私なら最初に何をする?
展示場にも行かない。土地も探さない。最初に「使ってはいけないお金」を決めます
質問
これから家づくりを始めようと考えています。
住宅展示場、土地探し、住宅ローンの事前審査など、最初に何から始めればよいのでしょうか?
回答
私なら、最初に住宅展示場へは行きません。
土地も探しません。
間取りもつくりません。
住宅ローンの借入限度額も聞きません。
最初に行うのは、
家を建てた後に、絶対に残しておく現金を決めることです。
そのうえで、
- 自己資金として使える金額
- 安全に返せる住宅ローン
- 土地・建物・付帯工事を含めた総予算
- 教育費や老後資金を守れるか
を確認します。
住宅会社へ行く前に、「自分たちは総額いくらまでなら安全なのか」を決めることが重要です。
家づくりで後悔する人は、欲しい家から考えます。
後悔しない人は、
家を建てた後も守らなければならない生活から考えます。
なぜ住宅展示場から始めてはいけないのか?
住宅展示場は、住宅会社の魅力を伝えるためにつくられています。
展示場には、
- 広いリビング
- 大きな吹き抜け
- 高級キッチン
- 大判タイル
- 大開口窓
- 間接照明
- 造作家具
- 高額なオプション
が採用されていることがあります。
最初に豪華な住宅を見ると、それが家づくりの基準になります。
その後で予算に合わせようとすると、
- 面積を削る
- 設備を下げる
- 窓性能を下げる
- 断熱材を薄くする
- 耐震性能を下げる
- 外構予算を削る
という調整が始まります。
本来は、安全な予算の中で必要な暮らしを考えるべきです。
しかし、展示場から始めると、欲しくなった家に予算を合わせようとしてしまいます。
「見るだけ」のつもりでも基準が変わる
住宅展示場へ行くと、
「せっかく建てるなら」
「一生に一度だから」
「月々にすれば数千円です」
という説明を受けることがあります。
追加100万円でも、35年ローンなら月々の差は小さく見えます。
しかし、その考え方を繰り返せば、総額は数百万円増えます。
家づくりは、100万円単位の追加を「月々数千円」に変換すると、予算感覚が崩れやすくなります。
月額ではなく、総額と総支払利息で判断することが重要です。
なぜ土地探しから始めてはいけないのか?
土地を先に買うと、残った予算で建物を建てることになります。
例えば、家づくりに使える安全な総額が3,500万円だったとします。
気に入った土地が1,300万円でも、必要なのは土地代だけではありません。
- 仲介手数料
- 登記費用
- 固定資産税清算金
- 水道引込み
- 下水道
- 造成
- 擁壁
- 地盤改良
- 境界確定
- 古家解体
- 農地転用
- 開発許可
などが必要になる可能性があります。
土地関連費用が合計1,600万円になれば、残りは1,900万円です。
建物、付帯工事、外構、申請、融資費用、保険まで1,900万円で収まらなければ、予算オーバーになります。
土地が気に入った後では、冷静に諦めにくくなります。
土地を探す前に、土地へ使える上限額を決めるべきです。
なぜ住宅ローンの事前審査から始めてはいけないのか?
