完成保証の約款で、契約前に確認すべき項目とは?
A. 「完成保証があります」だけでは不十分です。契約前に、保証開始日、保証限度額、対象外になる条件、支払い方法、倒産時の手続きを約款で確認してください。
完成保証で最も危険なのは、住宅会社が制度へ登録していることと、その人の家に保証が付いていることを混同することです。
住宅会社が完成保証制度の登録事業者でも、物件ごとの申込みと審査が完了し、施主名義の保証証書が発行されなければ、保証が有効にならない制度があります。
完成保証は、「住宅会社が倒産しても、誰かが無料で完成させてくれる制度」ではありません。
保証会社が認めた前払金の損害や、工事引き継ぎによって増えた費用を、約款と保証証書に記載された範囲・限度額で補う制度です。
契約前に確認すべき10項目
1.その家の保証は、いつから有効になるのか
最初に確認するのは保証開始日です。
- 工事請負契約を締結した日
- 完成保証を申し込んだ日
- 保証料を支払った日
- 保証会社が申込みを承認した日
- 保証証書が発行された日
- 着工した日
どの時点から有効になるのかは、制度によって異なります。
住宅会社から、
当社は完成保証へ加入しています
と言われても、それだけでは施主の家に保証が付いた証明になりません。
契約前に、次のように質問してください。
私たちの名前と建築地が記載された保証証書は、いつ発行されますか。保証証書が届く前に住宅会社が倒産した場合も保証されますか。
住宅あんしん保証の重要事項確認シートにも、所定の審査を経て保証証書が発行され、施主の手元に届いて初めて保証が有効になると明記されています。住宅あんしん保証「重要事項確認シート」
「登録済み」と「あなたの家の保証成立」は別物です。
2.保証されるのは何の損害か
完成保証で主に対象になるのは、次の2種類です。
- 支払済み金額が工事の出来高を上回った前払金損害
- 他社への引き継ぎで工事費が増えた増嵩工事費用
ただし、すべての制度が両方を保証するとは限りません。
例えば住宅保証機構には、増嵩工事費用を保証するAタイプと、増嵩工事費用に加えて前払金損害も保証するBタイプがあります。住宅保証機構「住宅完成保証制度」
確認すべき質問はこれです。
この完成保証は、前払金損害と増嵩工事費用の両方が対象ですか。
「完成保証付き」という言葉では、保証タイプまでは分かりません。
3.保証限度額はいくらか
完成保証には上限があります。
「完成までに発生した費用を無制限に支払う」という意味ではありません。
保証限度額は制度によって、
- 請負金額の一定割合
- 一定金額
- 一定割合と一定金額のいずれか低い額
- 前払金損害と増嵩工事費用を合算した上限
などの違いがあります。
住宅あんしん保証の場合、公式案内では、前払金損害は請負金額の30%または1,100万円のいずれか低い額、増嵩工事費用は請負金額の10%または200万円のいずれか高い額が上限です。さらに、両方を合計した上限も設定されています。住宅あんしん保証「住宅完成保証制度」
契約前には、割合だけでなく金額で回答してもらいます。
請負金額2,200万円の場合、前払金損害はいくらまで、増嵩工事費用はいくらまで保証されますか。合計の上限はいくらですか。
「最大30%」ではなく、「私の家では最大何万円か」まで確認してください。
4.保証金額は誰が、どのように計算するのか
倒産時に施主が主張した金額が、そのまま保証されるとは限りません。
保証会社が、
- 支払済み金額
- 現場の出来高
- 使用済み材料
- 未施工工事
- 手戻り工事
- 引き継ぎ会社の見積書
- 既存部分の検査費用
などを調査して、保証対象額を算定します。
例えば、住宅会社へ1,000万円支払っていても、完成した工事の出来高が800万円と評価されれば、前払金損害は200万円です。
一方、施主が「まだ600万円分しか工事されていない」と考えていても、その判断がそのまま採用されるとは限りません。
約款では、次の点を確認します。
- 出来高を評価する人
- 評価方法
- 現場調査費用の負担者
