二世帯住宅で、親と子が別々の銀行から住宅ローンを借りることはできますか?
Q
58歳です。親との二世帯住宅へ建替える予定です。親世帯と子世帯で建築費を分担するため、それぞれ別の銀行から住宅ローンを借りたいと考えています。このような借り方は可能でしょうか?
結論
親と子が、それぞれ住宅ローンを組むこと自体は可能な場合があります。
ただし、同じ二世帯住宅に対して、親と子が別々の銀行から借りる方法は、実務上かなり難しいと考えてください。
一つの土地・建物に対して、どちらの銀行も第一順位の抵当権を求めることが多く、銀行同士の調整が成立しにくいからです。
現実的なのは、次のいずれかです。
- 同じ金融機関で親子ペアローンを組む
- 親子の収入を合算して一本のローンを組む
- 親子リレー返済を利用する
- 子どもだけがローンを組み、親は自己資金を出す
- 建物を区分登記し、それぞれの区分へ別融資を受ける
ただし、5番目も土地や担保の問題があるため、簡単ではありません。
「別々の銀行」と「ペアローン」は同じではない
ペアローンとは、親と子がそれぞれ別の住宅ローン契約を結び、同じ住宅を取得する仕組みです。
一般的には、同じ金融機関で二本のローンを組みます。
- 親:1,000万円
- 子:2,000万円
- 合計:3,000万円
というように、それぞれが借入れと返済を行います。
フラット35にも、一つの物件に対して、夫婦・親子・パートナーなどがそれぞれ単独で申し込み、二つのフラット35を併せて利用するペアローンがあります。フラット35「商品ラインナップ」
一方、親はA銀行、子はB銀行という借り方は、一般的なペアローンとは別に考える必要があります。
なぜ別々の銀行では難しいのか?
住宅ローンを融資する銀行は、返済不能に備えて土地と建物へ抵当権を設定します。
同じ不動産へ二つの銀行が融資する場合、
- A銀行が第一順位
- B銀行が第二順位
という抵当権の順位が生じます。
競売や売却になった場合は、原則として第一順位の銀行から優先して返済されます。第二順位の銀行は融資金を回収できない可能性が高くなるため、別の銀行がすでに抵当権を設定する物件への融資を避ける傾向があります。
「親世帯分と子世帯分で費用を分ければよい」という家族側の考えだけでは決められません。
区分登記なら別々の銀行で借りられる?
完全分離型の二世帯住宅を、
- 親世帯部分:親名義
- 子世帯部分:子名義
として区分登記できれば、それぞれの区分へ別のローンを組める可能性はあります。
ただし、次の問題があります。
- 区分登記できる間取りか
- 土地の所有権や敷地権をどう分けるか
- 各銀行がどこまで抵当権を設定するか
- 一方の区分だけで十分な担保評価が出るか
- 建築工事代金を明確に区分できるか
- 片方だけ競売になった場合に処分できるか
地方の二世帯住宅では、親世帯部分だけ、子世帯部分だけを売却することは容易ではありません。そのため、区分登記をしても銀行が担保価値を低く評価する可能性があります。
山梨県では住宅の再販性も考慮されるため、「区分登記すれば二つの銀行から借りられる」とは限りません。
現実的なのは同じ銀行でのペアローン
同じ銀行であれば、土地・建物全体へ一体として抵当権を設定し、親子二本のローンを管理できます。
親と子はそれぞれ債務者となり、一般的には互いに連帯保証人になるなど、金融機関が定める条件に従います。
メリット
- 親子それぞれの収入を生かせる
- 借入額と返済負担を分けられる
- 条件を満たせば、それぞれ住宅ローン控除を受けられる可能性がある
- それぞれ団信へ加入できる可能性がある
デメリット
- ローン契約が二本になる
- 事務手数料や登記費用などが増える
- 親子とも審査に通る必要がある
- 片方の収入減少が家全体の返済へ影響する
- 将来、一本だけ借り換えるのが難しい場合がある
- 売却には両者と金融機関の調整が必要
借入可能額が増えることをメリットと考えがちですが、親子で二本借りれば、家族全体の借金が増えることに変わりはありません。
団信で消えるのは原則として本人のローンだけ
親と子がそれぞれローンを組み、それぞれ団体信用生命保険へ加入した場合、親が亡くなっても、一般的には親のローンだけが保険で完済されます。子どものローンは残ります。
反対に、子どもが亡くなった場合も、親のローンは残ります。
たとえば、
- 親のローン:1,000万円
- 子のローン:2,000万円
で、親が団信の対象となって亡くなれば、親の残債は完済されても、子の2,000万円はそのまま返済が続きます。
団信の保障内容や加入できる年齢は金融機関によって異なります。親が健康状態や年齢によって団信へ加入できない場合、希望するローンを利用できないこともあります。
