高断熱住宅にすることで冬の「血圧上昇」を抑制できる医学的エビデンス。
こんなご相談をいただきました
「72歳です。冬になると血圧が高くなり、朝起きたときや入浴前が心配です。高断熱住宅にすると、血圧上昇を抑えられる医学的根拠はありますか?」
A. 冬の室温が低い住宅ほど起床時の血圧が高く、断熱改修による室温上昇後に血圧が低下したという調査結果があります。ただし、高断熱住宅が高血圧を治療するわけではありません。服薬や診察を続けたうえで、寒さによる身体への負担を減らす住環境と考えてください。
なぜ寒いと血圧が上がるのか?
寒い場所へ移動すると、身体は熱を逃がさないように血管を収縮させます。
血管が細くなると血液を送り出すために強い圧力が必要となり、血圧が上がりやすくなります。
特に注意したいのが、次の場面です。
- 暖かい布団から寒い寝室へ出る
- 暖房したリビングからトイレへ移動する
- 寒い脱衣室で服を脱ぐ
- 冷えた浴室から熱い浴槽へ入る
- 早朝に屋外へ新聞を取りに行く
シニアは温度変化に対する身体の調整機能が低下しやすいため、若い人と同じ室温でも影響が大きくなる可能性があります。
国土交通省の調査結果
国土交通省が支援したスマートウェルネス住宅等推進調査では、住宅の室温と血圧などの関連が調べられています。
報告された主な傾向は次のとおりです。
- 起床時の室温が低いほど血圧が高い
- 高齢者ほど室温低下による血圧上昇が大きい
- 室温の低い住宅ほど、起床時に高血圧となる確率が高い
- 断熱改修後、起床時の血圧が有意に低下した
- 居間や脱衣室が18℃未満の住宅では、熱めの入浴になる割合が高い
これは、断熱性能を高めて冬の室温低下を抑えることが、血圧変動を小さくする可能性を示すものです。国土交通省「住宅の断熱化と居住者の健康への影響」
ただし、調査結果は「断熱住宅へ住めば高血圧が治る」という意味ではありません。
血圧には年齢、体重、塩分、運動、飲酒、睡眠、服薬など多くの要因が関係します。
リビングだけ暖かくても不十分
古い住宅では、リビングだけを石油ファンヒーターやエアコンで暖めるケースが多くあります。
しかし、血圧変動を考えるなら重要なのは家全体の温度差です。
例えば、
- リビング:22℃
- 廊下:12℃
- トイレ:10℃
- 脱衣室:8℃
では、部屋を移動するたびに10℃以上の温度差を受けます。
シニア住宅では、リビングの最高室温より、寝室・廊下・トイレ・脱衣室の最低室温を確認してください。
まず18℃を下回りにくい計画を目指す
冬の生活空間は、最低でも18℃を大きく下回らない状態を一つの目安として考えます。
特に確認したい場所は次のとおりです。
- 起床時の寝室
- 夜間の廊下
- トイレ
- 洗面脱衣室
- 入浴前の浴室
ただし、断熱等級6にすれば、暖房なしですべての部屋が自動的に18℃以上になるわけではありません。
室温は外気温、日射、間取り、窓、暖房設備、生活人数によって変わります。断熱性能と暖房計画をセットで検討する必要があります。
山梨県で検討したい住宅性能
甲府盆地は日中に日射があっても、冬の朝晩は冷え込みます。古い住宅では、朝方に寝室やトイレの室温が大きく下がることがあります。
建替えでは、次の性能を一体で検討します。
- 断熱等性能等級6
- UA値0.46以下を目安
- 全棟気密測定
- C値0.7以下を目標
- 熱交換型の第一種換気
- 窓の方角と大きさの調整
- 廊下・トイレを含めた暖房計画
断熱等級は計算上の外皮性能です。建物の隙間を示すC値は、実際に建てた住宅で測定しなければ分かりません。
隙間が多ければ、冷気が入り、計算どおりの室温を維持しにくくなります。
寝室の窓と位置が重要
起床時の血圧を考えるなら、寝室の断熱計画を軽視できません。
- 大きすぎる窓を避ける
- ベッドを窓際に置かない
- 枕元に冷気が落ちないようにする
- 寝室を建物の極端に寒い位置へ置かない
- 起床前に暖房を開始する
- トイレまでの動線も暖かくする
窓の近くでは、冷えた空気が床へ降りるコールドドラフトが発生し、室温表示以上に寒く感じることがあります。
温度計は暖房機の近くではなく、ベッド付近や床に近い高さでも測ってください。
入浴時は断熱だけに頼らない
高断熱住宅でも、浴室を長時間無暖房にすれば冷えることがあります。
入浴前には次の対策を行います。
- 脱衣室と浴室を事前に暖める
- 浴槽のふたを開けて浴室を暖める
- 熱すぎる湯を避ける
- 食後・飲酒後すぐの入浴を避ける
- 家族へ入浴することを伝える
- 長時間一人で入浴しない
高血圧、心疾患、糖尿病などがある場合は、入浴方法について医師へ相談してください。
室温と血圧を実際に記録する
建替え後は、温湿度計を次の場所へ置くと住環境を確認できます。
- リビング
- 寝室
- トイレ付近
- 洗面脱衣室
朝と夜の室温を記録し、医師の指示に従って家庭血圧も測定します。
「高性能住宅だから大丈夫」と思い込まず、実際の室温と血圧を確認することが重要です。
デザインハウス甲府からのアドバイス
住宅会社が「この家なら血圧が下がります」と断言するのは適切ではありません。
住宅ができるのは、高血圧の治療ではなく、寒さという血圧上昇要因の一つを減らすことです。
デザインハウス甲府では、断熱等級6やUA値だけでなく、全棟気密測定と換気・暖房計画まで確認します。
暖かいリビングをつくるのではなく、朝の寝室、夜のトイレ、入浴前の脱衣室を寒くしない。
これが、冬の血圧変動を考えたシニアの建替えで最も重要な温熱設計です。










