ライフプラン表に建て替えを組み込む際、外してはいけないシニア特有の項目は?
質問
62歳で建て替えを検討しています。ファイナンシャルプランナーからキャッシュフロー表を作るよう勧められました。建築費や住宅ローン以外に、どのような費用を入れるべきでしょうか?
回答
結論から言えば、シニアのキャッシュフロー表は「家が建つか」ではなく、「建てた後も90歳・100歳まで資金が尽きないか」を確認するためにつくります。
建築費と住宅ローン返済だけを入力した表では不十分です。
解体、仮住まい、往復2回の引っ越し、税金、設備交換、医療・介護費、配偶者が一人になった後の収支、物価上昇まで反映する必要があります。
J-FLECも、長寿化と物価上昇を考慮し、100歳程度までキャッシュフローを確認する考え方を示しています。J-FLEC「新年だ!ライフプランを立てよう!」
1.建築本体ではなく「入居までの総額」
最初に入れるのは、住宅会社の本体価格ではありません。新居へ入居するまでに支払う全費用です。
- 建物工事費
- 付帯工事費
- 設計・確認申請費
- 地盤調査・地盤改良費
- 解体費・アスベスト調査費
- 屋外給排水工事
- 外構・駐車場工事
- 登記・融資・火災保険費用
- 仮住まいの初期費用と家賃
- 往復2回の引っ越し費用
- 家具・家電・カーテン
- 予備費
「建物2,000万円」で計画しても、解体や仮住まいなどを加えると、実際の支出は大きく変わります。
キャッシュフロー表には、契約金、着工金、中間金、引き渡し金を、実際に支払う年と月へ分けて入力します。
2.給与が終わる時期と退職金
62歳なら、現在の給与がいつまで続くのかを明確にします。
- 退職予定年齢
- 再雇用後の収入
- 配偶者の収入
- 退職金の受取時期と手取り額
- 企業年金
- 個人年金
- 失業や早期退職の可能性
最も危険なのは、現在の収入がそのまま続く前提で住宅ローンを組むことです。
退職金も、最初から全額を建築費や繰上返済へ充当してはいけません。建て替え後の生活費、医療・介護費、車の買い替え、住宅修繕に使える現金を先に残します。
3.年金は「ねんきん定期便」だけで決めない
年金収入は、夫婦それぞれについて確認します。
- 何歳から受け取るか
- 繰上げ・繰下げをするか
- 働きながら受け取るか
- 税金や社会保険料を引いた手取り額
- どちらか一人になった後の年金額
日本年金機構の「ねんきんネット」では、今後の働き方や受給開始年齢を変えて年金見込額を試算できます。日本年金機構「年金見込額試算」
夫婦2人の年金額だけでなく、夫が先に亡くなる場合、妻が先に亡くなる場合の両方を試算してください。
一人になっても、光熱費、固定資産税、火災保険、通信費、車の維持費は半分にはなりません。
4.住宅ローンは金利上昇も入れる
変動金利を利用する場合は、現在の金利だけで試算してはいけません。
少なくとも次の3パターンを比較します。
- 現在の金利が続くケース
- 金利が段階的に上昇するケース
- 固定金利を選ぶケース
例えば、当初1.5%、その後2.0%、2.5%へ上がるケースなどを入れ、年金生活でも返済できるかを確認します。
また、完済年齢だけでなく、70歳時点、80歳時点の残債を表示します。月々の返済額が払えるだけではなく、病気や介護が始まっても返済を続けられるかが重要です。
5.建てた後の税金と保険料
新築後は、次の費用が継続的に発生します。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 火災保険
- 地震保険
- 水災補償などの追加保険
- 自治会費
- 浄化槽の点検費用など
新築住宅の固定資産税には一定期間の軽減措置があっても、軽減終了後は負担が上がります。
キャッシュフロー表では、最初の数年だけでなく、軽減終了後の金額も入れておきます。
6.設備交換と住宅修繕
高性能住宅でも、設備機器は永久には使えません。
目安として、次のような時期に支出が重なる可能性があります。
- エアコン:10~15年前後
- 給湯器・エコキュート:10~15年前後
- 換気設備の部品交換:機種ごとの時期
- 太陽光発電のパワーコンディショナー:10~15年前後
- 外壁・シーリング・屋根:仕様に応じた点検と補修
- 水栓、トイレ、食洗機など:故障時の交換
- 防蟻処理:工法や保証条件に応じた再施工
すべてを同じ年に交換するとは限りませんが、70代・80代でまとまった支出が発生する可能性があります。
