売上が急成長している住宅会社ほど、倒産しにくい?
A. いいえ。売上の急成長は、住宅会社の安全性を証明するものではありません。受注の増加に資金・人員・施工体制が追いつかなければ、売れている最中でも資金が尽きて倒産する可能性があります。
「年間100棟達成」
「売上前年比200%」
「地域No.1の成長率」
こうした数字を見ると、多くの人は、
「これだけ売れている会社なら倒産しないだろう」
と考えます。
しかし、会社が倒産する直接的な原因は、売上が少ないことだけではありません。
支払日に必要な現金を用意できなくなることです。
利益が出ていても現金が不足すれば、黒字のまま倒産することもあります。
売上・利益・現金は同じではない
住宅会社の経営状態を見るときは、次の数字を分けて考える必要があります。
| 数字 | 意味 |
|---|---|
| 受注額 | 契約した住宅の金額 |
| 売上高 | 会計上、その期間の売上として計上された金額 |
| 粗利益 | 売上から建築原価を差し引いた金額 |
| 営業利益 | 粗利益から人件費・広告費・家賃などを差し引いた金額 |
| 現金預金 | 実際に支払いへ使えるお金 |
受注額が100億円あっても、100億円の現金が会社にあるわけではありません。
売上が増えても、材料費、職人への支払い、人件費、税金、借入金返済が大きければ、会社に現金は残りません。
中小企業基盤整備機構のJ-Net21でも、利益と資金の増減は一致せず、利益が出ていても資金不足による黒字倒産が起こり得ると説明されています。J-Net21「キャッシュフロー経営の基本」
急成長するほど運転資金が必要になる
住宅会社が受注を増やすと、完成して代金を回収する前に、次の支払いが増えます。
- 木材や建材の仕入代金
- 基礎・大工・電気・設備業者への外注費
- 営業担当者や現場監督の人件費
- 広告宣伝費
- モデルハウスの建設・維持費
- 土地や分譲住宅の仕入資金
- 借入金の返済
- 消費税や法人税
例えば、年間10棟だった会社が30棟へ急拡大したとします。
追加された20棟について、1棟当たり平均300万円の先行資金が必要なら、
20棟×300万円=6,000万円
新たに6,000万円の運転資金が必要です。
これは計算例ですが、成長にはそれだけ多くの現金が必要になるということです。
受注は増えていても、銀行融資や自己資金が追いつかなければ、仕入先や下請業者への支払いが遅れ始めます。
「黒字倒産」は売れている会社にも起きる
急成長している会社では、売上が計上される時期と、実際にお金が入る時期にずれが生じます。
一方で、材料費、外注費、給与、税金の支払日は待ってくれません。
J-Net21も、売上拡大に伴う仕入資金・外注費・人件費の先行支払いが急増すると、手元資金が枯渇し、黒字倒産の引き金になり得ると注意を促しています。J-Net21「会社の資金繰りが悪化したときの対応」
つまり、
受注が多い会社ほど安全なのではなく、受注増加に耐えられる資金がある会社が安全なのです。
急成長する住宅会社が危険になる6つの理由
1. 契約金を次の工事へ使っている
施主から受け取った契約金や着手金を、その施主の家ではなく、以前の現場の支払いへ回している可能性があります。
新しい契約が続いている間は資金が回りますが、契約件数が減った瞬間に支払いが止まります。
2. 値引きで契約数だけを増やしている
500万円値引き、太陽光発電無料、設備プレゼントなどで契約数を増やしても、利益が残らなければ経営は安定しません。
売上10億円でも利益率が1%なら、利益は1,000万円です。
一方、売上5億円でも利益率が5%なら、利益は2,500万円です。
売上の大きさより、利益を残せる価格で契約しているかが重要です。
3. 現場監督と職人が足りない
営業担当者を増やせば、契約件数は増やせます。
しかし、現場監督、大工、設備業者、検査担当者は短期間では育ちません。
施工能力を超えて契約すると、
- 着工できない
- 工期が延びる
- 現場監督が次々に辞める
- 検査が省略される
- 施工ミスが増える
- 引き渡し後の対応が遅れる
という問題が起きます。
4. モデルハウスと広告費が膨らんでいる
急成長を演出するために、豪華なモデルハウス、テレビCM、大規模イベント、複数店舗の出店へ多額の資金を使う会社があります。
受注が計画を下回れば、高額な固定費だけが残ります。
5. 土地や建売住宅を大量に抱えている
土地や建売住宅を仕入れても、売れるまでは現金になりません。
在庫が増えれば、借入金の利息、固定資産税、維持費が発生します。
住宅請負の受注が好調でも、不動産部門の在庫が資金繰りを圧迫している可能性があります。
6. 成長を前提に借入金を増やしている