住宅ローンの事前審査では、金融機関から借入可能額を提示されることがあります。
しかし、借りられる金額と、安全に返せる金額は同じではありません。
金融機関は、主に、
- 年収
- 年齢
- 勤続年数
- 既存借入
- 返済負担率
- 担保評価
- 信用情報
などから審査します。
一方、実際の家計には、
- 教育費
- 車の買い替え
- 親の介護
- 医療費
- 老後資金
- 旅行
- 趣味
- 住宅修繕費
- 収入減少
があります。
金融機関から4,000万円借りられると言われても、3,000万円までしか安全に返せない家庭もあります。
借入可能額は予算ではありません。
予算は、人生を壊さず返せる金額です。
私なら最初に「残す現金」を決める
預貯金が800万円あるからといって、800万円すべてを家へ使えるわけではありません。
私なら最初に、次のお金を住宅資金から分けます。
生活防衛資金
会社員であれば生活費の6か月分程度、自営業者や収入変動が大きい家庭では1年分程度を一つの目安にします。
教育資金
入学金、授業料、塾、受験、一人暮らしなど、今後必要になる教育費を確保します。
車の買い替え資金
山梨県では車が生活に必要な家庭が多くあります。
住宅ローン返済中に車を買い替える可能性も考えます。
医療・介護資金
50代・60代の建て替えでは、親の介護だけでなく、自分たち夫婦の医療・介護費も考えます。
入居後に必要な資金
家具、家電、カーテン、引越し、追加工事などに必要な現金を残します。
住宅修繕資金
給湯器、エアコン、外壁、屋根、換気設備、太陽光設備など、将来の交換に備えます。
これらを差し引いた残りが、住宅へ使える自己資金です。
頭金は最後に決める
住宅会社や金融機関から、
「頭金はいくら出せますか」
と聞かれることがあります。
しかし、最初に頭金を決めてはいけません。
順番は、
- 残す現金を決める
- 将来の支出を確認する
- 安全な借入額を決める
- 総予算を決める
- 最後に頭金を決める
です。
住宅ローンを100万円減らすために、生活を守る100万円まで使う必要はありません。
頭金は、貯金から出すものではありません。
必要なお金を残した後の余剰資金から出すものです。
次に家族の将来を数字にする
残す現金を決めたら、将来の収入と支出を年単位で整理します。
最低限、次の内容を入れます。
- 本人・配偶者の収入
- 昇給・減収・退職
- 年金
- 退職金
- 教育費
- 車の買い替え
- 保険
- 医療・介護
- 住宅ローン
- 固定資産税
- 光熱費
- 修繕費
- 物価上昇
- 配偶者一人になった場合
住宅金融支援機構も、住宅取得の資金だけでなく、毎月の家計収支や将来のライフイベントを踏まえたキャッシュフローを試算できるシミュレーションを提供しています。住宅金融支援機構「住宅ローンシミュレーション」
現在の家計だけでなく、教育費が最大になる時期や退職後まで確認します。
50代・60代は90歳まで見る
50代・60代の建て替えでは、現在の収入だけで判断するのは危険です。
確認するのは、
- 退職時点のローン残高
- 年金受給開始後の返済
- 70歳時点の現金
- 80歳時点の現金
- 90歳時点の資産
- 配偶者一人になった場合
- 介護施設へ入る場合
- 自宅を売却する場合
です。
「月々返せる」ではなく、
90歳になっても現金が残るか
まで確認します。
若い世帯は教育費のピークを見る
子育て世帯では、住宅ローンだけを見てはいけません。
子どもが成長すると、
- 塾
- 習い事
- 高校
- 大学
- 一人暮らし
- 自動車
- 第二子・第三子の進学
が重なる可能性があります。
現在払える住宅ローンでも、教育費のピーク時に家計が赤字になることがあります。
住宅取得の資金計画では、住宅資金だけでなく、教育資金や老後資金など、将来のライフイベントを踏まえる必要があります。住宅金融普及協会「住宅ローンシミュレーション活用方法」
次に「安全な毎月返済額」を決める
毎月返済額は、現在の家賃と比較するだけでは決められません。
持ち家になると、住宅ローン以外に、
- 固定資産税
- 火災・地震保険
- 修繕積立
- 光熱費
- 自治会費
- 太陽光・換気設備の交換費
が必要になります。
例えば現在の家賃が8万円だから、住宅ローンも8万円なら同じとは限りません。
