長期優良住宅にしなかった後悔とは?
取得しても、大きなメリットがない人もいます
質問
住宅会社から長期優良住宅を勧められています。
税制や補助金、将来の資産価値にメリットがあると言われましたが、申請費用もかかります。
長期優良住宅にしないと、本当に後悔するのでしょうか?
回答
結論から言うと、長期優良住宅にしなかったからといって、必ず後悔するわけではありません。
反対に、長期優良住宅の認定を取得したからといって、必ず大きく得をするわけでもありません。
長期優良住宅には、税制、補助金、住宅ローン金利などの優遇があります。しかし、認定申請費用や追加費用を差し引くと、金銭的なメリットがそれほど大きくならない家庭もあります。
また、将来本当に家を売却するのか、30年間にわたる点検・メンテナンス計画を実行できるのかも考えなければなりません。
大切なのは、
「長期優良住宅だから安心」と考えるのではなく、その家庭にとって本当に認定を取得する価値があるのかを判断することです。
長期優良住宅とは?
長期優良住宅とは、長期間にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられ、建築と維持保全の計画について所管行政庁の認定を受けた住宅です。
主に次のような項目が審査されます。
- 劣化対策
- 耐震性
- 省エネルギー性
- 維持管理・更新の容易性
- 住戸面積
- 居住環境への配慮
- 災害への配慮
- 維持保全計画
長期優良住宅は、完成時の住宅性能だけを審査する制度ではありません。
建築後の点検、修繕、記録の保存まで含めて、住宅を長く使うための計画を認定する制度です。国土交通省「長期優良住宅のページ」
長期優良住宅にしなかった場合に考えられる後悔
認定を取得しなかった場合、次のような場面で後悔する可能性があります。
- 利用できる税制優遇が少なくなった
- 補助金の対象から外れた
- 住宅ローンの金利優遇を利用できなかった
- 売却時に住宅性能を説明する資料が少なかった
- 点検や修繕の履歴を残していなかった
- 相続時に建物の情報を引き継げなかった
- 契約後に制度を知っても申請が間に合わなかった
ただし、これらのメリットを実際に利用するかどうかは、家庭によって異なります。
使わない制度のために費用をかけても、実質的なメリットにはなりません。
後悔1|完成後に認定を取得したくても間に合わない
新築時の長期優良住宅認定は、原則として着工前に申請手続きを進める必要があります。
家が完成してから、
「補助金を使いたい」
「税制優遇を受けたい」
「売却するときに有利なら取得したい」
と思っても、新築時の長期優良住宅として簡単に取り直せるものではありません。
契約前には、住宅会社へ必ず確認してください。
「この住宅は長期優良住宅の認定を取得しますか。申請費用は総額に含まれていますか」
また、「長期優良住宅相当」という説明にも注意が必要です。
「相当」は、認定を取得しているという意味ではありません。申請を行い、所管行政庁から認定通知書が交付されて、初めて認定長期優良住宅になります。
後悔2|税制優遇を受けられなかった
認定長期優良住宅には、要件を満たすことで次のような税制上の優遇があります。
- 住宅ローン減税
- 固定資産税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 現金取得者向けの投資型減税
固定資産税については、新築戸建ての減額期間が一般住宅より長くなる措置があります。登録免許税や不動産取得税にも特例があります。国土交通省「認定長期優良住宅の減税制度」
ただし、優遇額は建築時期、住宅価格、床面積、所得、借入額などによって変わります。
長期優良住宅にすれば、誰でも大幅に税金が安くなるわけではありません。
特に、
- 住宅ローンの借入額が少ない
- 所得税や住民税の納税額が少ない
- 現金で建築する
- そもそも控除条件を満たしていない
という場合は、期待したほどのメリットを受けられない可能性があります。
後悔3|補助金の対象から外れた
国の住宅補助制度では、長期優良住宅が対象区分の一つになることがあります。
認定を取らずに着工してから補助制度を知っても、後から対象へ変更できない可能性があります。
ただし、補助制度には注意が必要です。