毎年売上が増える前提で借入金を増やしている会社は、住宅需要が落ちたときに返済負担が重くなります。
金利上昇、建築費高騰、住宅ローン審査の厳格化によって契約数が減れば、急激に資金繰りが悪化する可能性があります。
「売上前年比200%」の数字に注意する
成長率は、比較する基準によって大きく見せられます。
前年売上が1億円で、今年2億円なら前年比200%です。
しかし、前年が特殊事情で極端に低かっただけかもしれません。
また、「売上」と説明しながら、実際には次の数字を使っている場合もあります。
- 契約しただけの受注額
- グループ全体の売上
- 土地代を含めた総取扱高
- 未完成住宅を含む見込み額
- 特定店舗だけの成長率
契約前に、次のように質問してください。
「その数字は受注額ですか、完成した住宅の売上高ですか。何年度と何年度を比較していますか」
数字の定義を説明できない会社は、成長を広告表現として利用しているだけかもしれません。
安全な成長と危険な成長の違い
| 安全性の高い成長 | 危険な急成長 |
|---|---|
| 受注に合わせて施工人員を増やす | 営業だけを増やす |
| 利益を確保した適正価格で販売 | 大幅値引きで契約を集める |
| 工程に応じた支払い | 契約直後に多額を集める |
| 工期と現場数を管理 | 着工待ちが増え続ける |
| 仕入先への支払いが安定 | 資材納入が頻繁に止まる |
| 担当者の引き継ぎができる | 現場監督が次々に辞める |
| 完成保証を全棟に付ける | 「大手だから安心」で済ませる |
安全な会社は、契約数だけでなく、完成棟数、施工品質、利益、資金、社員、協力業者を同時に管理しています。
急成長中の住宅会社へ聞く10の質問
契約前に、次の内容を確認してください。
- 発表している数字は受注額か売上高か
- 過去3年間の完成棟数は何棟か
- 現在、建築中の現場は何棟あるか
- 現場監督は何人いるか
- 現場監督一人が何棟を担当しているか
- 契約から着工まで何カ月待つか
- 着工から完成までの標準工期は何カ月か
- 工事代金は工程に応じた支払いか
- 完成保証は全棟に付くか
- 急成長に対応する資金・人員計画はあるか
「売れているので安心です」という回答では不十分です。
売れた家を、約束どおり完成させる人員と資金があるのか。
ここまで確認してください。
危険な急成長を見抜く兆候
次の兆候が複数重なった場合は注意が必要です。
- 契約棟数だけを強調し、完成棟数を公表しない
- 着工予定日を答えられない
- 契約から着工までの期間が急に延びた
- 現場監督が多数の現場を抱えている
- 工期の延期が続いている
- 資材や設備の納入が止まっている
- 下請業者や職人が現場へ来ない
- 突然、大幅値引きを始めた
- 契約金や中間金を前倒しで求める
- モデルハウスを急拡大した直後に閉鎖する
一つだけでは倒産の証拠になりません。
しかし、急成長と同時に、工期遅延、社員退職、納入停止、前倒し入金が重なったら、成長ではなく資金繰りの限界が近づいている可能性があります。
財務は売上だけで判断しない
2024年版中小企業白書では、企業を見る指標として、売上増加率だけでなく、営業利益率、労働生産性、有利子負債、営業運転資本、自己資本比率など、複数の指標を挙げています。中小企業庁「2024年版中小企業白書」
一般の施主がすべての財務情報を確認するのは簡単ではありません。
だからこそ、最低でも、
- 建設業許可が有効か
- 過去の行政処分がないか
- 支払いが工事進捗と連動しているか
- 完成保証が自分の建物に付くか
- 工期遅延や納入停止が起きていないか
を確認する必要があります。
建設業許可の申請・届出が電子で行われている場合は、国土交通省の建設業許可電子閲覧システムで閲覧できる情報があります。
ただし、売上が多い、建設業許可がある、完成保証へ加入しているという一つの情報だけで、経営の安全性を断定することはできません。
デザインハウス甲府の考え方
住宅会社の安全性は、売上高や契約棟数の派手さでは決まりません。
大切なのは、
- 無理な値引きをしていない
- 契約前に総額を提示する
- 工事進捗より先に代金を集めない
- 施工できる範囲で受注する
- 最後まで完成させる仕組みがある
という基本です。
デザインハウス甲府では、付帯工事や確認申請、消費税を含めた総額を契約前に提示し、工事の進捗を確認しながら家づくりを進めます。さらに、万一に備えて全棟に完成保証を付けています。
住宅会社を比較するときは、
何棟売ったかではなく、何棟を約束どおり完成させ、最後まで責任を負えるか。
を見てください。
売上が急成長している会社が安全なのではありません。
売上が止まっても、工事を止めずに完成させられる会社が安全なのです。










