結論
回遊できるキッチンは便利な選択肢ですが、二方向から出入りできるだけで使いやすいとは決まりません。私なら、調理する人の作業範囲と、飲み物を取る家族の通り道を分けられるかを見ます。一周できる形を作ることより、料理中の人の背後を何度も通らずに済むことを優先します。
例えば夕食を作る人の横へ、子どもが冷蔵庫を開けに来て、別の家族が食器を取りに来る場面です。入口が二つあっても、冷蔵庫の前で全員が重なれば混雑は残ります。回遊という名称ではなく、家族が何を取りにどこへ来るのかを、一つずつ図面へ置いて考えます。
料理の動きと通り抜けを分ける
まず調理する人の動きを描きます。冷蔵庫から材料を出し、洗い、切り、加熱し、盛り付ける。家庭の料理の仕方に合わせて順番を置きます。その次に、調理しない家族が使う物を描いてください。冷たい飲み物、コップ、箸、ごみ箱など、料理の途中に取りに来る物が見えてきます。
調理中の通り道と、家族が飲み物を取る道が何度も交差するなら、入口より物の配置を変える余地があります。例えば冷蔵庫の使う面を家族が近づきやすい側へ向ける案、普段のコップを取りやすい場所へ置く案などです。どれが良いかはキッチンの型と家族の動きで判断します。
私なら、熱い鍋を持つ動作や包丁を使う場所のすぐ近くを、日常的な通り抜けの道にする計画は避けます。大人が注意して歩けばよいという説明だけに任せたくないからです。人の出入りを止められるか、必要な物へ別の側から届くかを考え、家族に合う配置へ調整します。
家族二人で料理する場合は、通り抜けとは別に検討します。一人が洗い物、もう一人が切る作業をするなど、分担したときの立ち位置を描きます。二人が同じ引き出しを何度も開けるなら、広さだけを増やしても不便が残るかもしれません。担当する作業と道具の場所を揃えることです。
冷蔵庫の前は扉まで描く
冷蔵庫を平面図へ置くときは、四角い本体だけでなく扉を開いた状態を描きます。パナソニックも、扉の開き方を考慮した設置と製品別の放熱スペースの確認を案内しています。通路に収まる寸法だけで選ばず、実際の型番の寸法図と設置条件を確認してください。[1]
例えば冷蔵庫を開けた人の後ろを誰かが通る必要があるなら、その二人の位置を重ねます。扉が通路を塞いでも、短時間待てばよいと納得できる家庭もあります。しかし朝食の準備中に毎回待つなら、別の位置を比べる価値があります。待つこと自体を失敗とせず、頻度と負担で考えます。
冷凍室や野菜室など、下の引き出しを大きく開ける場面も想像します。腰をかがめる人の位置が、向かいの収納を開ける人と重ならないでしょうか。上の扉だけが開けば使えるわけではありません。買い物をしまうとき、大きな容器を出すときなど、普段起きる動作で確認します。実際に操作する手の位置まで見ます。
キッチンの作業台との距離も、近ければよいと決めないことです。材料を取り出す近さを優先すると、家族が飲み物を取りに来る場所と調理場所が重なる場合があります。私は、料理する時間と家族が集まる時間を重ね、一人の最短距離だけで全員の配置を決めないようにします。
食洗機と収納を開いた状態で試す
回遊経路には、食洗機や収納の引き出しが出てくる場合があります。機器の前で作業する人も含めて、通れる場所が残るかを確認します。製品ごとに扉の動きや必要な場所は異なるため、候補機器の図面を使ってください。閉じた収納が整って見える写真だけでは判断できません。
例えば食洗機へ食器を入れる間だけ一方の道が塞がれても、もう一方が使えるなら、回遊の良さを生かせるかもしれません。反対に、どちらから来ても同じ作業場所へ行き着くなら、入口を増やした効果が小さい場合があります。一周できることと、作業を避けて通れることは分けます。
ごみ箱の位置も確かめます。料理中に使う生ごみの容器と、家族が包装を捨てるごみ箱を同じ場所へ集めるなら、そこへ人が集まります。分けるかどうかは分別や管理の仕方によりますが、少なくとも誰がいつ近づくのかは描いておきます。見せない収納を優先して取り出しにくくしないことです。
料理をしていない時間には通りやすくても、最も使う夕方に混むなら、その時間の条件を優先します。休日にゆっくり一人で料理する人と、平日に家族と同時進行する人では判断が違います。私は、家族が多いから回遊が必要という単純な説明より、同時に何が起きるかを尋ねます。
通路を作ることで失う場所も見る
キッチンの両側へ通路を作ると、その場所には別の使い方ができなくなります。収納や作業台を減らしてまで回れる形にしたいのかを考えてください。必要な物が遠い収納へ移るなら、通り抜けは楽でも料理の準備が増えるかもしれません。通路を増やした後の道具の居場所まで比較します。
回遊しない案と比較することも有効です。入口を一つにして、冷蔵庫や食器の配置を工夫した方が家族に合う場合があります。反対に、二方向から安全に動けることに価値があるなら回遊案を選びます。どちらも実際の家具と機器を同じ条件で入れ、家族の一日の使い方で判断します。
通り抜けないキッチンでも、家族と会話しやすい配置は考えられます。家事に参加してほしいという願いを、入口の数だけに託さないことです。配膳する、片づける、飲み物を用意するなど、家族が担当できる作業を決め、その物を取りやすく置けば、動きの役割が明確になります。
深澤の判断と次の行動
私なら、回遊キッチンは一周できる図ではなく、調理する人を邪魔せず家族が必要な物へ届く図で判断します。二人で料理するなら二人の作業が成立すること、子どもが出入りするなら通り道を整理できることを優先します。人気の形に合わせて、毎日の使い方を無理に変える必要はありません。
次の打ち合わせには、夕食の準備中に家族がキッチンへ来る用事を三つ書いてください。冷蔵庫、食器棚、ごみ箱など、目的地へ別の色で線を引きます。その図へ食洗機と収納の開いた状態を重ね、料理する人の立ち位置を置いて比較しましょう。
ショールームで試すなら、家族二人で普段の分担を再現し、片方が冷蔵庫や収納を使う間にもう片方が動けるかを確認します。私が見たいのは、通路があるという説明より、料理中の動きがぶつからないことです。回れることを目的にせず、家族が一緒に使いやすい配置を選んでください。
参考資料
[1] パナソニック 冷蔵庫・冷凍庫の寸法・設置・搬入について










