倒産被害を減らす「安全な工事代金の支払い方」とは?
Q. 住宅会社が倒産した場合の被害を減らすには、工事代金をどのように支払えばよいですか?
A. 契約日や請求日ではなく、「確認できた工事の進捗」に合わせて分割払いしてください。支払済み金額を工事出来高より先行させず、完成・検査・引き渡しまで十分な残金を残すことが基本です。
住宅会社の倒産自体を、施主が完全に予測することはできません。
しかし、倒産したときの損失額は、支払い方によって大きく変えられます。
倒産被害を決めるのは、会社の規模だけではありません。
工事より先に、いくらお金を渡していたかです。
最も危険なのは「工事より支払いが先に進む契約」
例えば、請負金額2,200万円の住宅で、工事出来高が30%、つまり約660万円の段階で住宅会社が倒産したとします。
支払済み金額が70%の場合
- 支払済み:1,540万円
- 工事出来高:660万円
- 実質的な前払い:880万円
支払済み金額が35%の場合
- 支払済み:770万円
- 工事出来高:660万円
- 実質的な前払い:110万円
同じ会社が、同じ工事段階で倒産しても、支払条件によって前払い損失に770万円もの差が生まれます。
安全な支払いの5原則
1.契約時に大金を払わない
契約時点では、現場に家の価値がほとんどできていません。
設計、建築確認申請、構造計算などの業務は進んでいても、契約時に工事代金の30%や50%を求められる契約には注意が必要です。
契約金について確認するのは、次の3点です。
- 何の費用として支払うのか
- 工事代金の何%なのか
- 完成保証の対象になるのか
「契約金だから必要です」という説明だけで支払わないでください。
2.支払日ではなく工程に連動させる
契約書に、
「4月30日に中間金を支払う」
とだけ書かれている場合、工事が遅れていても支払日が来てしまいます。
安全なのは、
「基礎工事完了後」
「上棟および構造検査適合後」
「外装下地・防水工事確認後」
「完了検査合格および引き渡し時」
のように、支払いの条件となる工程を明記する方法です。
工事が遅れたら、支払いも遅れる契約にします。
住まいるダイヤルも、トラブルを避けるためには、工事の進捗に応じた支払い条件が望ましいと案内しています。
住宅リフォーム・紛争処理支援センター「進捗に応じた支払い」
3.工程を確認してから振り込む
住宅会社から、
「予定どおり上棟金を振り込んでください」
と連絡が来ても、実際にその工程が完了しているか確認します。
- 現場を自分で確認する
- 日付入りの写真をもらう
- 工事監理者へ確認する
- 第三者検査の結果を確認する
- 検査済みを示す書面を受け取る
上棟予定日ではなく、実際に上棟し、必要な検査を通過した後に支払うことが重要です。
4.完成時まで十分な残金を残す
完成前に代金の90%、95%を支払ってしまうと、住宅会社に工事を完成させる動機が弱くなるだけでなく、倒産時の損失も大きくなります。
最終金は、少なくとも次の確認後に支払います。
- 工事が完成している
- 完了検査に合格している
- 施主検査が終わっている
- 指摘箇所の補修が完了している
- 検査済証が交付されている
- 鍵・図面・保証書を受け取れる
- 建物の引き渡しができる
「引き渡し前日までに全額振り込んでください」という条件は、何を確認してから支払うのかを明確にしてください。
5.完成保証の支払条件を守る
完成保証があっても、住宅会社へ自由に前払いしてよいわけではありません。
保証制度には、工程ごとの支払割合や保証限度額があります。条件を超えて前払いした金額は、保証対象外になる可能性があります。
JIO完成サポートも、工事の進捗に応じた支払割合を定め、その割合を超えて支払った工事費用はサポート対象にならないと案内しています。
JIO「完成サポート」
安全性を重視した支払割合の一例
安全性を重視する場合、次のような支払計画が考えられます。
| 支払い段階 | 今回支払う割合の一例 | 累計支払割合 |
|---|---|---|
| 契約時 | 5~10% | 5~10% |
| 着工・基礎工事開始後 | 10~15% | 20~25% |
| 上棟・構造検査確認後 | 25~30% | 50~55% |
| 外装・防水確認後 | 20~25% | 70~80% |
| 完成検査・引き渡し時 | 20~30% | 100% |
これは法律で決められた割合ではなく、安全性を考えるための一例です。
実際の割合は、工法、資材発注、金融機関、完成保証制度の条件によって異なります。
重要なのは、各支払時点で次の状態を守ることです。
