Q. 住宅会社が倒産したら、60年保証はどうなる?
A. 住宅会社だけが責任を負う自社保証であれば、倒産後に60年保証を受け続けることは極めて難しくなります。ただし、住宅瑕疵担保責任保険、延長保証保険、設備メーカー保証など、第三者との契約で裏付けられた保証は継続できる場合があります。
「当社は60年保証なので安心です」
この言葉には、大きな前提があります。
その住宅会社が、保証期間中も存続していることです。
60年保証書を持っていても、保証する会社がなくなれば、点検、修理、保証延長を実行する相手がいなくなります。
保証書に「60年」と書かれていることと、60年間確実に修理を受けられることは同じではありません。
自社保証は住宅会社の存続が前提
住宅会社独自の長期保証は、住宅会社と住宅所有者との契約です。
保証書に住宅会社だけが保証者として記載されている場合、その会社が倒産すると、原則として次の対応が難しくなります。
- 無償点検
- 定期訪問
- 不具合の原因調査
- 無償修理
- 保証延長
- 修繕履歴の管理
- 緊急時の駆けつけ対応
保証請求権が法的に直ちに消滅するとは限りませんが、破産手続の中で債権として扱われ、実際に住宅を補修してもらえる可能性は低くなることがあります。
住宅会社の資産が不足していれば、補修費用を全額回収できるとは限りません。
保証期間が残っていても、保証を履行する会社がなければ、自社保証は実質的に機能しなくなる可能性があります。
住宅ローンはなくならない
住宅会社が倒産しても、住宅ローンの返済義務は原則として残ります。
住宅ローンは金融機関との契約であり、住宅会社との保証契約とは別だからです。
住宅会社がなくなり、
- 点検を受けられない
- 雨漏りを直してもらえない
- 設備の相談先がない
- 将来の保証がなくなる
という状態になっても、住宅ローンの支払いは続きます。
ここが住宅会社倒産の厳しい現実です。
倒産した時期によって使える制度が違う
| 倒産した時期 | 主なリスク | 確認する制度 |
|---|---|---|
| 契約後・着工前 | 支払った契約金が戻らない | 完成保証、支払条件 |
| 建築途中 | 工事中断、過払い金、追加工事費 | 住宅完成保証 |
| 引渡し後10年以内 | 構造・防水の瑕疵を直せない | 瑕疵保険または保証金供託 |
| 10年経過後 | 独自の長期保証が履行されない | 延長保証保険、第三者保証 |
| 設備保証期間中 | 設備修理の窓口を失う | メーカー保証、設備延長保証 |
| 地盤保証期間中 | 不同沈下への対応 | 地盤保証書に記載された保証者 |
「60年保証があるか」だけではなく、どの時期を、誰が、どの制度で守るのかを確認する必要があります。
瑕疵保険付き住宅なら直接請求できる場合がある
新築住宅の引渡しから10年以内で、構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分に瑕疵があり、住宅会社が倒産して補修できない場合です。
その住宅が住宅瑕疵担保責任保険へ加入していれば、住宅所有者が保険法人へ補修費用などを直接請求できる場合があります。
国土交通省の案内では、事業者倒産時などの保険金について、次の内容が示されています。
- 保険金額の上限は2,000万円以上
- 戸建住宅では免責金額が設定される場合がある
- 補修費用のほか、調査費、仮住居費、転居費なども対象になり得る
例えば、対象となる補修費用が1,000万円、免責金額が10万円の場合、国土交通省の例では990万円が支払われる計算です。
ただし、住宅会社が倒産しただけで保険金が支払われるわけではありません。
構造・防水部分に保険対象となる瑕疵があり、保険契約の条件を満たす必要があります。
キッチン、トイレ、給湯器、クロス、床の傷など、家のすべてが対象になる制度ではありません。
供託を選択した住宅会社の場合
新築住宅の資力確保方法には、瑕疵保険だけでなく、保証金を法務局などへ供託する方法もあります。
供託を選択していた住宅会社が倒産した場合、住宅所有者は一定の手続きにより供託金の還付を請求できる可能性があります。
国土交通省の案内では、まず損害賠償請求権の額について確認を受け、その後、必要書類を添えて供託所へ還付請求する流れが示されています。
保険と供託では手続きが違うため、契約時にどちらの方法を採用しているか確認しておく必要があります。
瑕疵保険が守るのは原則10年間
特に誤解が多いのは、
「瑕疵保険が付いているから、60年保証も倒産後に継続する」
という考えです。
新築住宅の一般的な瑕疵保険は、引渡しから10年間の構造・防水部分を対象とする制度です。
住宅会社が60年保証を掲げていても、当初の瑕疵保険が60年間継続するわけではありません。
10年目以降については、
- 住宅会社だけの自社保証
- 第三者による延長保証保険
- 検査と有償修繕による再保証
- 保証会社による長期保証サービス
など、会社によって仕組みが違います。
倒産時に保証が残るかどうかは、10年目以降を誰が保証しているかで決まります。
第三者機関が入っていても安心とは限らない
広告に、
「第三者機関による保証」
と書かれていても、すぐに倒産後まで安心だと判断してはいけません。
