親の土地を無償で使えれば、土地購入費を抑えられる可能性があります。ただし、建物を建てたからといって、土地も将来自分のものになるとは限りません。使用する約束、銀行の担保、親の相続を別々に確認しないと、土地代を払わなかった安心の裏で、大きな負担を抱えることがあります。
最初に決めるのは「建てていいよ」という家族の気持ちを、どの土地を、誰が、いつまで、どの条件で使う約束にするかです。親の生活費や財産管理、ほかの相続人との関係も考えます。建築費を借りた後に土地の扱いを相談する順番にはしないでください。
無償で使うことと、土地をもらうことは違う
親から地代や権利金を払わずに土地を借りて家を建てる場合は、一般に使用貸借として整理します。国税庁は、その土地を使用する権利の価額を贈与税上ゼロと扱い、通常、この権利について借地権相当額の贈与税は課さないと説明しています。土地の所有権を贈与した場合とは別です。[47]
税務上の権利の評価がゼロという説明から、「何の約束もいらない」「法律上も何の権利もない」と結論を出すことはできません。使用の期間や目的、返還、費用負担について、当事者の関係を確認します。有償で借りる契約を選ぶ場合には、地代と契約内容に応じた扱いを改めて検討します。
親子の間でも、後から契約内容を確認できる書面を残すことに意味があります。土地の所在と範囲、住宅を建てる目的、使用する人、地代等の条件、税金や維持費の分担を整理します。住宅会社が用意した簡単な承諾書だけで、将来の土地利用まで決まるかは確認が必要です。
相続時には、土地も家族の財産として考える
使用貸借している土地を将来相続する場合、国税庁は、他人へ賃貸している土地としてではなく、自用地として評価すると説明しています。子どもの家が建っているから土地の評価が当然に大きく下がる、という前提で親の相続税対策を組まないことです。[47]
親に複数の子がいる場合には、土地を使っている子が、その土地を必ず単独で取得できるとは限りません。遺言や遺産分割の方針、他の財産、相続人の希望を整理します。親から口頭で「この土地はお前のもの」と言われたことだけを、借入れや建築契約の根拠にしないでください。
例えば土地を使う子が将来600万円の代償金を用意する分割案になれば、土地購入費が当初ゼロでも、その後の資金負担はゼロではありません。この金額は仮定ですが、建築の返済と相続時の精算を同時に賄えるかを考える必要があります。親の財産を調べずに、今の建物予算だけを決めるのは早計です。
相続の話を切り出しにくいときは、財産を要求する話ではなく、「建物のローンを借りる前に、家族全員が困らない条件を確認したい」と伝えます。親が説明できるうちに意向を聞き、必要な専門家に相談しておくことが、次の世代の話合いを助けます。[34]
銀行が親の土地に求める条件を、本人が理解する
建物の住宅ローンについて、銀行が敷地にも担保設定を求める場合があります。親が土地を貸すことに賛成していても、返済が滞った場合に土地の処分が問題になる契約まで理解しているとは限りません。土地を使わせる承諾と、担保を提供する承諾を同じ一言で済ませないでください。
担保提供者、連帯保証人、連帯債務者は役割が違います。親がどの立場で署名し、どこまで責任を負うかを、銀行の契約書で確認します。「名前だけです」「家族の印鑑が必要なだけです」という説明では不十分です。親の預金や生活にも関わるため、本人が質問する時間を設けます。
親が将来、土地を売って施設費用などを確保したいと考えたときも想定します。子の家と担保がある土地では、売却の進め方に調整が必要になる場合があります。親の住み替え資金を土地の売却だけに頼りながら、子が長期で利用する計画は、両者の予定が両立するか確認します。
土地代以外に、使える敷地へ整える費用がある
親の敷地の一部へ建てる場合には、境界、道路との関係、用途地域等、上下水道、既存建物との配置を調べます。土地を分筆することと、建築基準上の敷地をどう設定するかは同じ手続ではありません。親の家を含め、計画が成り立つかを設計者に確認してもらいます。
甲斐市の都市計画図では用途地域や建蔽率などを確認できますが、市は公開情報だけですべての条件を提供するものではないと案内しています。地図で住宅地に見えることだけで建築可能と判断せず、現地と必要な窓口で条件を確かめます。農地等であれば、別の手続の確認も必要です。[48]
仮に測量等60万円、給排水の工事100万円、造成や外構120万円が必要なら、土地購入費とは別に280万円を用意する計算です。相場を示すものではありませんが、「親の土地だから安い」ときこそ、使える状態にする工事を最初の総額に入れます。母屋と費用をどう分けるかも話し合いましょう。
母屋と配管や進入路を共用するなら、点検、修理、将来の売却時の扱いも確認します。今は親子で使えても、土地の取得者が変わったときに同じ運用ができるとは限りません。工事費を節約できる共用案ほど、利用する範囲と維持費の分担を図面と書面に残してください。
親子それぞれの将来から、契約を点検する
子が転勤する、離婚する、返済が難しくなる、親が亡くなるなど、今と違う状態になった場合も確認します。建物を貸すことができるか、売却を検討する場合に誰と話すか、取り壊すときの費用を誰が持つか。長い契約だからこそ、暮らしの変化を一度は想定しておきたいところです。
すべての事態を細かく書き切る必要はありませんが、少なくとも土地利用の目的、終了の条件、建物の扱い、費用の分担を専門家と整理します。相続の意向を書面にする場合も、必要な形式と内容を確認します。家族だけで書いた覚書が、想定するすべての効果を持つとは限りません。
住宅会社には、土地利用の確認と銀行への相談が終わるまで、何を進めてよいか示してもらいます。設計、測量、工事契約を区別し、先に発生する費用を明確にします。家族の善意を守るには、曖昧な前提で建物だけを先に決めないことが重要です。
相談では「この土地を無償で使って建てる場合、親の相続と生活資金、私の借入れにどんな条件が付きますか」と聞いてください。土地代がかからないメリットを生かすためにも、名義、契約、担保、将来の精算までを含めて家族で判断しましょう。










