Q. 家づくりで最も危険なお金の考え方とは?
A. 「住宅ローン審査に通るなら、その家を買っても大丈夫」と考えることです。
銀行が貸してくれる金額と、家族が無理なく返せる金額は違います。
住宅ローン審査では、主に年収、勤続年数、年齢、既存借入、信用情報、返済負担率などが確認されます。
しかし、各家庭の教育方針、車の買い替え、将来の収入減少、住宅修繕、親の介護、老後の希望まで保証してくれるわけではありません。
審査に通ることは、融資を受けられるという意味です。
35年、40年後まで安全に暮らせるという証明ではありません。
危険な考え方1|銀行が貸してくれるから大丈夫
「銀行が4,000万円まで貸してくれると言った」
「住宅会社の担当者が返済可能だと判断した」
これだけで住宅予算を決めるのは危険です。
同じ年収600万円でも、家庭によって支出は違います。
- 子どもがいない家庭
- 子どもが二人いる家庭
- 私立大学を希望する家庭
- 車が一台で済む家庭
- 車が二台必要な家庭
- 親から援助を受けられる家庭
- 親の介護費用を負担する家庭
年収が同じでも、安全に返せる住宅ローン額は同じではありません。
借入可能額は銀行の基準です。
返済可能額は家族の人生から計算する必要があります。
危険な考え方2|月々払えるから大丈夫
住宅広告では、建築総額より月々返済額が大きく表示されます。
「月々7万円台」
「今の家賃と変わりません」
「ボーナス払いなしでも購入可能」
月額が小さく見えると、高額な住宅でも買えそうに感じます。
しかし、返済期間を延ばせば月々返済額は下げられます。
家の価格が下がったわけではありません。
例えば、35年で返済できない住宅を50年ローンに変更すれば、毎月返済額は下がります。
その代わり、完済年齢と支払利息が増えます。
高すぎる家が、返済期間を延ばしただけで安全な家に変わることはありません。
危険な考え方3|家賃と同じなら問題ない
家賃8万円と住宅ローン8万円は、同じ住宅費ではありません。
持ち家には、住宅ローン以外にも次の費用が必要です。
- 固定資産税
- 火災・地震保険
- 給湯器やエアコンの交換
- 外壁・屋根の修繕
- 太陽光発電設備の修理
- 庭や外構の維持
- 自治会費
- 将来のリフォーム
例えば、住宅ローンが月8万円でも、固定資産税、保険、修繕積立を加えると、実質住宅費が月10万〜11万円になる場合があります。
「家賃と同じ」という説明は、住宅ローン返済額だけを比較している可能性があります。
危険な考え方4|将来は収入が上がる
現在の返済が苦しくても、
「将来は昇給する」
「妻がフルタイムへ戻れば大丈夫」
「子どもが大きくなれば働ける」
という前提で借入額を増やすケースがあります。
しかし、将来の収入は確定していません。
- 昇給が止まる
- ボーナスが減る
- 転職する
- 病気やけがで働けなくなる
- 育児や介護で勤務時間が減る
- 物価が上昇する
- 社会保険料の負担が増える
住宅ローンは、収入が上がらなくても返済できる金額で組むべきです。
将来の昇給は返済の前提ではなく、家計の余裕として考えます。
危険な考え方5|共働きなら高い家でも買える
夫婦の収入を合算すれば、借入可能額を増やせます。
しかし、夫婦二人の現在収入を限界まで使った住宅ローンは、共働きを辞められない家計になります。
例えば、夫の手取り30万円、妻の手取り20万円で、毎月13万円の住宅ローンを組んだとします。
世帯手取り50万円なら払えそうに見えます。
しかし、妻の手取りが10万円へ減れば、住宅ローンは手取り40万円の32.5%です。
ここに税金、保険、修繕積立を加えれば、実質住宅費はさらに増えます。
家族のために建てた家が、夫婦の働き方を拘束する。
これは避けるべき資金計画です。
危険な考え方6|頭金は多いほどよい
頭金を多く入れれば、借入額と毎月返済額は減ります。
しかし、現金を使い切ることは危険です。
例えば、預金600万円から頭金500万円を入れれば、残る現金は100万円です。
その後に次の支出が重なる可能性があります。
- 引っ越し
- 家具・家電
- 固定資産税
- 車検・車の故障
- 病気や収入減少
- 子どもの進学
- 想定外の追加工事
毎月の生活費が30万円なら、100万円は約3か月分にすぎません。
頭金を入れた結果、急な支出をカードローンやカーローンで補うなら、安全な計画とはいえません。
住宅完成後も、最低限、生活費6か月分程度の現金を残す必要があります。
危険な考え方7|教育費は何とかなる
住宅予算を優先し、教育費を後回しにする家庭があります。
しかし、住宅ローンの返済中に、子どもの高校・大学進学が訪れます。
子ども一人の大学費用に500万円必要としても、住宅を契約した後から準備するのは簡単ではありません。
不足すれば、次の選択を迫られます。
- 学資保険を解約する
- 老後資金を取り崩す
- 親が教育ローンを借りる
- 子どもが奨学金を借りる
- 希望する進学先を諦める
住宅予算を300万円増やした結果、子どもが300万円の奨学金を背負う。
これは実質的に、親の住宅費を子どもへ先送りした状態です。
