Q. なぜ収納が足りなくなるのか?
A. 収納の面積だけを増やし、「何を・どこで・どのように使うか」を決めていないからです
新築時には十分だと思った収納が、数年後には物でいっぱいになる。
これは収納面積が小さいことだけが原因ではありません。
収納不足が起こる主な理由は、
- 持ち物の量を把握していない
- 収納する物を決めずに間取りを作る
- 使う場所と収納場所が離れている
- 棚の奥行きや高さが物に合っていない
- 通路部分が多く、実際に置ける量が少ない
- 子どもの成長や家族構成の変化を考えていない
- 不要な物を手放す仕組みがない
からです。
収納は、坪数や畳数だけでは判断できません。
重要なのは収納面積ではなく、「必要な場所へ、必要な形で、実際にどれだけ収納できるか」です。
1. 現在の持ち物を確認せずに設計している
収納不足になる最大の原因は、自分たちが持っている物の量を把握していないことです。
住宅会社から、
「収納は多めに取ってあります」
「各部屋にクローゼットがあります」
と言われると、安心してしまいます。
しかし、収納する物を確認しなければ、本当に足りるかは分かりません。
例えば、同じ4人家族でも、
- 洋服が多い
- 靴を集めている
- キャンプ用品がある
- ゴルフやスキーをする
- 季節家電が多い
- 子どもの作品を残したい
- 防災備蓄をしている
- 来客用布団がある
など、必要な収納量は大きく異なります。
間取りを作る前に、現在の持ち物を分類してください。
- 衣類
- 靴
- 布団
- 食品
- 食器
- 家電
- 掃除用品
- 洗剤
- 書類
- 本
- おもちゃ
- 趣味用品
- 季節用品
- 防災用品
- 屋外用品
可能であれば、現在使っている収納の幅、高さ、奥行きを測ります。
「押入れ1か所分」「衣装ケース12個分」といった具体的な量にすると、必要な収納を設計しやすくなります。
2. 収納率だけで判断している
住宅では、収納面積を延床面積で割った「収納率」が使われることがあります。
収納率は一つの目安になりますが、数字だけで使いやすさは判断できません。
例えば、同じ3畳の収納でも、
- 棚が付いている
- ハンガーパイプがある
- 奥まで手が届く
- 通路が少ない
- 使う場所の近くにある
収納と、
- 棚がない
- 奥行きが深過ぎる
- 通路部分が大きい
- 物を重ねなければ入らない
- 家の端にある
収納では、実際に使える量が違います。
「収納率12%です」と説明されても、その12%にウォークインクローゼットの通路部分が多く含まれていれば、思ったほど物は入りません。
確認するべきなのは、収納面積ではなく棚やパイプの長さです。
3. ウォークインクローゼットの通路を収納だと思っている
ウォークインクローゼットは人気があります。
しかし、必ずしも最も収納量が多い方法ではありません。
人が中へ入るためには、幅60~80cm程度の通路が必要です。
例えば3畳のウォークインクローゼットでも、その一部は歩くための空間です。
同じ面積なら、壁面クローゼットの方が収納量を確保できる場合があります。
| 比較項目 | ウォークインクローゼット | 壁面クローゼット |
|---|---|---|
| 見た目 | 独立した収納空間になる | 居室の壁に沿って配置 |
| 通路 | 内部に必要 | 居室側を利用 |
| 収納量 | 通路部分が減る | 壁面全体を使いやすい |
| 物の確認 | 奥が見えにくい場合がある | 一覧しやすい |
| 向いている物 | 衣類、バッグ、大型用品 | 衣類、日用品、小物 |
ウォークインクローゼットが悪いわけではありません。
家族全員の衣類をまとめる、着替える場所として使う、回遊動線に組み込むなど、目的が明確なら便利です。
問題は、「流行しているから」という理由だけで採用することです。
4. 奥行きが物に合っていない
収納は、深ければ多く入るとは限りません。
奥行きが深過ぎると、手前に置いた物で奥が見えなくなります。
その結果、
- 同じ物を何度も買う
- 消費期限が切れる
- 奥の物を取り出せない
- 物を重ねてしまう
- 何が入っているか分からない
という問題が起こります。
収納する物によって、使いやすい奥行きは異なります。
| 収納する物 | 奥行きの目安 |
|---|---|
| 文庫本・小物 | 約15~20cm |
| 食品・日用品 | 約30~45cm |
| 食器 | 約30~45cm |
| 衣類をたたんで収納 | 約40~45cm |
| ハンガーに掛ける衣類 | 約55~60cm |
| 布団・大型用品 | 約75~90cm |
数値は収納用品や物の大きさによって変わります。
重要なのは、収納を先に作ってから物を入れるのではなく、入れる物に合わせて奥行きを決めることです。
5. 棚が少なく、空間を使い切れていない
収納内部に棚がなければ、床に物を置くことになります。
上部に大きな空間が残り、収納の高さを使い切れません。