- 評価に異議がある場合の手続き
- 保証金が支払われる時期
5.どのような状態を「倒産」と判断するのか
住宅会社の工事が止まっただけで、直ちに完成保証が使えるとは限りません。
保証事故として扱われる条件には、一般的に次のようなものがあります。
- 破産手続開始の申立て
- 民事再生手続開始の申立て
- 特別清算
- 取引金融機関による取引停止
- 支払い停止
- 保証会社が工事続行不能と認めた場合
職人が来ない、担当者と連絡が取れない、工期が遅れているという状態だけでは、保証会社がまだ保証事故と認定しない可能性があります。
住宅保証機構も、保証事故に該当するかは「事業者の責任によって工事を継続できなくなったと住宅保証機構が認めた場合」としています。住宅保証機構「保証事故となる条件」
契約前に確認する質問はこれです。
破産申立て前でも、資金繰り悪化で工事が長期間止まった場合は保証事故になりますか。誰が、何を基準に工事続行不能と判断しますか。
6.保証されない費用は何か
約款では「保証する内容」よりも、「保証しない内容」を読むことが重要です。
対象外になりやすい費用には、次のようなものがあります。
- 仮住まいの延長家賃
- 引越しのやり直し費用
- 荷物の保管料
- つなぎ融資の利息
- 住宅ローン関係費用
- 工期遅延による損害
- 施主が追加した仕様変更
- 元の契約に含まれていない工事
- 地震・洪水・台風などによる損害
- 施工不良の補修費
- 瑕疵保険で扱うべき工事
- 保証限度額を超えた費用
住宅保証機構の公式説明にも、工事が滞ったことで発生する各種費用は保証対象外と明記されています。
工事が3か月止まり、家賃10万円、つなぎ融資利息3万円、荷物保管料2万円が毎月かかれば、それだけで45万円です。
完成保証があっても、生活費まで完全に守られるわけではありません。
7.工事代金の支払い方に制限はあるか
ここは非常に重要です。
工事請負契約書に記載された支払時期と異なる支払いをすると、保証対象外になる可能性があります。
例えば住宅会社から、
今月中に着工金を払ってもらえれば100万円値引きします
と言われ、契約書より早く多額の代金を支払った場合、その支払いが完成保証の対象にならない可能性があります。
住まいるダイヤルには、着工前に900万円を支払った後で住宅会社が破産し、完成保証の適用外と言われた相談事例があります。住まいるダイヤル「住宅会社が破産し完成保証の適用外と言われた事例」
契約前には、支払い予定表を保証会社にも確認してもらい、
この支払い条件で、全額が約款上の保証対象になりますか。
と書面で確認します。
住宅会社を守る前払いではなく、工事の出来高に合わせて支払うことが、施主を守る基本です。
8.契約変更や工期変更には届出が必要か
契約後に次の内容を変更した場合、保証会社への届出や再審査が必要になる制度があります。
- 請負金額
- 支払い条件
- 工期
- 設計内容
- 工法
- 大規模な追加工事
- 工事の一時中止
住宅あんしん保証の2026年6月版の約款でも、請負金額、支払い条件、工期、設計、工法などを変更した場合、再審査を行う規定があります。住宅あんしん保証「住宅完成保証委託約款」
住宅会社と施主だけで変更契約を結び、保証会社への届出が行われていなければ、変更部分が保証されない可能性があります。
追加工事を行うときは、
この変更は完成保証会社へ届け出ますか。変更後の保証限度額を記載した書面は発行されますか。
と確認してください。
9.倒産時に勝手に契約解除してよいか
住宅会社と連絡が取れなくなったからといって、施主の判断だけで契約を解除し、別の会社へ工事を依頼すると、完成保証を受けられなくなる可能性があります。
制度によっては、契約解除前に保証会社の書面による承諾が必要です。
住宅あんしん保証の重要事項確認シートにも、保証会社へ無断で工事請負契約を解除した場合、保証金が支払われない場合があると記載されています。
約款では、次の内容を確認します。
- 最初の連絡先
- 連絡期限
- 必要書類
