自分が亡くなった後、子どもが「住まない」と言い出した場合の家の処分・売却方法
こんなご相談をいただきました
70歳で平屋への建て替えを計画しています。しかし、県外に住む子どもから「将来、山梨の実家には住まない」と言われました。それでも建て替えてよいのでしょうか。私が亡くなった後、家はどのように処分すればよいですか?
A. 子どもが住まないことが分かっているなら、建て替えを諦める必要はありません。ただし、「子どもへ残す家」ではなく、自分たちが安全に暮らし、最後に無理なく売却・解体できる家として計画する必要があります。
「子どもが相続するから大きな家」は不要
子どもが住まないと意思表示しているのに、帰省用の部屋や将来の子供部屋を増やすと、建築費と維持費が膨らみます。
シニア夫婦の建て替えでは、次のような考え方が現実的です。
- 1LDKまたは2LDKを基本にする
- 夫婦の生活を1階だけで完結させる
- 来客室は常設せず多目的室にする
- 大きな庭やベランダをつくらない
- 将来の外壁・屋根修繕費を抑える
- 解体しやすい大きさと構造にする
- 売却できなくても子どもが困らない資金を残す
子どもが住まない家に、3,000万円、4,000万円と費用をかけることが本当に必要なのかを考えます。
山梨では「建物が新しければ売れる」とは限らない
住宅の売却価格は、建物性能だけでなく、立地に大きく左右されます。
- 市街地や駅、病院、買物施設からの距離
- 接道状況と道路幅
- 駐車可能台数
- 土砂災害・浸水リスク
- 上下水道の整備状況
- 土地の形と境界
- 周辺の住宅需要
- 解体費を差し引いた土地価値
山梨県では、地域によって中古住宅の再販が難しくなります。高断熱住宅、ZEH、長期優良住宅だから高く売れるとは限りません。
長期優良住宅の認定を取得しても、将来本当に再販するのか、維持保全計画を継続して実行できるのかによって、実質的なメリットは変わります。
建て替える前に3つの価格を調べる
将来の処分方法を考えるには、現在の段階で次の価格を調べます。
- 古家付き土地として売却する場合の価格
- 更地として売却する場合の価格
- 新築後10年・20年程度で売却する場合の想定価格
特に重要なのは解体費です。
将来の土地売却価格が800万円でも、解体、残置物処分、測量、仲介手数料などに400万円かかれば、子どもへ残る金額は大きく減ります。
建物を残すなら、解体費相当額を預金や保険などで確保しておくと、子どもの負担を軽減できます。
死亡後に考えられる4つの処分方法
1.相続後に売却する
最も一般的な方法です。
相続人を決めて相続登記を行い、不動産会社へ売却を依頼します。相続登記は、不動産を相続したことを知った日から3年以内の申請が義務化されています。正当な理由なく申請しなかった場合、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
2.建物を解体して土地を売る
古い建物が売却の妨げになる場合は、更地にして売る方法があります。
ただし、解体前に買主を探した方が安全です。先に更地にすると固定資産税の住宅用地特例を受けられなくなる可能性があります。また、買主が古家を利用したい場合もあるため、自己判断で壊さないことが重要です。
3.賃貸住宅として貸す
立地と建物状態がよければ貸す方法もあります。
ただし、家賃収入だけでなく、修繕、入居者募集、固定資産税、火災保険、管理委託費、退去時の原状回復費まで計算します。
地方の戸建ては「借り手が見つかる」「家賃が入り続ける」という前提を置かない方が安全です。
4.所有者本人が生前に売却する
施設入居や配偶者の死亡を機に、本人が生前に売却する方法です。
本人の意思で売却条件を決められ、家財整理や近隣への説明もできます。ただし、認知症などで判断能力が低下すると、売却手続きが難しくなるため、売却時期と判断基準を家族で決めておきます。
相続空き家の3,000万円控除を当てにしない
一定の要件を満たす相続空き家を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。国税庁「被相続人の居住用財産を売ったときの特例」
ただし、この制度は、原則として1981年5月31日以前に建築された一定の家屋などが対象です。これから建て替える新築住宅は、通常、この相続空き家特例を利用できません。
「死亡後に売れば3,000万円控除があるから大丈夫」と考えて、新築費用を増やすのは危険です。将来の制度が変わる可能性もあるため、売却時点で税理士へ確認する必要があります。
兄弟姉妹の共有名義を避ける
相続人が複数いる場合、家を兄弟姉妹の共有名義にすると、売却、解体、賃貸、修繕のたびに合意が必要になります。
「とりあえず均等に相続」は、将来の処分を難しくする原因です。
元気なうちに次のことを決めておきましょう。
- 誰が家と土地を相続するか
- 他の相続人へ何を渡すか
- 解体費を誰が負担するか
- 売却まで誰が管理するか
- 家財を誰が処分するか
必要に応じて、公正証書遺言の作成を司法書士や弁護士へ相談します。
子どもへ残しておく資料
建て替え後は、次の資料を一つにまとめて保管します。
- 土地・建物の権利関係
- 設計図書と構造計算書
- 確認済証・検査済証
- 住宅性能評価書
- 修繕・点検履歴
- 住宅ローンと保険の情報
- 境界確定資料
- 不動産会社の査定書
- 解体費の概算見積書
- 家財処分先と連絡先
家の性能が高くても、証明書や修繕履歴がなければ、売却時に評価してもらいにくくなります。
デザインハウス甲府からのアドバイス
子どもが住まないと言っているなら、その意向を尊重したうえで、自分たちの残りの人生に必要な家を考えるべきです。
デザインハウス甲府では、将来の売却価格を過大に見込まず、解体費、維持費、老後資金まで含めて建築規模を調整します。
子どもへ残すべきものは、大きな新築住宅ではありません。売る、貸す、壊すを迷わず選べる資料と、その費用を払える現金です。