一方、棚の間隔が固定されていると、収納する物が変わったときに対応できないことがあります。
おすすめは、棚の高さを変えられる可動棚です。
可動棚なら、
- 食品
- 洗剤
- タオル
- 書類
- ランドセル
- おもちゃ
- 収納ケース
など、物の大きさに合わせて調整できます。
棚板の枚数を減らして見積価格を安く見せる住宅会社もあります。
収納空間だけがあり、棚やパイプがオプションなら、完成後に追加費用が発生します。
契約前に、
- 棚板は何枚付くか
- 可動棚か固定棚か
- ハンガーパイプは何mあるか
- 枕棚は付くか
- 収納内部のコンセントはあるか
まで確認してください。
6. 使う場所と収納場所が離れている
収納は、家全体のどこかかにあればよいものではありません。
物は使う場所の近くに収納しなければ、元へ戻さなくなります。
例えば、掃除機を寝室のクローゼットへ収納していると、リビングを掃除するたびに取りに行かなければなりません。
子どものランドセル置き場が2階の子ども部屋にしかなければ、1階のリビングへ置きっぱなしになる可能性があります。
物が散らかるのは、家族が片付けられないからとは限りません。
収納場所が生活動線に合っていないことが原因の場合があります。
| 使う物 | 収納する場所 |
|---|---|
| 靴、傘、外遊び用品 | 玄関 |
| 上着、バッグ | 玄関・リビング付近 |
| 食品、飲料水 | キッチン・パントリー |
| 掃除機 | 家の中央や掃除動線上 |
| タオル、下着 | 洗面・脱衣室 |
| 洗剤 | 洗濯機付近 |
| ランドセル、教材 | 帰宅動線・学習場所付近 |
| 防災用品 | 玄関・取り出しやすい場所 |
| 季節用品 | 使用頻度の低い収納 |
「使う」「戻す」が最短距離になるように配置することが、片付く家の基本です。
7. 玄関収納が靴の数だけで決められている
玄関に収納する物は、靴だけではありません。
家庭によっては、
- 傘
- ベビーカー
- 三輪車
- 外遊び用品
- ゴルフバッグ
- キャンプ用品
- 防災用品
- コート
- ヘルメット
- 雨具
- 宅配用の印鑑
- 段ボール
なども収納します。
靴箱だけで計画すると、これらの物が玄関へ出たままになります。
シューズクロークを採用する場合も、広さだけでなく使い方を決める必要があります。
家族用の通り抜け動線を設けると便利ですが、その分だけ収納できる壁面が減ります。
玄関をすっきり見せるために作ったシューズクロークが、通路ばかりで物が入らない設計になってはいけません。
8. パントリーを大きくし過ぎている
食品庫として使うパントリーも人気があります。
しかし、大きくすれば家事が楽になるとは限りません。
奥行きの深い棚へ食品を重ねると、在庫を把握できなくなります。
収納が広いことで安心し、必要以上に買い置きを増やすこともあります。
その結果、
- 同じ調味料を買う
- 賞味期限が切れる
- 奥にある物を忘れる
- 収納用品が増える
- 物を探す時間が増える
という問題が起こります。
パントリーは、キッチンから近く、棚が浅く、見渡せる形が使いやすい傾向があります。
大きさより、何を何日分保管するのかを決めることが重要です。
9. 洗面・脱衣室の収納が不足している
現在は、洗う、干す、畳む、収納するという洗濯動線を短くしたい家庭が増えています。
しかし、洗面脱衣室へ洗濯機を置いただけでは、家事は完結しません。
実際には、
- 洗剤
- ハンガー
- タオル
- 下着
- パジャマ
- 家族の普段着
- バスマット
- 掃除用品
- ドライヤー
- 化粧品
などを収納する場所が必要です。
ファミリークローゼットを設ける場合も、家族全員の衣類が本当に入るか確認してください。
「3畳あれば大丈夫」ではなく、必要なハンガーパイプの長さと棚の量を計算するべきです。
10. 子どもの成長による物の増加を考えていない
子どもが小さいときは、衣類も靴も小さく、必要な収納量も少なく見えます。
しかし、成長すると、
- 制服
- 通学バッグ
- 部活動用品
- 教科書
- 学習教材
- スポーツ用品
- 趣味用品
- 大人と同じサイズの衣類
が増えていきます。
兄弟姉妹がいれば、その量はさらに増えます。
一方で、ベビーベッド、ベビーカー、幼児用玩具など、成長とともに不要になる物もあります。
収納は、今の状態だけで固定しないことが重要です。
棚の高さを変更できる、収納の一部を別の用途へ転換できるなど、将来に対応できる設計が必要です。
11. 収納が多いほど物も増える
収納を増やせば、収納不足が必ず解消するわけではありません。
空いている収納があると、人は安心して物を増やしやすくなります。
- 安いときにまとめ買いする
- 使うか分からない物を残す
- 同じ物を複数所有する
- 収納ケースを追加する
- 空いている場所へとりあえず入れる
この状態を繰り返せば、どれだけ収納を作っても足りなくなります。
