Q. なぜ住宅ローン破綻が起きるのか?
A. 銀行が貸してくれる金額と、家族が安全に返せる金額は違うからです
住宅ローンには銀行の審査があります。
そのため、「審査に通った金額なら安心して返せる」と考える人がいます。
しかし、銀行の審査は、家族の人生を保証するものではありません。
銀行が主に確認するのは、現在の年収、勤務先、勤続年数、年齢、他の借入、信用情報などです。
一方、住宅ローンは35年、40年、現在では50年返済の商品もあります。
その間には、次のような変化が起こります。
- 子どもの進学
- 車の買い替え
- 物価上昇
- 金利上昇
- 病気や休職
- 転職や収入減少
- 親の介護
- 住宅の修繕
- 定年退職
- 年金生活への移行
住宅ローン破綻は、契約した瞬間に起きるのではありません。
契約時に余裕を持たなかった家計が、10年後、20年後の変化に耐えられなくなったときに起こります。
1. 借りられる限界を予算にしてしまう
住宅会社や銀行から「4,000万円まで借りられます」と言われると、4,000万円の家を買っても大丈夫だと思ってしまいます。
しかし、それは融資を受けられる可能性がある金額であり、家族が余裕を持って返せる金額とは限りません。
銀行は、次の希望まで詳しく保証してくれるわけではありません。
- 子どもを私立大学へ進学させたい
- 家族旅行を続けたい
- 車を定期的に買い替えたい
- 65歳までに住宅ローンを減らしたい
- 老後資金を準備したい
- 建築後も十分な現金を残したい
借入可能額は銀行の基準です。
安全な予算は家族ごとに決めなければなりません。
住宅金融支援機構の2026年調査では、住宅ローン利用者の返済負担率は「年収の15%超~20%以内」が最も多い結果でした。ただし、これは利用者の実態であり、誰にでも安全な割合を示すものではありません。住宅金融支援機構の住宅ローン利用者調査
2. 年収だけで返済額を決めてしまう
返済負担率は、一般的に年間返済額を税込年収で割って計算します。
例えば年収600万円で年間返済額150万円なら、返済負担率は25%です。
しかし、実際の返済は税込年収からではなく、税金や社会保険料を引いた手取り収入から行います。
年間返済額150万円なら、月平均は12万5,000円です。
仮に毎月の手取りが38万円なら、住宅ローンだけで約33%を使うことになります。
さらに必要なのは、住宅ローンだけではありません。
- 固定資産税
- 火災・地震保険
- 修繕積立
- 光熱費
- 浄化槽などの維持費
- 太陽光・給湯設備の交換費
- 駐車場や外構の修繕費
私は、住宅ローン返済だけなら手取り収入の20%前後、税金や保険、修繕積立を含めた住居費全体でも25%前後に収まるかを一つの目安として確認します。
ただし、子どもの人数、車の台数、年齢、貯蓄額によって安全な割合は変わります。
3. 共働き収入が続く前提で借り過ぎる
夫婦二人の収入を合算すれば、借入可能額は大きくなります。
しかし、35年間ずっと現在の収入が続くとは限りません。
- 出産や育児による休職
- 時短勤務
- 子どもの病気
- 親の介護
- 本人や配偶者の病気
- 転職
- 会社の業績悪化
- 離婚や死別
夫婦二人がフルタイムで働き続けなければ返せない住宅ローンは、収入の変化に弱い設計です。
少なくとも、どちらかの収入が一時的に減った場合でも、預金を取り崩しながら生活を立て直せるかを確認してください。
「共働きだから借りられる」ではなく、「片方の収入が減っても耐えられるか」で考える必要があります。
4. 教育費が増える時期を計算していない
家を建てる30代は、子どもがまだ小さく、教育費が比較的少ない時期です。
そのため、月10万円を超える住宅ローンでも返済できるように感じます。
しかし、子どもが中学生、高校生、大学生になると、教育費や生活費が増えていきます。
総務省の家計分析でも、長子が大学へ進学する時期は消費支出が大きくなり、教育費と住宅ローン返済が重なることが示されています。総務省統計局「ライフステージでみた家計」
さらに40代、50代では、次の支出も重なります。
- 車の買い替え
- 親の介護
- 住宅設備の交換
- 外壁や屋根のメンテナンス
- 老後資金の準備
契約時の家計だけを見てはいけません。
少なくとも子どもの大学卒業、定年、住宅ローン完済までを年齢ごとに確認する必要があります。
5. 変動金利が上がらない前提で借りる
変動金利は、借入当初の返済額を低く見せやすい住宅ローンです。
ただし、金利が上昇すれば、将来の利息や返済負担が増える可能性があります。
金融庁も2026年、住宅価格や金利の上昇を背景に、金融機関へ住宅ローン利用者に対する金利変動リスクの説明徹底を求めています。金融庁「住宅ローン利用者に対する金利変動リスク等に関する説明」
例えば3,500万円を35年、元利均等、ボーナス払いなしで借りる単純比較では、次のようになります。
| 金利 | 毎月返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|
| 1.5% | 約10万7,000円 | 約4,500万円 |
| 3.0% | 約13万5,000円 | 約5,657万円 |
金利が1.5%から3.0%になると、単純比較では毎月約2万8,000円、総返済額では約1,157万円の差になります。
実際の変動金利商品の返済額は、金利の変更時期、残高、返済額の見直しルールによって異なります。
重要なのは、現在の金利で払えるかではなく、金利が2%、2.5%、3%になっても家計を維持できるかです。
6. 「月々○万円」だけで判断する
住宅営業では、総額より月々返済額が強調されることがあります。
「月々8万円台です」
