暖かい家は本当に必要?ぜいたくではない理由
結論から言うと、暖かい家は必要です。
ただし、真冬に半袖で過ごせるほど室温を上げることが目的ではありません。
少ない暖房でも無理なく室温を保ち、リビング、廊下、トイレ、洗面脱衣室などの温度差を小さくすることが重要です。
暖かい家は、単に快適なだけのぜいたく品ではありません。
毎日の生活負担、冷暖房費、老後の暮らしやすさ、停電時の室温低下などにも関係する、住宅の基本性能です。
昔の家でも暮らせたのではないか
「昔の断熱性能が低い家でも生活できた」と言われることがあります。
確かに、寒い家でも生活はできます。
厚着をする、こたつに入る、使う部屋だけ暖房する、廊下やトイレの寒さを我慢する。こうした暮らし方で冬を乗り切ってきた家庭も少なくありません。
しかし、「生活できること」と「身体的な負担を抑えて快適に暮らせること」は違います。
今から新築する住宅で、昔と同じ寒さを再現する必要はありません。
住宅は数十年間住み続けるものです。建築時の年齢だけでなく、20年後、30年後の暮らしまで考える必要があります。
問題は室温だけでなく温度差
冬の住宅で注意したいのは、リビングの室温だけではありません。
暖房しているリビングは暖かくても、廊下、トイレ、洗面脱衣室、浴室が冷えていれば、移動するたびに大きな温度差を受けます。
国土交通省が紹介する調査では、居間や脱衣所の室温が18℃未満の住宅では、入浴事故リスクが高いとされる42℃以上の熱め入浴が増える傾向が示されています。
これは、暖かい家に住めば病気や事故を必ず防げるという意味ではありません。
しかし、家の中の寒さや温度差が身体へ与える負担を軽視すべきではないことを示しています。
本当に見るべきなのは、暖房中のリビングの最高室温ではなく、真冬の朝の寝室、廊下、トイレ、洗面脱衣室の温度です。
暖かい家は老後ほど価値が高くなる
家を建てる30代や40代では、寒い廊下や脱衣所をそれほど負担に感じないかもしれません。
しかし、住宅ローンを返し終える頃には、住む人の年齢も上がっています。
老後は、家の中で過ごす時間が長くなり、夜間にトイレへ移動する回数も増える可能性があります。
そのとき、リビングだけが暖かく、廊下やトイレが極端に寒い家では、毎日の移動そのものが負担になります。
暖かい家の価値は、完成直後よりも、年齢を重ねた後に大きくなる可能性があります。
50代・60代の建て替えでは、広さや部屋数だけでなく、家全体の温度差を小さくする設計を優先すべきです。
子どもにも高齢者にも室温は重要
床に近い場所は、室温計を置く高さより冷えていることがあります。
小さな子どもは床に近い位置で遊ぶ時間が長いため、大人より低い温度環境で過ごしている可能性があります。
高齢者だけでなく、子どもが過ごす床付近の温度にも注意が必要です。
国土交通省は、断熱性能が高い住宅では暖房していない部屋の自然室温も保ちやすく、部屋間の温度差を小さくする効果があると説明しています。
ただし、住宅性能だけで疾病を予防・治療できると断定することはできません。
暖かい家は医療の代わりではなく、寒さによる生活上の負担を減らしやすい住環境です。
暖かい家は暖房費が高いのか
暖かい家とは、エアコンを強く運転して室温を上げ続ける家ではありません。
断熱性能と気密性能によって、暖房でつくった熱を逃がしにくくする家です。
同じ室温を目指す場合、熱が逃げにくい住宅ほど必要な暖房エネルギーを抑えやすくなります。
ただし、高断熱住宅なら必ず光熱費が安くなるとは限りません。
以前より広い範囲を暖房する、設定温度を高くする、在宅時間が長くなるなど、暮らし方によって光熱費は変わります。
大切なのは、「光熱費が必ずいくら下がる」という営業トークではなく、少ない暖房能力で家全体の室温を維持しやすいことです。
光熱費と性能の関係とは?でも詳しく解説しています。
