転勤で後悔する人とは?
「売ればいい・貸せばいい」は、簡単ではありません
質問
家を建てたいのですが、将来転勤になる可能性があります。
転勤になったら売却したり、賃貸に出したりすればよいと思っていますが、何か注意点はありますか?
回答
結論から言うと、転勤の可能性が高い人は「今の年収で住宅ローンを返せるか」だけで家を建ててはいけません。
転勤後に考えられる選択肢は、
- 単身赴任する
- 家族全員で転居して自宅を空き家にする
- 自宅を賃貸に出す
- 自宅を売却する
の4つです。
しかし、どの方法にも費用とリスクがあります。
特に危険なのは、
「転勤になったら、そのとき売ればいい」
「住宅ローンは家賃で返せる」
と、売却価格や家賃相場を確認せずに建てることです。
転勤で後悔する人の共通点
転勤で後悔しやすい人には、次の共通点があります。
- 転勤の可能性を住宅会社へ伝えていない
- 転勤になったら簡単に売れると思っている
- 建築費と売却価格を同じだと考えている
- 住宅ローン残高より高く売れると思っている
- 住宅ローンのまま自由に賃貸できると思っている
- 家賃収入をそのままローン返済に使えると思っている
- 単身赴任による二重生活費を計算していない
- 空き家の維持費を考えていない
- 住宅ローン控除への影響を確認していない
- 土地の再販性を確認していない
家を建てる前に考えるべきなのは、「転勤があるか」ではありません。
転勤になったとき、その家をどう処理できるかです。
後悔1|新築価格では売れない
新築住宅には、土地代と建物代以外にもさまざまな費用が含まれています。
- 付帯工事費
- 設計・申請費用
- 登記費用
- 住宅ローン手数料
- 火災・地震保険
- 外構工事
- カーテン・照明
- 引越し費用
- 消費税
- 売却時には評価されにくいオプション費用
これらに2,500万円を支払ったからといって、2,500万円で売却できるとは限りません。
特に建物は、一度入居すれば中古住宅になります。
購入直後に転勤が決まり、ほとんど住んでいなくても、新築時の総額より売却価格が低くなる可能性があります。
住宅ローンが残ると売却できない場合がある
住宅ローンが2,800万円残っているのに、売却査定額が2,300万円だった場合、500万円の不足が発生します。
売却時には、仲介手数料、抵当権抹消、引越しなどの費用も必要です。
不足分を預貯金などで補えなければ、原則として金融機関の抵当権を抹消できず、通常の売却が難しくなります。
「売ればローンがなくなる」とは限りません。
売却価格より、売却時の住宅ローン残高の方が重要です。
後悔2|家を貸せば住宅ローンを返せると思っていた
転勤後の対策として、よく考えられるのが賃貸です。
しかし、家賃が月10万円で住宅ローン返済が月9万円なら、毎月1万円の利益が出るという計算にはなりません。
貸主には、次の費用が発生します。
- 賃貸管理手数料
- 入居者募集費用
- 固定資産税
- 火災保険
- 修繕費
- 給湯器やエアコンの交換費用
- 退去後の原状回復費用
- 空室期間の住宅ローン
- 家賃収入に対する税金
- 遠方から管理するための費用
家賃10万円でも、10万円すべてを住宅ローン返済に使えるわけではありません。
さらに、入居者が退去すれば、次の人が決まるまで家賃収入はゼロになります。
住宅ローンは毎月必ず請求されますが、家賃は毎月必ず入るとは限りません。
住宅ローンのまま勝手に貸してはいけない
一般的な住宅ローンは、契約者本人や家族が居住することを前提とした融資です。
転勤を理由に一時的に賃貸できる場合もありますが、金融機関への事前相談と承認が必要です。
無断で賃貸すると、契約条件に抵触し、金利変更や一括返済を求められる可能性があります。
【フラット35】も、賃貸事業用の住宅を取得するための融資ではありません。住宅金融支援機構「セカンドハウスのお申込み」
転勤が決まったら、賃貸募集を始める前に、必ず借入先へ次の内容を確認してください。
- 転勤中の賃貸が認められるか
- 必要な届出や証明書は何か
- 金利や契約条件が変わるか
- 賃貸できる期間に制限があるか
- 転勤終了後に再入居する必要があるか
住宅会社や不動産会社が「転勤なら大丈夫」と言っても、最終的に判断するのは融資した金融機関です。
後悔3|希望する家賃では借り手がいない
建築費が高い家だから、高い家賃で貸せるとは限りません。
賃料を決めるのは、建築費ではなく、その地域の賃貸需要です。
- 勤務先や学校への距離
- 駅や幹線道路へのアクセス
- 駐車可能台数
- 周辺の家賃相場
- 買い物や医療の利便性
- 間取り
- ペットの可否
- 築年数
- 地域の人口動向
地方では、アパートの需要があっても、高額な戸建て賃貸の需要が少ない地域があります。
住宅ローン返済が月11万円でも、その地域の戸建て家賃相場が月8万円なら、差額は所有者が負担します。
「ローン返済額と同額で貸したい」は、貸主側の都合です。
借り手は周辺相場で判断します。
注文住宅ほど貸しにくくなることもある
注文住宅では、建築主の家族に合わせた間取りや設備を採用できます。
しかし、個性が強すぎる家は、ほかの家族にとって使いにくい場合があります。
例えば、
- 寝室が極端に広く、子ども部屋が少ない
- 仕事部屋や趣味室が多い
- 収納が特定の使い方に限定されている
- 駐車場が1台分しかない
- デザインを優先して生活動線が特殊
- 大きすぎて光熱費や家賃が高い
という住宅は、借り手や買い手の対象が狭くなります。
転勤の可能性があるなら、自分たちの好みだけでなく、第三者も使いやすい間取りを考える必要があります。
後悔4|住宅ローン控除が続くと思っていた
住宅ローン控除は、原則として本人がその住宅へ居住していることが前提です。
ただし、所有者だけが単身赴任し、生計を一にする家族が引き続きその家へ居住し、転勤終了後に本人も戻ると認められる場合は、一定の要件のもとで控除を継続できることがあります。
一方、家族全員で転居して自宅に住まなくなった場合は、転居中の住宅ローン控除を受けられなくなる可能性があります。
転勤終了後に再び居住した場合、一定の要件と手続きにより、残りの控除期間について再適用を受けられる場合があります。国税庁「転勤と住宅借入金等特別控除等」
再適用を想定する場合は、転居前に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」など、必要な手続きを税務署へ確認することが重要です。国税庁「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出手続」
「転勤だから自動的に控除が続く」と考えてはいけません。
後悔5|単身赴任なら家計への影響がないと思っていた
家族を自宅に残して単身赴任すれば、売却や賃貸を避けられます。
しかし、単身赴任では生活拠点が二つになります。
- 転勤先の家賃
- 水道光熱費
- 家具・家電
- 食費
- 自宅への帰宅交通費
- 自動車の維持費
- 通信費
- 住宅ローン
- 自宅の固定資産税
- 自宅の修繕費
勤務先から家賃補助や単身赴任手当が出ても、すべてを賄えるとは限りません。
さらに、金銭以外にも、
- 子育てを配偶者一人で担う
- 家族と会える時間が減る
- 親の介護に対応しにくい
- 夫婦双方の負担が増える
といった問題があります。
単身赴任を選ぶ場合は、住宅ローン返済だけでなく、二重生活による年間支出を計算してください。
後悔6|空き家にしても費用はかからないと思っていた
短期間の転勤であれば、売却も賃貸もせず空き家にする方法があります。
しかし、空き家にも費用と管理が必要です。
- 住宅ローン
- 固定資産税
- 火災・地震保険
- 庭や雑草の管理
- 換気や通水
- 郵便物の管理
- 防犯対策
- 凍結や漏水対策
- 外壁や屋根の点検
- 台風や大雨後の確認
住宅は、人が住まなくても劣化します。
換気や通水をしなければ、湿気、カビ、排水トラップの乾燥、害虫などの問題が起こる可能性があります。
遠方へ転勤する場合は、家族や管理会社へ定期管理を依頼する費用も必要です。
後悔7|転勤先で新しい住宅ローンを組めなかった
自宅を売却せず住宅ローンを残したまま、転勤先で家を購入したいと考える人もいます。
しかし、既存の住宅ローン返済は、新しい住宅ローンの審査でも負債として考慮される可能性があります。
家賃収入があっても、全額を安定収入として評価してもらえるとは限りません。
その結果、
- 希望額を借りられない
- 頭金を増やす必要がある
- 金利条件が悪くなる
- 新居購入を断念する
ということがあります。
今の家を所有し続けることが、次の住まいを選ぶ自由を奪う可能性もあります。
「転勤になったら会社が何とかしてくれる」は危険
転勤の可能性がある場合は、勤務先の制度を事前に確認してください。
- 借上社宅の有無
- 単身赴任手当
- 家賃補助
- 引越し費用
- 帰宅交通費
- 持ち家を賃貸する場合の支援
- 留守宅管理制度
- 転勤期間の目安
- 海外転勤時の税務支援
会社の制度は変更されることがあります。
現在の支給額が、住宅ローン完済まで続く保証はありません。
会社からの補助を前提に限界まで借りるのではなく、補助が縮小しても返済できる計画にする必要があります。
海外転勤はさらに手続きが増える
1年以上の海外転勤では、所得税法上の非居住者になることがあります。
国内の自宅を賃貸して家賃収入を得る場合は、日本国内の不動産所得として確定申告が必要になる可能性があります。
本人が海外にいて申告などの手続きができない場合、納税管理人の選任が必要になることもあります。国税庁「海外勤務と納税管理人の選任または解任」
海外転勤では、住宅ローン、税務、管理、保険をそれぞれ確認しなければなりません。
転勤の可能性がある人が土地選びで見るべきこと
転勤リスクに強い家をつくるには、建物より先に土地の再販性と賃貸需要を確認します。
具体的には、
- 駅や主要道路へのアクセス
- 病院、学校、商業施設への距離
- 駐車場を2台以上確保できるか
- ハザードマップ
- 周辺の中古住宅成約事例
- 周辺の戸建て賃料
- 空き家率
- 将来の人口予測
- 建築・再建築上の制限
- 売却までにかかる平均期間
を確認します。
土地が安いからといって、将来売りやすいとは限りません。
安く買えた土地は、将来も需要が少なく、安くしか売れない可能性があります。
転勤リスクに強い建物とは?
将来の売却や賃貸を考えるなら、第三者にも使いやすい住宅にします。
- 一般的な2LDKから4LDK
- 家族構成の変化に対応できる間取り
- 十分な収納
- 駐車場2台以上
- 水回りが特殊すぎない
- 光熱費を抑えられる断熱・気密性能
- 耐震等級3
- 長期優良住宅など客観的な証明
- 点検・修繕履歴の保存
- 過度に高額な造作や設備を避ける
再販性を考えるなら、建築主にしか価値が分からない設備へ費用をかけすぎないことも重要です。
500万円のこだわりを追加しても、売却価格が500万円上がるとは限りません。
建築前に3つの査定を取る
転勤の可能性が高い人は、契約前に不動産会社へ次の3つを確認すると現実が見えます。
- 完成直後に売却した場合の想定価格
- 築5年、築10年で売却した場合の想定価格
- 戸建て賃貸に出した場合の想定家賃
住宅会社の営業担当者による「人気エリアなので売れます」という説明だけで判断してはいけません。
実際にその地域で中古住宅や賃貸を扱っている不動産会社へ確認してください。
転勤に備えて残しておくべき現金
転勤の可能性がある家庭は、頭金を入れすぎないことも重要です。
転勤時には、
- 引越し費用
- 二重生活費
- 空室中の住宅ローン
- 売却時の不足額
- 賃貸前の修繕費
- 新居の敷金・礼金
- 家具・家電
- 帰宅交通費
が必要になる可能性があります。
住宅ローンを減らすために預貯金を使い切ると、転勤時に選べる対策がなくなります。
少なくとも生活防衛資金に加え、一定期間の住宅ローンと転居費用を払える現金を残しておくべきです。
デザインハウス甲府の正直な考え方
転勤の可能性が高い人に対して、「建てても貸せば大丈夫」と簡単には説明できません。
貸せるかどうかは住宅会社ではなく、金融機関の承認と地域の賃貸需要によって決まります。
売れるかどうかも、建築費ではなく、その時点の土地需要と中古住宅市場によって決まります。
転勤リスクがある場合は、契約前に、
- 売却予想価格
- 住宅ローン残高
- 想定家賃
- 賃貸中の実質収支
- 単身赴任の生活費
- 空き家の管理費
- 住宅ローン控除への影響
- 転勤先での住居費
まで数字にする必要があります。
家を建てることだけが正解ではありません。
転勤時期が近い、転勤先が予測できない、売却損を補える預貯金がない場合は、建築を延期して賃貸を続けることも立派な判断です。
契約前に確認したい12の質問
- 今後10年間に転勤する可能性はありますか
- 転勤期間は何年程度ですか
- 単身赴任手当や住宅補助はいくらですか
- 家族は自宅へ残る可能性がありますか
- 家族全員で転居する場合、自宅をどうしますか
- 住宅ローンを残したまま賃貸できますか
- 周辺の戸建て賃料はいくらですか
- 空室を見込んでも返済できますか
- 築5年時点の売却予想価格はいくらですか
- その時点の住宅ローン残高はいくらですか
- 売却価格がローン残高を下回った場合、現金で補えますか
- 転勤先との二重住居費を払えますか
この12項目に答えられない状態で、「転勤になったら考える」という資金計画は危険です。
まとめ
転勤で後悔する人は、転勤そのものを予測できなかった人ではありません。
転勤後の売却・賃貸・単身赴任・空き家という4つの選択肢を、建築前に数字で比較しなかった人です。
転勤になっても、家は簡単には売れません。
住宅ローンが残っていれば、自由に貸せるとも限りません。
家賃収入からは管理費、税金、修繕費、空室損失が差し引かれます。
単身赴任を選べば、家計と家族の双方に負担がかかります。
だからこそ、転勤の可能性がある人は、
- 売れる土地を選ぶ
- 第三者にも使いやすい間取りにする
- 建築費をかけすぎない
- 頭金を入れすぎない
- 手元資金を残す
- 売却価格と家賃を事前に調べる
- 住宅ローンの賃貸条件を確認する
ことが重要です。
「転勤になったら売ればいい」は計画ではありません。
いくらで売れ、ローンがいくら残り、売れなければ毎月いくら負担するのか。
そこまで計算して、初めて転勤に備えた家づくりになります。










