代金を支払い済みなのに、下請業者から請求されることはある?
Q. 住宅会社へ工事代金を支払い済みなのに、その会社が倒産した後、下請業者や資材業者から「代金を払ってほしい」と請求されることはありますか?
A. 請求されることはあります。しかし、施主と下請業者に直接の契約がなければ、元請住宅会社の未払い分を施主が自動的に二重払いする義務は原則としてありません。請求されたからといって、その場で支払ったり、支払確約書へ署名したりしないでください。
施主は住宅会社へ2,000万円支払った。
ところが住宅会社は、基礎業者、大工、電気業者、設備業者へ代金を払わないまま倒産した。
このような場合、下請業者が現場へ来て、施主へ次のように求めることがあります。
「元請から一円ももらっていません」
「施主さんから払ってもらえなければ、工事を続けられません」
「現場に置いた設備を引き揚げます」
施主からすれば、すでに住宅会社へ支払っているため、納得できない話です。
下請業者との契約相手は住宅会社
一般的な一括請負契約では、契約関係は次のようになっています。
- 施主と元請住宅会社:工事請負契約
- 元請住宅会社と下請業者:下請工事契約
- 元請住宅会社と資材業者:資材購入契約
施主が工事代金を支払う相手は、工事請負契約を結んだ元請住宅会社です。
下請業者の工事代金を支払う義務を負うのは、下請契約を結んだ元請住宅会社です。
住まいるダイヤルも、元請業者と施主の間で工事契約が締結され、施主と下請業者の間に契約関係がなければ、原則として下請業者へ直接責任を求めることはできないと説明しています。逆にいえば、通常は下請業者も、契約関係のない施主へ元請の債務をそのまま請求できるわけではありません。
住宅リフォーム・紛争処理支援センター「元請と下請の契約関係」
請求書が届いても、支払義務が確定したわけではない
下請業者から請求書が届いたとしても、それだけで施主に支払義務が発生するわけではありません。
まず、請求の根拠を確認します。
- 誰が工事を発注したのか
- 見積書や注文書は誰の名義か
- 請求書の宛名は誰か
- 施主が直接発注した工事が含まれていないか
- 元請住宅会社から直接払いの指示があったか
- 三者間の支払合意書が存在するか
- 債権譲渡の通知が届いていないか
単に「あなたの家を工事したのだから払ってください」という理由だけで支払わないでください。
施主に支払義務が生じる可能性があるケース
次の場合は、施主が支払う必要がある可能性があります。
1.施主が下請業者へ直接工事を頼んだ
住宅会社を通さず、施主が電気業者や外構業者へ直接、
「ここにコンセントを追加してください」
「この部分も工事してください」
と依頼し、金額にも合意していた場合です。
口頭でも契約が成立する可能性があるため、「注文書へ署名していないから大丈夫」とは限りません。
2.元請・下請・施主の三者で直接払いに合意した
元請住宅会社の指示で、下請代金を施主から下請業者へ直接支払う三者合意を結んでいる場合です。
ただし、その支払いが元請への工事代金から差し引かれるのか、追加負担なのかを確認する必要があります。
3.施主が支払保証をしていた
施主が下請業者に対して、元請が払わなければ自分が支払うという保証書や確約書へ署名していた場合です。
倒産後に下請業者から、
「工事を再開するために必要な書類です」
と言われても、内容を確認せず署名してはいけません。
4.引き継ぎ後の工事を新しく契約した
倒産後、同じ下請業者へ残工事を直接依頼した場合、その新しい工事代金は施主が支払います。
ただし、これは倒産会社の未払い分を払うのではなく、工事再開後の新しい契約に対する支払いです。
旧工事の未払い分と、新しく依頼する残工事費を分けて見積もってもらう必要があります。
「払わなければ工事を続けない」と言われたら?
下請業者にも、元請住宅会社から数百万円を支払ってもらえない深刻な事情があります。
しかし、その損失を契約関係のない施主がそのまま負担する必要があるとは限りません。
同じ下請業者に工事を再開してもらう場合は、次の内容を書面にします。
- 新しく依頼する工事範囲
- 工事金額
- 旧元請に対する未払い金との区別
- 既施工部分の扱い
- 工事保証の範囲
- 工期
- 追加費用が発生する条件
- 支払時期
- 完成保証機関・破産管財人との調整
「前の未払い分も払ってくれれば工事を再開する」という条件を受け入れると、施主が実質的に二重払いすることになります。
現場の資材を持っていかれる可能性
特に注意が必要なのが、現場に置かれている資材や設備です。
- キッチン
- ユニットバス
- 給湯器
- サッシ
- 木材
- 足場
- 建設機械
- 仮設トイレ
これらが誰の所有物なのかは、代金の支払い状況、納品状況、設置状況、契約条件によって異なります。
住宅会社へ代金を支払ったからといって、現場にあるすべての資材が当然に施主のものになるとは限りません。
一方、資材業者が「未払いだから持って帰る」と主張しても、その場で自由な持ち出しを認めてよいとは限りません。
持ち出しを求められたら、
- 現場と資材を写真・動画で記録する
- 品名・数量・製造番号を確認する
- 納品書と発注書を確認する
- 所有権を主張する根拠を書面でもらう
- 破産管財人や完成保証機関へ連絡する
- 弁護士などの専門家へ相談する
という順番で対応します。
その場で口論したり、現金を渡して解決したりしないでください。
施主が支払ったお金はどこへ消えた?
施主から元請住宅会社へ支払われた工事代金が、そのまま該当現場の下請業者へ支払われるとは限りません。
資金繰りが悪化した住宅会社では、新しい契約から受け取ったお金を、
- 過去現場の未払い
- 会社の借入返済
- 給与
- 事務所家賃
- 他現場の資材代
に充てている場合があります。
その結果、
施主は住宅会社へ支払い済み
下請業者は住宅会社から未回収
家は未完成
という最悪の状態が起こります。
国土交通省も、元請の倒産が下請業者へ与える影響は大きく、下請債権の保全が課題になるとしています。
国土交通省「下請債権保全策に関する参考資料」
下請業者から請求されたときの対応
すぐにしてはいけないこと
- 現金を渡す
- 支払確約書へ署名する
- 元請の未払いを自分が払うと約束する
- 資材の持ち出しを口頭だけで認める
- 既施工部分を勝手に解体させる
- 新しい工事を口約束で依頼する
確認すること
- 下請業者の会社名と担当者
- 元請から受注した工事内容
- 元請との注文書・請書・請求書
- 未払い金額
- 施主へ請求する法的・契約上の根拠
- 現場資材の所有権
- 今後の工事継続条件
- 破産管財人と完成保証機関の見解
下請業者の事情は聞きながらも、旧元請への請求と施主への請求を混同させないことが重要です。
支払う場合も「二重払い」にしない
同じ下請業者に工事を続けてもらうため、施主が新たに代金を支払うことはあります。
その場合は、
旧元請住宅会社の未払い金を肩代わりする支払いなのか
倒産後の残工事を新しく依頼する支払いなのか
を明確に分けます。
新しく支払う金額については、元の工事未払残高、工事出来高、完成保証からの補填額と合わせて精算する必要があります。
ここを曖昧にすると、同じ工事に対して元請と下請へ二重に支払うことになります。
デザインハウス甲府からのアドバイス
契約前に住宅会社へ、次の質問をしてください。
「私が支払った工事代金は、工程に合わせて下請業者へ支払われますか?」
「倒産時に下請業者から直接請求された場合、誰が対応しますか?」
「現場にある資材の所有権は、契約書に明記されていますか?」
「全棟に完成保証書が発行されますか?」
デザインハウス甲府では、工事の進捗から代金が大きく先行しない支払条件とし、全棟に完成保証を付けています。
施主が一度払った代金を、下請業者からもう一度求められる状態を防ぐには、住宅会社の「信用しています」という言葉だけでは足りません。
請求書が届いたことと、施主に支払義務があることは別です。
元請住宅会社へ支払い済みなら、その場で二重払いせず、契約関係と請求根拠を必ず確認してください。










