親が所有する「別の収益物件(アパートなど)」の家賃収入を建替えローンの原資にする場合の確定申告。
こんなご相談をいただきました
親がアパートを所有しており、毎月家賃収入があります。
その家賃を実家の建て替えローンの返済に充てたいのですが、住宅ローンの審査で収入として認められますか。また、確定申告や税金で注意することはありますか?
A. 家賃収入を建て替えローンの返済原資にすることはできます。ただし、金融機関が見るのは家賃の入金額ではなく、必要経費を差し引いた不動産所得と、その収入が今後も安定して続くかどうかです。
「家賃収入」と「手取り収入」は違う
毎月30万円の家賃が入っていても、30万円すべてをローン返済へ使えるわけではありません。
アパート経営には、次のような支出があります。
- 管理会社への管理料
- 共用部分の電気代や清掃費
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険・地震保険
- 建物や設備の修繕費
- 入居者募集の広告費
- 借入金の利息
- 減価償却費
- 空室や家賃滞納による減収
税務上の不動産所得は、基本的に次のように計算します。
不動産所得=家賃などの総収入-必要経費
詳しい計算方法は、国税庁の不動産収入を受け取ったときでも確認できます。
確定申告書の数字がローン審査の基本になる
金融機関は、通帳へ振り込まれた家賃の合計額だけで返済能力を判断しません。
一般的には、次の書類を確認します。
- 過去2~3年分の確定申告書
- 不動産所得の収支内訳書または青色申告決算書
- 賃貸借契約書
- 入居状況や家賃一覧
- 固定資産税の納税通知書
- アパートローンの返済予定表
- 登記事項証明書
- 修繕履歴
申告上の不動産所得が安定して黒字であれば、返済原資として考慮される可能性があります。
一方、家賃収入が多くても、経費や減価償却費を差し引いた所得が赤字であれば、住宅ローン審査で有利になるとは限りません。
節税の赤字が住宅ローン審査では不利になることもある
アパート経営では、減価償却費などによって帳簿上の所得を抑えることがあります。
税金を抑える点では有効でも、住宅ローン審査では「不動産所得が少ない」「賃貸経営が赤字」と判断される可能性があります。
たとえば、年間家賃収入が360万円あっても、必要経費などを差し引いた不動産所得が年間60万円なら、金融機関が360万円をそのまま年収へ加えるとは考えない方が安全です。
金融機関ごとに審査方法は異なるため、建築契約前に確定申告書を持参して事前審査を受けてください。
既存のアパートローンも審査される
収益物件に借入金が残っている場合、家賃収入だけでなく、アパートローンの残高や毎月の返済額も確認されます。
特に注意したいのは、次のような物件です。
- 入居率が低下している
- 築年数が古い
- 数年以内に大規模修繕が必要
- 家賃を下げないと入居者が決まらない
- 借入期間が長く残っている
- 一括借り上げの条件が変更される可能性がある
現在は満室でも、10年間満室が続く保証はありません。
住宅ローンの返済計画では、満室家賃ではなく、空室、修繕、税金を差し引いた実質手取り額を使うべきです。
家賃を住宅ローン返済へ使っても必要経費にはならない
親が受け取った家賃を、自宅の建て替えローン返済へ使うこと自体は可能です。
ただし、自宅の住宅ローン元金や利息は、アパート経営のための支出ではありません。そのため、原則として不動産所得の必要経費にはできません。
家賃収入を次のように分けて考える必要があります。
- 家賃収入を受け取る
- アパート経営の必要経費を差し引く
- 不動産所得として確定申告する
- 所得税・住民税や将来の修繕費を確保する
- 残った資金から住宅ローンを返済する
「家賃を住宅ローンへ回したから、その分だけ不動産所得を減らせる」という扱いにはなりません。
親の収入で子名義のローンを返す場合は注意
アパートの所有者が親で、建て替えローンの債務者が子どもの場合、さらに注意が必要です。
親の家賃収入を使って子どものローンを継続的に返済すると、親から子への贈与と判断される可能性があります。
また、親の土地に子ども名義の建物を建てる場合は、次の内容も整理しなければなりません。
- 土地と建物の名義
- 建築費の出資割合
- 住宅ローンの債務者
- 毎月の返済者
- 将来の相続人
- 親子間の資金移動
誰が資金を出し、誰の名義で建て、誰が返済するのかを一致させることが基本です。
家族間だから曖昧でよいと考えず、契約前に税理士や司法書士へ確認してください。
家賃収入は全額を返済に回さない
家賃収入をすべて建て替えローンへ回すと、アパートの修繕に対応できなくなります。
特に築年数が進むと、次のような支出が発生します。
- 外壁・屋根の塗装
- 防水工事
- 給湯器やエアコンの交換
- 給排水設備の修理
- 退去後の原状回復
- 空室対策のリフォーム
- 火災保険料の上昇
少なくとも、今後10~15年間の修繕計画を作り、修繕積立金を残したうえで返済可能額を決めましょう。
返済に使える金額の考え方
たとえば毎月の家賃収入が30万円の場合でも、返済計画上は次のように見ます。
| 項目 | 月額例 |
|---|---|
| 家賃収入 | 30万円 |
| 管理・税金・保険・修繕積立 | ▲8万円 |
| アパートローン返済 | ▲10万円 |
| 空室に備える余裕 | ▲3万円 |
| 建て替えローンへ回せる目安 | 9万円 |
満室時の30万円ではなく、支出と空室リスクを差し引いた9万円を返済原資として考える方が安全です。
さらに、家賃が20%下がっても返済を続けられるか試算してください。
デザインハウス甲府からのアドバイス
収益物件を所有していることと、住宅ローンを無理なく返済できることは同じではありません。
特に地方のアパートは、築年数の経過、人口減少、空室、修繕費の増加によって、家賃収入が下がる可能性があります。
デザインハウス甲府では、家賃の入金額ではなく、確定申告上の不動産所得、既存借入、空室率、修繕計画を確認して返済可能額を考えます。
また、親の収入を子どもの建て替えへ使う場合は、贈与や持分の問題も同時に整理します。
家賃収入は、毎月必ず入る年金ではありません。満室を前提に借入額を増やさず、空室と大規模修繕が同時に起きても返済できる範囲で計画してください。










