得より消費支出が多いため、毎月約4万2,000円を貯金などから補っている計算です。
年間では約51万円です。
25年間続けば、単純計算で約1,273万円になります。総務省「家計調査2025年平均」
ただし、これは平均値です。介護費、住宅修繕、旅行などによって、実際の不足額は変わります。
一人になった後も確認する
夫婦二人の老後だけでなく、どちらか一人になった後の家計も重要です。
2025年家計調査による、65歳以上の単身無職世帯の平均です。
| 項目 | 月平均 |
|---|---|
| 実収入 | 13万1,456円 |
| 税金・社会保険料 | 1万2,990円 |
| 可処分所得 | 11万8,465円 |
| 消費支出 | 14万8,445円 |
| 毎月の不足額 | 2万9,980円 |
年間では約36万円の不足です。
25年間続けば、単純計算で約899万円になります。
二人から一人になっても、住宅費、固定資産税、光熱費、車、通信費が半分になるわけではありません。
配偶者が亡くなった後に年金収入がどう変化するかも確認する必要があります。
年金だけで暮らせる家庭
次の条件がそろっていれば、年金だけ、または少額の取り崩しで暮らせる可能性があります。
- 住宅ローンを完済している
- 家賃が不要
- 固定費が低い
- 車の維持費が少ない
- 夫婦の年金見込み額が多い
- 住宅の大規模修繕を準備している
- 医療・介護用の現金がある
- 子どもへの経済援助がない
- 生活水準を年金額に合わせられる
老後の収入が月23万円なら、税金や社会保険料を支払った後の生活費を月20万円前後に抑えられるかが一つの判断材料になります。
年金だけでは難しい家庭
次の条件がある場合は、年金以外の資産が必要です。
- 退職後も住宅ローンが残る
- 賃貸住宅の家賃が続く
- 車を二台所有している
- 住宅修繕費を準備していない
- 国民年金中心である
- 保険料の未納期間がある
- 子どもの教育費が退職後も続く
- 親や子どもへの援助がある
- 生活費を把握していない
- 退職金を住宅ローン返済へ使う予定
特に危険なのは、住宅ローンと教育費が退職後まで残る家庭です。
退職後の住宅ローンはいくら重い?
65歳以降も住宅ローンが月8万円残る場合を考えます。
| 返済期間 | 退職後の返済総額 |
|---|---|
| 5年間 | 480万円 |
| 10年間 | 960万円 |
| 15年間 | 1,440万円 |
| 20年間 | 1,920万円 |
月8万円は、現役時代には払える金額に見えるかもしれません。
しかし、年金収入が月23万円なら、住宅ローンだけで約35%です。
税金、社会保険料、食費、光熱費、医療費を支払えば、家計は大幅な赤字になる可能性があります。
住宅ローン審査に通ることと、年金生活で返済できることは別問題です。
住宅ローンは70歳前後までの完済を目指す
35歳で35年ローンを組めば完済は70歳です。
45歳なら80歳、50歳なら85歳です。
返済期間を50年に延ばせば、毎月返済額は下がります。
しかし、年金生活に住宅ローンを持ち越す可能性が高くなります。
子育て世帯では教育費を守りながら、70歳前後までの完済を一つの目標にします。
40代、50代で住宅を取得する場合は、住宅総額を抑え、返済期間と退職時残高を確認する必要があります。
退職金で完済すれば大丈夫?
