おっしゃる通りです。今は「経営状態が盤石な建築会社を探す」というより、どの会社にも一定の経営リスクがある前提で、施主のお金と工事を守る仕組みがあるかを見る時代だと思います。
住宅会社の経営状態は確認できる?
こんなご相談をいただきました
住宅会社の倒産が心配です。
契約前に決算書や会社情報を確認すれば、経営状態を判断できるのでしょうか。大手ハウスメーカーを選べば、地域工務店より安心ですか?
A. 外部から住宅会社の経営状態を完全に把握することはできません。しかも現在は、コロナ禍での借入返済、建築費・人件費の上昇、住宅着工の減少などが重なり、規模を問わず楽な住宅会社は多くありません。
大切なのは、「絶対に倒産しない会社」を探すことではありません。
万一倒産しても、工事と支払済みのお金を守れる完成保証、支払い条件、第三者検査がある会社を選ぶことです。
建築会社の経営が厳しくなりやすい理由
住宅会社は、契約金を受け取った時点ですべてが利益になるわけではありません。
その後、長期間にわたって次の支払いが続きます。
- 木材や建材の仕入れ
- 住宅設備の発注
- 職人・協力業者への工事代金
- 社員の給与
- 展示場や事務所の維持費
- 広告費
- 借入金の返済
- 税金や社会保険料
コロナ禍では、多くの中小企業が資金繰り支援を受けました。しかし、借入は返済不要のお金ではありません。
中小企業庁も、現在の中小企業について、物価高、賃金上昇、人手不足に加え、コロナ禍の融資返済などにより、経営課題が複雑化しているとしています。中小企業庁「2026年版中小企業白書」
さらに、国土交通省の建設工事費デフレーターや労務単価からも、建築費・人件費の上昇傾向を確認できます。国土交通省・建設工事費デフレーター
受注時の価格が安過ぎると、工事中の材料費上昇を住宅会社が吸収しなければなりません。売上があっても、利益と現金が残らない会社が出てきます。
黒字でも倒産することがある
決算書で利益が出ていても、手元資金が不足すれば会社は支払いを続けられません。
住宅会社では、次のような時間差が発生します。
- 施主から契約金を受け取る
- 建材や設備を発注する
- 職人へ工事代金を支払う
- 次の施主からの入金で資金を回す
受注が急減したり、工事原価が予想以上に上昇したりすると、この流れが止まります。
逆に、決算上は赤字でも、現預金や資金調達力があり、改善計画が機能していれば、直ちに倒産するとは限りません。
「黒字だから安全」「赤字だから危険」という一つの数字だけでは判断できません。
決算書を見せてもらえば分かるのか?
非上場の住宅会社では、決算書を一般消費者へ公開していないことも多くあります。
見せてもらえた場合は、税理士や金融機関経験者などへ確認する方法がありますが、一年度だけでは判断できません。
少なくとも、次の推移を見る必要があります。
- 売上高
- 営業利益
- 現預金
- 借入金
- 純資産
- 売掛金・未収入金
- 買掛金・未払金
- 3期程度の増減
- 本業から現金を生み出せているか
ただし、決算書は過去の一定時点の情報です。決算後に大きな借入や損失が発生している可能性もあります。
決算書が良いことは参考になりますが、完成までの安全を保証するものではありません。
建設業許可があっても、経営の安全証明ではない
契約前には、正式な法人名、所在地、代表者、建設業許可、建築士事務所登録などを確認してください。
ただし、建設業許可は「絶対に倒産しない会社」という認定ではありません。
国土交通省によると、一定規模以上の建設工事を営業として請け負う場合、建設業許可が必要です。一方、一定の軽微な工事のみを請け負う場合は、許可が不要なケースもあります。国土交通省「建設業の許可とは」
許可番号があることだけでなく、次の点を確認します。
- 許可が現在も有効か
- 契約相手と許可名義が一致しているか
- ホームページ上の屋号と法人名が一致しているか
- 工事を実際に管理する会社はどこか
- 契約金の振込先が契約会社名義か
別会社や個人口座への振り込みを求められた場合は、理由を確認してください。
危険を感じる兆候
一つだけで倒産を判断することはできませんが、次の兆候が重なる場合は注意が必要です。
- 相場から極端に安い価格を提示する
- 今月中の契約と多額の契約金を急がせる
- 工事の進捗以上に先払いを求める
- 支払い時期を突然早めようとする
- 協力業者や担当者が頻繁に変わる
- 工事が理由なく止まっている
- 建材や設備が予定どおり入らない
- 下請業者が現場から離れている
- アフター修理を長期間放置する
- 連絡が取れない日が増える
- 急激に店舗やエリアを拡大している
- 完成保証へ加入できない
- 総額や契約条件を書面で出さない
特に、契約直前に大幅値引きを提示し、「今日中に契約金を振り込んでください」と迫る場合は、即決しないでください。
支払いは工事の進捗に合わせる
住宅会社が倒産した際、最も危険なのは、工事の出来高以上に代金を支払っている状態です。
例えば、工事が30%しか進んでいないのに、代金の70%を支払っていた場合、未施工分の回収が難しくなる可能性があります。
契約前に次の点を確認してください。
- 契約金はいくらか
- 着工金はいくらか
- 中間金をいつ支払うか
- 各支払い時点の工事進捗
- 最終金を引き渡し前に全額払うのか
- 工事遅延時の支払いはどうなるか
- 倒産時の既払い金の扱い
住宅会社の資金繰りのためではなく、実際の工事進捗に対応した支払い条件にすることが重要です。
完成保証と瑕疵保険は別物
ここは特に間違えやすい部分です。
完成保証
工事中に住宅会社が倒産した場合、代替業者の手配や追加費用などについて、一定の条件で支援する制度です。
住宅瑕疵担保責任保険
住宅完成後、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に瑕疵が見つかった場合に備える制度です。
瑕疵保険へ加入しているから、工事中に倒産しても必ず家が完成するわけではありません。
契約前に、次の点を確認してください。
- 完成保証へ全棟加入するか
- 保証機関はどこか
- 自分の住宅も保証対象になるか
- 保証限度額
- 追加工事費や前払金の扱い
- 免責事項
- 保証書がいつ発行されるか
「完成保証制度があります」ではなく、自分の家が契約後に正式加入することを書面で確認してください。
完成保証へ加入できることも一つの判断材料
完成保証制度によっては、住宅会社側に財務審査や登録審査があります。
そのため、制度へ継続加入できていることは、一つの判断材料になります。
ただし、完成保証があれば損失が一切発生しないとは限りません。
- 保証限度額
- 代替業者との差額
- 工期の遅れ
- 仮住まい延長費
- 設備や仕様の変更
- 保証対象外となる費用
こうした負担が残る可能性があります。
保証内容を読まずに「完成保証があるから100%安心」と考えるのも危険です。
大手なら絶対に安心とは限らない
大手ハウスメーカーは、一般に資金調達力や組織力があり、中小工務店より財務情報を確認しやすい場合があります。
しかし、大手でも次のリスクはあります。
- 地域支店の統廃合
- 商品や部材の廃止
- 担当者の頻繁な異動
- グループ会社・施工会社の変更
- 長期保証を維持するための高額な有償工事
- 事業撤退や経営再編
反対に、小規模でも借入を抑え、固定費を小さくし、堅実に経営している工務店もあります。
会社規模だけで判断せず、保証、支払い、現場管理を含めて確認してください。
異常に安い会社も注意する
建築費が上がっている中で、何年も価格が変わらない会社には理由があります。
- 標準仕様を下げている
- 必要な工事を別途扱いにしている
- 契約後のオプションで利益を取る
- 協力業者へ無理な価格を求めている
- 本来必要な利益を確保できていない
企業努力で価格を抑えている場合もありますが、原価上昇を無視した安売りは、工事中の資金不足や品質低下につながる可能性があります。
価格は安ければ安全なのでも、高ければ経営が安定しているのでもありません。原価、性能、保証を含めて価格の根拠を確認してください。
デザインハウス甲府からのアドバイス
現在の建築業界で、「経営が楽な会社ばかり」と考えるのは現実的ではありません。
コロナ禍で増えた借入の返済、建材・住宅設備・人件費の上昇、職人不足、住宅着工の減少が同時に進んでいます。売上がある会社でも、利益や現金が十分とは限りません。
だからこそ、会社の「大丈夫です」という説明ではなく、施主を守る仕組みを確認する必要があります。
デザインハウス甲府では、万一に備えて全棟で完成保証を付けることを重視しています。
住宅会社を選ぶ際は、次の五点を必ず確認してください。
- 工事進捗に合った支払い条件
- 自分の住宅に付く完成保証
- 瑕疵保険との違い
- 第三者検査と工事写真
- 倒産時の連絡先と引き継ぎ方法
今の建築業界で、「絶対に倒産しない会社」を見抜くことは困難です。だから施主が選ぶべきなのは、景気の良さを語る会社ではなく、万一の倒産まで契約前に説明し、全棟を完成保証で守る会社です。