収納不足を解消するには、家を大きくするだけでなく、
- 1つ買ったら1つ手放す
- 保管期限を決める
- 年に1回見直す
- 思い出の品の保管量を決める
- レンタルや外部サービスも検討する
といった管理方法も必要です。
住宅会社が、家族の持ち物の整理まで行うことはできません。
収納計画と物量管理の両方が必要です。
12. 収納を増やすために家を大きくしている
収納が足りないと感じると、床面積を増やそうと考えます。
しかし、1坪増やすと建築費だけでなく、
- 基礎
- 屋根
- 外壁
- 断熱材
- 内装
- 電気工事
- 固定資産税
- 将来の修繕費
も増えます。
仮に収納のために2坪増やし、建築費が120万円上がったとします。
この120万円を金利1.5%、35年の住宅ローンで借りると、総返済額は概算で約154万円です。
さらに、将来の外壁や屋根の修繕対象も大きくなります。
収納を増やす前に、
- 通路部分を減らせないか
- 壁面収納へ変更できないか
- 棚の奥行きを適正化できないか
- 建具の開き方を変更できないか
- 不要な物を減らせないか
を検討してください。
面積を増やさなくても、設計によって収納量を増やせる場合があります。
収納計画で比較するべき数字
「収納が多い」という感覚的な説明ではなく、次の数字を確認してください。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 収納面積 | 収納全体の床面積 |
| 有効収納面積 | 通路を除いて実際に使える面積 |
| 棚の総延長 | 棚板を横に並べた長さ |
| ハンガーパイプの総延長 | 衣類を掛けられる長さ |
| 収納の奥行き | 入れる物に適しているか |
| 高さ | 上部空間を活用できるか |
| 収納場所 | 使う場所の近くにあるか |
| 可変性 | 将来、棚や用途を変更できるか |
収納の畳数だけでなく、棚とパイプの長さを図面へ記載してもらうことをおすすめします。
収納計画を始める前の確認項目
- 現在の収納には何が入っていますか
- 現在使っている収納の幅・高さ・奥行きはどのくらいですか
- 新居へ持っていかない物は何ですか
- 靴は家族全員で何足ありますか
- ハンガーに掛ける衣類は何m分ありますか
- 布団は何組保管しますか
- 食品は何日分備蓄しますか
- 防災用品をどこへ収納しますか
- 掃除機をどこで使い、どこへ戻しますか
- ランドセルや通勤バッグをどこへ置きますか
- 洗濯物をどこで畳み、どこへ収納しますか
- 季節家電をどこへ保管しますか
- 趣味用品は今後増えますか
- 子どもの成長で何が増えますか
- 収納内部の棚とパイプは見積りに含まれていますか
- 通路を除いた実際の収納量はどのくらいですか
- 面積を増やさずに収納量を増やせませんか
ここまで確認すれば、「完成してから物が入らない」という失敗を減らせます。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、収納不足を解決するために、安易に建物を大きくすることをおすすめしていません。
床面積を増やせば建築費、住宅ローン、固定資産税、光熱費、将来の修繕費も増えるからです。
重要なのは、
- 持ち物を把握する
- 使う場所の近くに収納する
- 通路部分を減らす
- 物に合った奥行きにする
- 棚とパイプの量を決める
- 将来の変化に対応できるようにする
ことです。
住宅性能を削って大きな収納をつくるのではなく、コンパクトな面積を効率良く使います。
耐震等級3、制震装置、断熱等級6、UA値0.46以下、C値0.7以下といった基本性能を守りながら、無駄な廊下や使いにくい収納を減らすことが、総額を抑える家づくりにつながります。
俺流結論
収納は、多ければ多いほど良いわけではありません。
何を入れるか決まっていない収納は、数年後に「捨てられない物を入れておく場所」になります。
そして、収納がいっぱいになると、さらに収納を増やしたくなります。
そのために家を2坪、3坪と大きくすれば、建築費だけでなく、住宅ローンの利息や将来の修繕費まで増えます。
私なら、「収納は何畳ありますか」とは聞きません。
次のように確認します。
「ハンガーパイプは何mありますか」
「棚の総延長は何mですか」
「通路を除いて、実際に物を置ける面積はどのくらいですか」
「掃除機はどこで使い、どこへ戻しますか」
収納は面積ではなく、物と生活動線から考えるものです。
広いウォークインクローゼットがある家より、必要な場所に適切な奥行きの収納がある家の方が片付きます。
削るべきなのは、耐震、断熱、気密ではありません。
使わない通路、深過ぎる収納、目的のない空間、そして必要以上の床面積です。
大きな家だから片付くのではありません。
家族の行動に合わせて、物の戻る場所が決まっている家だから片付くのです。
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