住宅ローン8万円に、固定資産税、保険、修繕積立などを加えれば、実質的な住宅費はさらに増えます。
私なら、毎月返済額ではなく、
住宅を維持するための月額総額
で判断します。
金利は現在の数字だけで計算しない
変動金利を利用する場合、現在の適用金利だけで35年間計算するのは危険です。
私なら少なくとも、
- 現在金利
- 金利が1%上がった場合
- 金利が2%上がった場合
- 金利が段階的に上がる場合
を比較します。
金利上昇後も、教育費や老後資金を守れるかを確認します。
固定金利でも、優遇終了後に金利が変わる商品は、その後の返済額まで確認します。
次に「使える総額」を決める
住宅へ使える総額は、次のように考えます。
住宅へ使える自己資金
+安全に返せる住宅ローン
=家づくりに使える総額
ただし、この総額には、建物本体だけでなく、
- 土地
- 土地諸費用
- 建物
- 付帯工事
- 地盤改良
- 設計・申請
- 外構
- 登記
- 住宅ローン手数料
- 火災・地震保険
- 照明
- カーテン
- エアコン
- 引越し
- 家具・家電
を含めます。
建て替えの場合は、
- 解体
- アスベスト
- 仮住まい
- 往復引越し
- 荷物保管
- 滅失登記
も含めます。
建物へ使える金額ではなく、入居までに使える総額を決めます。
予備費を最初から残す
家づくりでは、事前に確定しにくい費用があります。
- 地盤改良
- 既存埋設物
- 水道工事
- 擁壁
- 解体後に判明する問題
- アスベスト
- 追加変更
そのため、総予算を限界まで使い切りません。
予備費を別に確保し、その予備費まで使わなければ建てられない計画は見直します。
ここまで決めてから、必要な暮らしを整理する
安全な総予算を決めた後で、初めて間取りを考えます。
最初に決めるのは部屋数ではありません。
- 誰が住むか
- 何年住むか
- 子どもはいつ独立するか
- 親と同居する可能性
- 在宅勤務
- 老後の寝室
- 車の台数
- 収納する物
- 庭の使い方
- 将来売却する可能性
です。
その後で、必要な面積と部屋数を決めます。
現在の家族人数だけでなく、10年後、20年後の人数も考えます。
「欲しいもの」と「必要なもの」を分ける
希望を3段階に分けます。
絶対に削らないもの
- 耐震
- 断熱
- 気密
- 換気
- 防水
- 構造
- 必要な生活動線
できれば欲しいもの
- 食洗機
- 造作収納
- ランドリールーム
- 書斎
- 大きな窓
- 高級設備
後から追加できるもの
- 外構の一部
- カーポート
- 物置
- 植栽
- 家具
- 一部の照明
予算が不足した場合は、後から追加できるものから調整します。
完成後に変更しにくい耐震・断熱・気密・換気を先に削ってはいけません。
私なら性能の最低条件を先に決める
住宅会社を探す前に、比較する最低条件を決めます。
私なら、
- 正式な耐震等級3級3
- 許容応力度計算
- 制震
- 断熱等級6
- UA値0.46以下
- 全棟気密測定
- C値0.7以下
- 第一種熱交換換気
- 長期優良住宅
- 完成保証
を基準にします。
性能条件を決めずに住宅会社を回ると、各社が違う基準で説明するため、価格を正しく比較できません。
等級1の見積りと、許容応力度計算による等級3の見積りを、価格だけで比較してはいけません。
同じ性能、同じ工事範囲、同じ総額条件で比較することが重要です。
ここで初めて住宅会社を探す
総予算、必要な暮らし、最低性能を決めてから住宅会社を探します。
私なら住宅会社へ、最初に次の資料を渡します。
- 総予算上限
- 建築後に残す現金
- 土地予算
- 希望エリア
- 必要な部屋
- 絶対に必要な性能
- 入居希望時期
- 将来の家族構成
- 住宅ローン完済希望年齢
そのうえで、総予算内に収まる提案を依頼します。
「まず希望を全部入れて、後から削りましょう」という進め方には注意します。
希望を入れた後は、心理的に削りにくくなるからです。
住宅会社は3社以内に絞る
多くの住宅会社を比較すれば正解に近づくとは限りません。
会社ごとに、
- 見積り範囲
- 性能
- 面積
- 標準仕様
- 保証
- 計算方法
が異なるため、比較対象を増やすほど混乱します。
最初に最低条件で絞り、2社から3社程度へ同じ条件で提案を依頼する方が比較しやすくなります。
見るべきなのは値引き額ではなく、
