家賃並み」で買えると思わせるローコスト住宅販売に、住宅会社社長が警鐘
家を買えないことより、買って生活が壊れることのほうが怖い
「月々2万円台から」
「月々4万円でマイホーム」
「今の家賃と変わらない支払いで家が持てます」
山梨県内でも、今なお、このような月々の返済額を前面に出した住宅広告を見かけます。
私は住宅会社を経営していますが、はっきり申し上げます。
住宅ローンだけを家賃と比べて、「家賃並みで家が買える」と思わせる売り方は、もう現実に合っていません。
建築費も土地代も上がりました。住宅ローン金利も、ずっと同じとは限りません。その状況で、月々の数字だけを小さく見せて来店を促す。私は、この販売手法を住宅業界が改めるべきだと考えています。
安い住宅を否定しているのではありません。
安く見せるために、購入後の現実を小さく扱うことを否定しています。
「月々4万円」は、どのように作られているのか
住宅ローンの月々返済額は、返済期間を長くすれば小さくできます。
実際に山梨県内の住宅会社の公開ページを確認すると、月々2万円台、3万円台、4万円台という返済例が掲載され、その計算条件として「変動金利1.275%・40年返済」と明記されている例があります。
40年返済なら、30歳で借りても完済は70歳です。35歳なら75歳、40歳なら80歳になります。
月々の返済額が小さいことと、負担が小さいことは同じではありません。
確認すべきなのは、次の数字です。
- いくら借りるのか
- 何歳で完済するのか
- 最後までに支払う利息はいくらか
- 金利が上がった場合も返済できるか
- 定年後もローンが残るのか
月々の数字だけを見せて、完済年齢や支払総額を目立たせない。それで「家賃並み」と伝えるのは、消費者にとって親切な説明でしょうか。
私は、そうは思いません。
建物価格だけでは、家は完成しない
広告に掲載される価格が、家づくりに必要な総額とは限りません。
建物本体のほかにも、屋外給排水、建築確認申請、地盤改良、造成、浄化槽、給水管の取り出し、登記、住宅ローン諸費用、火災・地震保険、照明、カーテン、エアコン、外構などが必要になります。
土地から購入する方には、土地代や仲介手数料も加わります。
さらに、広告の最小プランから、家族が実際に必要とする広さ、収納、設備、窓、断熱性能へ変更すれば、価格は当然上がります。
問題は、追加費用が発生することではありません。土地によって金額が変わる工事があるのも事実です。
問題なのは、何が含まれ、何が含まれないのかを最初に明確にせず、最小の建物価格や月額だけで「自分にも買える」と思わせることです。
安かったのは、あなたが実際に建てる家ではないかもしれません。
持ち家の支払いは、住宅ローンだけではない
賃貸住宅で毎月8万円を支払っているからといって、住宅ローンも月々8万円以内なら同じ負担、とはなりません。
持ち家には、住宅ローン以外にも継続的な支出があります。
- 固定資産税
- 火災保険・地震保険
- 外壁や屋根の修繕
- 給湯器やエアコンなどの設備交換
- 庭や駐車場などの維持管理
- 将来の大規模修繕に備える積立
家賃には、建物の維持管理に関する貸主側の負担も織り込まれています。持ち家では、修繕時期も費用も、自分たちで背負います。
だから比べるべきなのは、家賃と住宅ローンではありません。
賃貸で暮らし続ける場合の住居費と、住宅を所有した場合のローン・税金・保険・修繕を含む総住居費です。
一生家賃を払っても、自分のものにならない。それでもいい
「家賃を一生払っても、自分のものになりませんよ」
住宅営業で、長年使われてきた言葉です。
確かに、そのとおりです。家賃を払い続けても、その住宅は自分の所有物にはなりません。
しかし、だからといって、無理な住宅ローンを組むべきだとは限りません。
家を所有しない代わりに、住み替えの自由を持つ。大きな修繕費を直接負担しない。教育費や老後資金を残す。収入の変化に合わせて住居費を調整する。
賃貸には、賃貸の価値があります。
一生自分のものにならなくても構わない。家族の生活を守れるなら、それは失敗ではありません。
厳しい言い方をします。今、買えないなら買わないでください
私は住宅を販売する立場ですが、それでも言います。
家を買えるだけの収入や貯蓄がないなら、今は買わないでください。
「銀行が貸してくれるから」
「月々なら払えそうだから」
「家賃を払い続けるのはもったいないから」
それだけで、35年、40年の住宅ローンを組んではいけません。
銀行が貸せる金額と、家族が最後まで無理なく返せる金額は違います。
住宅ローンのために、子どもの教育、車の買い替え、家族の楽しみ、老後資金を削り続けるなら、その家は家族を幸せにする道具ではなく、家族を縛る負債になります。
「今は買わない」
「賃貸で暮らす」
「頭金と生活防衛資金を準備してから考える」
これらも、立派な住宅計画です。
住宅会社へ。安い月額ではなく、払う総額を伝えませんか
住宅会社が本当に消費者の生活を考えるなら、広告に大きく表示すべきなのは、最小の月額だけではありません。
- 建物価格に何が含まれているのか
- 付帯工事や申請費用はいくらか
- 土地条件によって何が追加になるのか
- 入居までに必要な総額はいくらか
- 借入総額と完済年齢はどうなるのか
- 税金・保険・修繕を含めても生活できるのか
ここまで説明して初めて、消費者は「買う」「買わない」を正しく判断できます。
買えない人を、40年返済や低く見える月額で買える気持ちにさせることが、住宅会社の仕事ではありません。
住宅会社の仕事は、家を売ることより先に、家を買った後の生活を守ることです。
デザインハウス甲府が、総額を先に伝える理由
デザインハウス甲府では、建物本体だけを安く見せるのではなく、建築確認申請、基準内の付帯工事、消費税を含めた住宅建築総額を提示します。
土地の条件によって追加工事が必要な場合も、調査後、契約前に内容と金額を説明します。
そして、住宅資金シミュレーションでは、住宅会社が売りたい金額から返済計画を作るのではありません。生活費、教育費、車、保険、老後資金を整理し、家族が家に使ってよい予算を先に考えます。
その結果、「今は建てないほうがよい」という結論になることもあります。
それでよいのです。
家は、安ければ何でもよい商品ではありません。そして、誰もが今すぐ買わなければならない商品でもありません。
家賃並みという言葉で、人生を契約しないでください。
買える家ではなく、買った後も家族が幸せに暮らせる家を選んでください。
デザインハウス甲府
代表 深澤敏仁