第三者機関が担当しているのが、次のどれなのかを確認する必要があります。
- 工事中の現場検査
- 瑕疵保険
- 延長保証保険
- 定期点検
- コールセンター
- 保証判定
- 補修費用の支払い
- 倒産後の保証継続
第三者が検査や点検を行うだけで、補修費用まで保証していない制度もあります。
確認すべきなのは「第三者」という言葉ではなく、倒産時の直接請求権と保証書の内容です。
住宅会社が倒産しても残る可能性がある保証
住宅会社とは別の法人が保証者となっている場合は、倒産後も保証が継続する可能性があります。
住宅設備メーカー保証
キッチン、トイレ、給湯器などのメーカー保証は、メーカーが直接保証者になっていれば、住宅会社が倒産しても継続できる場合があります。
ただし、住宅会社が独自に付けた設備延長保証とは別です。
第三者の住宅設備延長保証
保証サービス会社や保険会社が保証者になっている場合は、契約条件に従って保証が継続する可能性があります。
地盤保証
地盤会社や保証機関が連名で保証している制度では、住宅会社が倒産しても地盤保証が残る場合があります。
太陽光発電・蓄電池のメーカー保証
機器メーカーが保証者となる製品保証は残る可能性があります。
ただし、屋根への取付工事や配線工事などの施工保証は住宅会社側になっている場合があります。
防蟻保証
防蟻会社や薬剤メーカーが保証者になっていれば、一定の条件で継続できる可能性があります。
保証書ごとに、保証者と連絡先を確認してください。
フランチャイズ本部が引き継ぐとは限らない
全国ブランドの加盟店が倒産しても、フランチャイズ本部が当然に住宅の保証を引き継ぐとは限りません。
本部と加盟店は、法律上・財務上、別の法人であることが一般的です。
本部が倒産後の保証を引き継ぐためには、次のような仕組みが必要です。
- 本部が保証書の保証者になっている
- 本部と加盟店が連名で保証している
- 共済や第三者保証制度がある
- 加盟店倒産時の引継ぎ条項がある
- 別の加盟店が点検・補修する制度がある
ブランド名が残っていても、倒産した加盟店が建てた住宅の保証が残るとは限りません。
「別の住宅会社が面倒を見ます」の意味
倒産後、別の住宅会社や加盟店が、
「今後の点検や修理は当社が対応します」
と言ってくれる場合があります。
これは非常に助かる対応ですが、必ずしも元の無償保証をそのまま引き継ぐという意味ではありません。
- 点検は有料
- 修理も有料
- 保証判定は行わない
- 過去の施工部分には責任を負わない
- 新たなメンテナンス契約が必要
という条件になる可能性があります。
「対応する」と「無償保証を引き継ぐ」は別です。
倒産が分かったら最初に行うこと
住宅会社の倒産や廃業が分かったら、次の書類を確保してください。
- 工事請負契約書または売買契約書
- 建物保証書
- 瑕疵保険の付保証明書
- 地盤保証書
- 完成保証書
- 住宅設備の保証書
- 防蟻保証書
- 太陽光発電・蓄電池の保証書
- 設計図書
- 構造計算書
- 地盤調査報告書
- 工事写真
- 定期点検記録
- 修繕・メンテナンス履歴
次に、それぞれの保証書へ記載された保証法人へ直接連絡します。
瑕疵保険の保険法人が分からない場合は、引渡し時に受け取った付保証明書を確認してください。
雨漏りなど被害が拡大する不具合がある場合は、写真や動画を残し、応急措置の内容と費用を記録します。
破産手続が開始されている場合は、破産管財人から届く書類も保管してください。
契約前に確認すべき倒産対策
住宅会社へ、次の質問をしてください。
- 60年保証は自社保証ですか、第三者保証ですか
- 住宅会社が倒産した場合も保証は継続しますか
- 倒産後に直接請求できる保証機関はどこですか
- 新築住宅は瑕疵保険と供託のどちらですか
- 瑕疵保険法人の名称は何ですか
- 10年目以降も第三者保険が付いていますか
- 延長保証保険は何年ごとに加入しますか
- 設備保証の保証者は住宅会社ですか、別会社ですか
- フランチャイズ加盟店が倒産した場合、本部は保証を引き継ぎますか
- 倒産時の対応は保証書のどこに書かれていますか
「当社は倒産しません」という回答は、倒産対策ではありません。
長期保証で最も重要なのは会社の寿命
60年保証の対象範囲や有償修繕条件も重要です。
しかし、それ以前に確認すべきことがあります。
その保証は、住宅会社がなくなった後も残るのか。
自社保証だけであれば、その価値は住宅会社の経営状態と存続期間に大きく左右されます。
第三者保証であっても、保証期間、限度額、免責事項、倒産時の直接請求条件を確認しなければなりません。
長期保証を比較するときは、保証年数ではなく、次の順番で確認してください。
- 保証する法人
- 倒産時の扱い
- 第三者による資金的裏付け
- 保証対象
- 保証延長条件
- 保証限度額
60年保証で最も危険なのは、60年以内に家が壊れることだけではありません。保証する会社が先になくなることです。
大きく書かれた「60年」より、保証書に小さく書かれた「倒産時の取扱い」を確認してください。
参考:
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁










