Q. 住宅会社を紹介する前に、住宅ローンの事前審査は必要?
A. すべての相談者へ、住宅会社を紹介する前から事前審査を義務づける必要はありません。しかし、住宅ローンを利用する予定なら、具体的な土地探しや設計、見積りを本格化させる前に、融資の見通しを確認するべきです。与信を確認せず期待だけを高める紹介は、相談者を傷つける結果になりかねません。
住宅相談サービスへ行くと、最初に年収、家族構成、希望地域、理想の間取りなどを聞かれます。
そして、
「この年収なら3,500万円程度まで大丈夫です」
「ご希望に合う住宅会社を3社紹介します」
と話が進むことがあります。
相談者は住宅会社と面談し、モデルハウスを見学し、土地を探し、間取りを作ってもらいます。
何度も打合せを重ねれば、家を建てられる気持ちになるでしょう。
ところが、その後の住宅ローン事前審査で否認される。
減額承認となり、希望していた家を大幅に変更しなければならない。
これは相談者にとって、単なる手続きの失敗ではありません。
時間、期待、家族の計画、自信まで傷つける可能性があります。
事前審査は「家を建てられる可能性」を確認する入口
住宅ローンの事前審査では、一般的に次のような情報を金融機関へ提出します。
- 年齢
- 年収
- 勤務先
- 勤続年数
- 雇用形態
- 希望借入額
- 返済期間
- 自己資金
- 自動車ローン
- カードローン
- 分割払い
- その他の借入れ
- 建築予定地や物件情報
金融機関によって確認項目や審査方法は異なります。
年収が高いだけで承認されるわけではありません。
住宅ローンの審査では、返済負担率、勤務先や雇用形態、他の借入れ、物件の担保評価など、複数の要素が検討されます。
だからこそ、年収だけを見た住宅相談アドバイザーが、
「4,000万円まで借りられます」
と断定するのは危険です。
紹介前に必ず事前審査が必要とは限らない
相談者が家づくりの情報収集を始めたばかりなら、すぐに事前審査を申し込む必要はありません。
例えば、
- 建築する時期がまだ決まっていない
- 新築か中古住宅かも決まっていない
- 希望地域を検討している段階
- 住宅会社の特徴を知りたいだけ
- 住宅予算の概算を確認したい
- 現金購入の可能性がある
という段階なら、まず相談や情報収集から始めても問題ありません。
重要なのは、相談段階と購入段階を分けることです。
情報収集だけの人に事前審査を強要する必要はありません。
一方で、土地の申込み、具体的な設計、正式見積り、建築契約へ進む人については、早い段階で融資の見通しを確認すべきです。
理想的な順序
住宅ローンを利用する場合は、次の順序が現実的です。
- 家計と現在の借入れを整理する
- 無理なく返せる住宅予算を決める
- 希望地域と必要な住宅規模を確認する
- 概算総額を把握する
- 適切な金融機関で事前審査を行う
- 事前審査の結果を踏まえて住宅会社を比較する
- 土地、間取り、仕様を具体化する
- 最終総額を確認する
- 契約条件とローン条項を確認する
- 請負契約・売買契約へ進む
一般的な住宅ローン手続きでも、事前審査の承認後に契約へ進み、その後に本審査を行う流れが示されています。住宅金融普及協会・住宅ローン手続きの流れ
ただし、事前審査の承認は本審査の承認を保証するものではありません。
その後の借入れ、転職、収入変化、健康状態、物件内容などによって、結果が変わる可能性があります。
住宅会社を紹介するだけなら簡単
無料相談会社にとって、住宅会社を紹介すること自体は難しくありません。
相談者の希望を聞き、提携先の中から2社、3社を選び、面談を設定すれば紹介件数になります。
しかし、住宅ローンの見通しを確認せずに紹介すると、住宅会社は次の業務を行うことになります。
- 初回面談
- 土地情報の収集
- 現地調査
- 間取りの作成
- 見積り作成
- 資金計画
- モデルハウス案内
- 住宅設備の提案
- 複数回の打合せ
相談者も休日を何度も使います。
仮に3社とそれぞれ3回面談し、一回2時間なら、面談だけで18時間です。
移動、家族での相談、土地見学まで含めれば、さらに多くの時間を使います。
その後に住宅ローンが否認されれば、相談者も住宅会社も大きな損失を受けます。
与信確認をしない紹介は、誰のためなのか
住宅相談会社が事前審査の可能性を確認しないまま、多くの住宅会社を紹介する理由としては、次のことが考えられます。
- まず紹介件数を増やしたい
- 住宅会社に審査対応を任せている
- 金融知識のある担当者がいない
- 個人信用情報へ踏み込みたくない
- 相談者の気分を下げたくない
- 早く面談予約を取りたい
- 自社の業務範囲を紹介までに限定している
相談者の希望を否定せず、まず住宅会社を見てもらう考え方にも一定の利点はあります。
しかし、明らかに返済計画や既存借入れに不安がある場合まで確認せずに送り出すのは、相談者本位とは言いにくいでしょう。
住宅会社へ送ることが目的になり、家を安全に取得できるかという確認が後回しになってはいけません。
事前審査より先に「返せる予算」を確認する
事前審査で承認された金額は、金融機関が一定の基準で貸せると判断した金額です。