危険な考え方8|退職金で返せばよい
45歳で35年ローンを組めば、完済は80歳です。
そこで、
「退職金で一括返済する」
という計画が使われます。
しかし、退職金は住宅ローンだけに使うお金ではありません。
- 年金で不足する生活費
- 医療・介護費用
- 住宅修繕
- 車の買い替え
- 配偶者一人になった後の生活費
退職金で住宅ローンを完済できても、老後資金がなくなれば問題は解決していません。
退職金を返済に使った後、90歳まで資産が残るか確認する必要があります。
危険な考え方9|外構や諸費用は後で考える
建物本体価格だけで予算を判断し、外構や諸費用を後回しにするケースがあります。
しかし、家は建物だけでは完成しません。
- 屋外給排水
- 地盤改良
- 建築確認申請
- 登記
- 住宅ローン手数料
- 火災・地震保険
- 照明
- カーテン
- エアコン
- 外構
- 引っ越し
- 家具・家電
これらを契約後に追加すれば、数百万円増える可能性があります。
「後で考える」とは、費用がなくなることではありません。
金額が分からないまま契約するという意味です。
危険な考え方10|安い見積りの会社が一番得
住宅会社を見積書の金額だけで比較するのも危険です。
A社は2,000万円、B社は2,300万円だったとしても、A社に付帯工事、申請費、照明、カーテン、エアコン、外構が含まれていなければ、最終総額は逆転する可能性があります。
比較する条件をそろえる必要があります。
- 住み始めるまでの総額
- 税込・税別
- 付帯工事の範囲
- 断熱・気密性能
- 耐震性能
- 設備仕様
- 外構工事
- 諸費用
- 契約後に増える可能性
最初の価格が安い家と、最終的な総額が安い家は同じではありません。
危険な考え方11|住宅性能を削れば解決する
予算を超えたとき、断熱、気密、耐震、換気などを削る提案があります。
建築時の価格は下がっても、住み始めてから次の負担が増える可能性があります。
- 冷暖房費
- 室温差による不快感
- 結露
- 将来の断熱改修
- 地震による損害リスク
先に削るべきなのは、過剰な広さ、複雑な形状、豪華な内装、使用頻度の低い設備です。
住宅の安全性と、将来の維持費に関わる基本性能を最後に残す必要があります。
最も危険な住宅営業の言葉
次の言葉が出たら、数字の根拠を確認してください。
| 営業トーク | 確認する質問 |
|---|---|
| 銀行が貸すから大丈夫 | 教育費を含めても返せますか? |
| 家賃と変わりません | 税金・保険・修繕費込みですか? |
| 50年にすれば払えます | 完済年齢と総利息はいくらですか? |
| 将来は収入が上がります | 上がらない場合も成立しますか? |
| 退職金で返せます | 返済後の老後資金はいくらですか? |
| 太陽光でローンを払えます | 発電量が下がった場合はどうなりますか? |
| 今月契約すれば値引きします | 最終総額はいくらですか? |
| 細かい金額は契約後です | 未確定項目はいくら増えますか? |
説明の言葉ではなく、金額、時期、残高で確認することが重要です。
安全な考え方へ変える
危険な考え方を、次のように変えてください。
| 危険な考え方 | 安全な考え方 |
|---|---|
| 借りられる額で建てる | 返せる額から総額を決める |
| 月々だけを見る | 総支払額と完済年齢を見る |
| 建物価格で比較する | 入居までの総額で比較する |
| 頭金を限界まで入れる | 建築後の現金を先に残す |
| 共働き前提で借りる | 収入減少時も試算する |
| 教育費は後で考える | 教育費を先に確保する |
| 退職金で完済する | 返済後の老後資産を見る |
| 安い仕様を選ぶ | 生涯住宅コストで比較する |
契約前に確認すべき数字
次の数字が分からない状態で契約してはいけません。
- 入居までの最終総額
- 契約後に増える可能性がある金額
- 建築後に残る預金
- 住宅ローン総返済額
- 金利上昇後の毎月返済額
- 固定資産税・保険・修繕を含む実質住宅費
- 教育費のピーク時期
- 退職時の住宅ローン残高
- 完済年齢
- 90歳時点の金融資産
住宅会社が作る資金計画でも、この数字まで確認できるかが重要です。
俺流結論
家づくりで最も危険なお金の考え方は、
「住宅ローン審査に通るなら、その家を買っても大丈夫」
と考えることです。
銀行はお金を貸す審査をします。
住宅会社は家を販売します。
しかし、建てた後の生活を何十年も続けるのは、お客様自身です。
月々を安く見せるために返済期間を延ばす。
頭金を入れすぎて現金を失う。
住宅を優先して教育費を後回しにする。
退職金で返すことを前提にする。
これらは、家を買いやすく見せる方法であって、家族の将来を安全にする方法ではありません。
住宅予算は、借りられる金額から決めるものではありません。
教育費、車、修繕費、生活防衛資金、老後資金を先に確保し、残った金額から決めるものです。
建てられる家ではなく、建てた後も守れる家を選ぶ。
それが危険な資金計画を避ける、最も重要な判断です。










