Q. なぜトリプルガラスが必要なのか?
A. トリプルガラスは、窓から逃げる熱を減らし、冬の窓際の冷え、コールドドラフト、結露を抑えるために有効です。ただし、すべての住宅・すべての窓に絶対必要とは限りません。
窓は、壁や屋根と比較して熱を通しやすい部分です。
壁の断熱材を厚くしても、窓性能が低ければ、冬は窓付近から熱が逃げ、夏は強い日射熱が室内へ入ります。
トリプルガラスは、ガラスと中空層を増やすことで窓の断熱性能を高める方法です。
しかし、住宅で必要なのはトリプルガラスという商品ではありません。
冬に窓際が寒くなく、夏に暑くなりすぎず、結露と光熱費を抑えられる住宅です。
その目的を達成するために、建築地、窓の方位・大きさ、UA値、予算からトリプルガラスの必要性を判断します。
トリプルガラスとは?
一般的なペアガラスは、2枚のガラスと1層の中空層で構成されます。
トリプルガラスは、3枚のガラスと2層の中空層で構成されます。
| ガラス | ガラス枚数 | 中空層 |
|---|---|---|
| 単板ガラス | 1枚 | なし |
| ペアガラス | 2枚 | 1層 |
| トリプルガラス | 3枚 | 2層 |
中空層へアルゴンガスなどを封入し、Low-E金属膜を組み合わせることで、熱の移動をさらに抑えます。
ただし、同じトリプルガラスでも性能は同じではありません。
- サッシ枠の材質
- Low-E膜の位置と枚数
- アルゴンガス・クリプトンガス
- 中空層の厚さ
- スペーサーの材質
- 窓の開閉方式
- 窓の大きさ
これらによって窓全体の熱貫流率が変わります。
「ガラスが3枚」という名称ではなく、窓全体のUw値を確認します。
必要になる理由1.窓から逃げる熱を減らせる
窓は、断熱材が入った外壁より熱を通しやすい部分です。
窓の断熱性能は、熱貫流率で比較します。
数値が小さいほど、室内外の熱を通しにくい窓です。
YKK APの製品性能表でも、同じ大開口スライディング窓において、トリプルガラス仕様はLow-E複層ガラス仕様より低い熱貫流率が示されています。YKK AP「開口部の性能一覧」
ただし、製品、サイズ、開閉方式によって数値は異なります。
カタログの最高性能だけでなく、実際に採用する窓の性能値で外皮計算を行います。
2.冬の窓際が寒くなりにくい
冬の不快感は、室温だけでは決まりません。
室温が20℃あっても、窓の表面温度が低いと、窓付近にいる人の体から熱が奪われ、寒く感じます。
トリプルガラスはペアガラスより室内側ガラスの表面温度を保ちやすく、窓際の冷えを抑える効果が期待できます。
特に効果を感じやすい場所は次のとおりです。
- 窓付近へソファを置くLDK
- ベッドが窓に近い寝室
- 大きな掃き出し窓
- 北側の窓
- 富士吉田市・北杜市など冬の冷込みが厳しい地域
- 標高が高い建築地
室温計が示す数字だけでなく、窓・壁・床の表面温度を高く保つことが快適性につながります。
3.コールドドラフトを抑えやすい
コールドドラフトとは、窓付近で冷やされた空気が床へ流れ落ちる現象です。
暖房しているのに足元だけ寒い、窓から冷気が入ってくるように感じる場合、隙間風ではなくコールドドラフトの可能性があります。
トリプルガラスによって窓の室内側表面温度を保てれば、空気が急激に冷やされにくくなります。
ただし、次の条件も重要です。
- サッシ枠の断熱性能
- 窓まわりの気密施工
- 窓の高さと大きさ
- 暖房設備の位置
- カーテンや家具の配置
ガラスだけを高性能にしても、アルミ枠から熱が逃げたり、窓まわりに隙間があったりすれば、十分な効果を得られません。
4.窓の結露を抑えやすい
結露は、室内の湿った空気が冷たい窓へ触れ、露点温度以下になったときに発生します。
トリプルガラスは室内側の表面温度を高く保ちやすいため、ペアガラスより結露リスクを抑えられます。
結露を放置すると、次の問題につながります。
- カーテンや窓枠のカビ
- サッシまわりの汚れ
- 壁紙や木材の劣化
- ダニの増殖
- 毎朝の拭き掃除
- 健康への影響
ただし、トリプルガラスでも絶対に結露しないわけではありません。
室内湿度が高すぎる、換気設備を止めている、洗濯物を大量に室内干ししている場合は結露する可能性があります。
窓性能と一緒に、室内湿度を40~60%程度に管理し、24時間換気を適切に使用します。
5.UA値を下げやすい
UA値は、壁、屋根、床、窓などから住宅全体の熱がどれくらい逃げやすいかを示します。
窓の断熱性能を高めれば、住宅全体のUA値を下げやすくなります。
特に次の住宅では、窓性能の影響が大きくなります。
- 窓面積が大きい
- 掃き出し窓が多い
- 平屋で外皮面積が大きい
- 吹抜けに大きな窓がある
- 寒冷地に建てる
- 断熱等級6以上を目指す
一方、窓の数と大きさを適切に抑え、高性能なLow-EペアガラスでUA値0.46以下を実現できるなら、すべてをトリプルガラスにする必要がない場合もあります。
