子供の収入を加えれば、建て替えの資金を用意できる場合があります。しかし、その仕組みは単なる申込書の補助ではありません。子供も返済義務等を負う契約になり得るため、親の家計だけでなく、子供自身の住宅、仕事、教育費まで含めて判断する必要があります。
親子で住まいを持つことに納得していれば、共同で資金を用意する合理性はあります。問題は「名前だけ貸して」「親が払うから大丈夫」で進めることです。親子リレー、収入合算、ペアローンは同じ制度ではなく、契約の本数や責任、団信の扱いを分けて確認します。
まず、誰が借りる契約なのかを図にする
収入合算は、要件を満たす家族等の収入を合わせて借入れを申し込む仕組みです。例えばフラット35では、合算者が連帯債務者となること等が条件です。収入の証明だけを貸して、返済には関係しないという扱いではありません。[15]
ペアローンは、例えばフラット35では一つの物件に二つのローンを利用します。借入期間や返済口座、団信等をそれぞれ設定できますが、契約ごとの費用も確認が必要です。同じ親子の計画でも、一本の借入れと二本の借入れでは確認する内容が違います。[16]
銀行によって合算者の責任や取扱いが異なるため、借りる本人、連帯債務者、連帯保証人、担保を出す人を契約書で確認します。役割をひとまとめに「家族の協力」と説明されると、誰が何を負うのかが見えなくなります。
例えばフラット35のペアローンでは、一方が返済遅延等によって期限の利益を失うと、もう一方も自分の借入れの期限の利益を失うと案内されています。毎月返してよい権利を失い、一括返済が必要になり得る扱いです。二本の契約だから影響も完全に別、とは考えず、片方の返済が滞った場合の条件まで確認します。[16]
親子リレーは、将来だけの約束とは限らない
フラット35の親子リレー返済では、後継者に定期的な収入があり、連帯債務者となること等の条件があり、後継者の年齢を基に借入期間を選べます。親が払えなくなる将来の日まで、子供が何の責任も負わないという意味ではありません。[8]
親子の間で「最初の十年は親が払い、その後は子供」と決めても、その合意と金融機関に対する責任は分けて理解する必要があります。家族内の分担を変更しても、契約上の債務者が自動的に変わるわけではありません。
借入期間が延びると、親の毎月の負担は小さく見えます。しかし子供が返す期間や総支払額が増える場合があります。親の退職時点だけを切り取らず、子供の完済年齢と、それまでに予定する家計イベントまで確認してください。
子供の今後の借入れも含めて考える
子供が将来自分の家を取得したい場合、すでに負っている債務が審査上どう扱われるかを金融機関へ確認します。「親が実際に払っているから、自分のローンには関係しない」と自己判断しないことです。契約上の責任と口座から出す人が異なる場合も、資料で説明します。
仮定の家計例として、子供の世帯で生活費等を引いた余裕が月8万円あるとします。親の家に月5万円を回すと、残るのは3万円です。そこへ出産、教育、車、転居等の支出が増えるなら、現在の余裕だけでは長期負担を判断できません。
子供に配偶者がいる場合は、子供本人の同意だけで家計上の理解が済んだとは限りません。親の建て替えに使うお金と、子供の世帯の希望する生活を並べて話します。家族の善意を、説明の足りないまま長期の返済義務へ変えないことが大切です。
団信で、どの借金が消えるのかを確認する
親子で借りるときは、団信の被保険者と保障する債務を確認します。フラット35のペアローンでは、それぞれが個別に団信へ加入するため、一方に万一のことがあっても、もう一方は自分の債務の返済を続ける必要があると案内されています。[16]
親子リレーでも、親が亡くなれば必ず残高がなくなるとは決めつけません。親と子のどちらが保障され、どの事由で支払われるのかを確認します。保障がない部分が残る場合は、誰がどの収入や資産から返すかを事前に検討する必要があります。
病気による収入減も考えます。死亡時の保障があっても、働けない期間の生活費や全ての返済を支えるとは限りません。親が介護を必要としたときに、子供が返済と支援を同時に負担する場合も含め、家族全体で確認しましょう。
持分と返済負担を、なんとなく半分にしない
不動産の所有割合、自己資金を出す割合、ローンを負う割合、実際の返済額は整理しておきます。親子だから名義は半分ずつ、と先に決めると、資金負担とのずれが生じる場合があります。税務や相続への影響は、具体的な負担内容を示して専門家へ確認します。
親の土地に子供も費用を出す場合は、土地の権利関係と新しい建物の名義を区別します。兄弟姉妹がいるなら、将来の相続の話も避けて通れません。子供が返済を負うことと、土地を当然に単独で取得できることは同じではないからです。
転勤、別居、家族関係の変化、親の施設入居などで、当初の住み方が変わる可能性もあります。売却や借換え、債務者を変更する場合の条件を確認し、当事者だけで自由に契約から抜けられると思い込まないことが必要です。
親だけで建てる案を残したまま比較する
共同で借りる案を検討する前に、親だけの収入と資金で可能な住宅案を出します。小さく整える、部屋数を減らす、使わない設備を外すなど、子供が債務を負わなくても実現できる範囲を確認します。その案がなければ、子供は協力する以外の選択を見つけにくくなります。
親子で負担する案を選ぶなら、誰が何年、いくら払うか、収入が変わった場合の対応、所有と相続の希望を記録します。記録だけで金融機関の契約が変わるわけではありませんが、家族内の認識のずれを早く見つけることには役立ちます。
私は、子供の協力を借入額を大きくするためだけに使う提案には慎重です。一緒に住む、資産を引き継ぐなど明確な目的があるなら、その利益と責任を双方へ説明するべきです。親孝行という言葉で、返済条件の確認を省いてはいけません。
相談では「親子それぞれが今から負う義務、団信の対象、将来別の家を買う場合への影響を、別々に説明してください」と伝えましょう。親の安心と子供の将来を両方守るには、借りられる金額を増やす前に、家族ごとの責任を明らかにすることが必要です。










