Q.定年後も住宅ローンが残る家、退職金を返済に使ってよいですか?
A.退職金で住宅ローンを返す案は、返済後に残る資金と年金生活の収支を確認してから判断します。利息を減らす効果だけでなく、医療、介護、修繕、日常の不足へ対応する現金を残すことが必要です。完済すること自体を老後の安心と同じにしないようにします。
退職の時点で二つの残高を確認する
まず定年や退職の時点で、住宅ローンがいくら残るかを返済予定表で確認します。次に、退職金と預金のうち、実際に使える額を整理します。退職金の見込みは勤務先の制度へ照会し、額面と受取額を分けて考えます。
年金は、受給開始年齢と働き方の条件も確認します。日本年金機構のねんきんネットでは、条件を設定した見込額の試算ができます。表示された額をそのまま生活費へ使える金額とせず、税金や保険料等の負担も確認します。
退職直後から年金を受け取るまでの期間や、再雇用の収入が変わる時期も見ます。年平均だけではなく、いつどの収入が入るかが必要です。夫婦の年齢が違う場合は、一方だけ収入が変わる期間も表へ置きます。
仮に手取りの退職金を二千万円、繰上返済に使う額を千万円と置けば、その退職金から残る額は千万円です。この数字は一般的な必要額ではありません。残った資金で何年の不足と臨時支出に対応するかを計算するための例です。
完済する案と資金を残す案を比べる
繰上返済には、利息を減らす可能性がある一方、現金が減る面があります。一部返済で期間を短縮するのか、毎回の返済額を減らすのかも確認します。商品によって選べる方法と手続が違うため、金融機関へ同じ時点での試算を依頼します。
退職前に揃える資料
・退職時のローン残高、金利と完済年齢。
・退職金の受取見込みと預金の使える範囲。
・年金や再雇用の収入と、家計の支出。
・修繕等の予定、繰上返済後の現金残高。
住宅ローン以外の費用も残ります。税金、保険、光熱費、外壁や屋根、給湯器や空調の更新は、完済後も必要です。ローンがなくなるから住居費もゼロという予算にしません。年ごとの支出表へ、工事が重なる条件も入れます。
老後の生活費は、今の家計をそのまま使う場合と、退職後の変化を反映する場合を比べます。通勤費が減る一方、在宅時間や医療等の支出が変わる可能性があります。すべてが自動的に減るという前提では、必要資金を見誤るおそれがあります。
団信の保障も確認します。繰上返済で残債が減ることと、家族へ残す現金の役割は別です。保障の内容、健康状態、ほかの保険との関係を整理します。団信があるから返さなくてよい、利息があるから全部返すべきという一律の判断はしません。
金利が変動する場合は、返さず残す案で返済額が増える条件も試算します。一方、現金を使い切った後に収入が減る条件も見ます。どちらの不安も数値へ置き換え、家計の残高が大きく減る時期を把握します。
返済後に必要なお金が出ても、同じ条件で借り直せるとは限りません。年齢、健康、収入、物件等の審査条件が変わるためです。後から借りればよいという見込みに頼らず、手元資金の役割を確認してから金額を決めます。
新築前の段階なら、退職金を使い切らなければ成立しない予算を見直します。面積、土地、追加設備、借入期間と金利タイプを比べます。住み続けるための断熱や耐震へ必要な予算を守りながら、取得総額を調整することを勧めます。
相談には、退職時点の予定表を持参してください。完済する、一部返す、返済を続ける案で、月額と残る現金を並べます。家を持つ安心を、退職後の生活の選択肢まで残せる計画へつなげることが大切です。
関連する質問
31 借りられる額で家を買うと後悔する?教育費と老後資金から総予算をどう決めますか?
37 頭金を増やして貯金が減る家づくりは危険?手元に残す資金をどう決めますか?
39 団信に入っていれば収入減も安心?病気・休職中に残る支出をどう見積もりますか?
参照資料 P26、P31、P23










