その計画では足りません。必要なのは、満室の家賃で払える計算に加え、空室が続いたときに誰の現金で何か月持ちこたえるかという計算です。家賃が止まっても、住宅ローンや税、保険、建物の管理は止まりません。小さな戸建て一戸を貸す場合、一戸の退去で家賃収入が全て途切れます。
家を貸すこと自体を否定する必要はありません。ただし、転居先の住居費を払いながら元の家も維持するなら、二つの住まいを家計で支える期間が生じます。「誰かに借りてもらえば何とかなる」と考えず、空室時の持ち出し額と、それを負担できる資金を先に確認してください。
家賃から引くものを返済以外にも並べる
年間の家賃収入から、管理委託、税、保険、修繕、募集や退去に伴う費用などを差し引き、その後で借入の返済を考えます。庭の手入れや遠方からの移動、設備故障の対応なども、所有者の条件によって支出になります。建物が小さいことと、これらの仕事や費用がなくなることは別です。
国税庁の不動産所得の説明でも、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などが挙げられています。ただし税の計算と現金の収支は同じではありません。減価償却と借入元金の返済などを混ぜて「黒字だから現金も残る」と判断しないようにします。(出典:国税庁 不動産収入を受け取ったとき)
修繕用の積立は、家計として現金を確保するための枠です。口座へ残しただけで、実際の修繕支出になったわけではありません。毎月の現金残高と、税務上の利益を別々に把握することで、確定申告時や設備故障時の資金不足を避けやすくなります。
満室でも赤字になる仮定を確かめる
例えば家賃月7万円なら、十二か月入居した収入は84万円です。管理費を家賃の5%で4万2,000円、税・保険を年12万円、修繕用に残すお金を年12万円、返済を年60万円と仮定すると、現金の差引きは年マイナス4万2,000円です。
この数字は家賃や費用の相場ではなく、計算の見本です。それでも「家賃7万円、返済5万円だから月2万円の利益」という見方に、どれだけ抜けがあるか分かります。募集時の費用や大きな修繕、所得に対する税を含めれば、さらに持ち出しが増える場合があります。
手元に現金が残らない計画では、家賃が一か月遅れるだけでも家計から補う必要があります。返済によって元金が減る効果はありますが、生活費を払う現金とは別です。資産の数字だけが動き、毎月の預金が減る状態を見逃さないことが重要です。
契約上、敷金を預かっている場合も、それを自由な利益として使い切らないことです。返還や精算に必要な金銭を、ローン返済の不足を埋めるために使うと、退去の際に資金が足りなくなります。家賃、預り金、修繕用の現金を分けて記録し、口座の残高が多いことだけで余裕があると判断しないようにします。
空室が長引いた年を必ずつくる
同じ条件で入居が六か月しかなければ、家賃収入は42万円、管理費を収入の5%とすると2万1,000円です。税・保険12万円、修繕用12万円、返済60万円を差し引くと、年44万1,000円の持ち出しになります。管理料の契約方式によっては空室中も費用がかかるため、実際の契約で直します。
ここへ退去後の工事25万円、募集費用10万円が加わると仮定すれば、その年の持ち出しは79万1,000円です。さらに転居先の家賃やローンは別に必要です。平均的な年だけでなく、退去と設備故障が重なった年に払えるかを見ることが、貸し続ける判断になります。
空室期間は地域や募集条件で変わるため、一律に何か月なら安全とは言えません。仲介会社へ通常の見通しと長引く場合の理由を聞き、短い場合、長い場合の二つ以上を試算します。楽観的な想定だけで返済計画を組まないことです。
家賃保証や借上げの提案がある場合も、空室リスクが全て消えるとは決めつけません。契約期間、免責期間、賃料の見直し、解約、修繕負担などを確認します。保証される条件が変わった場合の収支もつくり、広告に書かれた最初の金額だけを何十年もの収入として計算しないことが必要です。
大きな修繕は面積の小ささだけでは防げない
給湯器やエアコン、換気設備などは、戸建てが小さくても必要になります。故障時に入居者が使えない設備があれば、修理の手配を後回しにしにくくなります。自分の家だから少し我慢すればよかった状態と、人へ貸している状態では、管理する側の責任が変わります。
退去時の原状回復についても、通常の使用による損耗まで無条件に借主へ請求できると考えてはいけません。国土交通省のガイドラインを参考に、契約と負担区分を管理会社へ確認してください。所有者が負担する修繕をゼロとして家賃収支を組むのは、支出を隠した計算になります。(出典:国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドラインのQ&A)
用意する現金は空室と修繕を組み合わせて決める
仮に毎月の返済5万円を六か月分で30万円、税や保険などを12万円、突発工事を25万円と置けば、合計67万円です。これは万人向けの必要額ではなく、家賃が入らない期間を現金で支える計算例です。家族の生活防衛資金とは別に、どこから出すかを決めます。
金利が変わる借入なら、返済額が増えた場合も入れます。貸すために融資条件を変更する場合には、その返済条件で再計算が必要です。家賃の上昇で吸収できるとは限らないため、収入を固定して支出だけ増えたケースも確認してください。
家族の教育費や老後資金を取り崩して維持する場合は、その家を残す目的を明確にします。将来戻る予定や家族が使う計画があるなら、費用を負担する理由になります。しかし具体的な利用計画がなく、売るのを先送りするためだけなら、損失が膨らむ前に再検討します。
続ける条件と売却へ切り替える条件を決める
家賃をいくらまで下げるか、何か月の空室で売却相談へ切り替えるか、大規模な修繕にいくらまで払うかを事前に決めます。条件を決めずに運営すると、支出のたびに「ここまで払ったから」と続けやすくなります。過去の支出を取り戻す気持ちだけで、次の現金を入れないことです。
貸家としての評価は、家賃の額よりも、支出後に残る現金と必要な管理負担で考えます。「住宅ローンを家賃で返す」という一文を、空室時も成り立つ年次収支へ直してみてください。小さく安く建てた家でも、所有し続ける条件が厳しければ、家計には重い負担になります。
毎年、実際に受け取った家賃と払った費用を計画に照らし、差が出た理由を確認します。一年目の小さな赤字を見過ごすと、設備の交換時期が重なるころには家計で吸収できなくなることがあります。所有し続ける理由と、所有し続けられる資金は別々に確認し、予定が変わったら貸す方針も見直して構いません。