退職金で住宅ローンを完済できても、それだけでは安心できません。
例えば、退職金2,000万円から住宅ローン残高1,200万円を返済すれば、残るのは800万円です。
夫婦世帯の平均不足額が25年間続くと、単純計算で約1,273万円です。
さらに次の支出が発生します。
- 外壁・屋根修繕
- 給湯器・エアコン交換
- 車の買い替え
- 医療・介護
- 家具・家電
- 葬儀・墓
- 配偶者一人になった後の生活費
退職金で住宅ローンを消すことが目的ではありません。
返済後に90歳までの生活資金が残るかが重要です。
持ち家でも住居費はゼロにならない
住宅ローンを完済しても、持ち家には費用がかかります。
- 固定資産税
- 火災・地震保険
- 外壁・屋根修繕
- 給湯器交換
- エアコン交換
- 水回り設備
- 太陽光発電設備
- 庭・外構
- バリアフリー改修
例えば、住宅修繕用に月1万5,000円、固定資産税と保険用に月1万3,000円積み立てれば、住宅ローン完済後も月2万8,000円の住宅費です。
「持ち家だから老後の住居費はゼロ」という資金計画は危険です。
家計調査の住居費が低い理由に注意
高齢者世帯の平均消費支出では、住居費が低く見える場合があります。
持ち家世帯が多く、住宅ローンを完済している家庭も含まれているからです。
家計調査の平均を見て、
「老後の住居費は月1万〜2万円で足りる」
と考えてはいけません。
賃貸なら家賃、住宅ローンが残っていれば返済額をそのまま加える必要があります。
また、大規模な住宅修繕は毎年発生する支出ではないため、平均値だけでは不足する可能性があります。
年金見込み額を確認する方法
最初に、夫婦それぞれの年金見込み額を確認してください。
利用できるものは次のとおりです。
- ねんきん定期便
- ねんきんネット
- 公的年金シミュレーター
- 年金事務所への相談
厚生労働省の公的年金シミュレーターでは、働き方の変化に応じた年金額を簡易試算できます。
より正確な金額は、ねんきんネットなどで確認します。
夫婦合計だけでなく、どちらか一人になった場合も計算してください。
老後資金の簡単な計算方法
老後資金は、次の式で概算できます。
毎月の生活費-年金の手取り額=毎月の不足額
毎月の不足額×12か月×老後年数+臨時支出=必要な老後資金
例えば、年金の手取りが月22万円、生活費が月27万円なら、毎月5万円不足します。
5万円×12か月×25年間=1,500万円です。
さらに住宅修繕300万円、車の買い替え300万円、医療・介護予備費500万円を見込めば、必要額は2,600万円になります。
一方、生活費を月22万円に抑えられれば、毎月の通常生活での不足はなくなります。
「老後資金は一律2,000万円」ではなく、自分たちの年金額と生活費から計算します。
90歳までの年次計画を作る
老後資金は、退職時の貯金額だけでは判断できません。
次の項目を年ごとに並べます。
- 夫婦の年齢
- 給与収入
- 年金開始年齢
- 年金受給額
- 住宅ローン返済
- 基本生活費
- 車の買い替え
- 住宅修繕
- 医療・介護費
- 金融資産残高
特に確認するのは、資産が最も少なくなる年齢です。
80歳時点で資産が残っていても、90歳前にゼロになる計画では安心できません。
年金生活を守る住宅の条件
老後に適した住宅は、建築価格だけでなく維持費を抑えられることが重要です。
- 夫婦に必要な広さへ抑える
- 高断熱・高気密で光熱費を抑える
- 段差を少なくする
- 1階で生活を完結できる
- 修繕しやすい形状にする
- 車を運転できなくなった後も生活しやすい
- 固定資産税と維持費を把握する
大きすぎる家は、冷暖房、清掃、修繕、固定資産税の負担が増えます。
老後の住宅では、広さよりも維持できる総額が重要です。
年金だけで暮らせるかのチェックリスト
次の数字を確認してください。
- 夫婦それぞれの年金見込み額
- 一人になった後の年金額
- 税金・社会保険料を引いた手取り
- 65歳以降の住宅ローン残高
- 毎月の生活費
- 固定資産税・保険料
- 住宅修繕費
- 車の維持・買い替え費
- 医療・介護用の予備費
- 退職金を使った後の資産
- 90歳時点の金融資産
一つでも分からなければ、「年金だけで大丈夫」とは判断できません。
俺流結論
住宅ローンを完済し、生活費を年金の範囲に抑えられる家庭なら、年金だけで暮らせる可能性はあります。
しかし、平均的な高齢夫婦世帯では毎月約4万2,000円、単身世帯では約3万円不足しています。
さらに、住宅修繕、車、医療、介護などの臨時支出が必要です。
最も危険なのは、
「退職金で住宅ローンを返せば、年金だけで何とかなる」
と考えることです。
退職金でローンを完済しても、その後の生活資金がなくなれば意味がありません。
家を建てるときに確認すべきなのは、現在の毎月返済額だけではありません。
退職時のローン残高、年金の手取り額、住宅維持費、90歳までの資産残高です。
老後も守れる住宅予算に抑え、70歳前後までの完済を目指す。
年金だけで暮らせるかどうかは、家を建てる前の資金計画ですでに決まり始めています。