- 最終総額
- 契約後に増える可能性
- 性能を証明する書類
- 完成保証
- 経営状態
- 資金計画への姿勢
です。
土地は住宅会社と一緒に見る
総予算と住宅会社の候補を決めた後で土地を探します。
土地は、不動産会社の表示価格だけでは判断できません。
購入前に住宅会社へ、
- 希望建物を配置できるか
- 駐車場を確保できるか
- 日当たり
- 道路
- 上下水道
- 地盤
- 擁壁
- 高低差
- 造成
- 法規制
- 建築費への影響
を確認してもらいます。
土地代が安くても、造成、擁壁、水道、地盤改良へ数百万円かかれば、総額は高くなります。
土地を買ってから住宅会社へ相談するのではなく、土地を買う前に建築総額を確認します。
最初に建築時期を決めない
「今月契約すれば値引き」
「補助金が終わる」
「金利が上がる」
「材料価格が上がる」
と言われ、家づくりを急ぐ人がいます。
しかし、数十万円の値引きや補助金のために、数百万円の予算オーバーをすれば意味がありません。
家を建てる時期は、市場や営業担当者ではなく、
- 家計
- 家族
- 土地
- 建築後に残る現金
- 安全な返済計画
が整ったときです。
買い時より、買える状態かを優先します。
私なら最初の7日間で行うこと
1日目|預貯金を確認する
普通預金、定期預金、投資、保険、退職金見込みを整理します。
2日目|残す現金を決める
生活防衛資金、教育費、車、医療・介護、入居費用を分けます。
3日目|毎月の家計を確認する
給与、賞与、生活費、保険、車、教育費を整理します。
4日目|将来の大きな支出を書き出す
進学、車、退職、介護、修繕を年表へ入れます。
5日目|安全な返済額を試算する
現在金利だけでなく、金利上昇時も確認します。
6日目|入居までの総予算を決める
土地、建物、付帯工事、外構、諸費用をすべて含めます。
7日目|必要な暮らしと最低性能を決める
間取りではなく、家族の暮らしと削らない性能を整理します。
この7日間を終えてから、住宅会社や土地を探します。
50代・60代の建て替えなら最初に追加確認すること
建て替えでは、新築住宅とは違う費用と問題があります。
- 解体費
- アスベスト
- 仮住まい
- 短期賃貸
- 往復引越し
- 荷物保管
- 土地・建物の名義
- 相続
- 贈与
- 住宅ローン完済年齢
- 退職金
- 年金
- 介護
- 施設入居
私なら、建て替え後に90歳まで現金が残るかを確認します。
安全に建て替えられない場合は、
- 面積を小さくする
- 設備を見直す
- 外構を段階施工にする
- 部分リフォームにする
- 住み替える
- 建て替えを延期する
という選択肢も比較します。
建て替えること自体を目的にしてはいけません。
デザインハウス甲府の考え方
私たちは、最初から間取りを描くことが、お客様にとって親切だとは考えていません。
間取りを先につくると、その家が欲しくなります。
その後で資金不足が分かると、
- 預貯金を追加する
- 借入額を増やす
- 返済期間を延ばす
- 耐震性能を下げる
- 断熱性能を下げる
- 外構を見積りから外す
という調整になりやすいからです。
私たちは最初に、
- 入居までの総額
- 建築後に残す現金
- 安全な住宅ローン
- 完済年齢
- 教育費
- 老後資金
- 90歳までの資産推移
を確認します。
その安全な総額の中で、
- 正式な耐震等級3
- 許容応力度計算
- 制震装置evoltz
- 断熱等級6
- UA値0.46以下
- 全棟気密測定
- C値0.7以下
- 第一種熱交換換気
- 長期優良住宅
- 完成保証
を確保し、必要な面積と設備を調整します。
まとめ
私なら、家づくりの最初に住宅展示場へは行きません。
土地も買いません。
間取りもつくりません。
借入限度額も聞きません。
最初に行うのは、
- 建築後に残す現金を決める
- 将来の教育費・老後資金を確認する
- 安全に返せる住宅ローンを決める
- 入居までの総予算を決める
- 削らない住宅性能を決める
ことです。
その後で、住宅会社、土地、間取りの順に進みます。
欲しい家から始めると、人生のお金を家へ合わせることになります。
使える総額から始めれば、家を人生へ合わせられます。
家づくりの最初に決めるのは、間取りではありません。
「家に使ってよいお金」と「家に使ってはいけないお金」です。