相談者が安心して返せる金額と同じとは限りません。
例えば、借入可能額が4,000万円と示されても、
- 教育費
- 自動車の買替え
- 老後資金
- 固定資産税
- 火災・地震保険
- 住宅の修繕費
- 太陽光や設備の交換
- 金利上昇
- 収入減少
- 親の介護
まで含めると、3,200万円程度に抑えたほうが安全な家庭もあります。
したがって、正しい順序は、
借りられる金額を調べてから使い切るのではなく、返せる金額を決めてから事前審査で確認することです。
事前審査で確認したいのは承認・否認だけではない
事前審査の結果には、単純な承認・否認以外の情報があります。
- 希望額どおりの承認
- 借入額を減らした減額承認
- 返済期間の制限
- 連帯債務や収入合算の条件
- 既存借入れの完済条件
- 自己資金を増やす条件
- 物件内容を確認してから判断
- 本審査での追加確認
例えば、4,000万円を希望して3,200万円の減額承認なら、最初の計画を800万円見直す必要があります。
この結果を知らずに4,000万円の家を設計すれば、後から大幅な面積削減や仕様変更が必要になります。
早い段階で結果が分かれば、最初から現実的な総額で住宅会社を比較できます。
「事前審査に通ったから契約してよい」ではない
事前審査の承認は、住宅購入の安全宣言ではありません。
金融機関は、相談者の教育費や老後の希望生活費まで、すべて把握して融資額を決めるわけではありません。
また、事前審査から本審査の間に、
- 新しい借入れをした
- 自動車ローンを組んだ
- クレジットカードの支払いを延滞した
- 転職した
- 収入が変わった
- 建築総額が増えた
- 建築地や担保条件が変わった
場合には、本審査の判断へ影響する可能性があります。
事前審査は必要な確認ですが、承認額いっぱいまで借りる理由にはなりません。
個人情報へ配慮した進め方が必要
住宅ローンの事前審査では、年収、勤務先、借入状況などの重要な個人情報を扱います。
紹介会社が事前審査を勧める場合は、次の点を確認してください。
- どの金融機関へ提出するのか
- 誰が書類を見るのか
- 住宅会社へ何を伝えるのか
- 審査結果を誰と共有するのか
- 個人情報をどの期間保管するのか
- 本人の同意なく複数社へ申し込まないか
事前審査は早ければよいというものではありません。
相談者の同意を得て、目的と提出先を明確にしたうえで行う必要があります。
住宅ローンに不安がある人ほど先に確認する
次の項目に当てはまる場合は、具体的な住宅会社選びを進める前に、金融機関や住宅ローンに詳しい専門家へ相談したほうがよいでしょう。
- 自動車ローンが残っている
- カードローンやリボ払いがある
- 過去に支払いの遅れがある
- 転職して間もない
- 自営業・会社経営者
- 収入の変動が大きい
- 勤続年数が短い
- 健康状態に不安がある
- ペアローンや収入合算を考えている
- 親族から資金援助を受ける
- 市街化調整区域など特殊な土地を検討している
- 定年後まで返済が続く
このような事情があっても、必ず住宅ローンが否認されるわけではありません。
金融機関や商品によって判断が異なることがあります。
だからこそ、アドバイザーの推測ではなく、適切な金融機関へ事前に確認する必要があります。
相談会社へ確認すべき10の質問
- 住宅会社を紹介する前に、家計と借入れを確認しますか
- 年収だけで住宅予算を決めていませんか
- 事前審査は、どの段階で行いますか
- 事前審査を申し込む金融機関は誰が選びますか
- 一度に何行へ申し込みますか
- 審査結果は誰へ共有されますか
- 減額承認の場合、住宅計画を再設計しますか
- 否認された場合も支援してくれますか
- 借入可能額ではなく、返済可能額を計算しますか
- 事前審査前に住宅会社を紹介する理由は何ですか
「まず住宅会社へ行けば何とかなります」という説明だけで進めないでください。
何とかならなかったとき、最も傷つくのは相談者です。
結論
住宅会社を紹介する前に、すべての人へ住宅ローン事前審査を義務づける必要はありません。
情報収集の段階なら、住宅会社の特徴や価格帯を知ることから始めてもよいでしょう。
しかし、住宅ローンを利用して具体的な計画へ進むなら、
- 現在の借入れ
- 無理なく返せる金額
- 融資の見通し
- 建物以外も含めた総額
を早い段階で確認する必要があります。
住宅会社へ紹介することより、その人が本当に家を建てられる状態なのかを確認することが先です。
住宅ローンの見通しを確認しないまま、理想の間取りやモデルハウスで期待だけを高めることは、親切とは言えません。
承認の可能性が低いなら、早い段階で原因を整理する。
予算が不足するなら、性能を守りながら面積や設備を再設計する。
今は難しいなら、借入れを整理し、時期を改める。
それも住宅相談の大切な役割です。
紹介件数を増やす相談会社ではなく、契約できない可能性まで正直に伝え、相談者の将来を守る相談先を選んでください。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁










