自然素材(無垢材の床、漆喰の壁)がシニアの住環境にもたらす調湿・リラックス効果
こんなご相談をいただきました
70歳で平屋への建て替えを計画しています。住宅会社から、無垢材の床や漆喰の壁は調湿効果があり、健康にもよいと勧められました。シニア住宅では、費用をかけて自然素材を採用する価値がありますか?
A. 無垢材や漆喰には、湿気を吸ったり放出したりする性質がありますが、自然素材だけで健康的な室内環境になるわけではありません。シニア住宅では、調湿効果より、滑りにくさ、清掃性、傷みやすさ、将来の補修まで確認して選ぶべきです。
無垢材の床に期待できること
無垢材は、一本の木から切り出した木材です。樹種や仕上げによって異なりますが、一般的に次の特徴があります。
- 木の質感を直接感じられる
- 合板系フローリングより足触りが柔らかいものがある
- 冬に触れたときの冷たさを感じにくい傾向がある
- 湿気を吸収・放出する性質がある
- 傷や色の変化を味わいとして楽しめる
- 木目や香りによって落ち着きを感じる人がいる
特に杉やヒノキなどの柔らかい樹種は、素足で歩いたときの感触が優しく、足腰への負担を軽減できる場合があります。
ただし、感じ方には個人差があります。「無垢材にすれば健康になる」「認知症を防げる」といった説明には、慎重になるべきです。
柔らかい無垢材の注意点
柔らかい木ほど足触りがよい一方、傷やへこみが付きやすくなります。
- 椅子やベッドの脚でへこむ
- 車椅子や歩行器で傷が付く
- 水をこぼすと染みになりやすい
- ペットの爪痕が残る
- 湿度変化で反りや隙間が生じる
- オイル仕上げでは定期的な手入れが必要になる
「傷も自然素材の味」と考えられる人には向いていますが、傷や染みが気になる人には負担になります。
シニア住宅では、将来自分でワックスやオイルを塗り直せるのか、家族や業者へ依頼するのかまで考えておきましょう。
滑りにくさは素材名では判断できない
無垢材だから滑りにくいとは限りません。
床の滑りやすさは、樹種だけでなく、表面加工、塗装、ワックス、靴下、ほこりや水分によって変わります。
国土交通省の高齢者住宅に関する情報でも、床材は滑りにくさを考慮し、水に濡れる場所では特に注意するよう示されています。国土交通省「高齢者住宅の安全な生活動線」
採用前に、次の状態でサンプルを確認してください。
- 素足で歩いた場合
- 靴下を履いた場合
- スリッパを使用した場合
- 杖や歩行器を使った場合
- 水に濡れた場合
光沢の強い塗装やワックスは、滑りやすくなる場合があります。見た目より安全性を優先します。
漆喰の壁に期待できること
漆喰は、主に消石灰を原料とする塗り壁材です。
- 湿気を吸収・放出する性質がある
- マットで柔らかい質感をつくれる
- 光を拡散し、室内が落ち着いて見える
- においを軽減する効果が期待できる製品もある
- 不燃性の高い仕上げ材として利用できる
ビニールクロスにはない質感があり、リビングや寝室を落ち着いた雰囲気にできます。
漆喰だけで結露やカビは防げない
漆喰には調湿性がありますが、室内で発生する水蒸気を無制限に吸収できるわけではありません。
洗濯物、入浴、調理、加湿器などで発生した湿気が多ければ、やがて吸湿能力を超えます。壁の表面が漆喰でも、断熱不足によって壁内温度が下がれば、結露やカビが発生する可能性があります。
結露対策の基本は次のとおりです。
- 断熱性能を高める
- 気密性能を確認する
- 計画換気を行う
- 過度な加湿を避ける
- 室温と湿度を測定する
漆喰は、これらを行ったうえで室内環境を補助する仕上げ材です。
漆喰のひび割れと補修
漆喰は、建物の乾燥収縮や振動によって細かなひび割れが生じることがあります。
また、手あか、車椅子、掃除機、家具などが当たると、汚れや欠けが目立つ場合があります。部分補修をすると、既存部分との色や質感の違いが残ることもあります。
シニア住宅では、廊下や車椅子が通る場所へ全面的に採用するより、リビングや寝室の一部へ絞る方法も現実的です。
「自然素材だから化学物質ゼロ」ではない
自然素材住宅でも、接着剤、塗料、下地材、家具、カーテンなどに化学物質が使われることがあります。
一方、一般的な建材についても、ホルムアルデヒドの放散量に応じた使用制限が設けられています。厚生労働省「シックハウス問題に関する検討会」
自然素材という名称だけで安全性を判断せず、次の項目を確認してください。
- 塗料や接着剤の種類
- 下地材を含めた仕様
- F☆☆☆☆などの表示
- 入居前の換気期間
- アレルギーやにおいへの反応
- 24時間換気の設計
自然由来の香りでも、体質によっては刺激を感じる場合があります。
シニア住宅での現実的な使い分け
自然素材は、全面採用しなくても効果や質感を楽しめます。
| 場所 | 現実的な選択 |
|---|---|
| リビング・寝室 | 無垢床や漆喰を採用しやすい |
| 廊下 | 滑りにくさと車椅子への耐久性を優先 |
| 洗面・脱衣室 | 耐水性と清掃性を優先 |
| トイレ | におい対策だけでなく拭き掃除のしやすさを確認 |
| キッチン | 油汚れや水染みへの強さを優先 |
| 玄関 | 土や雨水に強い仕上げを選ぶ |
リビングと寝室だけ自然素材にし、水回りや移動経路はメンテナンスしやすい床材にする方法なら、費用を抑えながら安全性も確保できます。
先に費用をかけるべき住宅性能
健康と快適性を目的にするなら、自然素材より先に確認すべき項目があります。
- 耐震性能
- 断熱性能
- 気密性能
- 24時間換気
- 室内の温度差
- 段差と床の滑りにくさ
- 自然素材などの内装仕上げ
漆喰の壁へ費用をかけても、冬の脱衣室が10℃まで下がる家では、シニアの健康対策として優先順位が違います。
デザインハウス甲府からのアドバイス
自然素材は、心地よさやデザインを高める選択肢ですが、高性能住宅そのものではありません。
デザインハウス甲府では、耐震等級3、断熱等性能等級6、全棟気密測定、第一種熱交換換気を整えたうえで、生活場所と予算に合わせて自然素材を提案します。
「自然素材だから健康」ではなく、冬も夏も温度差が少なく、転びにくく、年を取っても掃除と補修を続けられること。それがシニア住宅に必要な本当の健康性能です。










