気密と光熱費の関係とは?
結論から言うと、住宅の気密性を高めると、隙間から逃げる熱を減らせるため、冷暖房費を抑えやすくなります。
ただし、「C値を0.5にすれば電気代が毎月いくら下がる」と一律には言えません。
住宅の光熱費は、気密だけではなく、次の条件によって決まります。
- 断熱性能
- 窓と玄関ドアの性能
- 建物の大きさと間取り
- 日射取得と日射遮蔽
- 換気方式
- 冷暖房・給湯設備の効率
- 太陽光発電の有無
- 家族構成と暮らし方
- 電気料金や気象条件
気密は光熱費を左右する重要な性能ですが、数ある条件の一つです。
気密性が低い家では熱が逃げる
住宅の隙間から意図せず空気が出入りすることを「漏気」といいます。
冬は、暖房で暖めた室内の空気が隙間から外へ逃げ、その分だけ冷たい外気が室内へ入ります。夏は、冷房した空気が逃げる一方で、高温多湿な外気が入り込みます。
この状態では、エアコンが室温を保つために運転を続けることになり、冷暖房に必要なエネルギーが増えやすくなります。
気密性を高める目的は、住宅を密閉して空気を動かなくすることではありません。
意図しない隙間風を抑え、必要な空気は換気設備から計画的に入れ替えることです。
国土交通省の高断熱住宅に関する設計ガイドでも、気密化の目的の一つとして、漏気による熱損失を抑えることが示されています。
気密性能はC値で確認する
気密性能は「C値」で表します。
C値は床面積1㎡当たりにどれくらいの隙間があるかを示す数値で、単位は㎠/㎡です。数値が小さいほど、住宅全体の隙間が少ないことを表します。
例えば床面積100㎡の住宅の場合、C値1.0なら隙間の合計は100㎠相当、C値0.5なら50㎠相当です。
ただし、C値は設計図や断熱材の種類から計算できません。実際に完成する隙間の大きさは、配管や配線の貫通部、窓まわり、壁と床の接合部などの施工精度によって変わります。
そのため、専用の機械を使った気密測定が必要です。
詳しくは、C値とは?をご覧ください。
C値が良ければ光熱費は必ず安くなるのか?
C値が小さいほど漏気による熱損失は抑えやすくなりますが、それだけで光熱費が決まるわけではありません。
例えば、C値0.5でも窓の断熱性能が低ければ、窓から多くの熱が出入りします。断熱材が不足していれば、屋根、壁、床を通して熱が逃げます。
反対に、断熱性能が高くても、C値が悪ければ隙間から外気が入り込み、断熱材の効果を十分に生かせません。
重要なのは、UA値とC値をセットで確認することです。
- UA値:屋根・壁・床・窓などを通して逃げる熱の割合
- C値:建物の隙間の大きさ
断熱は熱の移動を抑え、気密は空気の移動を抑えます。高気密高断熱はセットなのか?でも、この違いを解説しています。
換気によって逃げる熱も考える
気密性を高めても、24時間換気は必要です。
換気では、室内の空気を外へ排出し、外の空気を取り入れます。冬に暖かい空気を排出し、冷たい空気をそのまま入れれば、その分だけ暖房負荷が増えます。
そこで、高断熱・高気密住宅では、排気する空気の熱を回収して給気へ移す熱交換換気が選択肢になります。
ただし、第一種熱交換換気を設置すれば、必ず光熱費が大幅に下がるわけではありません。
実際の省エネ性は、次の条件に左右されます。
- 熱交換効率
- ファンの消費電力
- ダクトの長さや曲がり
- 給排気口の配置
- フィルターの汚れ
- 建物の気密性能
- 運転設定と使用状況
換気設備の価格だけでなく、熱損失、消費電力、快適性、メンテナンスまで含めて判断する必要があります。第一種換気は元が取れる?も参考にしてください。
光熱費の比較で注意したいこと
住宅会社から「高気密住宅なら光熱費が半分になる」「年間○万円得をする」と説明された場合は、その計算条件を確認してください。
光熱費の試算は、前提を変えるだけで結果が大きく変わります。
少なくとも、次の条件を確認する必要があります。
- 建築する地域
- 延床面積と間取り
- 家族の人数
- 冷暖房する範囲と時間
- エアコンの設定温度
- 給湯方式
- 電気料金の単価
- 太陽光発電を含むか
- 売電収入を含むか
特に、太陽光発電による電気代削減と、断熱・気密による省エネ効果は分けて考えるべきです。
太陽光発電は電気をつくる設備です。断熱と気密は、住宅で使うエネルギーそのものを減らすための性能です。
発電量が多く、電気代の支払いが少ない住宅でも、断熱・気密性能が高いとは限りません。
冷暖房費だけでなく「快適性」も見る
気密性能を考えるとき、光熱費だけに注目すると本当の価値を見落とします。
気密性の高い住宅では、隙間風を抑えやすく、室温を安定させやすくなります。そのため、同じ室温設定でも、足元の冷えや不快な気流を感じにくい環境をつくれます。
気密性の低い住宅では、暖房費をかけて室温を上げても、床付近が寒かったり、窓やコンセントまわりから冷気を感じたりすることがあります。
つまり気密の価値は、単純な「何年で元が取れるか」だけではありません。
- 少ない冷暖房で室温を保ちやすい
- 部屋ごとの温度差を抑えやすい
- 隙間風による不快感を減らせる
- 計画換気を機能させやすい
- エネルギー価格上昇の影響を受けにくくする
建築時の差額だけでなく、住み始めてからの快適性と維持費を含めて判断することが大切です。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、光熱費を抑えるために気密だけを高めるのではなく、断熱・気密・換気を一体で設計しています。
基本としている性能は次のとおりです。
- 断熱等性能等級6
- UA値0.46以下
- C値0.7以下
- 全棟気密測定
- 第一種熱交換換気
- 熱回収率92%
山梨県は、冬の朝晩が冷え込み、夏は高温になる地域です。
断熱性能を高めても、隙間から空気が出入りすれば冷暖房効率は低下します。一方で、気密性だけを高めても、断熱や換気が不十分なら快適な住環境にはなりません。
そのため、設計上のUA値と、現場で実測するC値の両方を確認します。
俺流ポイント
私はお客様に、
「電気代が安くなるという言葉だけで、高気密住宅を選ばないでください」
とお話ししています。
光熱費は、未来の電気料金や家族の暮らし方によって変わります。住宅会社が一定額を保証できるものではありません。
しかし、建物から逃げる熱を減らすことはできます。
高性能なエアコンを選ぶ前に、熱を逃がしにくい住宅をつくる。
太陽光発電で電気をつくる前に、使う電気を減らす。
カタログの高気密という言葉ではなく、全棟気密測定で確認する。
これが、光熱費で後悔しないための順番です。
住宅会社を比較するときは、「電気代はいくら安くなりますか」だけでなく、UA値、C値、気密測定、換気方式、試算条件まで確認してください。
C値だけを競うのではなく、断熱・気密・換気・設備を総合的に見ることが、長期的に家計を守る家づくりにつながります。










