必ずしも節約になるとは限りません。面積を減らして借入額が下がっても、利用する商品の金利、返済期間、手数料が変われば、総支払額や月々の負担が思ったほど減らない場合があります。比べるべきなのは建物価格だけではなく、借入れを含めた住まいの費用です。
ただし、小さな家だから必ず金利が高くなる、という意味ではありません。面積条件がない、または条件に合う商品で、希望に沿う融資が受けられる場合もあります。実際に使える条件を並べず、「小さいから得」「大きくすれば得」と結論を出さないことが重要です。
選択肢が減ると比較の前提が変わる
金融機関の住宅ローンには物件条件があります。例えばPayPay銀行は戸建ての建物延床面積50㎡未満等を対象外と案内しています。その条件に届かない家では、同じ人が他の広さの家で検討できた商品を選べない可能性があります。これは面積そのものに一律の金利上乗せがあるという話ではありません。(出典:PayPay銀行 住宅ローン 申し込みできない物件)
問題は、当初の資金計画で使った低い金利の商品が、実際の小さな家には使えなかった場合です。完成間近になって別の商品へ変更すると、金利以外にも借入期間、団信、工事中の支払い、自己資金の必要額が変わり、計画全体を組み直すことがあります。
最初に比較表を作るときから、建物の面積と所在地を伝えたうえで条件を確認します。広告に出ている最優遇金利を自由に選べる前提で計算せず、その人と物件で見込める条件を使うことです。適用金利が審査で変わる場合は、その幅も確かめます。
借入額が同じでも総支払額は変わる
以下は商品の相場ではなく、金利差の影響を見る仮定計算です。借入1,500万円、35年、元利均等、ボーナス返済なし、金利が全期間一定、手数料等を除外した場合、年1.5%なら月約4万5,928円、年2.5%なら月約5万3,624円になります。
返済総額はそれぞれ約1,929万円と約2,252万円で、差は約323万円です。月の差は約7,696円でも、長く続くと大きな金額になります。「建物で200万円安くなったから、そのまま200万円得をした」と言う前に、借入条件が同じかを確認したい理由です。
ここから、変動金利が今後ずっと固定されると考えてはいけません。実際に変動型を使うなら、金利が上がった場合の返済額も別に試算します。現在の低い月額だけを、全期間固定の返済総額と比較するような条件の混在は避けましょう。
少し広い家の方が近い月額になることもある
同じ仮定条件で、借入1,800万円、35年、年1.5%なら、月返済は約5万5,113円です。先ほどの1,500万円・年2.5%の約5万3,624円との差は月約1,489円。借入額に300万円の差があっても、月額差が小さくなる組み合わせは計算上あり得ます。
ただし、総返済額は1,800万円案が約2,315万円、1,500万円案が約2,252万円なので、前者が約63万円多くなります。さらに面積増加に伴う税金、維持費、手数料等も別です。月額が近いから大きい方が無料同然、という説明に置き換えてはいけません。
この比較の目的は、面積を増やすよう誘導することではありません。300万円の借入増をどう負担し、その広さで何が改善するかを具体的に考えることです。現実の適用金利を使い、家計に余裕が残る案同士で比較してください。
さらに、借入額が大きい案は、金利上昇時の負担や売却時の残債も確認します。月額がほとんど変わらないという説明だけでは、将来負う金額の違いが見えません。安い金利を理由に予算を増やすなら、余裕を失う範囲まで広げず、追加した広さで何を解決するかを家族で決めておきましょう。
諸費用と工事中の資金も含めて比較する
借入時には、事務手数料、保証料、登記、団信の上乗せ、つなぎ融資等が関係する場合があります。例えばPayPay銀行の商品要項は借入額に対する事務手数料を示し、戸建て新築は完成時の一括融資としています。商品の支払時期や費用構成は同じではありません。(出典:PayPay銀行 住宅ローン商品要項)
建築会社へ払う着工金や中間金を、どの資金で用意するかも確認します。最終的な借入額が小さくても、融資実行までに多くの現金が必要なら、手元資金が不足することがあります。完成後の月返済だけでは、家が完成するまでの資金繰りを判断できません。
比較表は、総工事費、自己資金、借入額、月返済、総返済額、借入時費用、工事中の費用に分けます。融資費用を借入額に含めるなら、その分の利息も加わります。建物代からだけ安さを測る説明より、支払いの時系列まで見える説明を求めましょう。
短い返済期間にも長い返済期間にも意味がある
金利が高い商品でも、返済期間が短ければ総利息が少なくなる場合があります。その代わり月々の返済は重くなります。逆に長期間にすれば月返済を下げやすい一方、定年後まで残る負担や、将来の残債を確認する必要があります。
例えば子どもの教育費が増える時期、収入が下がる時期、車を買い替える時期と返済を重ねます。小さく建てたことで借入額が減っても、返済期間を短くしすぎて生活費が不足すれば、別の借入れに頼る原因になってしまいます。
また、将来の借換えで安くする前提は確約ではありません。その時点の面積条件、年齢、収入、健康状態、残高等によって選べる商品は変わります。今の条件のまま返済しても暮らせることを基本に、改善できれば助かるという順番で考える方が堅実です。
安さの比較は家計と暮らしを一緒に見る
最終的には、使える融資条件を入れた2案を用意し、月額だけでなく、5年後や10年後の預金と残債も比べます。小さい案で収納や仕事場を外に借りるなら、その支出を加えます。広い案で無理な借入れになるなら、設備の選択や計画時期も含めて調整します。
建築会社へは「坪数を減らした場合、使える金融機関と総支払額はどう変わりますか」と聞いてください。銀行には、比較の前提となる金利、期間、手数料がこの物件で使えるかを確認します。両方の回答が揃って、初めて費用差を判断できます。
小さく建てることは予算を整える手段の一つです。しかし、価格を下げるために借入条件や日々の暮らしで無理をするなら、削減効果を見直す必要があります。安い見積もりを手に入れることより、払った後にも生活の余裕が残る計画を選びましょう。










