つなぎ融資は、利用すること自体が損なのではありません。住宅ローンが実行される前の支払いに必要な場合があります。問題は、建築会社への支払日程だけが先に決まり、金利、手数料、借りる日数を知らないまま契約することです。
「ローンの金利は低いから大丈夫」という説明だけでは足りません。建物完成までに使う資金には、別の金利や費用がかかることがあります。見積書の建物金額だけを比較して、資金をつなぐための支出を落としてはいけません。
いつ必要になるお金かを一枚に並べる
注文住宅では、土地の決済、着工時、工事の途中、完成時などに支払いが生じます。住宅ローンの実行が完成時になる場合、その前の土地代や着工金、中間金などをまかなう方法が必要です。つなぎ融資は、その期間の支払いに対応する仕組みです。[64]
まず、契約先から求められる支払いの時期と金額、自己資金を使う時期、金融機関から受け取れる時期を、一枚の資金予定表にします。「総額は足りる」のに「支払日にお金がない」という行き違いを防ぐためです。
自己資金を先に使えば、つなぎ融資を減らせる場合があります。しかし、手元資金をほとんどなくしてよいわけではありません。引っ越し、追加工事、日常生活の予備費を残しても支払いに対応できるかを確認します。
土地の売買契約と建物の請負契約を別々に進める場合は、両方の支払予定を一緒に確認します。土地の決済を先に約束してから資金調達を探すと、選べる条件が限られることがあります。土地を決める段階から、完成までの資金の流れを把握しておきましょう。
金利より借入額と日数の組み合わせを見る
利息の考え方を示すため、1,000万円を年3%で180日、別に1,000万円を同じ年3%で90日借り、365日で日割りする例を考えます。利息は前者が約14万7,945円、後者が約7万3,973円、合計約22万1,918円です。
仮に事務手数料などが別に11万円かかるなら、合計約33万1,918円になります。これは実際の商品金利や相場を示したものではありません。金利の計算方法、手数料、印紙、登記関連費用、融資回数による費用の扱いは、利用する商品ごとに確認してください。
短期間だから大した金額にはならない、と感覚で処理する費用ではありません。同じ金利でも、借りる金額と日数で結果が変わります。契約前に借入れごとの実行日と返済予定日を入れた見積もりを受け取ることが大切です。
分割実行など別の方法も同じ条件で比較する
金融機関や商品によっては、住宅ローンを複数回に分けて実行する方法や、土地の取得を先行して支える方法を選べる場合があります。利用条件、担保の設定、団信、手数料が異なるため、「つなぎが不要」という言葉だけで有利と決めないでください。
比較するのは、住宅ローン本体と完成までの資金調達を合わせた支払総額です。つなぎの利息が安くても、本体ローンの手数料や条件で差が出る可能性があります。住宅会社の紹介先も候補に含め、選択肢を同じ支払予定で並べます。
建築会社への支払条件を調整できるかも、契約前の確認事項です。ただし、相手の資金繰りを無視して一方的に変更する話ではありません。合意した工程と出来高に応じて、無理のない支払日程を契約書に残すことを目指します。
完成が遅れた場合の負担を先に確認する
工事が予定より長引けば、借入期間が延びることがあります。先ほどの仮定で2,000万円を年3%でさらに30日借りるなら、単純計算の利息は約4万9,315円増えます。期間延長の可否や追加手数料は、金融機関の条件によります。
工事の遅れによる負担を誰が負うかは、遅れの原因や契約内容を踏まえて確認する必要があります。住宅会社が必ず負担する、施主がすべて負担する、と先に決めつけず、延長時の連絡と費用の扱いを書面で整理してください。
支払い済みのお金に見合う工事が進んでいるか、万一の工事中断にどう備えるかも別途確認します。つなぎ融資を受けられることと、工事の完成が保証されることは同じではありません。資金予定と完成までの備えを、両方確認しておきましょう。
借入額と実際に使える金額は同じとは限らない
つなぎ融資では、利息や手数料をいつ支払うかも確認します。借入時に費用を差し引く契約なら、額面の融資額がそのまま建築会社へ支払える金額になるとは限りません。支払期日に必要な額から逆算し、不足分を自己資金で補うのか、融資条件を調整するのかを金融機関に確かめます。
一度の融資でまとめて借りる案と、必要な時期ごとに借りる案では、利息と手続費用のかかり方が異なる場合があります。早く借りすぎれば日数が延び、回数を増やせば費用が増える商品もあります。金利だけを並べた比較表では、この違いを読み取れません。支払予定を先に作る理由はここにもあります。
土地代だけでなく、土地の登記や仲介費用などを、どの資金で支払うかも確認します。すべてが同じ融資の対象になると考えず、対象費用と自己資金が必要な費用を分けてください。見積もりの金額が正しくても、融資対象の理解が違えば、着工前に資金が足りなくなる可能性があります。
本体ローンの条件が変わる場合に備える
仮審査が通った段階で、本体ローンの実行まで確定したと考えないことも大切です。融資実行の条件、必要な書類、適用金利が決まる時期を確認します。建築中に追加の借入れや大きな契約変更をする場合は、住宅ローンへ影響しないかを先に金融機関へ相談してください。
工事が止まった場合、つなぎ融資の返済期限や本体ローンへの移行がどう扱われるかは、契約によります。完成保証などの備えがある場合も、補償する範囲、対象外、追加負担、手続を確認します。名称を聞いただけで、借入金や追加費用のすべてが補われると思い込まないでください。
契約時に残しておきたいのは、支払工程表、融資条件書、各回の費用の見積もり、遅延時の扱いです。住宅会社と金融機関が違う日程を前提にしていないか、本人も確認します。どちらか任せにしてしまうより、関係者が同じ予定表を見ている状態をつくることが、余分な借入日数を減らす基本になります。
聞くべきことは、「土地代・着工金・中間金を、いつ、いくら、何日借り、完成までの利息と手数料はいくらですか」です。さらに完成が一か月遅れた場合も試算してもらえば、建物価格だけでは見えない支出を把握できます。










