借り手がつくかは、ローン返済額ではなく、その地域で借りたい人が払う家賃で決まります。9坪・10坪の戸建てが合う人は考えられますが、「毎月のローンがこの額だから、同じ家賃で貸せばよい」という逆算には根拠がありません。家賃が入っても、維持費を払った後に返済をまかなえない場合もあります。
売れなければ貸すという選択肢を持つこと自体は悪くありません。ただし、貸し出せる契約なのか、誰にいくらで貸せるのか、空室中に支出を払えるのかを別々に調べる必要があります。小さな家は管理する面積が少なくても、一戸が空けば家賃収入はゼロになります。
借りたい人と買いたい人を分けて調べる
小さな戸建てを借りる候補として、単身者、二人暮らし、転勤などで一定期間住む人などを考えられます。しかし、地域ごとの通勤、交通、駐車、買い物の条件によって必要な広さや設備は違います。全国的な小さな家の人気を、そのまま地元の家賃へ置き換えないことです。
賃貸では、近くのアパートやマンションも比較相手になります。戸建ての独立性を評価する人がいても、駐車や収納が不足し、同じ家賃で広い賃貸を選べるなら条件は厳しくなります。新築時にこだわった内装や設備が、家賃の上乗せとして受け入れられるかも分けて考えます。
まず地元の賃貸仲介会社へ、写真だけでなく図面と設備の状態を見せて相談します。「貸せますか」ではなく、「どんな人へ、どの募集条件で、何が決まらない理由になりますか」と聞くと、修正すべき点まで把握しやすくなります。
山梨での募集を考える場合も、甲府の中心部と車移動が前提の地域では、調べる比較物件が変わります。県内で一件貸せた例があるから全域で同じ家賃が取れるとは考えません。通勤先や生活施設との距離を説明できる資料を用意し、借りたい人にとって何が便利か、何が負担かを地域の仲介会社と具体的に確かめます。
募集家賃と決まる家賃を区別する
ネットに同じような家が月8万円で載っていても、それだけで自宅も8万円で決まるとは言えません。募集期間、立地、築年数、駐車、設備、契約期間などに差があります。管理会社には、似た条件の募集と成約の違いを、扱える範囲で説明してもらいます。
家賃を上げるために設備を追加する提案にも、回収の計算が必要です。仮に60万円の工事で家賃が月5,000円上がったとしても、単純回収には満室で十年かかります。空室、維持費、税を考えればさらに条件が変わります。工事費をかければそのまま家賃へ転嫁できるわけではありません。
返済をまかなうための家賃を計算する
仮定として、年間の返済60万円、税や保険など18万円、修繕用に残すお金12万円なら、年間90万円が必要です。年間十か月の入居、受取家賃の5%を管理費と仮定すると、必要な月額家賃は90万円÷十か月÷0.95で約9万4,700円になります。
この家賃が地域で現実的でなければ、費用の見方を甘くしても解決しません。この試算には募集時の費用、大きな修繕、所得に対する税などを含めていないため、それらを加えれば必要額はさらに変わります。ローンの月額だけを家賃と比べる計算が、どれほど条件を落としているかが分かります。
なお修繕用に残すお金は、実際に工事した費用とは違います。現金を備えるための計算であり、積み立てた金額がそのまま税務上の経費になるわけではありません。収支表では、家計として残す現金と、税金の計算に使う費用を区別します。
借主を早く決めるために家賃を下げる場合も、下げた後の収支をその場で再計算します。月5,000円の値下げは、満室なら一年で6万円、五年で30万円の収入差です。値下げで空室期間を短くできる可能性もありますが、元の家賃で計算した返済計画を残したまま、募集条件だけ変えないことです。
貸せる状態にする初期費用を確認する
自分が気にせず使っていた不具合も、貸家では説明や修繕の検討が必要になります。給湯、換気、鍵、水漏れ、エアコンなどの状態を確認し、どの設備を賃貸条件に含めるか整理します。「狭いから安く貸すので何でも借主負担」と決めつけることはできません。
退去時の修繕についても、全て敷金や借主へ負担させられるわけではありません。国土交通省の原状回復ガイドラインは、通常の使用に伴う損耗などと借主の負担を分けて考えるための資料です。契約前に管理会社と負担区分を整理し、所有者側の費用を収支へ入れておきます。(出典:国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドラインのQ&A)
庭や設備の管理をどこまで依頼するかも決めます。小さな家でも、入居募集、問い合わせ、修理の手配、退去確認には仕事が発生します。遠方へ移るなら、自分がすぐ現地へ行ける前提で管理費を削らないほうがよいでしょう。
住宅ローンのまま貸せるかを先に確認する
住宅ローンは通常、自分や家族が住む住宅の取得を目的とします。フラット35の案内では、転勤などやむを得ない事情による一時的な賃貸は、自宅へ戻る前提で扱われています。単に家が狭くなって恒久的に転居する場合が同じ条件とは限りません。募集前に返済中の金融機関へ確認してください。(出典:住宅金融支援機構 返済中の融資住宅を賃貸にする場合)
借換えや融資条件の変更が必要なら、新しい金利、返済期間、手数料で収支を計算し直します。家賃だけ先に決めてしまうと、後から判明した融資費用を吸収できないことがあります。金融機関の確認、賃貸の査定、修繕見積もりがそろってから、貸す判断へ進みます。
貸す案にも撤退する条件を決める
募集を始める前に、何か月決まらなければ条件を見直すのか、どの家賃までなら持ち出しを払えるのか、いくらの修繕が出たら売却を再検討するのかを決めます。貸せるまで待ち続ける計画では、空室中の費用が家計から流れ続けます。
売る場合の手取りと、一定期間貸した後に残る現金を、低めの家賃と空室も含めて比べてください。借り手がつくことは、住宅の出口が確保できたことと同じではありません。家賃で支えられない支出を別の収入で埋め続けるなら、その負担を受け入れられる理由が必要です。
将来、自分や家族が戻る可能性があるなら、賃貸の期間や終了の扱いも管理会社と相談します。借り手が見つかった後に、急に使いたくなったから退去してもらうと考えてはいけません。家賃収入を得る間は、相手の生活の場にもなります。貸す判断には、所有者として戻る自由や売り方が変わることも含めて考える必要があります。










