追加変更工事は、金額を確認する前に施工してもよい?
A. 原則として、施工させてはいけません。工事内容・追加金額・減額・工期への影響を確認し、書面で承認してから施工するのが正しい順番です。
現場で、
「ここに棚を付けておきましょうか?」
「この窓は大きくした方がいいですよ」
「追加費用は後で計算します」
と言われ、その場で、
「お願いします」
と答えるのは危険です。
金額を知らなくても、施主が追加工事を依頼した事実は残ります。後から高額な請求を受けたときに、「金額には合意していない」と主張しても、工事そのものを依頼したことまで否定するのは難しくなります。
正しい順番は「見積→承認→施工」
追加変更工事は、次の順番で進めます。
| 手順 | 確認内容 |
|---|---|
| 1.変更希望 | 何をどのように変えるか |
| 2.追加見積 | 商品・数量・単価・施工費 |
| 3.減額計算 | 取りやめる標準工事はいくらか |
| 4.工期確認 | 完成・引渡しが何日延びるか |
| 5.書面承認 | 変更契約書・注文書へ署名 |
| 6.発注・施工 | 承認後に材料を発注して施工 |
| 7.請求 | 承認した金額と一致しているか |
「急いでいるから、先に施工して金額は後で」という順番にすると、施主は価格交渉ができなくなります。
建設業法でも変更内容の書面化が求められる
建設業法第19条では、請負契約の工事内容や請負代金などを書面へ記載することに加え、それらを変更するときも変更内容を書面で交付することを求めています。e-Gov法令検索「建設業法」
国土交通省の民間建設工事標準請負契約約款でも、工事の追加・変更があった場合は請負代金を変更でき、増加部分は当事者間で協議して金額を決めるとされています。国土交通省「民間建設工事標準請負契約約款」
つまり、
工事をした後、住宅会社が一方的に金額を決めて請求する
という進め方が適切なのではありません。
金額未定で「お願いします」と言う危険
施主が現場で、
「金額は分からないけれど、必要ならやってください」
と言えば、住宅会社は追加工事の依頼を受けたと考えます。
その後、次の費用が請求される可能性があります。
- 商品代
- 職人の追加人工
- 既存部分の撤去費
- やり直し工事
- 廃材処分費
- 再搬入費
- 現場管理費
- 図面変更費
- メーカーへのキャンセル料
- 工期延長費用
施主は商品差額だけを想像し、住宅会社は付随工事まで含めて計算します。
これが、追加費用トラブルの原因です。
「10万円くらい」も正式な見積もりではない
営業マンから、
「おそらく10万円くらいです」
と言われても、正式な追加金額とは限りません。
「くらい」「だいたい」「恐らく」という言葉には、次の費用が含まれていない可能性があります。
- 取付費
- 電気・配管工事
- 下地補強
- 既発注品の取消費
- 諸経費
- 消費税
10万円程度だと思って施工を承認し、最終的に18万円請求されても、工事は元に戻せません。
確認すべきなのは概算ではなく、
税込追加総額18万円。これ以上は増えない
という書面です。
追加額だけでなく「標準品の減額」を確認する
例えば、標準キッチンを40万円の上位商品へ変更したとします。
変更後商品の価格が80万円でも、追加料金は80万円ではありません。
変更後商品80万円
-標準商品40万円
+変更工事5万円
=追加45万円
と計算するのが基本です。
ところが追加見積書に、
キッチン変更 一式80万円
としか書かれていなければ、標準品が控除されているか分かりません。
変更工事は、追加項目だけでなく、
- 追加する工事
- 取りやめる工事
- 既発注品のキャンセル料
- 差引後の増減額
を確認します。
12万円のつもりが38万円になる例
間取り確定後に、造作棚を追加したケースです。
| 項目 | 施主の想定 | 実際の請求 |
|---|---|---|
| 棚板・金物 | 8万円 | 8万円 |
| 取付費 | 4万円 | 4万円 |
| 壁の下地追加 | 想定外 | 5万円 |
| コンセント移動 | 想定外 | 4万円 |
| クロス変更・補修 | 想定外 | 5万円 |
| 図面変更・管理費 | 想定外 | 5万円 |
| 発注済み部材の取消 | 想定外 | 4万円 |
| 消費税等 | 想定外 | 3万円 |
| 合計 | 12万円 | 38万円 |
先に施工されてしまえば、38万円を見てから棚をやめることはできません。
金利2%・35年の住宅ローンへ追加すると、38万円の総支払額は概算約53万円になります。
小さな追加ほど積み上がる
契約後の打合せでは、一つひとつの変更が小さく見えます。
| 変更内容 | 追加金額例 |
|---|---|
| コンセント追加 | 3万円 |
| LAN配線追加 | 4万円 |
