Q. 保証延長に指定工事が必要なのはなぜ?
A. 住宅会社が、建物の状態と修繕品質を管理したうえで、その後の責任を負うためです。ただし、指定工事を保証延長の条件にする仕組みには、将来のリフォーム工事を自社で受注し続ける囲い込みの側面もあります。
「60年保証」と聞くと、契約時から60年間の保証が確定しているように感じます。
しかし、実際には初期保証が終了した後、住宅会社による点検を受け、指定された有償メンテナンス工事を実施することで保証が延長される制度があります。
つまり、表示されている保証年数と、無条件で保証される年数は同じとは限りません。
指定工事が必要になる合理的な理由
住宅会社が保証を延長するためには、建物が一定の状態に保たれていることを確認する必要があります。
例えば、点検で防水部分の劣化が見つかったにもかかわらず、何も修繕しないまま雨漏りが発生した場合、その後の責任を住宅会社だけに負わせるのは難しくなります。
住宅会社が指定工事を求める主な理由は、次のとおりです。
- 劣化部分を保証延長前に修繕するため
- 使用する材料や工法を統一するため
- 工事品質を管理するため
- 修繕履歴を残すため
- 不具合が起きたときの責任範囲を明確にするため
- 他社工事による不具合まで保証することを避けるため
この考え方自体には合理性があります。
点検で問題が見つかっているのに何も直さず、その後も同じ保証を続けることは、住宅会社にとって大きなリスクになるからです。
「必要な工事」と「指定会社の工事」は別問題
ここで分けて考えなければならないのが、
「建物を維持するために、その工事が必要なのか」
という問題と、
「保証を延長するために、その住宅会社へ発注する必要があるのか」
という問題です。
外壁や防水の劣化が進んでいれば、修繕そのものは必要でしょう。
しかし、その工事を必ず新築時の住宅会社へ依頼しなければならないのかは、保証規程によって異なります。
他社が同じ材料、同じ工法、同等以上の施工品質で工事を行っても、保証を延長できない制度であれば、購入者は事実上、修繕会社を自由に選べません。
保証延長がリフォームの囲い込みになる理由
住宅会社にとって長期保証は、新築を受注するための安心材料であると同時に、将来の修繕工事を受注する仕組みにもなります。
例えば、
- 30年目に防水工事
- 45年目に外壁や屋根の修繕
- 一定期間ごとに防蟻工事
- 保証延長時の有料点検
- 住宅会社が必要と判断した補修工事
などを自社または指定業者が受注すれば、新築引き渡し後も継続的な売上が生まれます。
保証を失いたくない購入者は、他社より高いと感じても指定工事を断りにくくなります。
これは住宅会社にとって、非常に強い顧客維持の仕組みです。
相見積りが取りにくくなる
通常のリフォームであれば、複数の会社から見積りを取り、価格や工事内容を比較できます。
しかし、保証延長の条件として指定工事を求められる場合、選択肢は限られます。
他社の見積りが100万円安くても、
「他社で工事をした場合は保証を延長できません」
と言われれば、多くの人は保証を優先するでしょう。
その結果、価格競争が働きにくくなります。
長期保証を比較するときは、保証年数だけでなく、将来の修繕工事を自由に選べるかどうかも重要です。
指定工事を断ったらどうなる?
指定された工事を断っても、工事を強制されるわけではありません。
ただし、保証延長の条件を満たさなくなるため、その時点で保証が終了したり、延長されなかったりする可能性があります。
確認すべきなのは、どの保証が終了するのかです。
例えば、防蟻工事を断った場合に、
- 防蟻保証だけが終了するのか
- シロアリに起因する構造被害だけが対象外になるのか
- 構造・防水を含む長期保証全体が延長されないのか
では、影響が大きく異なります。
「保証が切れます」という一言だけで判断せず、対象となる部位と理由を書面で確認してください。
指定された工事がすべて緊急とは限らない
点検後に提案される工事には、性質の異なるものが含まれる場合があります。
- 今すぐ実施しないと保証できない工事
- 数年以内に必要になる予防修繕
- 美観を維持するための工事
- 快適性を高める工事
- 保証とは直接関係しないリフォーム
これらを一つの見積書で提示されると、どこまでが保証延長に必要なのか分かりにくくなります。
住宅会社には、工事項目ごとに次の区分を明示してもらいましょう。
- 保証延長に必須の工事
- 建物維持のために推奨する工事
- 希望者だけが行う工事
「おすすめ工事」と「保証に必要な工事」を混同しないことが重要です。
契約前に総額を確認する
長期保証の本当の費用は、住宅購入時の価格だけでは分かりません。
契約前に、少なくとも次の時期に想定される工事内容と費用を確認してください。
- 10年目
- 15年目
- 20年目
- 30年目
- 45年目
- 60年目
将来の物価や建物の状態によって金額は変わるため、正確な確約は難しいでしょう。
それでも、現時点の標準的な建物を前提にした概算モデルは提示できます。
「その時にならないと分かりません」だけで終わらせず、現在の価格による想定額を出してもらうべきです。
契約前に住宅会社へ聞くべき質問
長期保証を比較するときは、次の質問をしてください。
- 無条件で保証される初期保証は何年間ですか
- 保証延長は何年ごとですか
- 延長時に必要な点検は無料ですか、有料ですか
- どのような有償工事が想定されていますか
- 現在の価格で想定総額はいくらですか
- 工事は御社または指定業者でなければなりませんか
- 他社と相見積りを取れますか
- 同等の材料と工法なら他社施工でも延長できますか
- 指定工事を断ると、どの保証が終了しますか
- 必須工事と推奨工事を分けて提示してもらえますか
- 工事後の保証期間と保証範囲はどうなりますか
口頭説明ではなく、保証書と保証延長規程で確認することが大切です。
指定工事があること自体が問題ではない
指定工事が必要だから、その保証制度が悪いとは限りません。
住宅会社が責任を持って点検し、適切な材料と施工方法で修繕し、その後も保証を続けることには価値があります。
問題なのは、購入者が、
「60年間、無条件で保証される」
「点検も修繕もすべて無料」
と思い込んだまま契約することです。
また、保証延長に必要な工事内容や想定費用が契約前に説明されない場合にも注意が必要です。
長期保証は、無料の安心ではありません。将来の有償メンテナンスとセットになった制度です。
保証年数だけを比較するのではなく、指定工事の内容、発注先の自由、修繕費の総額まで比較してください。
本当に正直な住宅会社は、大きな「60年」だけでなく、それを維持するために必要な費用と条件まで契約前に説明します。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁
【参考資料】
積水ハウスは、構造躯体と雨水の浸入を防止する部分について初期30年保証を設定し、その終了後は有料点検と有償補修工事を行うことで、10年ごとに保証を延長する制度を公表しています。積水ハウス「長期保証制度(永年保証)」
大和ハウス工業は、初期保証終了後、点検・診断に基づく有料メンテナンス工事を実施した場合に保証を延長する制度を公表しています。大和ハウス工業「長期保証・アフターサポート」
ヘーベルハウスは、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、30年目以降の定期点検と同社が指定する有償補修によって保証を継続すると案内しています。ヘーベルハウス「長期保証とサービス」