- 契約解除の手順
- 現場へ入ってよい時期
- 資材を移動してよいか
- 他社と契約してよい時期
- 保証会社の承諾方法
倒産時は焦ります。しかし、最初の行動を間違えると、保証が消える可能性があります。
10.工事を引き継ぐ会社は誰が決めるのか
完成保証があれば、希望する住宅会社が必ず引き継いでくれるわけではありません。
制度によっては保証会社が引き継ぎ候補を紹介しますが、次の点は別途確認が必要です。
- 施主が引き継ぎ会社を選べるか
- 保証会社指定の会社に限られるか
- 同じ工法・性能・設備で完成できるか
- 引き継ぎ会社が見つからない場合はどうなるか
- 引き継ぎ会社の見積金額を誰が査定するか
- 保証金は施主と引き継ぎ会社のどちらへ支払われるか
- 工事再開までの期間
- 完成後の保証・点検を誰が行うか
「引き継ぎ会社をあっせんする」と「必ず同じ条件で完成させる」は同じ意味ではありません。
2,200万円の家で起きる損失例
請負金額2,200万円の住宅で、次の状態で住宅会社が倒産したとします。
- 住宅会社への支払済み金額:1,100万円
- 保証会社が認定した工事出来高:800万円
- 前払金損害:300万円
- 当初契約の残代金:1,100万円
- 引き継ぎ会社の残工事見積額:1,350万円
- 増嵩工事費用:250万円
施主の損害は、前払金損害300万円と増嵩工事費用250万円を合わせて550万円です。
しかし、約款上の保証限度額が400万円なら、残りの150万円は施主負担になる可能性があります。
さらに、仮住まい家賃、つなぎ融資利息、引越し費用が保証対象外なら、実際の負担はさらに増えます。
だからこそ契約前に、次の計算を住宅会社へ依頼してください。
今日の支払い予定と保証条件で、基礎完成時、上棟時、木工事完了時に倒産した場合、保証額と施主負担はいくらになりますか。
この質問に金額で回答できない住宅会社は、完成保証の内容を十分に理解していない可能性があります。
契約前にもらうべき5つの書類
口頭説明だけで契約してはいけません。
契約前に、次の書類を受け取ってください。
- 施主向け完成保証約款
- 完成保証制度の概要説明書
- 重要事項確認シート
- 保証証書の見本
- 自分の家の保証限度額と支払い条件が分かる計算書
契約後には、施主名、建築地、請負金額、保証限度額、保証期間が記載された正式な保証証書を受け取ります。
完成保証を見抜く最終質問
住宅会社には、次の10問をそのまま質問してください。
- 保証会社の正式名称は?
- 私の家は、いつから保証が有効になる?
- 保証証書は、いつ届く?
- 前払金損害は保証される?
- 増嵩工事費用は保証される?
- 保証限度額は金額でいくら?
- 仮住まい費用や融資利息は対象?
- 支払いを早めると保証対象外になる?
- 契約変更・工期変更の届出は誰が行う?
- 倒産時の連絡先と契約解除の手順は?
この10問に、約款と保証証書の見本を示しながら回答できるかが、住宅会社選びの分かれ目です。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、全棟に完成保証を付けることを基本としています。
しかし、重要なのは「完成保証付き」という広告表示ではありません。
- どの保証会社を利用するのか
- 何が保証されるのか
- 保証限度額はいくらか
- いつから有効になるのか
- どの支払い条件なら保証対象になるのか
- 倒産時に施主は何をすべきか
これらを契約前に書面で確認できることが重要です。
住宅会社から、
当社は倒産しないから大丈夫です
と言われても、それは保証ではありません。
倒産しても、お客様の家と支払ったお金をどの仕組みで守るのか。
ここまで説明するのが、住宅会社の責任です。
完成保証は、会社を信用してもらうための飾りではありません。
会社を信用できなくなる事態が起きたときに、施主を守るための契約です。
会社の説明ではなく、約款と保証証書に書かれている内容を確認してから、工事請負契約へ進んでください。










