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相続した実家を建て替えると、 小規模宅地等の特例が使えなくなることはありますか?

あります。ただし、「建て替えたら必ず使えない」「実家なら必ず80%安くなる」のどちらも正確ではありません。誰が取得するのか、相続の前後に誰が住んでいたのか、解体や建築がいつ行われるのかによって確認する条件が変わります。解体後に調べるのでは、選べた方法を失うおそれがあります。

小規模宅地等の特例は、相続税を計算する際の一定の土地等の評価についての制度です。建築代金の割引でも、固定資産税を一律に下げる制度でもありません。税の種類を混ぜずに、相続と建て替えの予定を一つの時系列にして考えましょう。

80%減るのは、一定の土地等の評価額

特定居住用宅地等に該当する場合には、330㎡までの部分について、相続税の課税価格に算入する価額を80%減額する仕組みがあります。取得者の立場や居住・保有などの要件を満たすことが必要です。「親の家の土地」という理由だけで自動適用されるものではありません。[38]

例えば、面積などの条件を満たす土地の評価額が4,000万円で、その全部に80%減額を適用できると仮定すると、計算に用いる価額は800万円になります。差額は3,200万円ですが、相続税が3,200万円減るという意味ではありません。ほかの財産、債務、相続人、各種控除等を含めて税額を計算します。

そもそも特例を使わなくても相続税がかからない場合と、特例を使って初めて納税がなくなる場合も分けます。特例の適用で納税額がなくなる場合にも、所定の申告は必要です。「税金はゼロの予定だから申告しない」と自己判断しないでください。節税額の説明には、特例適用前後の計算書が必要です。

土地の評価額が下がっても、土地から納税資金が出てくるわけではありません。納税が必要な場合には、いつまでにいくら現金を用意するかを確認します。建築への自己資金、相続人へ払う代償金、納税に使う資金を、同じ預金から重複して見込まないようにします。

配偶者、同居の親族、別居の親族では条件が違う

配偶者が取得する場合と、同居していた親族が取得する場合では、取得者に関する条件が同じではありません。同居親族には、原則として申告期限までの居住と保有の継続が関わります。別居親族については、被相続人の家族構成や取得者の過去の居住状況等、さらに条件を確認します。[38]

住民票の住所だけを動かせばよい、という話にしてはいけません。いつから、どの建物で、誰と、どのように生活していたかという実態を整理します。別に持ち家がある子どもが「相続した後に実家へ戻る予定」と伝えても、それだけで要件を満たすとは判断できません。

親が施設へ入っていた場合も、直ちに特例が消えると決めつけず、認定状況、施設の種類、入所後の自宅の利用などを確認します。一方、その家を別の用途に変えたことが判定に影響する場合もあります。施設入所と家の扱いを別々の専門家に話し、前提が食い違うことを避けます。

解体日だけでなく、相続と入居の時期を並べる

相続の直前に建て替え中だった場合や、相続後に建て替える場合は、通常の居住継続とは別に慎重な確認が必要です。国税庁の通達にも建替え中の宅地等について取扱いがありますが、工事を計画していることだけで同じ扱いになるとは限りません。契約、着工、仮住まい、新居への入居予定を確認します。[39]

相談用の紙に、親の施設入所、相続開始、解体予定、建築工事、完成、入居、申告期限を順番に書いてください。「来年建て替える」という説明を、日付のある計画に変えることが大切です。すでに解体契約を結んでいる場合は、着工前にその契約書も見てもらいます。相続税の申告期限は原則として、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。[40]

二世帯住宅の場合は、同じ建物に住む計画でも、登記の形や実際の利用状況が適用判断に関わります。玄関を二つにしたら必ず対象外、内部がつながっていれば必ず対象、といった単純な見分け方は避けます。間取りと名義を決める設計段階で、税務上の扱いも照合する必要があります。

売却の税金と、相続税の特例を一緒にしない

相続した空き家を売却する際には、一定の要件で譲渡所得の特別控除を受けられる制度があります。これは小規模宅地等の特例とは対象税目も要件も異なります。「相続の節税がある」と聞いただけで、建て替え、売却、賃貸のどれを選んでも同じ効果があると考えないことです。[41]

家を壊して自分が新築して住む案、古い家や敷地を売る案では、使う制度と確認時点が変わります。売却を考えるなら、所有・居住の経緯、家屋の建築時期、売却期限等を調べます。建て替えの見積もりに、要件を確かめていない売却後の節税額を差し引いてはいけません。

見積もりの比較では、建築費だけでなく、納税、登記、解体、仮住まいを含む手元資金の変化を見ます。特例を使える案と、使えない場合の案を並べておくと、税務上の判断が確定するまでに契約してよい金額を考えやすくなります。期待する減税を現金残高に先取りしない姿勢が重要です。

専門家には、制度名より具体的な計画を見せる

税理士への相談には、登記、敷地面積、家族関係、住まいの履歴、遺言や協議の予定、相続財産の概要、解体と新築の工程を持参します。「小規模宅地は使えますか」とだけ聞くより、どの要件を満たし、何が未確認なのかを説明してもらいやすくなります。

確認するのは、適用対象の土地と持分、必要な居住・保有の条件、申告書類、計画変更で失う可能性のある条件です。建築会社にも、税務確認が終わるまで動かせない日程があることを伝えます。着工を急ぐ営業上の都合で、税務の前提が変わっては困ります。

相続税評価を下げるために、希望しない同居や過大な家を選ぶことも慎重に考えます。税金が減っても、建築費や維持費がそれ以上に増え、家族の暮らしが不自由になるなら、家計全体で得とは限りません。適用できる制度を確認し、その上で住み方を決めることが大切です。

確認した結果は、適用できると考える理由と、その前提条件を記録します。入居や解体の日程、取得する人、登記の形を変更したら、再確認が必要なことも共有します。最初に聞いた回答だけを、条件が変わった後も使い続けないようにしましょう。

解体を申し込む前に、「この順番で建て替えた場合、どの特例が使え、どの条件を守る必要がありますか。使えない場合、手元資金はいくら変わりますか」と確かめてください。制度名を知るだけでなく、動かしてはいけない日付と残すべき資料を知ることが、相続後の大きな支出を守ります。

 

 

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