- 年度によって制度内容が変わる
- 受付期間が決められている
- 予算がなくなれば終了する
- すべての長期優良住宅が対象とは限らない
- 他の補助制度と併用できない場合がある
- 申請費用や追加工事費が発生することがある
補助金を受け取っても、そのために増えた建築費や申請費用を差し引けば、実際の利益が小さくなる場合があります。
補助金の金額ではなく、補助金を差し引いた後の総額で判断することが重要です。
後悔4|住宅ローンの金利優遇を利用できなかった
長期優良住宅は、住宅ローン商品によって金利引下げの対象になることがあります。
例えば【フラット35】維持保全型では、認定長期優良住宅が対象住宅の一つです。条件を満たせば、ほかの金利引下げ制度と併用できる場合もあります。住宅金融支援機構「フラット35維持保全型」
ただし、変動金利の住宅ローンを利用する人や、別の金融機関の商品を利用する人には、この金利優遇が直接関係しないこともあります。
長期優良住宅による金利優遇を利用するために、希望していない住宅ローン商品を選ぶ必要はありません。
- 認定申請費用
- 追加工事費
- 金利引下げ額
- 融資手数料
- 総支払利息
まで計算しなければ、本当に得なのかは判断できません。
長期優良住宅を取得しても、大きなメリットがない場合がある
長期優良住宅の認定には一定の価値がありますが、取得すれば必ず大きく得をする制度ではありません。
認定を取得することで、
- 認定申請費用がかかる
- 設計や書類作成の費用が増える
- 着工までの時間が延びる場合がある
- 間取りや仕様に制約が出る場合がある
- 定期点検や修繕の記録が必要になる
- 税制優遇を満額受けられるとは限らない
- 補助金は年度や予算によって変わる
- 認定だけで売却価格が上がるとは限らない
という側面もあります。
税制優遇、補助金、金利引下げによって得られる金額から、認定申請費用や追加工事費を差し引くと、大きな差が残らない家庭もあります。
正確には、
「長期優良住宅にすれば得をする」のではなく、条件が合う人は一定の優遇を受けられる制度です。
そもそも、将来その家を再販するのか?
長期優良住宅のメリットとして、よく「将来売却しやすくなる」「資産価値が残る」と説明されます。
しかし、ここで一度考える必要があります。
その家を、本当に将来売却するのでしょうか。
一生住み続け、最終的に子どもが相続する予定であれば、自分が再販価格のメリットを受ける機会はないかもしれません。
また、売却するとしても、中古住宅の価格を大きく左右するのは認定の有無だけではありません。
- 土地の立地と需要
- 周辺人口の増減
- 交通や買い物の利便性
- 築年数
- 建物の状態
- 間取りの使いやすさ
- 修繕履歴
- 売却時の不動産市況
特に地方の戸建て住宅では、建物が長期優良住宅でも、その地域に買いたい人がいなければ高く売ることはできません。
駅から遠い、買い物が不便、人口が減少しているなど、土地の需要が弱ければ、認定による価格差は限定的になる可能性があります。
長期優良住宅は、性能や維持管理の状態を買主へ説明する材料にはなります。
しかし、
長期優良住宅=高く売れる家
長期優良住宅=資産価値が下がらない家
ではありません。
売却予定がない家庭にとって、「将来の再販性」だけを理由に認定を取得するメリットは、それほど大きくない場合があります。
子どもは本当にその家を引き継ぐのか?
「長期優良住宅なら、子どもや孫の世代まで住める」と説明されることがあります。
しかし、建物が長く使えることと、子どもが実際に住むことは別の問題です。
将来、子どもが、
- 地元を離れて生活している
- すでに自宅を所有している
- 実家へ戻る予定がない
- 相続後すぐに売却したい
- 古い間取りを必要としていない
という可能性もあります。
親が「子どもへ残す家」と考えていても、子どもにとっては管理費、固定資産税、草刈り、修繕費を負担する不動産になる場合があります。
長く使える家を建てることは大切です。
しかし、「長く使える」と「家族が長く使い続ける」は同じではありません。
誰が、いつまで、どのように使う家なのかを決めずに、100年使えるという言葉だけで判断してはいけません。
維持保全計画を本当に実行できるのか?