UA値だけでなく、窓際の表面温度と暖冷房負荷も考えて判断します。
6.冷暖房負荷を抑えやすい
窓から逃げる熱を減らせば、冬の暖房負荷を抑えられます。
夏も窓を通した熱の移動を抑えられますが、トリプルガラスだけで夏の日射対策が完了するわけではありません。
夏の暑さには、窓から入る直射日光が大きく影響します。
- 軒・庇
- 外付けシェード
- アウターシェード
- 植栽
- 窓の方位
- ガラスの日射取得率
特に西日は、ガラス性能だけで防ごうとせず、窓の外側で遮ることが重要です。
冬は南側から日射熱を取り込み、夏は庇で遮る設計なら、年間の冷暖房負荷を抑えやすくなります。
山梨県でトリプルガラスを検討したい住宅
山梨県は日照時間に恵まれる一方、盆地や標高の高い地域では冬の朝晩が厳しく冷え込みます。
次の条件では、トリプルガラスを積極的に検討します。
- 北杜市・富士吉田市など寒さの厳しい地域
- 標高の高い敷地
- 北側に比較的大きな窓がある
- 窓際で長時間過ごす
- 大きな吹抜けや掃き出し窓がある
- 断熱等級6以上を目指す
- 窓の結露をできるだけ抑えたい
- 冬の窓際の冷えを重視する
- 長時間暖房する家庭
甲府市、甲斐市、南アルプス市などでも、建物形状、窓面積、方位によって採用価値は変わります。
市町村名だけで決めず、一棟ごとに計算します。
ペアガラスでもよい場合
次の条件なら、高性能なLow-Eペアガラスで十分な場合があります。
- 窓面積を適切に抑えている
- アルゴンガス入りLow-Eガラスを採用
- サッシ枠の性能が高い
- UA値0.46以下を達成できる
- C値0.7以下を実測できる
- 日射取得・日射遮蔽を計画している
- 温暖な建築地
- トリプルガラスの追加費用が大きい
- 他の断熱・気密工事を優先すべき状態
トリプルガラスを採用するために、耐震等級、断熱材、気密測定、換気設備を削るのは正しい予算配分ではありません。
住宅全体の弱点を順番に改善します。
トリプルガラスのデメリット
価格が上がる
ペアガラスより材料と製造工程が増えるため、建築費は上がります。
追加費用に対して、どの程度UA値や暖冷房負荷が改善するか確認します。
重くなる
ガラスが1枚増えるため、窓が重くなります。
大きな引違い窓では、毎日の開閉のしやすさを確認します。
製品によっては薄板ガラスなどを使用して軽量化していますが、サイズや仕様によって違います。
冬の日射取得が減る場合がある
ガラス構成によっては、断熱性能が高くなる一方、太陽熱を室内へ取り込む量が減る場合があります。
南側の窓では、高断熱だけでなく日射取得型ガラスも比較します。
LIXILも、地域の気候や方位に合わせて高日射取得仕様を選べる商品を展開しています。LIXIL「トリプル・複層ガラスの高日射取得仕様」
交換費用が高くなる
破損や経年劣化による交換時には、ペアガラスより費用が高くなる可能性があります。
将来の部品供給、保証期間、ガス抜けや内部結露への保証も確認します。
トリプルガラスだけでは高性能住宅にならない
次の状態では、トリプルガラスの性能を十分に生かせません。
- 壁・天井・床の断熱が不足
- UA値を一棟ごとに計算していない
- 気密測定をしていない
- 窓まわりの施工に隙間がある
- 24時間換気を止めている
- 日射遮蔽がない
- 大きな窓を増やしすぎている
- 冷暖房計画がない
トリプルガラスは、住宅全体の性能を補う魔法の商品ではありません。
断熱、気密、換気、日射、空調を一つの仕組みとして設計します。
住宅会社へ聞く8つの質問
- ペアガラスとトリプルガラスのUw値はいくつか
- サッシ枠はアルミ・アルミ樹脂複合・樹脂のどれか
- Low-E膜と封入ガスの仕様は何か
- 変更するとUA値はいくつ改善するか
- 暖冷房負荷はどれくらい変わるか
- 南・東西・北でガラス仕様を変えるか
- 全棟で気密測定をするか
- 追加費用と将来の交換費用はいくらか
「トリプルだから暖かい」という説明だけでは不十分です。
同じ間取りで、ペアガラス仕様とトリプルガラス仕様の外皮計算を比較してもらいます。
俺流結論
私は、予算が許し、窓際の快適性や結露対策を重視するなら、トリプルガラスをおすすめします。
特に山梨県の寒冷地、大きな窓がある住宅、窓際で長時間過ごす間取りでは、採用価値があります。
しかし、全員に絶対必要とは考えません。
私なら、まずUA値0.46以下、C値0.7以下、適切な断熱・気密・換気・日射計画を確保します。
そのうえで、建築地と方位、窓面積、追加費用を比較し、トリプルガラスを選びます。
トリプルガラスを入れるかではなく、真冬の朝に窓際で寒くないかを考える。
豪華なキッチンは人に見せられますが、暖かい窓は毎日、家族の体と光熱費を守ります。
家づくりの目的はガラスを3枚にすることではありません。家族が長く健康で快適に暮らせる住宅をつくることです。










