結論
「木だから仕方ない」だけで話を終える必要はありません。一方、新築の床が鳴ったという事実だけで、構造に重大な問題があるとも断定できません。私なら、どこをどう踏むと音が出るのか、音以外の変化があるのかを整理し、原因の説明と確認方針を求めます。
例えば夜、子どもの部屋へ向かうたびに廊下がきしむ家を考えてみてください。昼間は気にならない音でも、静かな時間には家族の眠りを気にして足の置き方を変えるかもしれません。安全性の確認と、暮らしの困り事への対応は、どちらも相談してよい問題です。
木の性質という説明が当てはまる範囲
DAIKENは床鳴りの原因として、木質床材の伸縮に伴う接合部のこすれなどを挙げています。こうした音には床材の性能上の問題がない場合もありますが、同じ案内には下地の状態など別の要因も示されています。床が鳴るという共通点だけで、原因まで同じとは言えません。[1]
住宅リフォーム・紛争処理支援センターの技術資料も、木造の床鳴りについて、材料の伸縮による軽微な音と、下地や支持の状態などを確認する調査を扱っています。そこで必要なのは、音を一括して正常か異常かに分けることより、発生箇所と条件を絞る作業です。[2]
私なら担当者に「木が伸び縮みしたという判断は、どこを確認して分かったのですか」と聞きます。説明の言葉を疑ってかかるのではなく、今回の床でその説明が成り立つ根拠を共有したいからです。確認した範囲が分かれば、まだ不明な部分も整理できます。
また、無垢材か複合フローリングか、床暖房の有無、下地の構成など、採用仕様をそろえます。ネットで見つけた同じような音の動画が、自分の家と同じ仕組みの床とは限りません。床材の名前だけでも分からなければ、仕様書や施工記録を担当者に確認してもらいます。
一度の訪問で再現できるように記録する
床鳴りは、担当者が来た日に限って再現しないことも想定しておきます。私は、間取り図に位置を記し、どちらの方向から歩いたときに鳴るかを書いておく方法を勧めます。廊下の中央なのか壁際なのか、家具の横なのかを、見た人が同じ場所に立てる形にします。
動画を撮るなら、音だけでなく足の位置と普通に歩く様子が分かる範囲を残します。わざと跳びはねたり、重い物を載せたりして音を大きくする必要はありません。普段の生活で起きる状況を見せる方が、何に困っているかを相手へ伝えやすくなります。
発生日、時間帯、空調の使用状況、以前より変わった点も簡単に書きます。手元に温湿度計があれば数値を添えてもよいですが、計器を買うまで相談を待つ必要はありません。「暖房を使い始めてから」「引っ越し前から」など、分かる範囲の事実だけで十分な入口になります。
例えば家具を置く前は鳴らず、配置を変えた後に気付いたなら、その前後の位置関係も伝えます。ただし、家具が原因だと自分で決め付けないことです。記録は結論を証明するためではなく、調べる候補を整理する材料として渡します。推測と実際に見たことを分けておきます。
家族によって音の感じ方が違う場合も、気のせいと片付けず、同じ場所を普段どおりに通る様子を一緒に確認します。例えば一人は廊下の中央、もう一人は壁際を歩いているなら、再現している条件が違うかもしれません。誰の耳が正しいかを争うより、音が出る動きと生活の中で通る頻度を共有する方が、相談が具体的になります。
音と一緒に起きている変化を見落とさない
相談時には音の大きさだけでなく、踏んだ部分が沈む感じ、床の浮き、目地の変化、ぬれなど、ほかに気付いた状態も伝えます。写真だけで安全性を判断することはできませんが、音以外の変化があるかどうかは、担当者が現地確認の必要性を考える材料になります。
例えば「半年ほど同じ一か所で小さく鳴る」と「昨日から広い範囲で音と沈み込みを感じる」では、同じ説明のまま経過を見るべきかを改めて確認したいところです。急な変化や明らかな不安があれば、その場所へ無理に荷重をかけず、早めに施工会社へ連絡します。
水がこぼれた、設備の近くがぬれたという出来事があれば、床鳴りの相談と併せて伝えてください。原因を床材の性質だけに絞る前に、関連する状態を確認してもらいます。表面を乾かしたから内部も問題ない、逆にぬれたから必ず傷んだ、と施主だけで断定しません。
ここで自己流の注油や、隙間への薬剤注入は避けます。床材の表面や接合部を変えてしまう前に、採用製品と原因に合う方法を施工会社に判断してもらいます。「音さえ消えれば完了」とすると、何が起きていたのかを確認する機会を失うことも考えられます。
様子を見るなら、再確認する条件を決める
原因の確認後に経過を見る提案が出たら、待つ理由と、次に確認する時期を聞きます。「しばらく」という言葉だけでは、住む側はいつまで我慢すればよいのか分かりません。季節の変化を見たいのか、特定の状態が続くかを見たいのかを、今回の床に即して説明してもらいます。
音が広がった、歩いた感触が変わった、同じ場所で続いて生活に支障があるなど、再度連絡する目安も相談します。年数が経てば何でも落ち着くと期待して放置するのではなく、確認した内容と今後の観察点を共有します。相談した日付を残しておくことにも意味があります。
補修する場合は、どの原因に対して何を行うのかを聞きます。表面側の調整なのか、下地などの確認が必要なのかで、作業後に見るところも違います。施主が工法を指定するより、選んだ方法の理由と、作業後の確認方法を説明してもらう方が適切です。
作業が終わったら、最初に音が出ていた歩き方で一緒に確認します。その日に音が消えたかだけでなく、後日また出た場合の連絡先も確認してください。録画や位置図は対応後も残します。担当者が替わったときに、最初から説明し直す負担を減らせます。
深澤の判断と次の行動
私なら、床鳴りを無条件で欠陥と呼ぶことも、木の家だから我慢することも選びません。発生条件を確かめ、原因の説明を受け、生活への影響に応じて次の対応を決めます。音を気にする人の感覚と、建物の状態の確認を両方大切にします。
まず間取り図に場所を一つ記し、普段の歩き方で再現する短い動画と、気付いた日を準備してください。そのうえで施工会社へ、現地で何を確認し、経過を見るなら何を目安に再相談するかを尋ねましょう。相談の目的は誰かを責めることではなく、安心して歩ける状態を具体的に確かめることです。
参考資料
[1] DAIKEN 床材を踏んだときに、ギシギシ・ミシミシといった音がするのですが?
[2] 住宅リフォーム・紛争処理支援センター 住宅紛争処理技術関連資料集 調査方法シート 床鳴り(木造・枠組壁工法)