支払済み金額≦確認できた工事出来高+保証対象となる前払い額
住宅会社が提示した支払表だけで判断せず、完成保証機関と金融機関にも確認してください。
「3回払いだから安全」とは限らない
注文住宅では、
- 契約時:3分の1
- 上棟時:3分の1
- 完成時:3分の1
という支払い方法もあります。
しかし、この方法では、上棟時点で工事代金の約67%を支払うことになります。
上棟しただけで建物全体の67%が完成しているとは限りません。
支払回数が3回だから安全なのではなく、支払累計額と実際の工事出来高が釣り合っているかが重要です。
「先に払えば値引き」は断る
住宅会社から次のように言われた場合は注意してください。
- 「中間金を前倒しすれば100万円値引きします」
- 「決算月なので早めに入金してほしい」
- 「資材をまとめて買うので先に払ってほしい」
- 「銀行への実績が必要なので協力してほしい」
- 「完成保証があるから先払いしても大丈夫」
前倒し払いを求める理由が、該当する住宅の工事ではなく、住宅会社の資金繰りである可能性があります。
100万円値引きされても、500万円が保証対象外になれば意味がありません。
現金払いや個人口座への振込は避ける
工事代金は、契約書に記載された法人名義の口座へ振り込みます。
避けるべき支払い方は次のとおりです。
- 営業担当者へ現金で渡す
- 代表者個人の口座へ振り込む
- 領収書を発行してもらわない
- 契約書にない関連会社へ振り込む
- 請求書と異なる口座へ振り込む
支払った記録は、倒産時の債権届出や完成保証の申請に必要になります。
振込明細、請求書、領収書はすべて保存してください。
追加工事も口約束で払わない
工事中に追加や変更が発生した場合も、先に見積書を受け取ります。
確認する項目は、
- 変更する工事内容
- 追加金額
- 減額される工事
- 支払時期
- 工期への影響
- 完成保証の対象になるか
です。
追加工事代金も、該当工事が完了してから支払うのが基本です。
完成保証は「加入予定」ではなく保証書で確認
住宅会社が完成保証制度へ登録していても、その家に完成保証が付いているとは限りません。
確認するのは、
- 保証制度の名称
- 保証会社
- 対象となる住宅
- 保証限度額
- 支払割合の条件
- 前払金の保証範囲
- 引き継ぎ費用の保証範囲
- 施主名・建築地が記載された保証書
です。
住まいるダイヤルには、住宅会社から完成保証に加入していると説明されながら、実際には対象住宅が加入していなかった相談事例もあります。
住宅リフォーム・紛争処理支援センター「施工業者が破産した事例」
住宅あんしん保証では、対象住宅ごとに審査を行い、承認後に施主へ完成保証証書を発行します。
住宅あんしん保証「住宅完成保証制度」
「当社は完成保証へ登録しています」という説明ではなく、自分の家の保証書を確認してください。
契約書に入れたい支払条件
契約前に、次のような内容を確認します。
各回の工事代金は、別紙支払予定表に定める工程が完了し、発注者が現場および必要書類を確認した後に支払う。
工程が未完了または検査未了の場合、支払予定日が到来しても支払時期を延期する。
支払条件の変更や前倒しは、発注者・受注者双方の書面合意による。
実際に契約条項へ追加する場合は、標準約款との整合性も含めて専門家へ確認してください。
契約前に聞くべき10の質問
- 契約時に何%支払いますか?
- 各支払いは、どの工程の完了後ですか?
- 工事が遅れたら支払いも延期されますか?
- 工程完了を誰が確認しますか?
- 各時点の工事出来高はいくらですか?
- 支払額が出来高を超える時期はありますか?
- 前払い分は完成保証の対象ですか?
- 保証対象外になる支払割合はいくらですか?
- 最終金は何を確認してから支払いますか?
- 私の家の完成保証書はいつ発行されますか?
この質問に数字と書面で答えられない住宅会社とは、契約を急がないでください。
デザインハウス甲府からのアドバイス
住宅会社が倒産するかどうかを、会社の大きさやモデルハウスの豪華さだけで判断することはできません。
しかし、工事より先にお金を渡さないことで、倒産時の損失は減らせます。
デザインハウス甲府では、工事の進捗から代金が大きく先行しない支払条件を設定し、全棟に完成保証を付けています。
安全な支払いとは、住宅会社を疑うことではありません。
施主のお金と、住宅会社の工事を同じ速度で進めることです。
工事が進んだ分だけ払う。
工事が止まったら、支払いも止める。
完成するまで、十分な残金を残す。
この3つが、住宅会社の倒産から家とお金を守る最も基本的な方法です。