住宅会社から30年間の維持保全計画と、現在価格による概算費用を出してもらい、年次表へ反映します。
7.光熱費は「必ず下がる」と決めつけない
建て替えによって断熱性能が上がれば、冷暖房効率の改善は期待できます。しかし、次の条件によって実際の光熱費は変わります。
- 新居の床面積
- 冷暖房する部屋と時間
- 電気料金の上昇
- 太陽光発電量
- 売電単価
- パワーコンディショナーなどの交換
- 高齢化による在宅時間の増加
住宅会社の都合のよい試算だけを使わず、光熱費削減が少ないケースも作ります。
太陽光発電による削減額を住宅ローンの繰上返済へ回す場合も、毎年自動的に全額を使うのではなく、専用口座へ積み立て、生活資金に余裕があるときだけ実行します。
8.医療・介護・施設入居費
シニアの表で最も見落としてはいけない項目です。
- 通院・薬代
- 入院時の自己負担
- 介護用品
- 住宅改修
- 訪問介護・訪問看護
- デイサービス
- 配食・家事支援
- 介護施設の入居一時金
- 施設の月額費用
- 家族の交通費
医療費や介護費を正確に予測することはできません。だからこそ、毎年一定額だけを入れるのではなく、80歳以降に支出が増えるケースや、夫婦のどちらかが施設へ入居するケースも作ります。
「新築したから最後まで自宅で暮らす」と決めつけてはいけません。身体状況によっては、建て替えから数年後に施設へ入る可能性もあります。
9.車の買い替えと運転をやめた後
山梨県では、生活に車が欠かせない地域が多くあります。
次の費用も年次表へ入れます。
- 車の買い替え
- 車検・保険・税金
- ガソリン代
- タイヤ交換
- 免許返納後のタクシー代
- 通院や買い物の移動費
車を手放せば維持費は減りますが、交通費や宅配サービスの利用料が増えることがあります。
10.物価上昇と長生きするリスク
現在の生活費が30年間変わらない前提では、表の信頼性が下がります。
生活費、修繕費、介護費などには物価上昇を反映し、少なくとも次の2つを比較します。
- 物価上昇を考慮しないケース
- 年1~2%程度の上昇を仮定するケース
運用益を見込む場合も、楽観的な利回りだけを使わず、運用益0%のケースを並べます。
物価は上がるのに、支出は現在のまま。資産運用は必ず成功する。この表では、建て替えの安全性を判断できません。
山梨県では「将来売ればよい」を前提にしない
キャッシュフローが不足したときに、「最後は家を売却すればよい」と考えるケースがあります。
しかし、山梨県では、立地、接道、建物規模、周辺需要によって再販が難しい住宅があります。建築費と同額で売れる保証もありません。
基本シナリオでは売却収入をゼロまたは保守的に設定し、実際に売却できた場合だけ資金が上乗せされる考え方が安全です。
住宅の価値と、すぐ現金化できることは別です。
最低でも3つのシナリオを比較する
キャッシュフロー表は、1本だけでは意味がありません。
標準ケース
予定どおり働き、想定どおり年金を受給し、大きな病気がないケース。
厳しいケース
退職が早まる、金利と物価が上がる、修繕費が増える、介護が必要になるケース。
一人暮らしケース
夫婦のどちらかが先に亡くなり、年金収入が減った後も、固定費を一人で負担するケース。
3つのケースすべてで資産がマイナスにならないか、資金が急減する年はいつかを確認します。
判断するのは「建築可能額」ではなく「使ってよい金額」
金融機関が貸してくれる金額と、老後資金を守りながら使える金額は違います。
まず、次の資金を別に確保します。
- 生活費の予備資金
- 医療・介護の予備資金
- 車の買い替え資金
- 住宅修繕資金
- 葬儀・相続手続きの資金
その残りと、無理なく返せる住宅ローンを合わせた金額が、建て替えに使える予算です。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、住宅ローンが通ることを「建て替え可能」とは判断しません。
建物、解体、仮住まい、往復引っ越しを含む総額を出し、90歳・100歳までの年金、生活費、修繕費、医療・介護費を確認します。希望総額で老後資金が不足する場合は、耐震・断熱・気密・換気を削るのではなく、面積、設備、外構を再設計します。
建て替えで守るべきものは、新しい家だけではありません。家を建てた後も、通帳残高を気にせず暮らせる老後です。