停電時にも断熱性能は働く
暖房設備は、停電すると使用できない場合があります。
しかし、断熱材、窓、気密層には電気が必要ありません。
断熱性能の高い住宅は、暖房が止まった後も室温変化を緩やかにする効果が期待できます。
国土交通省の設計ガイドでも、高断熱住宅は冬期に一定の室温を保ちやすく、高効率設備や太陽光発電、蓄電池などと組み合わせることで、災害時の在宅避難に役立つとされています。
もちろん、高断熱だから停電時も暖房不要という意味ではありません。
外気温、日射、停電時間、家族構成などによって室温は低下します。それでも、暖房停止後に急激に冷えにくいことは、防災上の価値になります。
暖かい家は夏に暑くならないのか
断熱性能が高い住宅は、一度入った熱も逃げにくくなります。
そのため、夏の日射対策が不十分なら、室内が暑くなる可能性があります。
暖かい家を一年中快適な家にするには、冬の日射を取り入れ、夏の日射を遮る設計が必要です。
窓の方位と大きさ、Low-Eガラス、軒、庇、外付けシェードなどを組み合わせます。
「断熱性能が高いから夏も自動的に涼しい」と考えるのではなく、断熱と日射遮蔽をセットで計画してください。
暖房設備だけでは解決できない
寒い家へ大きなエアコン、床暖房、全館空調を導入すれば、室温を上げることはできます。
しかし、断熱性能が低く、隙間が多ければ、つくった熱が逃げ続けます。
暖房設備は将来交換できますが、壁の中の断熱材、気密層、窓、構造を完成後に全面的に改修するには大きな費用がかかります。
予算に限りがあるなら、豪華な設備より先に、後から変更しにくい断熱・気密・窓へ配分するべきです。
暖かい家をつくる具体的な条件は、暖かい家の条件とは?をご覧ください。
断熱等級だけでは暖かさを判断できない
住宅会社から「断熱等級6です」と説明されても、それだけで実際の暖かさは決まりません。
確認すべき内容は次のとおりです。
- UA値はいくつか
- C値を全棟で測定するか
- 窓と玄関ドアの仕様
- 冬の日射を取得できる設計か
- 夏の日射遮蔽を考えているか
- 換気による熱損失をどう抑えるか
- 暖房負荷に合った設備計画か
- 断熱施工を現場で確認するか
断熱等級は重要な入口ですが、暖かさの完成を保証する数字ではありません。
見えない性能になぜお金をかける?でも、建築後に見えなくなる部分の価値を説明しています。
デザインハウス甲府の考え方
デザインハウス甲府では、暖かい家をぜいたく品ではなく、長く暮らすための基本性能と考えています。
重視しているのは、次の内容です。
- 断熱等級6
- UA値0.46以下
- C値0.7以下
- 全棟で気密測定
- 第一種熱交換換気
- 熱回収率92%
- 窓と日射を考えた設計
- 住宅性能に合った暖房計画
設備で無理に暖めるのではなく、暖房した熱を逃がしにくい住宅を目指します。
俺流ポイント
私は「暖かい家は必要ですか」と聞かれたら、「今の自分ではなく、30年後の自分に聞いてください」と答えます。
若いときに我慢できた寒さが、老後も同じとは限りません。
そして、完成後に高級キッチンを交換することはできても、壁を剥がして断熱と気密を全面的にやり直すのは簡単ではありません。
私なら、見た目の設備より、真冬の朝の廊下と洗面脱衣室を優先します。
住宅会社には「暖かいですか」ではなく、UA値、実測C値、窓仕様、換気方式、暖房計画を聞きます。
「半袖で暮らせます」「エアコン1台で十分です」という言葉だけでは、判断しません。
必要なのは、暑すぎる家ではありません。
寒さを我慢せず、家の中の温度差を小さくし、少ないエネルギーで無理なく暮らせる家です。
山梨県甲府市・甲斐市周辺で家づくりや建て替えを検討している方には、現在の快適性だけでなく、老後と災害時まで考えた住宅性能をご説明します。