| 可動棚追加 | 5万円 |
| 室内ドア変更 | 8万円 |
| 外壁張り分け | 10万円 |
| 照明変更 | 5万円 |
| 合計 | 35万円 |
「これくらいなら」と個別に承認していると、合計額を把握できなくなります。
追加変更のたびに、現在の契約総額がいくらになったのかを更新してもらう必要があります。
「急がないと工程が止まる」と言われたら
住宅会社から、
「今日決めないと大工工事が止まります」
「見積書は後になります」
「先に材料だけ注文します」
と言われることがあります。
工程上、本当に急ぐ場合はあります。
しかし、急いでいることと、金額を知らせなくてよいことは別です。
正式見積書が間に合わなくても、最低限、メールなどで次を確認します。
- 変更内容
- 商品・品番
- 数量
- 概算ではなく上限金額
- 税込みか税別か
- 工期への影響
- 見積確定後に上限を超えないこと
例えば、
追加総額は税込15万円以内。これを超える場合は施工を中止し、再承認を得る
と書面で残します。
緊急工事は例外になる
次のような場合は、安全確保のため、金額確定前に最低限の工事が必要になることがあります。
- 掘削中に地中障害物が出た
- 土砂や擁壁が崩れる危険がある
- 漏水が発生した
- 台風接近で仮設物の補強が必要
- 放置すると建物へ重大な損害が出る
- 法令上、そのまま施工できない状態が判明した
この場合でも、住宅会社は可能な範囲で、
- 現場写真を送る
- 工事が必要な理由を説明する
- 応急処置と本工事を分ける
- 概算額または上限額を示す
- 施主の承認を記録する
という対応を行うべきです。
緊急対応を理由に、関係のない工事まで無断で進めてよいわけではありません。
誰が変更を承認できるか決める
現場では、夫婦や親族の誰かが職人へ変更を頼むことがあります。
- 夫がコンセントを追加
- 妻が棚を変更
- 親が手すりを追加
- 現場見学中に職人へ直接依頼
住宅会社は、誰の指示を正式な承認とするのか判断できません。
契約時に、
追加変更を承認できるのは契約者本人のみ
または、
夫婦双方の書面承認が必要
など、ルールを決めておきます。
職人へ直接依頼せず、必ず現場監督や担当者を通します。
変更契約書に必要な項目
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 変更前 | 元の品番・工事内容 |
| 変更後 | 新しい品番・数量・色 |
| 増額 | 追加する商品・工事 |
| 減額 | 取りやめる商品・工事 |
| 差引額 | 税込の最終追加・減額 |
| 工期 | 完成・引渡しへの影響 |
| 保証 | 変更後の保証条件 |
| 承認日 | 発注・施工前の日付 |
| 承認者 | 施主・住宅会社双方 |
手書きの打合せ記録でも一定の役割はありますが、契約金額が変わるなら正式な変更契約書や追加工事注文書にします。
契約書へ追加したい条項
契約前に、次の内容を特約へ入れてもらうと安全です。
住宅会社は、追加変更工事の内容、増減金額、工期への影響を事前に書面で提示し、施主の承認を得るまで発注・施工しない。緊急の安全措置を除き、事前承認のない工事代金は請求しない。
さらに、
追加変更後の契約総額を、その都度施主へ提示する
ことも加えます。
すでに施工されてしまった場合
追加請求を受けても、すぐに全額を支払う、または全額を拒否するのではなく、次の資料を求めます。
- 誰が、いつ工事を依頼したのか
- 施主が承認した記録
- 変更前後の図面
- 商品・数量・単価
- 職人の施工費
- 標準工事からの減額
- 発注書・納品書
- 施工前後の写真
- 諸経費の計算根拠
- 契約書の変更手続き
施主が依頼していない工事と、依頼したが金額未定だった工事を分けて整理する必要があります。
住まいるダイヤルにも、金額を確認しないまま追加工事が進み、引渡し後に約300万円を請求された相談事例があります。住まいるダイヤル「追加工事代金の相談事例」
解決できない場合は、住宅専門の相談窓口や弁護士へ相談してください。
工事前なら「やめる」という選択ができる
追加見積もりが高ければ、
- 元の仕様へ戻す
- 商品のグレードを下げる
- 入居後に施工する
- 市販品で代用する
- 別の方法を検討する
という選択ができます。
しかし、施工後に残る選択肢は、基本的に「支払うか争うか」です。
住まいるダイヤルも、変更工事の都度、追加見積書の説明を受け、費用を確認してから施工するよう案内しています。住まいるダイヤル「追加費用の注意点」
追加工事で最も高いのは、商品ではありません。金額を知らないまま出す「お願いします」の一言です。
正直な住宅会社は、施工してから請求するのではなく、追加・減額・税込総額を見せ、施主が選べる状態で承認を取ってから施工します。










