古い擁壁や石積みの上にある家は、そのまま建替えできますか?
A. 建替えできる場合はありますが、古い擁壁の安全性を確認せず、そのまま新しい家を建てるのは危険です。
今まで家が建っていたことは、擁壁が現在の基準に適合し、新しい建物の荷重や地震に耐えられる証明にはなりません。
擁壁の補強や造り替えが必要になれば、建物とは別に数百万円単位の費用が発生することがあります。規模や工事条件によっては1,000万円を超える可能性もあるため、建物の見積りより先に擁壁を調査する必要があります。
擁壁とは?
擁壁とは、高低差のある土地で土砂が崩れないように支える構造物です。
代表的なものには、次の種類があります。
- 鉄筋コンクリート擁壁
- 間知ブロックなどの練積み擁壁
- 空石積み
- 玉石積み
- 大谷石などの石積み
- コンクリートブロックを積んだもの
見た目が似ていても、内部の鉄筋、基礎、裏込め、水抜き、地盤条件によって安全性は大きく異なります。
特に、石を積んだだけの空石積みや、住宅用ブロックを土留めとして使用したものは、現在の建築計画で安全な擁壁として認められない可能性があります。
最初に確認済証・検査済証を探す
既存擁壁について、次の書類が残っているか確認します。
- 擁壁の確認済証
- 検査済証
- 宅地造成等の許可書
- 完了検査関係書類
- 擁壁の構造図・配筋図
- 地盤調査資料
- 開発許可関係書類
- 土地造成時の図面
書類があり、現況が図面どおりで、劣化や変形がなければ、そのまま利用できる可能性があります。
しかし、古い宅地では書類が残っていなかったり、確認申請をせずにつくられた擁壁だったりするケースがあります。その場合は、現地調査だけで安全性を証明することが難しくなります。
危険な擁壁に見られる症状
次のような状態がある場合は、早急な専門調査が必要です。
- 擁壁が道路や隣地側へ膨らんでいる
- 全体が傾いている
- 縦・横・斜めに大きなひび割れがある
- 石やブロックが抜けている
- 継ぎ足し部分にずれがある
- 水抜き穴がない、または詰まっている
- 雨の後に擁壁から大量の水が出る
- 擁壁下部から土砂が流れ出している
- 擁壁上部の地面が沈下している
- 擁壁の上にブロック塀が継ぎ足されている
- 擁壁の近くへ後から建物や駐車場が追加されている
国土交通省も、擁壁は経年劣化や地震・大雨によって、ひび割れ、傾斜などが生じると案内しています。国土交通省「我が家の擁壁チェックシート」
ただし、目立つひび割れがないから安全とも限りません。内部の鉄筋、基礎の大きさ、地盤、水抜き構造は外から見えないためです。
新しい家の耐震等級3だけでは守れない
建物を耐震等級3にしても、その下にある擁壁や地盤が崩れれば、家は傾いたり移動したりします。
擁壁上の建替えでは、次の3つを別々に確認する必要があります。
- 建物自体の耐震性
- 建物を支える地盤の安全性
- 盛土と擁壁の安定性
建物の地盤改良や杭だけで、危険な擁壁の問題がすべて解決するわけではありません。杭が建物を支えても、擁壁が倒壊して周囲の土砂が崩れれば、敷地や配管、隣家へ被害が及ぶ可能性があります。
山梨県の「がけ」に該当する場合
山梨県建築基準法施行条例では、高さ3m以上で勾配が30度を超える傾斜地を「がけ」として扱います。山梨県「建築に関するよくある質問」
がけの上や下に建物を建てる場合は、擁壁を設ける、建物をがけから離す、安全上必要な構造にするなどの対策を求められることがあります。
ただし、条例上の「がけ」に該当しない高さでも、擁壁の安全確認が不要になるわけではありません。2m程度の擁壁でも、倒壊すれば人命や建物に大きな被害を与えます。
主な対策は3つ
調査の結果、既存擁壁をそのまま利用できない場合は、主に次の方法を検討します。
1. 擁壁を造り替える
古い擁壁を撤去し、現在の基準に基づいた鉄筋コンクリート擁壁などへ造り替えます。
安全性を確保しやすい方法ですが、既存擁壁の撤去、土の掘削、仮設工事、残土処分、隣地保護などに大きな費用がかかる可能性があります。
2. 建物を擁壁から離す
敷地に余裕があれば、建物を擁壁から一定距離離し、擁壁へ新しい建物の荷重を加えない配置を検討します。
ただし、離せば必ず安全になるわけではありません。がけ条例、地盤条件、崩壊範囲などを考慮し、行政や設計者との協議が必要です。
3. 擁壁を補強する
既存擁壁の状態によっては、水抜き対策、アンカー、増し打ちなどで補強できる場合があります。
しかし、基礎や内部構造が不明な擁壁では、表面だけを補修しても安全性を証明できないことがあります。ひび割れへモルタルを詰めるだけでは、構造的な補強になりません。
工事できるかも重要
擁壁を造り替えるには、重機やクレーンが入るスペース、土を仮置きする場所、隣地側での作業などが必要です。
次のような土地では費用が上がりやすくなります。
- 前面道路が狭い
- 高低差が大きい
- 隣家が擁壁へ近接している
- 電柱や電線が作業を妨げる
- 重機が敷地へ入れない
- 擁壁が隣地との境界上にある
- 境界が確定していない
- 水道・下水・ガス管が擁壁付近を通っている
擁壁が隣地所有、または共同所有の場合は、勝手に補修・撤去できません。境界と所有者の確認も必要です。
住宅ローンや将来売却にも影響する
安全性を証明できない擁壁があると、金融機関の担保評価が下がったり、住宅ローンの審査が難しくなったりする場合があります。
建物だけ新しくしても、擁壁の問題を残せば、将来売却するときに買主や金融機関から安全性を問われます。
国土交通省も、老朽化した擁壁は地震による倒壊の危険性が高まり、宅地・建物だけでなく隣地にも影響する可能性があるとしています。国土交通省「宅地擁壁について」
建物契約前に擁壁費用を確定する
安全な順番は次のとおりです。
- 境界と擁壁の所有者を確認する
- 確認済証・検査済証・構造図を探す
- 擁壁の高さ・傾き・ひび割れを調査する
- 地盤と排水状況を確認する
- 行政へ建替え条件を相談する
- 再利用・補強・造り替えを比較する
- 擁壁工事を含めた総額を確認する
- その後に建物の契約をする
デザインハウス甲府では、擁壁上の建替えについて、建物だけの概算価格を先に出して契約を急ぎません。擁壁、地盤、解体、造成、外構まで調査し、必要な費用を含めた建替え総額を整理します。
古い擁壁の上に新築する場合、最も高くつくのは擁壁工事ではありません。建てた後に「安全性を証明できない」と分かることです。