長期優良住宅は、認定を取得して終わりではありません。
認定された維持保全計画に基づき、定期的に点検し、必要な修繕を行い、その記録を保存することが求められます。
一般的には、次のような部分を継続して確認します。
- 基礎
- 柱や梁などの構造部分
- 屋根
- 外壁
- バルコニー
- 雨水の浸入を防ぐ部分
- 給排水設備
- 床下
- 小屋裏
しかし、30年間の維持保全計画を作成しても、それを実際に続けられるかは別問題です。
新築時は点検の必要性を理解していても、10年、20年と経過する中で、
- 住宅会社が廃業する
- 担当者が退職する
- 点検の案内が来なくなる
- 所有者が高齢になる
- 相続によって所有者が変わる
- 修繕費を確保できない
- 記録を紛失する
- 必要な修繕を先延ばしにする
という可能性があります。
計画書があっても、点検や修繕を実行しなければ、住宅の状態は守れません。
計画どおり修繕するには、お金が必要
維持保全計画には、実際の修繕費を自動的に用意してくれる仕組みはありません。
一般的な戸建て住宅でも、将来的には、
- 屋根や外壁の補修
- シーリングの打ち替え
- 防水工事
- 給湯器の交換
- 換気設備の交換
- エアコンの交換
- 太陽光発電設備の修理
- 給排水設備の補修
などが必要になります。
住宅ローン、教育費、車の買い替え、老後資金と重なれば、計画どおり修繕費を支払えない家庭も出てきます。
長期優良住宅の認定を取得しただけで、建物が自動的に長持ちするわけではありません。
長持ちさせるには、点検、修繕、それを実行するための資金が必要です。
30年間の計画書より、30年間修繕費を確保できる資金計画の方が重要です。
住宅会社は30年後も存在しているのか?
維持保全計画を実行するには、建築した住宅会社の継続的な支援が重要です。
しかし、30年間、同じ住宅会社が存続している保証はありません。
長期優良住宅の認定を取得していても、住宅会社が廃業すれば、所有者自身が別の点検会社や工務店を探さなければなりません。
契約前には、認定を取得するかだけでなく、次の点も確認する必要があります。
- 定期点検は誰が行うのか
- 点検は無料か有料か
- 何年目まで対応するのか
- 修繕費の目安はいくらか
- 点検結果はどのように保存するのか
- 住宅会社が廃業した場合はどうするのか
- 図面、計算書、施工写真を受け取れるか
- 第三者による点検へ引き継げるか
「60年維持保全計画があります」という説明だけでは不十分です。
その計画を誰が実行し、誰が費用を負担し、住宅会社がなくなった後に誰が引き継ぐのかまで確認する必要があります。
認定があっても、メンテナンスをしなければ意味がない
長期優良住宅の認定は、完成時点と維持保全計画についての公的な確認です。
将来の建物状態を保証するものではありません。
認定を取得した住宅でも、
- 雨漏りを放置する
- 外壁の劣化を修繕しない
- 換気設備を清掃しない
- シロアリ対策を行わない
- 点検記録を残さない
という状態が続けば、建物は劣化します。
反対に、長期優良住宅の認定がなくても、適切に施工され、定期的に点検・修繕されている住宅は長く使える可能性があります。
大切なのは認定の名称ではなく、
実際にどう建て、どう点検し、どう修繕してきたかです。
長期優良住宅なら高性能とは限らない
長期優良住宅の認定を取得していても、すべての住宅性能が最高水準になるわけではありません。
耐震性については、
- 耐震等級はいくつか
- 許容応力度計算を行っているか
- 制震装置を採用しているか
- 地盤や基礎まで検討されているか
を確認する必要があります。
断熱・気密・換気についても、
- 断熱等級
- UA値
- 窓の仕様
- 気密測定の有無
- 実測C値
- 換気方式
- 熱交換率
- 換気量の確認方法
まで見なければ、本当の性能は分かりません。
長期優良住宅の認定を取得しても、気密性能を示すC値が自動的に保証されるわけではありません。
したがって、
「長期優良住宅だから暖かい」
「長期優良住宅だから地震に絶対強い」
「長期優良住宅だから長持ちする」
と一括りにするのは危険です。
「長期優良住宅相当」にも注意
住宅会社から、
「認定費用がもったいない」
「性能は長期優良住宅と同じ」
「書類があるかないかの違いだけ」
と説明されることがあります。
本当に同等の性能なら、次の資料を提出してもらいましょう。
- 構造計算書
- 耐震等級を証明する書類
- UA値計算書
- 断熱仕様書
- 気密測定報告書
- 劣化対策の仕様書
- 維持保全計画
- 設計住宅性能評価書
- 施工写真
- 長期優良住宅認定通知書
認定を取得しない場合には、申請費用がいくら下がり、どの優遇を利用できなくなるのかも確認してください。
「性能は同じです」という営業担当者の言葉は、将来売却するときの証明にはなりません。
長期優良住宅にしなくてもよい人
次のような場合は、認定取得による実質的なメリットが小さい可能性があります。
- 税制優遇を十分に受けられない
- 対象となる補助制度を利用しない
- 金利優遇の対象ローンを利用しない
- 認定に必要な追加費用が大きい
- 将来売却する予定がない
- 子どもが家を引き継ぐ予定がない
- 第三者評価など、別の方法で性能を証明できる
- 認定がなくても点検・修繕記録を管理できる
ただし、「申請費用がかかるから」という理由だけで外すのも早計です。
取得費用と、実際に利用できる税制・補助金・金利優遇を具体的に比較して判断してください。
長期優良住宅を検討する価値がある人
一方、次のような人は認定取得を検討する価値があります。
- 利用できる補助金が明確になっている
- 住宅ローンの金利優遇を受けられる
- 税制優遇の効果が申請費用を上回る
- 将来売却する可能性がある
- 子どもへ住宅を引き継ぐ予定がある
- 点検・修繕記録を継続して管理できる
- 住宅会社に長期的な点検体制がある
- 認定取得費用が総額に含まれている
重要なのは、一般論ではなく、自分の家庭で利用できるメリットを金額にすることです。
デザインハウス甲府の正直な考え方
私たちは、長期優良住宅を取得できるなら、取得しておく価値はあると考えています。
ただし、
長期優良住宅にしただけで、家が劇的に暖かくなるわけでも、地震に絶対強くなるわけでも、将来高く売れるわけでもありません。
税制や金利の優遇も、申請費用や追加費用を差し引けば、大きな利益が残らない家庭があります。
また、将来再販しなければ、再販時の説明力というメリットを利用する機会はありません。
維持保全計画を作成しても、点検、修繕、記録保存を実行できなければ、その計画は書類の中だけで終わります。
私たちが重視しているのは、長期優良住宅という名称だけではありません。
- 耐震等級3
- 許容応力度計算
- 制震装置
- 断熱等級6
- UA値0.46以下
- 全棟気密測定
- C値0.7以下
- 第一種熱交換換気
- 定期点検
- 図面・計算書・測定結果の保存
という、実際に確認できる性能と記録です。
長期優良住宅は、その上に加える公的な認定の一つです。
認定書より実際の性能。
維持保全計画書より、修繕を実行できる資金計画。
再販できるという期待より、本当に需要がある立地。
この3つを冷静に確認する必要があります。
契約前に確認したい12の質問
- 長期優良住宅の認定を取得しますか
- 認定申請費用は総額に含まれていますか
- 認定を取らない場合はいくら安くなりますか
- 実際に受けられる税制優遇はいくらですか
- 利用できる補助金は確定していますか
- 住宅ローンの金利はいくら下がりますか
- 認定取得費用を差し引いても得になりますか
- 耐震等級はいくつで、どの計算方法ですか
- UA値と実測C値はいくつですか
- 定期点検は誰が、何年目まで行いますか
- 30年間の修繕費はいくら必要ですか
- 住宅会社が廃業した場合、点検と記録を誰が引き継ぎますか
この質問に具体的な金額や書類で答えられる住宅会社かどうかを確認してください。
まとめ
長期優良住宅にしなかったからといって、必ず後悔するわけではありません。
反対に、認定を取得したからといって、必ず大きく得をするわけでもありません。
判断するときには、
- 認定取得費用
- 税制優遇
- 補助金
- 住宅ローン金利
- 実際の耐震・断熱・気密性能
- 将来、本当に再販するのか
- その地域に中古住宅の需要があるのか
- 子どもが本当に引き継ぐのか
- 維持保全計画を実行できるのか
- 修繕費を確保できるのか
- 住宅会社がなくなった後も管理できるのか
まで考える必要があります。
長期優良住宅は、取得すること自体が目的ではありません。
その家を長く使うための性能、点検、修繕、資金がそろって初めて意味を持ちます。
認定書は、家を暖かくしません。
維持保全計画書は、修繕費を支払ってくれません。
長期優良住宅という名称だけでは、家は高く売れません。
名称ではなく実際の性能。
計画ではなく実行。
期待ではなく、将来の需要まで確認して判断することが大切です。