「家賃とほとんど変わりません」
こう言われると、購入できるように感じます。
しかし、返済期間を延ばせば、月々返済額は下げられます。
高すぎる家が安くなったわけではありません。
支払いを将来へ先送りしているだけです。
月々返済額を確認するときは、次の数字も同時に確認してください。
- 借入額
- 適用金利
- 返済期間
- 完済年齢
- 総返済額
- 総利息
- 金利上昇時の返済額
- 定年時点のローン残高
35歳で50年ローンを組めば、完済は85歳です。
月々払えるかではなく、年金生活に入るまでに、どこまでローンを減らせるかを考えてください。
7. ボーナス払いを前提にする
ボーナス払いを設定すると、毎月の返済額を小さく見せられます。
しかし、ボーナスは毎年必ず支給されるとは限りません。
会社の業績、転職、休職などによって減額や不支給になる可能性があります。
ボーナスが減っても、住宅ローンの支払額は減りません。
住宅ローンは、原則として毎月の収入だけで返済できる計画をおすすめします。
ボーナスは、教育費、修繕、貯蓄、余裕がある場合の繰上返済へ回した方が、家計の変化に対応しやすくなります。
8. 頭金を入れ過ぎて現金がなくなる
借入額を減らすために、貯金の大部分を頭金へ入れる人がいます。
しかし、住宅ローン残高が少なくても、手元に現金がなければ家計は不安定です。
建築後には、次の支出が発生します。
- 家具・家電
- 引っ越し
- 固定資産税
- 車検
- 冠婚葬祭
- 病気や収入減少
- 子どもの進学
- 予想外の追加工事
急な支出が発生したとき、住宅ローンより金利の高いカードローンや自動車ローンを借りることになれば、頭金を入れた意味が薄れます。
頭金の額を先に決めるのではなく、建築後に残す現金を先に決めるべきです。
9. 家の維持費を計算していない
家を建てた後に必要なのは、住宅ローンだけではありません。
例えば、月々9万円の住宅ローンでも、次の積立や支出を加えると、実質的な住居費は増えます。
| 項目 | 月平均の考え方 |
|---|---|
| 住宅ローン | 9万円 |
| 固定資産税の積立 | 1万円 |
| 火災・地震保険の積立 | 3,000円 |
| 将来の修繕積立 | 1万5,000円 |
| 合計 | 11万8,000円 |
金額は建物や地域、保険内容によって異なりますが、「住宅ローン9万円だから住居費も9万円」と考えてはいけません。
さらに、断熱性能や気密性能が低ければ、冷暖房費が想定より高くなる可能性があります。
住宅価格だけでなく、光熱費、修繕費、税金を含めた生涯の住居費で判断してください。
10. 定年後も返済が続く
40歳で35年ローンを組めば、完済は75歳です。
50年ローンなら90歳です。
定年後は、一般的に現役時代より収入が減ります。
一方で、医療費、介護費、住宅修繕費などが必要になる可能性があります。
「退職金で完済します」という計画も危険です。
退職金は、老後生活を支える大切な資金です。金額や支給時期も将来変わる可能性があります。
私は、可能であれば70歳前後までの完済を目標に、住宅価格、借入額、返済期間を調整することをおすすめします。
住宅ローン破綻を防ぐ確認項目
契約前には、最低でも次の内容を確認してください。
- 借入可能額ではなく安全な借入額を計算したか
- 手取り収入に対する返済割合を確認したか
- 固定資産税、保険、修繕費を含めたか
- 教育費が最大になる時期を確認したか
- 夫婦どちらかの収入が減っても対応できるか
- 金利3%でも返済できるか
- ボーナス払いに頼っていないか
- 建築後に十分な現金を残せるか
- 定年時点のローン残高を確認したか
- 完済年齢が高過ぎないか
- 退職金を使わなくても老後生活を維持できるか
- 太陽光や省エネによる削減額を過大評価していないか
「現在払える」だけでは不十分です。
収入減少、金利上昇、教育費、定年という複数の変化が重なっても、家計を維持できるかを確認してください。
返済が苦しくなったら延滞前に相談する
住宅ローンの返済が苦しくなったとき、最も危険なのは放置することです。
次のような兆候が出たら、早めの対応が必要です。
- 貯金を取り崩さないと返済できない
- ボーナスで生活費を補っている
- 固定資産税を分割しないと払えない
- カードローンで不足分を補っている
- 教育費を借金で支払っている
- 住宅ローン返済後に生活費が残らない
- すでに返済日へ遅れ始めている
延滞する前に、借入先の金融機関へ相談してください。
返済期間や返済方法の見直し、借換え、家計の改善、売却など、早い段階ほど検討できる選択肢が残ります。
新しい借金で住宅ローンを返すことは、問題を先送りするだけです。
俺流結論
住宅ローン破綻が起きる最大の原因は、「借りられる金額」を「返せる金額」だと勘違いすることです。
銀行が融資を承認しても、子どもの教育費、病気、転職、金利上昇、定年後の生活まで保証してくれるわけではありません。
住宅会社は家が完成すれば代金を受け取ります。
しかし、お客様の返済は、その後35年、40年、50年と続きます。
だから私は、銀行が貸してくれる金額より、家族が笑顔で返せる金額を大切にします。
予算を超えたら、返済期間を50年へ延ばして月額を小さく見せるのではなく、土地代、床面積、建物の形、装飾、オプションを見直すべきです。
ただし、耐震、断熱、気密、換気など、完成後に直しにくい基本性能は安易に削ってはいけません。
大きな家を建てることが成功ではありません。
教育費を守り、老後資金を残し、家族が安心して暮らし続けられることが、本当の家づくりの成功です。
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