年金支給額が将来減額されるリスクを織り込んだ、保守的な建て替え計画はどう作りますか?
A. 現在の年金額ではなく、「年金の実質価値が10%下がった場合」と「配偶者が一人になった場合」の両方で資金計画を作ります。
マクロ経済スライドによって、年金が突然大幅に削減されるとは限りません。
注意すべきなのは、年金の額面が増えても物価上昇に追いつかず、実際に購入できる物やサービスが減る「実質的な減額」です。
2026年度も年金は物価上昇に追いついていない
2026年度の年金額は、老齢基礎年金が1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%引き上げられました。
しかし、基準となる物価変動率はプラス3.2%です。額面上は年金が増えても、物価との比較では実質的な購買力が低下しています。
日本年金機構によると、2026年度のマクロ経済スライド調整は、基礎年金がマイナス0.2%、厚生年金の報酬比例部分がマイナス0.1%です。日本年金機構「令和8年4月分からの年金額」
マクロ経済スライドとは
現役世代の減少や平均余命の伸びを踏まえ、公的年金制度を維持するために、年金額の伸びを賃金や物価の上昇より抑える仕組みです。
そのため、年金額が毎年同じでも安心とは限りません。
- 食料品
- 電気・水道
- 医療・介護
- 火災・地震保険
- 住宅修繕
- 自動車維持費
これらが値上がりすれば、住宅ローン返済へ回せるお金は減ります。
3つのケースで試算する
建て替え資金計画では、最低でも次の3ケースを比較します。
ケース1:現在の年金が続く
現在受け取っている手取り年金額で、生活費と住宅費を計算します。
ケース2:年金の実質価値が10%低下する
年金額を10%減らすか、生活費を10%増やして計算します。
ケース3:夫婦の一方が亡くなる
夫婦2人分の年金がそのまま残るわけではありません。妻自身の老齢年金や遺族年金など、実際に受け取れる見込み額で計算します。
多くの場合、マクロ経済スライドよりも、配偶者死亡による世帯収入減少の方が家計へ大きく影響します。
月1万円の余裕では危険
例えば、夫婦の年金手取りが月22万円で、支出が次の場合を考えます。
- 生活費:月16万円
- 住宅ローン:月5万円
- 残り:月1万円
現在は黒字ですが、年金の実質価値が10%下がると、22万円は19万8,000円相当になります。
生活費とローンが変わらなければ、毎月1万2,000円の赤字です。年間14万4,000円、20年間では単純計算で288万円不足します。
審査に通る返済額と、物価上昇後も返せる金額は違います。
住宅ローンは年金手取りの20%前後まで
シニア世代では、住宅ローン返済を年金手取り額の20%前後に抑えるのが一つの安全目安です。
ただし、次の支出が多い世帯は、さらに低くする必要があります。
- 持病による医療費
- 自動車が2台以上
- 親族への援助
- 介護保険外のサービス
- マンションなどほかの不動産
- 既存の借入れ
金融機関が認める返済負担率いっぱいまで借りてはいけません。
返済期間は「借りられる年齢」で決めない
80歳まで借りられる商品があっても、80歳完済が安全とは限りません。
70代後半になると、医療・介護費が増えたり、配偶者の死亡で収入が減ったりする可能性があります。
可能であれば70~75歳までの完済を目標とし、それが難しい場合は、借入額や建物面積を見直します。
現金をすべて頭金へ入れない
借入額を減らすために、退職金や預貯金を使い切るのも危険です。
建て替え後も次の現金を残します。
- 1~2年分の生活費
- 医療・介護予備費
- 給湯器・エアコンなどの交換費
- 外壁・屋根などの修繕費
- 固定資産税・保険料
- 施設入居の準備資金
年金が実質的に減ったとき、家はすぐに現金化できません。特に山梨県では、立地によって住宅の再販が難しいため、売却代金を老後資金として当てにし過ぎない方が安全です。
光熱費削減を過大評価しない
高断熱住宅や太陽光発電によって光熱費を抑えられる可能性はあります。
しかし、資金計画では次の費用も見込みます。
- エアコン交換
- エコキュート交換
- 太陽光パワーコンディショナー交換
- 蓄電池の劣化・交換
- 売電単価の変化
- 電気料金制度の変更
「光熱費が下がるから、その分を全額ローン返済へ回せる」という計画は危険です。削減見込みの全額ではなく、半分程度だけを余裕として見るなど、保守的に計算します。
削るなら性能ではなく面積
予算を下げる場合、断熱・気密・耐震性能を削ると、光熱費、健康、災害、修繕リスクが高まります。
先に見直すのは次の項目です。
- 使わない客間
- 大き過ぎるLDK
- 過剰な収納
- 高額な内装や設備
- 不要なベランダ
- 複雑な外観や屋根
建物を3坪小さくすれば、建築費だけでなく、将来の冷暖房費や修繕面積も減らせます。
デザインハウス甲府では、現在の年金で返せるかだけでなく、年金の実質価値が10%下がった場合と、夫婦の一方が亡くなった場合も試算します。
老後の建て替えで守るべきなのは、借入可能額ではありません。物価が上がり、年金の価値が下がっても、家を手放さず生活できる余白です。










