終活の一環として、建替え時に「不要な不動産(地方の山林や農地)」を整理する方法
こんなご相談をいただきました
70歳で自宅の建て替えを計画しています。自宅以外に、親から相続した山林や農地、使っていない土地があります。子どもは引き継ぎたくないと言っていますが、建て替えを機に整理できるでしょうか?
A. 元気なうちに整理を始めるべきです。使わない山林や農地は、売却できる財産ではなく、管理費と責任を子どもへ残す「負動産」になる可能性があります。
ただし、地方の土地は不動産会社へ依頼すればすぐ売れるとは限りません。権利関係と利用可能性を確認し、売却、貸付け、贈与、国庫帰属の順に可能性を探ります。
最初に「所有不動産一覧」を作る
自宅以外にどの土地を所有しているのか、本人も正確に把握していないケースがあります。
次の資料から、所有不動産を一筆ごとに整理します。
- 固定資産税の納税通知書
- 固定資産名寄帳
- 登記事項証明書
- 公図・地積測量図
- 権利証・登記識別情報
- 農地や山林の場所が分かる地図
- 賃貸借契約書
- 共有者や隣接所有者の情報
固定資産税が課税されていない土地でも、所有している場合があります。納税通知書に載っている土地だけで判断せず、市町村で名寄帳を取得して確認しましょう。
「評価額がある=売れる」ではない
固定資産税評価額が100万円ある土地でも、100万円で売れるとは限りません。
地方の山林や農地では、次のような理由で買い手が見つからないことがあります。
- 道路から入れない
- 境界が分からない
- 共有名義になっている
- 急傾斜地で利用できない
- 樹木の伐採費が土地価格を上回る
- 農地法による売買制限がある
- 土砂災害警戒区域などに入っている
- 上下水道や電気を引けない
- 管理費用の方が高い
不動産会社の査定額ではなく、実際に誰が、いくらなら買うのかまで確認する必要があります。
売却できる相手を近い順に探す
一般市場で売れない土地でも、隣接地の所有者には利用価値がある場合があります。
次の順序で相談すると現実的です。
- 隣接地の所有者
- 現在利用している農家や林業関係者
- 地元の農業委員会
- 農地中間管理機構
- 森林組合
- 地域の不動産会社
- 自治体の空き家・空き地バンク
農地を売買・賃貸する場合は、一般の宅地とは異なり、農地法などに基づく手続きが必要です。農林水産省「農地の売買・貸借に関する制度」
「農地を宅地として売れば高くなる」と考えても、農地転用が認められなければ実現しません。
無料で譲れば終わるとは限らない
親族や知人へ無償で譲る方法もありますが、相手が承諾しなければ成立しません。
贈与できた場合でも、受け取った人には次の負担が生じる可能性があります。
- 贈与税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 司法書士報酬
- 毎年の固定資産税
- 草刈りや樹木管理
- 土砂崩れや倒木への責任
価値の低い土地を子どもの名義へ変えるだけでは、問題を先送りしたことになります。
自治体への寄付も、必ず受け入れてもらえるわけではありません。利用目的がなく、維持管理費がかかる土地は断られることが一般的です。
相続土地国庫帰属制度を検討する
相続などによって取得した土地は、一定の条件を満たせば、国へ引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」を利用できる可能性があります。法務省「相続土地国庫帰属制度」
ただし、どのような土地でも引き取ってもらえる制度ではありません。
例えば、次のような土地はそのままでは難しくなります。
- 建物がある
- 担保権や使用権が設定されている
- 境界や所有権に争いがある
- 危険な崖がある
- 放置車両や廃棄物がある
- 通常より多額の管理費がかかる
- 他人が利用している
承認された場合も、土地の種類に応じて、国が管理するための10年分相当の負担金を納めます。法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」
「国へ無料で引き取ってもらう制度」ではありません。
相続放棄では一部の土地だけを選べない
将来、子どもが相続放棄すればよいと考えるのも危険です。
相続放棄では、不要な山林だけを放棄して、預金や自宅だけを相続することはできません。原則として、相続財産全体を放棄することになります。
子どもへ判断を任せるのではなく、所有者本人が意思表示できるうちに整理する方が、選択肢は多くなります。
売却代金をそのまま建替え予算にしない
不要な土地が売れた場合でも、売却代金の全額を建替え資金に使えるとは限りません。
土地の譲渡所得は、原則として次のように計算します。
売却価格-取得費-譲渡費用=譲渡所得
所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれ、税率も異なります。相続した土地では、原則として被相続人の取得時期を引き継ぎます。国税庁「譲渡所得の計算」
測量費、仲介手数料、登記費用、税金を差し引いた「手取り額」で、建替え資金計画を作りましょう。
認知症になると売却が難しくなる
本人の判断能力が低下すると、不動産の売買契約や贈与ができなくなる可能性があります。
成年後見制度を利用しても、本人の財産を守ることが優先されるため、家族が希望する条件で自由に処分できるとは限りません。
終活としての不動産整理は、体力だけでなく、判断能力が十分なうちに始めることが重要です。
デザインハウス甲府からのアドバイス
建て替えは、自宅を新しくするだけの機会ではありません。今後使わない不動産、相続名義、預金、保険まで整理し、子どもへ何を残すかを決める機会です。
デザインハウス甲府では、不要不動産の売却予定額を安易に建替え予算へ入れません。まず、実際に売却できるのか、税金や処分費を差し引いていくら残るのかを確認します。
子どもが欲しいのは、評価額の付いた土地ではありません。場所が分からず、売れず、管理責任だけが残る土地を渡さないことも、大切な終活です。