親の完済年齢を必ず確認する
58歳の親が20年ローンを組めば、完済時は78歳です。
現在は収入があっても、数年後には給与から年金へ変わる可能性があります。審査に通るかだけでなく、退職後も返済を続けられるかを確認しなければなりません。
たとえば、親が1,000万円を金利2%・20年で借りると、毎月返済は概算で約5万1,000円です。年金生活になってからも、この返済に固定資産税、保険、修繕費、医療・介護費が加わります。
「親も借りられるから借りてもらう」という考え方は危険です。
親子リレー返済という選択肢
親子リレー返済は、親が申込人となり、子どもなど一定の条件を満たす後継者が返済を引き継ぐ仕組みです。
フラット35では、要件を満たす後継者を設定することで、申込人が満70歳以上でも利用できる制度があります。フラット35「親子リレー返済」
ただし、親の返済が終わったら自動的に子どもへ切り替わる単純な制度ではありません。子どもは当初から返済責任を負い、将来の自分の住宅ローン審査へ影響する可能性があります。
子どもが将来別の家へ住み替える可能性がある場合は、慎重に判断します。
収入合算との違い
収入合算は、ローン契約を基本的に一本にし、親または子の収入を合算して審査を受ける方法です。
ペアローンより契約本数を減らせるため、諸費用を抑えやすいメリットがあります。一方、団信へ加入できる人や住宅ローン控除を受けられる人は、契約形態によって異なります。
| 借り方 | ローン本数 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 単独ローン | 1本 | 一人の収入で審査 |
| 収入合算 | 原則1本 | 親子の収入を審査に利用 |
| 親子リレー | 1本 | 二世代で返済 |
| ペアローン | 2本 | 親子がそれぞれ債務者 |
| 別銀行ローン | 2本 | 抵当権調整が難しく、実現性は低い |
建築費と持分を一致させる
親と子がそれぞれ資金を負担する場合、建物の持分も負担割合に合わせることが基本です。
建築総額3,000万円を、
- 親:1,000万円
- 子:2,000万円
負担するなら、単純な考え方では建物持分も、
- 親:3分の1
- 子:3分の2
とします。
実際の負担と登記持分が異なると、親子間の贈与と判断される可能性があります。
頭金、住宅ローン、諸費用、親から子への資金援助まで一覧にし、税理士と司法書士へ確認してください。
親名義の土地にも抵当権が付く可能性がある
土地が親名義で、建物が親子共有の場合でも、銀行は土地・建物全体へ抵当権を求めることがあります。
親がローンを組まなくても、土地所有者として担保提供を求められる可能性があります。子どもが返済できなければ、親の土地も売却・競売の対象になり得ます。
親は「名前を貸すだけ」ではありません。どのローンに対し、土地のどこまで担保提供するのかを確認します。
片方が審査に通らなかった場合も想定する
二世帯住宅の計画では、建物を大きく設計してからローン審査を行うケースがあります。
しかし、親が年齢や健康状態で審査に通らなければ、子ども一人の借入額で建築総額を賄わなければなりません。
契約前に、次の3案を試算しておきます。
- 親子ともに借りられる場合
- 子どもだけが借りる場合
- 借入額を減らして建物を小さくする場合
ローンが一つ通らないだけで建替え全体が止まる計画は危険です。
金融機関へ確認する項目
- 親子ペアローンを利用できるか
- 同じ物件へ別銀行の融資を併用できるか
- 親の完済時年齢
- 親子それぞれ団信へ加入できるか
- 収入合算と親子リレーの違い
- 土地・建物の抵当権の範囲
- 区分登記が必要か
- 建物持分をどう設定するか
- 住宅ローン控除の対象
- 片方が死亡した場合の残債
まとめ
親と子が別々に住宅ローンを組むことは可能ですが、別々の銀行から同じ土地・建物へ融資を受ける方法は、抵当権の問題から現実的ではないケースが多くなります。
デザインハウス甲府では、親子それぞれの年齢、収入、年金、自己資金、団信、土地と建物の名義まで確認し、複数の借り方を比較します。
特にシニア世代では、借入可能額を増やすために親のローンを追加するのではなく、親が年金生活になっても返せる総額に抑えることが重要です。
二本のローンを組めば予算は増えます。しかし、家族の返済能力が増えたわけではありません。
どの銀行からいくら借りられるかより、親が亡くなった後、子どもの収入が下がった後も、その家を無理なく残せるかまで考えて決めるべきです。










