トイレや浴室の手すりは、建て替え時に「下地」だけ入れておくべきですか?
質問
68歳です。建て替えを計画していますが、今は手すりが必要ありません。住宅会社から「壁の中に下地だけ入れておきましょう」と提案されました。本当に必要でしょうか。手すりが必要になってから取り付けても同じではありませんか?
回答
結論から言えば、トイレには広い範囲へ下地を入れ、浴室は下地だけで済ませず、必要性の高い場所には最初から手すりを付けるのがおすすめです。
手すりは、石こうボードや薄い浴室パネルだけに固定しても、体重を支えられません。将来必要になってから壁を壊して補強すると、内装の復旧まで必要になり、工事が大がかりになります。
ただし、下地を入れる位置が限定され過ぎていると、将来の身体状況に合わないことがあります。「とりあえず下地を1本」では十分ではありません。
トイレは「広い下地+位置の記録」が基本
現在、立ち座りに不安がなければ、トイレの手すりを最初から付ける必要はありません。まずは便器の横と前方の壁へ、広い範囲で下地を入れておきます。
想定しておきたいのは、次の手すりです。
- 立ち座りを助ける縦手すり
- 座った姿勢を安定させる横手すり
- 車椅子から移乗するための跳ね上げ式手すり
- トイレの出入口付近につかまるための手すり
重要なのは、下地を入れた場所を写真と寸法で残すことです。
完成後は壁の中が見えません。「下地は入っています」とだけ説明されても、10年後に施工した住宅会社や担当者がいなければ、正確な位置が分からなくなる可能性があります。
施工中の写真に、床や壁の角からの寸法を記入し、図面と一緒に保管しておきましょう。
下地を狭い範囲に入れると後悔する
手すりの適切な位置は、身長だけでは決まりません。
右手で支えたいのか、左手で支えたいのか、杖を使うのか、車椅子から移乗するのかによって位置が変わります。病気やけがの状態によっても必要な高さや形状は異なります。
そのため、手すり1本分の細い下地ではなく、構造や配管に支障のない範囲へ面で補強しておく方が安心です。
下地補強は「今の自分」ではなく、「将来どちら側から介助されても対応できるか」で考えます。
浴室は下地だけでなく、一部を先に設置する
浴室は床がぬれ、浴槽をまたぎ、立ったり座ったりする場所です。転倒した後に手すりを付けるのでは遅いため、使用頻度の高い場所には、建て替え時から手すりを設置する価値があります。
優先したいのは、次の場所です。
- 浴室の出入口
- 浴槽をまたぐ位置
- 洗い場で立ち上がる位置
- 浴槽内で姿勢を保つ位置
特に浴槽をまたぐ場所の縦手すりは、元気なうちから利用できます。タオル掛けは体重を支える設備ではないため、手すり代わりに使ってはいけません。
また、ユニットバスは住宅の壁下地とは構造が異なります。商品やメーカーによって、補強方法や後付けできる手すりが違うため、「壁の中に下地を入れたから大丈夫」とは限りません。
契約前に、ユニットバスメーカーへ次の3点を確認してください。
- 将来手すりを追加できるか
- 追加可能な位置はどこか
- 専用の補強材や部品が必要か
下地補強を優先したい場所
トイレや浴室以外にも、次の場所へ下地を入れておくと将来の工事がしやすくなります。
- 玄関の上がりかまち
- 玄関ベンチの周辺
- 洗面脱衣室
- 寝室からトイレまでの動線
- 廊下の曲がり角
- 勝手口や屋外へ出る場所
ただし、家中の壁を無計画に補強する必要はありません。毎日立つ、座る、またぐ、靴を履く場所を優先します。
国の住宅性能表示制度でも、住宅内における高齢者の安全な移動や、介助用車椅子での生活に配慮した対策が評価対象になっています。国土交通省「日本住宅性能表示基準」
デザインハウス甲府の考え方
私たちは、シニア住宅だからといって、家中へ手すりを付ける提案はしません。まだ必要のない手すりは、移動の邪魔になったり、かえって暮らしにくくなったりするからです。
トイレは広い範囲へ下地を入れ、浴室は転倒リスクの高い場所へ必要な手すりを設置する。さらに、施工中の写真と下地位置を記録し、将来の追加工事に備えます。
下地補強は、完成後には見えなくなる部分です。見積書に「手すり下地一式」としか書かれていない場合は、場所、範囲、補強方法、記録の有無まで確認してください。
「下地を入れました」という言葉だけでは安心できません。将来、本当に必要な位置へ手すりを固定できて、初めて老後への備えになります。










